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8の扉 デヴァイ 再々
寄り道 レナの店へ
しおりを挟むふと 思い付いて。
顔を上げ、薄茶の瞳に問い掛けてみた。
「イストリアさんが子供達に教える時、気を付けてる事って何ですか?」
「うーん。そうだねぇ。まあ、当たり前のことばかりで、君なら大概細かい所は大丈夫だろうけど。しかし、なにしろあれかな。「こちらが良かれと思ってやる事は大概お節介」という事かな?知っているだろうがあそこの子達は、個性派揃いだ。ここの様な温室育ちと違って、クセが強い。」
思わず初めの頃を思い出して 大きく頷く。
「しかしこちらは、相手の事を思い遣ってやるだろう?それは、いいんだ。それ自体は。だがそこできちんと相手の意向を確認して「NO」と言われたら潔く引く事かな。どうしたって私達大人は、自分が正しいと思いがちだ。だが、その子が自分よりも秀でている所が無いなど見た目では分からないからね。本当は物凄い才能が隠れている、そうかも知れない。解るね?」
「成る程です!ありがとうございます。」
思わず自分がやりそうな、事である。
流石のアドバイスを しっかりと胸に刻んでカケラに 投げる。
そう 私は 「新しい目」で あの子達を 見る。
そんな私を 微笑んで見つめるイストリア
そうして最後に出て来たアドバイスは、これまでの私に太鼓判を押してくれる とても素敵な色だったんだ。
「これまで君がやってきた事を、振り返って。全てのタイミング、その時考えた最善、それはやはりそうだったのだと。解っているだろう?だからそれでいいんだ。なにしろ自分を信じて、やる事だね。それなら万事、上手くいくだろう。」
「 ありがとうございます 。」
なんだか 言葉が ない。
ジワリと沁み込む いろ
これまでの 自分の道 行動
それを見ていてくれた人が いること。
ゆっくり、深く息を吐いて 呼吸を整えると。
くるりと視点を切り替えて、今日の予定を考え始めた。
きっとイストリアが言うのは
「可能性を潰さない」という事
流石である。
今朝のそんなやりとりを思い出しながらテクテクと歩く 灰色の道
造船所までの道中。
そのアドバイスを復習しながら、思い出すのは「可能性の扉」だ。
「うん、やっぱり。そう だよね。」
さっき 神殿で 舞った時も
思ったけれど
いつでもどこでも そうなのだけど 。
やはり、大事なのは「伸び伸びと」「小さな宇宙の拡大」。
思い切り 自分を出せる こと
羽を伸ばしてチャレンジできる こと。
手を広げ、くるりと回りながら「可能性のカケラ」を想像し、自分の中を満たしておく。
「うん。」
そうして。
フラフラと 歩く 灰色の道
少しだけ覗く 茶色の土 変化のカケラ
それを見てふと、思い付いたのは。
「うーん。でも、見えるし 寄っていこう。」
約束は してないけど。
でも なんとなく「今は 空いてる」気はする。
そう、私の視界に入ったのは レナの店
きっとあそこなら。
この頃のグロッシュラーの様子が よく分かるに違いない。
造船所も、行く事を知らせている訳ではないし
寄り道しても大丈夫な筈である。
ただし 話が 長くなり過ぎなければ だけど。
「うん。 まあ、その時は その時で。」
そうしてぴょんと、石畳を逸れると。
ふむ やはり 地面が
うん。
ジワリと沁みる 感触
変化を確かめたい 好奇心
新しい色が ありそうな予感
ムクムクと湧き上がる ワクワク 。
その 湧いてきた色を引っ提げ、先ずは優しい色のレナの店に 視線を定めて。
自分の中の変化を感じながら ゆっくりと歩き始めた。
ん?
あれ?
ここ 外観って こんなんだった っけ ??
段々と近くなる店の外観を眺めながら
「どこが変わったのか」、私の中身はくるくると忙しく「レナの店 外観」を検索していた。
「 うーーーん??」
ピタリと手前で立ち止まり、腕組みをしてその白く暖かく、しかし洗練された癒しの雰囲気を 確かめる。
白い 壁 土の雰囲気
柱はそのままを生かした 木
しかしスッキリと削られたそれは くっきり直線で白壁を区切り
この店が「清潔」「清廉」な事を 示している。
「ふむ。」
少しだけ伸びた蔦が、いい感じに屋根から下がり これがぐっと這い出したらさぞ素敵だろうと 謳いたくなったがとりあえず口を噤んだ。
なんだか レナに。
叱られそうな 予感がしたからだ。
なんだ ろう なんか。
「大人っぽく」? 「洗練された」??
機械的でなく しかし「均一に」塗られた 壁
はっきりと「清廉」を示す 「白」
同じ「白」でも沢山の色があるが
この「脇が甘くない色」を出せる人など
そういない。
凡そ 移動前まではこの世界になかったこの雰囲気
どちらかと言えば 私の世界の「現代的」な
スッキリ感。
「 あー。でも。」
あの二人だからか。
そう 多分 この「色」は。
レシフェのまじないが入っている筈だ。
この コントラストが 上手い感じ
角のキッパリとした 切り返し
「潔さ」と「完全」の同居
それを「完成させる」事で 張られている結界の様な 空気。
凡そ「決められない人が多い」、この世界で。
この 洗練された空気を出せる人は
殆ど いないんだ。
多分、「覚悟」の無い人はこの店に入ろうと思えない筈だ。
「癒し」とは。
自分の中身が ドロドロと出てくるものでも
あるからで ある。
「はぁ~。 なるほど ? この、角とか? このきちっと ピッと なんか そう ね??いいなー。」
その時 カチリと音がして。
「………やっぱりね。」
呆れた目をした、久しぶりのレナに迎え入れられたんだ。
「 はぁ~ 前来た時も思ったけど、私、好み。それになんか、またもっと落ち着いた?いや、上がった のか。」
「うん?」
「いや、なんかね。 なんて言っていいのか。なんかほら、ラピスはまだいい方なんだけど、デヴァイは。「女の子とは」「女性らしく」「女子とはこうあるもの」、みたいな服とかインテリアなんだよ 。あ、ガリアの事思い出しちゃダメだよ。あれは、特別。」
なんか ウケてるけど。
だってそうなんだから、仕方が無い。
「でも、それはあるでしょうね?だって殆ど決められてるんでしょう?まあ、明確じゃないにしても、母親からずっとそうして育てられてきてるから。まあ、そうなるわよね。私は最近、やっぱりイストリアの畑とか、自分達の畑もやってるし。」
「 だよね。うん、わかる。土は いい。」
一人しみじみと頷き始めた私を他所に、お茶の支度をしてくれているレナ
青い髪が艶やかに揺れる後ろ姿はとても魅力的である。
最近 どうなの かな
ねえ レシフェと
でも このまじないは 絶対レシフェだし
ふむ? やはり 二人は ふむ ??
「て、言うか。近況を聞きに来たんじゃ、ないの?」
「あ 。 そう、だね? 」
「なに、それ。」
フフフと笑いながら、示してくれた椅子に腰掛ける。
そう、これもシンプルでいい椅子だ。
程良いクッション、デザインも勿論スッキリしているが、どちらかと言えば座り心地を重視しているのだろう。
誰か シャットにでも 頼んだのかな?
そんな事をつらつらと考えていると、ティーカップがカチリと目の前に置かれる。
そうして まだ、問いを発していない私に 的確な話題の提供が始まったのだ。
「とりあえずは。そう大きな変わりは無いんだけど、一人出禁になった奴がいるわ。」
「えっ ?貴石、だよね ??」
「そうよ。フフ、まさかうちじゃないわ。」
「ああ、そうだよね。びっくりした。」
やはり「レナ一人じゃ」「レシフェも在住した方が」「でも私が口出しするのもな」と。
私がごちゃごちゃ考え始めた所で 話は続いていく。
「これまでだったら。勿論、なんでもなく処理されていた所よ。でも、なんか、あのアリスなんとか?と、レシフェが繋がってから。多分その伝手なんだろうけど、止められたのが一人。でもまだ、一人だけどね。とりあえず一番酷いのは、大丈夫になったのかな?その後は詳しく聞いてないけど…。」
「 そうなんだ。」
アリスが。
レシフェと。
なんだか意外な気もしなくないが、レシフェはああ見えて多分デヴァイを仕切ろうと思えば仕切れる筈だ。
ずっと前に 本部長が言っていたか
フローレスだったろうか。
「他に類を見ない 黒の石」を持つ レシフェ
実力もチカラも 頭脳も ついでに優しさも。
私は もう 知っているんだ。
くるくると回り始めた「黒のカケラ」、ついでに「黒いシン」も回り初め 話が逸れそうになるのをくるりと修正する。
「なんか。 いいライバル?に、なればいいね?」
「えっ?そんな感じなの?」
「いや、分かんないけど。なんとなくね フフフ 」
「なんかあんたがそう言うと、怖いわね………。」
そうしてレナに 疑いの目を向けられながらも。
とりあえず続きを促し、お茶を コクリと飲んだ。
「そうねぇ…。後は、畑に来れる人が…まあ、少しずつだけど増えて来てるのかな?実際数えた訳じゃ無いけど、多分、そう。それでね、この間!やっとうちにデヴァイからお客さんが、初めて、来てくれたと思ったら。」
「えっ 」
「なんと、ヨルの知り合いじゃない。しかも、完全にそっち系。トリルみたいな。私が求めてるのは、そうじゃないのよ、そうじゃ………」
えっ レナ さん ???
「ガチャリ」とカップを置きながら ツッコミを入れ話を聞くと、どうやらお客様はメルリナイトだ。
しかも全く癒しが必要なくて、店を楽しむだけ楽しんで帰ったらしい。
「フフフ 。良かったじゃない?でも、宣伝はしてくれそうだな 。」
「まぁね。広めたい、とは言ってたわよ?向こうでも色々試してるみたいね、彼女は。」
「 そう、確かに。」
そうなんだ。
あの 二人は。
あの暗い空間に 光を撒こうと 繋ごうと
これまでにも小さな魔法を沢山 仕掛けてきているんだ。
確かにそれが、発芽してきて 「今がある」のは
間違いない。
「うんうん。そうだよね 。」
「そうね。でも、その位かな?向こうの事はよく分からないけど、こっちは順調だと思う。やっぱり畑?緑があると、全然違うわね。ヨルが「森、森」って言ってたの、やっと解ったわ。」
「 ああ。そうだよね 。」
そこで一旦 途切れた話
目の前でしみじみとそう言う、茶色の瞳がキラリと 。
あの 懐かしの色を映したんだ。
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