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8の扉 デヴァイ 再々
箱舟 遠くの光
しおりを挟む神は いた。
結果から言えば 確かに神はいた。
俺の 目の前
その 遠くに。
「距離」ではない その 距離
夢ではない それ。
ただ まだ それは俺には眩し過ぎて。
「本当に そうなのか」
それを確かめて いたんだ。
最期にあいつが言った 「神はいた」
それと 俺の神とは違うのだろう。
遠くに見える あの 色
確信のある金
それは紛れもなく彼女の「いろ」だったけれど。
長い 永い 旅をしてきた俺には。
まだ 「今の俺が その資格を有しているかどうか」
その 自信が無かったんだ。
遠くから見るその光は、「もしかして あれが? そうか?」
そう思える光だった。
しかし、確かめる術は無い。
「見えるのだけれど 触れるは能わず」
その 微妙な距離にいたあの色
その 紛れもなく「高い光」。
その 明るさに圧倒されて始めは遠巻きに見ていた自分
だがしかし。
時が 経つにつれ
少しずつ 少しずつ 縮まってきた様にも感じる
その距離
けれども。
それは逆に
「彼女が どうしてそこまで光っているのか」
「あの時 彼女の言っていた意味を
俺は殆どわかっていなかった」
それを知らしめる事にも なった。
そう 俺も成長したのだ。
何故 彼女が そうで
何故 あの時 船に乗らず
何故 時がズレてもまた出逢い
何故 今 ここで。
また こうして俺の目の前に ある のか。
俺は
いや「今の俺」は。
その彼女の「神の光」に 耐えられるのか
そういうことだったのだ。
きっと これまでの道のりは。
多分 「始めから終わりまで」彼女は変わっていないのだろう。
俺だけが 知らなかったこと
解らなかったこと
それは沢山あり、今もまだ 沢山あるのだろう。
流石にここまで 来て。
それが わかる。
それでも俺なりに 成長はしたつもりだし
船の上では悟ったつもりでも いた。
しかし その悟りとは きっと彼女の光からすれば
ちっぽけなものでしかなく
しかし 彼女が「それ」を気にしない事も分かる。
彼女が 神であることも
俺が 神であることも
あのクソジジイの長老も 友人も 家畜達も
船も 海も 雨も 嵐も
風も 日差しも 夜の星も。
「すべてが 神」である事も また知った。
俺達が ただの「もの」ではなく「ひかり」だと いう事も
だからこそ それは続いてこうして逢える 事も。
しかし。
だからこそ。
知ったからこそ、躊躇するのだ 俺は。
君には まだ。
俺が 必要なのかと。
本当は
本当ならば 何の執着もなく「君はまだ 俺の光なのか」、そう訊けば済む事だ。
なんの 躊躇いなく 訊けるのだろう
俺が 本物 ならば。
いや「偽物」という 訳じゃない。
そうでは なく ただ単にビビっているのだ。
「紛れもなくあれは 神の光だ」
それが わかるから。
「本当に 己が 神の半身なのか」
きっぱり くっきりとした 自信が持てないのだろう。
そんなものは。
一生、持てないのかも 知れないがな。
神ならば 一つで成る
だから 俺は必要ないのではないか
しかし 「女」ではあるのだから「男」は
必要なのではないか
しかし もう 別の半身が いたら?
そもそも訊けたとして「違う」と 言われたら?
そもそも俺は 神の半身として 相応しいか?
躊躇う理由なぞ 死ぬ程ある。
尻尾を巻いて 逃げる事もできる。
だが
しかし。
けれども もし。
そう その 「万が一」が
あるのならば。
俺は 問い掛けねば ならぬのだろう。
己の 光の為に
もう半分の 光の 為に。
躊躇いなど。
つまらぬ自我だ。
クソみたいなプライドだ。
そう
誰も見てやしないんだ。
俺 以外は。
誰も。
だから。
その 下らない躊躇いを削ぎ落として
真っ直ぐ顔を上げた時に。
「その時」が 訪れる
それを知って 進むんだ 前へ。
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