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8の扉 デヴァイ 再々

逃げと選択 2

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 「部屋から出れない」
 それって あの 所謂 「引きこもり」

 でも 「引きこもりそれ」は。

 駄目 じゃ ないんだよね 。
  
  うん。


 人には 「自分の中に籠る」必要も ある。

 それは私が人一倍、わかっているつもりだ。


 だが しかし。

 そこから「出れない」と なると。

 確かに ちょっと  困るんだよ なぁ ??


フワフワと綿毛の様に舞う 光のカケラ

 少し暗めの灰色の水槽の中
  揺ら揺らと揺れる小さな光が 
   私に優しく微笑んで いる。


 そうね そう なのよ

  いつでも 私達は 「侵さず 侵されぬ」

 場へ 引きこもることは できる


 だけど。

 一旦、そこで 落ち着いたなら
 きちんと「なにが」「問題なのか」「怖いのか」
 それをその部屋から見て。

 隔てて 離れて  別の視点から見て
 きちんとみないと
 わからないんだ。


 でも 多分 その人は
 「引きこもってる」つもり でも
 その「怖いもの」は。

 同じ 部屋の中 
 なんなら まだその人の正面
 ピッタリとその 身体にくっついていて。


 から んだよね。



なにしろ 怖いものそれを 視認しないことには始まらないのだ。

 だって「なに」かも わからないくらい
 混乱しているんだから
 「怖い」のなんて 当然で。


 ただただずっと その状態で辛いのは「自分」だ。

 それを 抜け出したいならば
     止めたいならば
     進みたいならば。

 それ即ち 「離れないといけない」ので ある。


 まあ、でも。

 「それ」が 「なに」かにも、よるだろうけど。


 そう それが「物理的なものなのか」
       「精神的なものなのか」
 それによっても 視点は 違う。


 それが「状況」とかならば、ここデヴァイの
 閉鎖空間で「物理的に離れる」のはキツい。


 それに、きっと「荒れてきている 場」
 渦巻く 暗色
  以前よりずっと 混濁している「世界の エネルギー」。

確かには。

 
  ただ 「居るだけ」でもキツイんだ 
   それも、わかる。


 でも。

「うーん、だからやっぱり「視点」だよね。」

 そもそも「引きこもっている」のだから
 そこが 「部屋の中」なのか 例えば場所を変えて「ラピス」なのかは 
 ある意味 どっちでも同じだろう。

 外から見れば その人は 「外に出ていない」
 「物理的に見えない」なら、そうなのである。


「まあ、助けを求められる人、頼る人がいないって事なんだよな、多分?」

きっと「言い出せない」に 違いないんだ。
自分の中に、すっぽりと嵌りこんで いる所為で。


 だけどそれもまた、「視点」の問題である。

 「自分がどうしたいのか」、それを考えると
 「どうしても出たくない」なら 
   その手段を考えるだろうし
 それを「考えられない」と いう事は。

 それ程までに 閉じている と いう事は。


 そう、そこに「浸かっていたい」のだ。

 本心は。

 「出たくない」んだ 本当に。


 しかし そうなって終えば他人に出番はない。

 だって 本人が いるのだから。

 
 少しでも「出る気」があれば。
  「本当の本当の 本当に」その状況から
    抜け出したいのであれば

   藁をも掴む からだ。




 うーーむ  しかし。 ふむ。


 えっと それで ?


 ああ 「なにか いい手」?


「まあ とりあえず「金の蜜」でも差し入れして。後は、「逃げたい」のか、「選びたい」のか。訊いてみれば、いいんじゃないかな。」

「ん?逃げる?選ぶ?」

「ああ、なんか分かる気はする。」

どうやらいつの間にか浮上していた様だ。

パッチリと、目を開けると。

慣れた様子でお代わりを入れているパミール
お土産のお菓子を広げているガリアが いる。

「うん、それで?もうちょっと説明してよ。」

「あー、うん そうだね?」

私の中でも、まだくるくると回っている綿毛の光
 今日はキラキラしたカケラではなく
 「綿毛」という所が 優しさが感じられて、いい。


自分でそんな事を思いながらも、つらつらと考える「いい解説」

 私の「なかみ」を翻訳する 機能
 できるだけシンプル 且つ わかり易く
 「ことば」にすること
 「愛で 翻訳する」こと

 そう すると ??


フワフワ達が ゆったりのんびりと回るから。
キラキラとした明晰さを表すカケラが飛び出てきて、一緒に回り始めた。


「ふむ?えーと、あのね。多分だけど、閉じこもっている人は逃げてるつもりだけど、逆にその原因と一緒に蜜月を送ってる訳。だから、出れないの。」

「フフッ、可笑しいけど、言ってる事は解る。」
「確かにそうね。」

「だから一旦。その、蜜とかを差し入れして「逃げたい」のか、「選びたい」のか訊くといいと思う。勿論、何から逃げてるのか分からなかったら「出たいか出たくないか」、どちらかでもいいと思うけど。」

真剣な瞳を前に、もう一度自分の中を浚う。

 これで わかるかな?

  これが 「最善の こたえ」 か ?


明晰さを表すカケラの数が増えて、頭の中も煌めいてきた。


「あのね、その「問題」との蜜月を送ってるだけの状態だと、「逃げ」なんだろうけど。でも「逃げる」ことは悪い事でもないし、必要な時もある。でも、それがずっとだと。誰も得をしないよね?まあ損得でも ないんだけど。」

 まあ それは置いておこう。

「で、一旦 その問題と離れたら。結局、それをそこがポイントで。部屋から出るのか出ないのかはある意味問題じゃないんだ。」

「だって、に向き合わなければ。また、部屋に篭っちゃうからね。」

「成る程。」
「確かに。」

「しかも、その「問題」も「問題」じゃなくて、それはただの「道」で。「選択肢」なんだ、それは。」

「ふぅん?」

段々と二人の目がぱっちり 丸くなってくる。

やや 私の説明が抽象的になってきて、頭の中の道が 絡まり始めたに違いない。

しかしとりあえず、説明を進めて行く。


「そこで様になるの、初めて。離れて、見ると。そいつを「超えていく」のか、「無視する」のか。」

「うん。」

「ぶっちゃけ「原因」がなんなのかは、全く関係が無くて ただその二つを選ぶだけなんだ。 だからそのまま引きこもっても、出て失敗しても、色々やってダメでも。「超えていく道」を選べば、それは失敗したとしても「選択」になる。でも、「無視する道」を選んだ時。それ逃げは「壁」になって、また必ずぶち当たるし、なんなら閉じ込められちゃうんだ。」

「!成る程?」

「解った、様な、わからない様な?」

「うーん?ちょっと書こうか。」
「あ、いいね。」
「うん、見えると分かり易いかも。」

私の頭の中は、「ことば」じゃなくて
「抽象画」だ。
しかし 抽象的な部分もあれば 緻密に描かれた精巧な部分も 同居していて「口で説明する」のは、向かないんだ。
多分。


そうして私は長机から一枚の紙を持って来て。

二人の前で 図解を始めた。


紙は 何種類かあったけれど、一番大きなものを選んだ。

 少し考えて 私が「現そう」と思ったものは
 やはり「全体像」その 「中にある」「自分」。

 すっぽりと覆われた 大きな まる

 その円の中には 沢山の色や似た色の塊があって。

 勿論 中には好きな色 嫌いな色
    苦手な色 無意識だけど嫌っている色。

 それぞれみんな、違うけれど その沢山の色が入っている。

おあつらえ向きに用意されていた、色鉛筆をふんだんに使い 沢山の星形を描いて、丸の中を大体埋めていくのだ。


そう
 「好き嫌い」は人によって違うから
 所謂「色とりどり」のカケラがある 状態なのである。


 
「あのね、とりあえずこれが。世界の縮図。」

「流石ね、ヨル。全然解らないわ。」
「何これ?お菓子?」

二人の反応が面白いが、そのまま説明してゆく。

「とりあえずこの円の中にはルールがあって。そのルールに、その上手さを競うゲームみたいなものなの。「枠に嵌まれるほど、優秀ゲーム」だね。言うならば。」

「うん。」

「で、その「原因」がなんであれ、それに人が、出てくる。ルールがあればある程キツイし、それに「なにが苦手なのか」は人によって違うからね。それで、その「原因」が 人なのか物なのか、状況なのか環境なのかとか。それはまあ 置いておくとして、から自分を隔離しているのが 今の状態。」

くるりと真ん中の 赤い星に、丸をつけて。
二人の顔を見て、確認をする。

「なんとなく分かる。」
「うん。そうね。」

「それで、ここからが二択で。そもそも「世界に背を向ける」のか「前を向いて歩く」のか、それだけなんだ。」

「うん。」
「て、いうか。それってどういう事?」

 ですよね うん

私も自分で言ってて そう 思うのだけど。

じっと大きな円を見つめ、その「枠の中」と「外」の違いを思い浮かべる。
だがしかし、いきなり「ルール外」と言っても やはり解り辛いだろう。

 なにか 上手い言い方 が ないものか。

そうして 腕組みをして。

再び くるくるとカケラを舞わせ 考え始めたんだ。





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