透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

子供達と 造船所 3

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「お姉ちゃん!」「ヨルだ」
 「女神さま」「久しぶり!」
「遊ぼう!」「ねえねえ!」

結果的に 「ワッ」とみんなに取り囲まれた私は、自分でも自分が「なに扱い」なのか 分からないまま。

とりあえず「簡易まじない講座」を開かされ、一番小さな子に「むん、とやって ほっ、と出す」と相変わらず意味不明な事を言い ナザレに笑われていた。


そうして暫く 
みんながそれぞれに試し始め、興味が移ってきた所で こっそり現場を離れようと、「ススス」と後ろに移動していると。

そんな私に近付いてきた、影がある。
 
 あれ? バレた ??

しかし、くるりとそちらを見ると
それは随分と成長した、グラーツだった。


「久しぶりだな。」

「うん、みんな元気だった?大丈夫?なんか、困ったこととか無い?あ 幻の魚はどう ?あれって何食べてんだろ 。?」

「お前…………あんま変わってないな………いや、見た目は変わったけど…。」

「 ん?」

ブツブツと言っているグラーツに視線を向けると、ピタリと言葉が止まってしまった。

 なんだ ろうか  
  なに ?

 てか グラーツも背が随分伸びた ね ??


しかし、じっと見つめ始めた私に 逆に相手がまごまごして いる。

「いや、それはいいんだ。だけど、ありがとう。なんか、上手くやってくれたんだろう?戸惑ってる奴もいるが、これまでよりも上手く回りそうなのは分かる。」

「そう言って貰えると 嬉しいな。」

確かに キャラキャラと楽しそうに「適当まじない」を試す子供達は、新しいおもちゃを手にした様で なんだかとても眩しい。

 うん 良かった 良かった

  なにしろとりあえず。
  色々 試して チャレンジ して

 失敗してもいい またやって 
   工夫して 「楽しんで」。


「やってくれたら いい なぁ。」

「…………なあ。」

「 ん?」

しかし、彼の話はそこで区切られて。

ふと 飛んできた小さなカケラが、子供達の視線がこちらを向いている事を知らせて きた。



「なんかね、「本当」の声がする。」
「そう、「濃い」の!」

「 え っ ?」

  ん ?  ???

口々に 飛んでくる可愛い声
高い声のそれは 私の真ん中に「ピッ」と刺さって。

 「本物」
 その 言葉にジワリとなにかが沁み込み始め、自分の意識がブワリと拡がったのが わかる。

そう この場を「すべて把握」する為に。
 子供達の 言葉を チカラをカケラを
 漏らさぬ様に 受け取る為 光の網が 開いたのだ。


「俺が思うに、話の密度が濃いんだよな。言ってる事はチビ達にも分かりやすく、難しくないんだけど。」

「そうそう。なんだろう、その言葉の意味が一つじゃなくて。色んな色が含まれてるんだ。」

  いろんな いろが 含まれている

「お前、上手い事言うな?確かにこいつの色は………あっ?」

「いやいや、いいよ 今更。」

小さい子の話に注釈を入れてくれるハリコフ
横のグラーツが何に対して「あっ」なのかは、分からないけど。

 私が 一応 女神だからなのか
 それとも「多色」に ついてなのか。

でもまあ、どちらにしても今更だ。
今 なにも問題は ないのである。

しかし 既に 私の中では。

今し方聴こえてきた素敵なフレーズが くるくると回り初めて いる。


「 うーん。」

 それに しても。

「ふぅん。ありがとう。でも、いいこと聞いちゃったかも。」

自分の「なかみ」と素敵に反応しそうなそれを、自由にくるくると舞わせながら 自分もつい回っていると。

「なあ。」

「ん?なぁに? 」

ツッコミではなく、普通に話し掛けられた。


「今なら、解るけど。あの時、シュレジエンが言ってた事はって。」

「 えっ?」
 
   なんの こと ?

「ほら、あの時。「カッコつけ」って俺が言った時さ…。」

「 ああ!」

 そうだ。

「お前が自分の行動?言葉?に、「責任を持ってる」って、意味。今なら、こういう事か、って解るんだ。あの時は分からなかった事、今ならお前の言葉がすんなり入ってくる事。多分、お前は変わってないんだろうけど。俺達が、変わったしだから余計に、意味が解る。チビ達がお前の言葉が「濃い」とか言うのも。多分、「それ以上のなにか」が、あるからなんだろうな。」

「  うん。」

ジワリと 沁み込む光に。
 ピタリと回転を止めて じっとその静かな声を 聞く。


しっかりと強く光る青い 瞳
あの頃光って見えた薄茶の髪は、今 変化してほぼ金色に近く 見える。

 隠れていた 眼差し
 すっきりと切られた髪
 子供から 少年へ 
  きっとこれから青年になってゆく 賢そうな顔。

あの時浮かんでいた防御の色 不信 拒絶
  所謂「重い色」は もう彼の瞳には見えなくて。


 それなら。

「うん。」

 とても 嬉しいんだ。


もう一度、しっかりと頷き 返事をして。
くるりと そのまま作業へ戻っていったグラーツを 見送る。


 ずっと前に 蒔かれた 種

  拾ってくれたシュレジエン
    育てていてくれたグラーツ
  色んな形で 受け取ってくれたろう 子供達

 それを 今 回収する 私。


 「物事には必ず 起点始まりが あって
   それを回収する気付く事によって
  形になり 強固になり 根付いてゆく 」

それが実感として わかる。

 だから 「今にあり」「気付いていること」
 そうでなければ 蒔いていること
         育っていること
         回収することに 気付かないからだ。



「なるほど ねぇ 。」

しみじみと 頷いていると、なんだかワクワクの視線を感じる。


「ねえねえ」「あのさ、これは?」

「あ、うん それはね  」

いつの間にか見つかっていた姿
子供達の次から次の質問で、私の思考はポンと
弾けたけれど。

 でも きっと 大丈夫
 カケラになって 飛んで行った から。


きっと後で、また材料として反応し いい色になって出てくるだろう。

 なにしろ大きな、ヒントになりそうな それ

それはきっと私の「声」に「言葉」に「おと」「振動」に。

 「まるっとぜんぶ色」が 含まれてるって。

  こと だよね ??


「 多分、だけど。」

ふと、質問の途切れた瞬間 その場を離れ
今し方飛ばしたカケラ達が回るのを 確かめる。

 
  「私の ことば」  「色」

 「濃い」   「本当」

    「含まれるもの」

       「本当の いろ」。


実際「私の言いたいこと」は 沢山ある。

「全部喋ろうと思えば」、子供達が眠くなるまで 話せると思うのだ。
でも。
「全部を言う」のが その時の最善かは、時によって判断しているし、確かに「濃い話」を沢山されると。
 眠くなってしまうんだ 慣れてない人は。


 私の話がポンポン飛ぶのに慣れてる人は いい。
 内容は飛ぶし、抽象的だし 範囲は広いし
 現実的な事 所謂ファンタジー的な事
 事実と想像、自分の信念 
 
 それが織り交ぜられて いるから。

「まあ。分かり辛いんだよな 。」

でも 別に
 私は私の話が「全て正しい」と 思っている訳ではないし
 しかしきっと その「本質」が。

 「どちら裏表も含み」

 「可能性」で 「なんでもあり」で

 「無限」だから。


「だから 濃い、そう思いたい。うん。」

なんにしても「どちらの面もある」し、それは「まるっとぜんぶが オッケー」であるのだ。

 だから 複雑
     単純じゃ ない いろ。

「ことば」では 難しいけど。
 「チカラ」に 「いろ」に 「エネルギー」に
 それが含まれてるなら、いいと 思うんだ。


「でも。 子供達が、そう言ってくれるなら なんだろうな。」

そう信じる事も 受け入れる事も大切だ。


 それなら 私は。

 皆まで言わず とも。

 そう 「わかる」よう に
    「染み込む」ように

  この 「場」に 「無限色」を 撒こう ぞ。


そう 思って、徐ろに船の上に上がり ヒラヒラと羽衣を靡かせ銀色の飾りから「可能性のカケラ」を 撒く。


思うに 子供達は勿論、「人間」は。
一人一人、違って、やり方に正解は無いし
合う合わないが ある。
 「染み込むスピード」も「深さ」も
 「何を受け取るか」もみんな違うんだ。


だから

 そう  

  この 「可能性の場」

     「無限の場」で 

 それぞれが最大限 「拡大できる」様に

             基盤を創るのだ。

 
 「せかい」の 様に  「プール」の

      「海」の 様に。


 そうして 自然に その 「なか」を

   泳いで いたならば。



「    。環境が 人を創るし 空気が エネルギーが。人を育むと 私は思うんだ。 そう 即ちそれ自然である。 うむ。」

 ん?

   でも?   て いうか が ?


 あの「ワクワクの基盤」
   「いつでも夢の国」

   そんな 感じ じゃ  ない ???


ボーッと 自分の光を見つめる私の前には

 ヒラヒラ   キラキラが 降り注ぐ

   新芽の空気の造船所


 「変化」「移行」 「芽吹」 「成長」


この エネルギーの 中で
  みんなの 色が 光が 上がって。


 きっと また 変わる。


それを確信しながら、一人 ぐっと胸に手を当てて。

「 よし。」

頭上の天窓を眺めながら、きっと今も サポートをしてくれている「みんな」に。

すべての「閃き啓示」に 感謝していたので ある。





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