透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
1,068 / 1,740
8の扉 デヴァイ 再々

逃げと選択 3

しおりを挟む


くるくると「明晰さ」のカケラに手伝って貰いながら、
   
   まわる   まわる  私の なかみ 。


とりあえずカケラ達は整列していないが、口を開き道筋を付ける。
大体これで いつも突破口が開けるからだ。

「結局ね、閉じこもっている様でいて。この中に普通にんだよ。この、「みんなの輪の中ルール」に。だから、から、出ないと「前を向いて歩く」にならないの。枠の中は、縛りの中だから。いっぱいあるじゃない、ほら、謎ルール。ヴェールとかもそうだし、結婚とか 仕事とかさ。女性なら尚更。」

「そうね。」「確かに。」

「だからほら、メルリナイトなんかは。んだけど、「丸の中」からは出てるでしょう?そんな感じ?」

「あー、成る程!」
「分かる!」

「自分にはそんな事できない、って。思うかもだけど、でもメルリナイトを見てて「おかしい」とかは思わないし羨ましいよね?  えっ、私だけ?そう?? まあそれはいいんだけど、うん。」

 しまった 前提が
 違うんだった。

ペロリと舌を出した私に苦笑する二人、しかし言いたい事は解ったのだろう。

「なるほどね。確かに、そうだわ。」

「実際やるとなると、確かにハードルは高いんだけど。メルリナイト自体がいい人なのは分かるし、慣れればある意味、普通だものね?」

「そうなんだよ。自分で自分を縛ってるだけだから。「できない」って。でも、終えば、ある意味それが 普通になる。 フフフ 」

「ヨルが言うと説得力抜群ね………。」

「どう、致しまして?」

 エヘヘ と 笑った私に
 仕方の無い目を向ける二人

しかし笑顔は晴れやかだ。


「だから、結局。無理矢理じゃなくて、なんだろう、蜜を差し入れして。大丈夫って思って、見守る?あれ、それ結局 同じなのか。」

「うーん。なにか、これって手が。あると良いんだけど。」
「そうね。」

 ふむ。

二人はどうやら、「決定打」が 欲しいみたいだけど。


「あのね、多分。先ず、で。また、変化してくると思うんだ。だから本人には、そうして 後は周りにそれを周知してくれる方が、いいかも。その方がみんなに、いい。」

「?」

キッパリと言い切った私の言葉を反芻する 二人
くるりと回るガリアの青い瞳が。
 キラリと光って なにかに 気付いた。

「ああ、それは、そうだ。」

「確かに。環境を整える、って事だものね?」

「そうそう。」

「確かにそれなら、。安心だものね?」

続いて気が付いたパミール
キラキラとした瞳を向ける二人は、私の意図を解ってくれた様だ。


 そう
  
        

  ことは あり得る

 だって

  みんな 「弱い所」は 持ってるから。


でも それで お互いがお互いを 思いやれて
 みんながみんな「そうだよね」「わかる」って
 安心して 待てたら。

 それだけで 全く 違うんだ 「世界」は。


「そして、それを。定着させていくって、事よね。」

「そうそう、それを当たり前にすればいいのよ。そうすれば誰も困らない。」

「て言うか、そうなれば。誰も引きこもらないんじゃない?」

「「それはある。」」


 その 言葉に深く頷く 私達

みんながみんな 他者を思いやれる余裕が ある訳ではないだろう。

 でも できる人だけでも
 「実行して」「拡げていって」「それが根付けば」。


下ろした視線が留まる 上品な紺で色付けられたカップ 
口を付けていないその紅いお茶は 微細な澱をその縁に飾り
私にまだ「染み付く澱」がある事を 知らせるけれど。

 でも。
 もう 知っているから。


フワリと浮いてきた澱を パチンと弾く。

内側の白を目に映し カップを手に取り澱を消す様に、コクリと一口 飲んで。


  紺 と 白
          表 と 裏

  二つで 一つ
  途切れた 澱。

その 紅い線を見つめながら思うコントラスト

  この どちらの面もあるから また
  「世界は 美しいのだ」と 思えること。


そう
沢山の事を超えて、私達が見たいものとは。


「うん、でも それに。やっぱり、知れば知る程、わかれば解る程。なんか、全部が嫌だし、なんなの、って思うし、でも自分自身も原因そうだし。結局全部が許せなくなったり、するじゃない?」


 知っている想い
 ずっと居たい心地の良い森
 見たくないもの
 しかしそこに ずっと ある もの。

フワリと寄ってきた澱から導き出された色は、二人も覚えのある色なのだろう。
私の問い掛けに、しんみりとした返事が来る。

「うん、解る。」

「でもさ、それならやっぱり「許さなくていい」んだよ。」

「「えっ???」」

「いや、なんか。の。だって結局、それでぐるぐる悶々して、でも結局行き詰まって もしかして最終的には死んじゃったと、しても。結局さ、抜けるには許さなきゃ抜けられなくて。、それに気付くから。無理して許してもモヤモヤしたり、またフワって浮いてくるんだよ。事あるごとに。」

「あー、分かる。」

「だから、それも含めて。超える為に、見守るって言うのかな。人によってその壁の高さは違うけど、越えられない事は無いから。から。 いつかは必ず気付くんだよ、「こんな事してる場合じゃない」って。だって、世界には沢山美しいものがあって、楽しい事もあって、まだまだ私達の知らない物や事が沢山 ある。だからその時が、来たら。「ポン」って、抜けちゃうんだ きっと。」

二人の瞳を交互に見つめて。
しっかりとその青と灰色に「色を足して」、沁み込む様に 一言一言、話す。


ゆっくりと笑顔で頷く二人は きっと私の意図を解っているのだろう。

 フワフワ  フワリ
    キラリと舞う 星屑の 中

 降り注ぐ 微細な光
  それが次第に 二人の体の 上に 落ちて
   染み込んで 。

そうしてそれを それぞれの心の中で確かめながらも、自分の中へ落とし込んでくれているのが わかる。


「なんか。やっぱり。ヨルの案って、誰も置いて行かないのよ。、なの。光の時も思ったけど、仕方が無いとか、しょうがないが、無いの。」

「そうだよね。結局全部が、丸く納まる方向。時間は掛かるかも知れないけど、どうなるのかは分からないけど。それがベストなのは、解るのよ。まあ、長老達はやらないだろうって案ね。だから実際、成功したら凄いしそれを今度は私達がやるのよ。ヨルは多分、できるから言ってるし。」

「そうね。それは私達の仕事だものね。」

「うん。」

お互いを励ます二人を見ていると、自然と笑みが 浮かぶ。

そんな二人を見ていると もう少し話がしたくなってきた。
 これはきっと 光からの サインだろう。


「あのね、なんかね。」

「ん?」
「なぁに?」

「いや、あのね?結局、って、あんまり関係なくて。なの。」

「ふぅん?」

キラリと興味で光った ガリアの瞳
フワリと開いた大きな目はパミールの美しさを際立たせる。

 ふむ

    やはり  「前向きのチカラ」は

  いい。


「あのね、「今の二人」も、なんだけど。なんて言うか、やる気のある時とか光が見えてる時って。「ピッ」て、自分の光が上を向いて立ってるのね?でも、落ち込んでる時とか 悩んでる時って。萎れてるとか、絡まってるとか 下を向いてるとか、なの。」

「ああ。」
「うん、なるほど。」

「だから、別に引きこもってても、次の一手を考えて 光がピッとしてたらいいんだよ。でも、引きこもってなくても普通にしていたとしても。 結局、自分の中が萎れてると いつか無理が来る。だから、それと同じでその人に対して何をしてあげなくても良くて、ある意味みんなが「大丈夫」「万事オッケー」「そんな時もある」って、光を出してると。それは必ず伝わるんだよ。 まあ、見えないんだけど。目には。」

「うん、言ってる事は分かる。ヨルで実証済みだから。まあヨルのはけどね。」

「確かにを、見てなければ。この話を聞いても信じられないだろうけど。」

「そうね………そう考えるとなんだか感慨深いわ。」
「ね。まだ、そんなに経ってないけど。随分昔の事みたいだもの。」

「ね。」


 そう チカラは エネルギーは

  「震え」「伝わるもの」「くうを駆けるもの」は。


  嘘は つかない  偽れないのだ。


 「言葉」では なんとでも言える
 「態度」もどれだけでも愁傷に見せることが
   できるけれど
 「チカラの色」「エネルギー」「振動」
 「魂の 色」だけは。

 どんなに隠そうとしても その「意図」が
 伝わる。


 まだ 「見えない」けれど しかし

 風は 空気は 場の重さは。

 変わり 軽くなり  変容して いるのだ。


 だからそれが 「見えた」 暁には。


「 うん。」
 

「なにか」が 満ちる部屋
 「充満」の空気 。

 それは私達の 光で チカラで エネルギーで
 きっと未来を描ける とてつもなく美しい「なにか」
 「可能性の光」なのだ。


思いを馳せる二人を見ながら私はとりあえず、もっと的確な補足が無いか カケラを舞わせながら 
一方で差し入れのお菓子も 選ぶ。


  ふむ  やはり この食べた事ないやつ

  いやしかし 食べ物に 冒険しないタイプの私には

 いやいや ここで?  やはり?

  新しい 扉を あける べき なのか 。


チラリと「予感」が 過った所でパミールが口を開く。


「て、言うかヨル。本当に女神らしく、なってきたわね?」

「そう、それ思った。正直、「ヨルが女神」?大丈夫なの?って思ってたけど。ああ、そうじゃなくてなんか、ズッコケたりするじゃない?」
「そうね、それは未だに無いとは言えないわね。」

二人の的確なやりとりが 耳に痛い。

「フフフ」

「そう、その余裕もなんだけど。」

「ね、前はさ。やっぱり私たちの先頭に立って、1番熱かったんだけど。」
「そう、燃えてたわよね、あれは。」

「そう? だよね うん。」

 流石に自覚は ある。

「でも、なんか落ち着いたって言うか。こっちも安心して、訊けるし。」
「そう、前だったら「ヨルに迷惑になっちゃうかな」とか。思って、訊けなかったかも。」
「そうそう。」

「成る程、確かに。私も成長したか 。とうとう。」

腕組みをし始めた私を見て、やはり笑い始める二人。

「そう言う所は面白いんだけどね?」
「そうね。でも、型にはまらなくていいのよ。それが、「ヨルという女神」なんだし。」

「そうね。」

「 ありがとう。」

なんか 上手い言葉は出なかったけれど。

二人の想いと、色が ジワリと伝わって きたから。

 それを ゆっくりと 包み込んで
 溶かし 流して また 星屑で撒いて。

 この デヴァイの チカラに なるように。


そう胸の中で思いながら 「冒険の新しいクッキー」をつまみ、美味しさに目を見開いて二人にアピールする。

 そうなの この 新しい あじ
 冒険を しながら 星屑だって 撒いちゃうし
 くるくるカケラも 回るし
   なんなら 二人にも 降り注がせちゃうし ?


色々と忙しい 私の中
 二人は笑ってそれぞれお茶菓子を選んでいる。

その 優しい光景を眺めながら こっそりと全身で。
 
サラサラと溢れ出る まだ「見えない星屑」を
静かに撒いて いたんだ。



 


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...