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8の扉 デヴァイ 再々

やって来た サイクル

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ある日の、朝食後。

 ゆっくりと歩く廊下 
少し乾いた喉は「食後のお茶」を所望していて
私の行く先にそれお茶がある事を示してはいるが、「乗り気か」というと そうでも、ない。


「ちょっと話があるから、後で来い。」

そんな恐ろしいセリフを言われた 食堂
 
 嫌な予感が する様な しない 様な。

 いや しかし うむ
         なんか そう ね ?

そんな微妙な気分で トボトボと青縞の廊下を歩く。

そう 私には、やや 心当たりがあった。


「て、言うか。早速 私の予感が、当たっちゃった 予感??」

そんな事を呟きながら 踏み進める紺の絨毯
 フワリと沈み込み そこから吐き出される空気と調度品達は
 何かを勘付いている様である。

こちょこちょと話す内容が可愛らしいけど、可愛くないのだ。


「青の本? 」

耳に飛び込んでくる、聞き慣れたそのワード
 しかしずっと忘れていた それ。

 えっ
 それが 今更?

  やっぱり 嫌な  予感 ???


そんな事を考えつつも、興味はあるので素直にやって来たのは書斎のドアの 前だ。

中には既に、人の声がしていて。

 多分 イストリア
 えっ やっぱり千里 いるじゃん

 それで?  うん? 金色は いない かな

  そして 部屋の主は 奥?と。

 多分、朝も いる な??


「て 言うか。皆さん、お揃いで 一体何の話ですか?」

「コンコン」というノックと同時に開けた扉
そのままそう問い掛けながら、笑顔のイストリアが示してくれた 朝の隣に座る。

「何の話?」

「さあ?」

私達がそんな会話を繰り広げていると、カチャリと茶器が置かれ イストリアがお茶の支度をし始めた。


 ふむ 。

 なるほど

 へえ ?


 うーーーーーーーん ???


  ぜんっぜん  わかんない な ????


暫く様子を窺えど、「何の話題なのか」見当はつかない。

「 ふむ?」

しかし、私の首が 傾くと同時に。

奥の小部屋からやって来た、白衣が向かいのソファーへ座る。
 その隣に 狐姿の千里
 私の隣にはカップを配るイストリア
 テーブルには玉虫色も控えている。


 ふむ? さて   はて ??

全く展開が読めないがしかし、話が始まるのは間違い ない。

とりあえずは、いつも通り紫の瞳がニヤついていたから。
先ずは 少しだけ安心して、目の前の白いカップに手を伸ばした。



「ん~、イストリアさん これ。新作ですか??」

「分かるかい、新しい葉を試してみてるんだ。地階の子供達が率先していてね、やはり子供の発想力は柔軟だな。私達が思いもよらない、「えっ」という様なものが、意外とイケるんだ。」

「なるほど。確かに見た目で判断しちゃうもんなぁ。」

「それにね、風が吹く様になっただろう?あそこは天空にある。けれども何処からか、種が飛んでくるんだ。これまで島に無かった植物が根付いている場所がある。もしかしたら君達が服に種でもくっ付けて来たのかと思ったよ。」

「  まあ、あり得なくないですね ??」

「それもやはり、時代、かな?これまで無かった事が起きたり、根付いたり、本格的に動き始めてきたのだろう。」

 あ。
 そう  その話。

私がこの頃 気になっていた「サイクル」の話である。

確かにずっと 前に。

 「風の時代」「運命の女神」と 言っていたのは
 イストリア なんだ。

しかしそれを、質問しようと口を開けたと 同時に。
黙って私達の話を聞いていた、本部長が口を開いた。


「お前は………。」

しかし。

はっきりと、話し始めた割にそこで言葉を切った彼
この人が言い淀むなど珍しい。

 なんだか それが興味深くて。

私も自分の質問をヒュッと引っ込め、その口が開くのを黙って 待っていた。


 
 ん?

   いや   えっと ?? ?


しかし。

意外と続きが始まらなくて、でも「迷っている風」でもない。

 ふーん?  いや
  なんか これ。

 えっ  なんの はな し ??

しかし、隣に座った狐がただただ面白そうに 隣の眼鏡を見上げているから。

 いや これ なんか
 まあ 「私の話」には 違いないんだろうけど。

 なんか 言い難い 話?
 そんなの  あったっけ ???

首を傾げてみるけれど、そんな話題に心当たりは無いし、そもそも彼はこちらを見てもいない。

「 あ の ?」

じゃあ、口を開こうかとそう話し始めた 時。
しかし同時に立ち上がった本部長は、少し奥のテーブルから見慣れた色の本を持って来た。


 ああ、 それか。
 そういや 言ってたもんな。

その、青色の本は三冊 ある。

無造作にテーブルに置かれたそれは、「青い本」なのだけど「青の本」だという事は見ただけで、わかる。

本達は 喋りはしないのだけど、その「いろ」が。

 そう 見慣れた 「その色」で
 勿論それは 私の中にも ある色だからだ。


「やはり。間違い、ないか。」

まだ何も話していない、私の顔を読んで そう言う本部長
しかしイストリアは流石に「おやおや」と、説明をしてくれる様である。

くるりと私の方に 向き直ると。
ポンと座り直して、事の次第を話し始めた。



「いや、これは。アリスが持って来たんだ。「あの黒い部屋で見つけた」と。君に言えば、解ると、言っていたが…。」

 瞬時に潤んだ 私の瞳

イストリアはそれに直ぐに気が付いて、言葉を止めてくれたけれど。

ぐっと胸に手を当て、頷き その先を促す。

「いや、何も聞いてはいないんだ。だがこれは、君の祖母が書いたものと同種で間違いないだろうし、アリスも処分されたと思っていたと。でも、君が護りを置いて行ったろう?それから謁見の部屋が開く様になり、そこで見つけたらしい。あそこには本棚と椅子しか、無いらしいね?」

「  そう ですね?」

私は あの部屋で。

いつもシンに案内されていただけだし、確かにあの厚いカーテンは本棚の前にあってそれ以外に「もの」は見ていない。

でも、
 私が護りを置いたから あそこが無人になったこと
 きっと青の本はシンが保管していたこと
 「見るべき時が来た」から 置いてあったこと
 シンは シンラで。

 「シンラ様」は 「森羅万象」の「シンラ」だと いうこと。


「持ってはいた」けど「見えていなかった」記憶が、次々に開示され 
 自分がそれを知っていたこと
 蜂の巣の様な「自分のデータベース」が パカパカと開いていく様
 朝が 「シンラ様」と言って あの白い部屋から出発した 時のこと。

 色々な「映像」が 自分の「なか」を 
 サアッと 走馬灯の様に 流れて。

なんだか、言葉が無くて 隣に丸くなっていた朝を
無言でギュッと 抱き寄せたんだ。



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