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8の扉 デヴァイ 再々
反省会 in森のお風呂
しおりを挟む「 うっ さぶいさぶい。」
我に返った わたし
慌ててバスタオルを身体に巻き付け、シャワー室を出て。
ピョンピョンと飛び跳ねながら、猫足のバスタブへと
飛び込んで 一息。
「うわっ、なによ。もう!」
「へへ、ごめんごめん。」
中々の勢いで飛び散った飛沫は、毛先を濡らすには十分な量で 濡れるのが嫌いな朝は、驚いたのと怒ってるのと半々だろう。
でも なんか 可愛いけど。
プリプリしながら蛇口側の台に飛び乗り、再び毛繕いを始めた。
きっと私が話し出すのを待っているのだろう
が しかし。
いや? 結局 えっと
澱 は 靄 は なんだか
なんとなく だけど わかった し?
朝に 相談したいこと と 言えば ?
ふと、考え込む白いバスタブの中
心地良く注がれている いい湯加減のお湯
細く流れるそれの 丁度良い水音に 私の思考も
つらつらと 取り留めなく流れて いる。
ふむ? しかし
これからの デヴァイ ?
でもな。 私 なんも 手出し しないんだし
んー でも あの 澱は 重さは。
「中々、一筋縄では いかんのだよ 。」
「まあ、そうね。」
なんの事だか 言ってはいないが返ってくる返事
大体言いたい事は解っているのだろう。
ずっと寝ていたと思っていたが、意外とお茶会の会話は聞いていた様である。
そのまま少し、私が考え込んでいるとポツリと漏れた呟きが聞こえてきた。
「でもねぇ。こちらから、こじ開けれる様なものでも、ないしね。」
「 そうだね。」
こちらも、なんとなく 朝の言いたい事がわかる。
多分 それはきっと
「みんなの ハート」のこと
これから進んで行くのに。
必要な 「自分の核」の 部分
「なにがしたいのか」「どうしたいのか」
「そもそも変わりたいのか」
「変化したくないのか」。
凡そ「自分」というものを押さえ込み続けてきた、環境なのだ。
「まあ、そう だよね 。」
直ぐに変わるのは難しい
それは、わかる。
じっと黙り込んでしまった朝
しかし私もくるりと視点が「自分の世界」に変わり
どんな場所で
どんな人に
どう
そう 考えるけれど
しかし どこでも。
やはり、そう変わらない「人間というもの」
「世界という枠」を 楽しんでいる人々。
勿論、その中でも色々な段階の人がいるけれど
ハートの開いていない人は、すぐ わかる。
向こうが周囲を拒絶していて
自ら「閉じて」いるんだ。
この 世界以外でも どこにでもいる「閉じた人」
会話をしていても 「上辺」で滑って行って。
結局 「本当のこと」なんて
殆ど言ってなくて
「こういえば角が立たない」とか
「この場合は こう言うのが常識」とか。
全く以って「ハートの会話」「響き合う話」が できないんだ。
「でも、そんな人がある意味普通で。ここは多分、殆どそう。まあ、本音を言えないのは仕方が無いにしても なんか、「こう言ったら傷付くかな」って言う、優しさから言わないっていうよりも。「自分も指摘されたくないから敢えて言わない」、みたいな。それって、優しさじゃ なくない?」
それで 結局 みんながみんな
我慢し合って。
「結局、いい事なんて。ないと思うんだけど。」
いつの間にか漏れていた心の声に、返事がきちんと 来る。
「まぁね。だけどそもそも、「そういう世界」なのよ。あれね、暗黙の了解ルール。だからそれを打開していくのが難しいんだろうけど、まあリュディアとか。あの子達が良い刺激になればいいけどね。」
「そうだね 。」
そう 一言だけ言って口を噤んでしまった私に、言い聞かせる様に優しく続く声。
「だからそれが、あの子達がこれからやっていく道で、結局搾取されていたけれど搾取しても、いたのよ。現状把握ね、まず自分を可哀想がるのもいいけど、何をして来たのか、それが解らないと。ほら、どちらの面、オセロでも白黒揃わないと一つにならないでしょう?結局それを認めないと、その先には進めないのよ。あんたがよく言う、「全部がまるっとひとつ」よ。」
「確かに、みんな。そう、なんだよね 。」
「生きるって。難しくはないんだけど、これまでの生活や慣習に囚われていたら。それは辛いわよね。スッパリ切り替えられれば、いいんだけど。」
「 うん。」
確かに朝の言う通り「生きる」とは。
単純に考えれば、私がやっていた様な 森での生活
しかしここ基準に考えると。
これまでしていた様な生活、贅沢
与えられるだけ
言われるだけ
用意されているだけ の それはやはり。
「うーん。まあ、でも やるしか、ないんだけど。」
ずっと前にアラルが言っていた言葉が 頭を過る。
「不自由は無いけれど 自由もない
「生きる」って。
どっちがマシとか そういうことなの?」
どんな生活がいいか
どう 暮らしたいか
それは人によって異なるだろうし、そもそも見た事も聞いた事もない生活が、「あること」を。
先ずは 「知ること」から 始めるのかも知れない。
「受け入れられると、 いいんだけど。だからある意味、アラルとか気付いてた人の方がこれからは早いよね。」
受け入れられない
現状、現実を 見つめられない 人ならば。
スタートに 時間がかかる そういう事だ。
「まぁね。こればっかりは………あんたが心配しても仕方が無い事よ。」
「うん。 」
その 言葉に自分の中をくるりと切り替え
パシャリと顔を お湯に浸けた。
お湯の なかの せかいは。
なんだか少し 緩くて 優しくて
私を包み込む 「温かさの充満したせかい」だからだ。
ひとつひとつを 選択していくこと
自分で選ぶこと
心惹かれるものを 選ぶこと
簡単な様でいて 「何をどういった理由で選ぶのか」
それにより 左右される 「世界」
自分が主体となり展開されてゆく「世界」は。
ある意味「自分の鏡」
「そうである から そうなる」
それが「世界の仕組み」だ。
「新しい世界」とは そういうところ
これまで重かった「枠の中の世界」、そこから出るという事は「全て自分の責任で創られる世界」に存在するということ
「何処かで見ている神」が 「自分」である
という事に 他ならない。
「あんたは始めから、そうだったもんね…。」
「 確かにそういうこと なんだよね。でも、これからは。」
キッパリと切り替え顔を上げた私に、頷き返してくれる しっかりとした青。
そう 私達が 暗くなる話じゃないんだ。
これは。
これからの みんなの「自分で創る 世界」の話 だから。
上を向いてあがって行ける 明るい話 なのだから。
そう思って
私もぐっと 上を向いたんだ。
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