透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

ことばのチカラ

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「 で、結局。「妹はどうなの?」とか、始まって。放っておいて欲しいわよね、本当に。」

「えっ、パミール妹いたの?可愛いだろうなぁ」

「ヨル、じゃ、ないわ。」

「あっ ごめん。」


ある日の、昼下がり
 いつもの魔女部屋、突然の二人の訪問に。

ウキウキとお茶の支度をしながら私は、勢いよく振り向いて ガリアに注意されながらもヨチヨチと茶器を運んで いた。


魔女部屋は物が多くて、狭い。

 でも 狭い と言うか 
 ひとつひとつが大きい と 言うか。
 私の「広い」の定義が おかしい説も
  あるかもだけど ね?


そんな事を考えながら その狭い通路と言うか、隙間を縫いながらも進む テーブルまでの間。

二人があれこれ、「ここ最近のデヴァイ」の事を話すのを 近況報告がてらに聞いていた 自分
二人は私が聞いていて、後で何か言ってくれると思って話している。

 そう 「参加」はせずに
 私は「感じたことだけ言う」
そのスタイルが定着してきているのだ。


 だから 私も 楽。

そのまま茶器を配置し、お茶の支度をしながらも
二人の掛け合いを楽しく聴く。

「 フフフ」

チラリと青い瞳がこちらを見たが、だって 面白いのだ。

 なんか ガリアは 可愛いし
 パミールは 「困ってそうで困ってない」し。

 そういや リュディアは元気かな ?


そんな私を放っておいて、二人の話は続いてゆく。

私は半分話を聞きながらも、二人の服装を楽しんだり
お茶の香りを味わい、蒸らし
 お菓子があったかどうか 思考を巡らせたりして。

 くるくるとまわる カケラ達を
  遊ばせて いたんだ。


  あー ガリアの服。
 また 可愛くなってるな? 誰が作ってるんだろう
  ここにも 服飾が
  いや あれは 自作かな?

 パミールも 新しいネックレスしてるし
  私の石と重ね付けして バランスが うん
  いいね そういうデザイン?

 頼んだのかな??

  えー 二人とも手が綺麗だな …

 スカートの光沢が うん なんかあの生地思い出すわ

 エローラが あの ねえ 選んでたやつ
 てか 絶対。

 ガリア、エローラとよね ??

 いつなら 会えるかな~
   て言うか私が一着 ガリアの服をオーダーして
 うん 絶対気に入る いや?でも
  私好みのガリア では あるな??

 でも それも。  いいなぁ~

   可愛いよ ねぇ ~~~ 。


「ヨル。顔が。」

「何処かのおじさまみたいになってるわよ。」

「 えっ」

 女神たるもの 。

  流石に  それは まずいのではないか。


「 えっ、ゴホン。で?相変わらず、みたいだね?」

気を取り直して、そう話を振る。

二人が話していたのは 相変わらずの「閉塞感」の話
その中でも色々あるが、大まかに言えばこんな感じである。


短命化とチカラの減少による 不安
女達が外に出る事により「出られない」事の違和感を感じ始めた事
風が吹いた事による 空気の変化と意識の変化
グロッシュラーとの関わりの増加からの影響
星が流れた事や 金の蜜の効果。

 「変化」は色々あるが 大まかに言って
 「変化」により 「上向き」になれる者と
      逆に「下を向いてしまう」者と。

その違いではないかと、思う。
 
 その 中で。

 やはり自分の中でのモヤモヤが、他者に向いてしまう者が 多いのだろう。

 パミールが言っていたのは、そういう事だ。

「自分が持つ不安を 他者を指摘する事によって誤魔化す」
そういう事である。

ぶっちゃけパミールの妹は、なにも 大した事はしていないに違いないのだ。
きっと これまでの慣習からは 少し外れていたとしても。

 まあ 私から見れば。
 そんなのは 「何もしていない」に近い
 きっと そうだろう。

しかし、ジワリ ジワリと忍び寄る 空気の変化
それを「不安」で受け取ってしまえば。

 きっと 風が 「恐怖」になる。
 

「 ふぅん?でも、実際。していないんでしょう?」

「まあね。でも、ヨルに言わせればみんな何もしていないわよ。」
「まあ、そうね。でも、少し青の家へ遊びに行っただけ。それだけよ。」

「 おやおや。」

 まさかの?
 ホントに ?  それ だけ ?


「でも、さあ?結局、そんなのこれまでだってじゃない?ここだけではやっぱり狭いし、みんなまじないは落ちて閉ざされた空間で。やっぱり、「未来」は描けないよ。」

「まあ、見ない様に、してたんでしょうね。」

「うん、でも実際。私達だってヨルが来るまでは。疑問に思ってなかった所は、あるわ。まあ、服が自由にならない事に文句を言うくらいで。まさか、他ととか。思ってなかったもの。」

「それはあるわね。グロッシュラーに行くのだって、一生にあるか、無いかだったもの。」

「そうよね………。」

 確かに。

初めの頃は そんな感じだった二人
殆ど女子がいなかった神殿。

 しかし 光を見た 二人
 徐々に変わった 空気
 「変化できる」と 思えたこと

 アラルの「どっちがマシなのか」という
 「生きる」という事に関しての疑問。

多分 「過ったこと」は あった筈なんだ
誰の脳裏にも。

 でも それは 「問うてはいけない」問いで
 自らを苦しめる もので。

 そうだった それ

 しかし 今は違うんだ。


この頃 私にとんでくる「何故 今」
  
  「変化」  「風」

   「時が来た」  「なんで」

 「もっと早く」 という 疑問。


「サイクル」なのは 分かるけれど
何故「今」?

 もっともっと 早く 私達の声は。

 届かなかった のか。

 ここまで私達は。


ぐるぐる ぐるぐると回り始めた鈍い色のカケラを排し、長机に置いてある混沌の鍋へ 飛ばす。

 とりあえず それは後だ。

 今じゃない。
 
その疑問は きっと「その時」が来れば答えが弾き出されて来るだろうし なにより二人の疑問に?


「うん? 答える のか。」

 て いうか この 問題 出来事 事実の

 「示しているもの」は なんだ ?


私が 二人に示す 最適の「光」は。

  なんなの だろうか 。



 くるくる
       キラキラ
              キラリと。


 回るカケラを見るでもなく眺めながら
 みんなの思いを 浄化して飛ばす。

 そう 息を吹きかけて
    風を  吹かせて。


   飛ばすのだ  澱を  濁りを

 澱み  燻み   重たい部分だけを 

   フッと軽く  飛ばして。


  その 「輝き」「中心」を 見る。


「 ふぅむ。」

 まあ な。


示されたカケラは「ことば」だ。



 普段 みんな 「なんの気無しに発している 言葉」
 それが に。

 あまりにも 注意が向いて ないんだ。


その パミールに小言を言う人、それだってそうだ。

 「言われた方の気持ち」
 「それにより縮小する 宇宙」

特に大人から子供に対して 掛ける言葉
目上の者が 守る者に対して使う言葉。

確かに「気にし過ぎる」のは、違う。
相手の事を考え過ぎて、言えない事もあるだろう。

でも なんか  なんて 言うか。


「うーん、この場合は。 違うんだよね 。なんだろうな 。まあ 「意図」なんだろうけど。」

「意図?」

「うん。まあ、「実際どういう気持ちで言ってるか」だよね。本心?なかみ?「行き先」?「矛先」、なのか。なんだろう。」

「まあ、言わんとしてる事は、解るわ。」
「うん。そうね。」


「ことば」も 勿論 そうだけれど。

 如何に 「意識して生きていない」か

 ずっとずっとそこに横たわっていた「事実問題」に。

 蓋をして 見ない様にして いたのか。


そういう事だと 思うんだ。


だって「原因」は いつだって「自分の中」に ある。

 何かを「外にぶつける」という事は
 「エネルギーゲームをしている」という事

 自分のエネルギーを 他者に。
 より、ぶつけやすい者に。

 当たり散らしている に 違いないのだ。


「 うーーーーーーーん。」

でも。

わかっていても「外から変えること」は、できないのだ。
 そう これは 今まで散々 堂々巡りしてきた
 内容

私が手出しをする問題でもないし。
多分 パミールは「なんとかして欲しい」と
思っている訳では ない。

「ふむ。」

そうして私は、とりあえず一息吐くと。

案の定、わたしを放っておいてくれる二人に感謝しつつも
自分のカケラに 「ポイ」と明晰さを増やしたので ある。







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