透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

みんなとの再会 3

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「でもさ…………。」
「でも、俺達が何を言っても言い訳にしかならないだろう?向こうラピスにとっては。」
「でも何も無かったみたいに、「これからよろしく」って、言えるの?」
「まあ…そうだけどな。」
「シェランの事、なんて言ってた?」
「ああ、何処の家かは訊かれたけど。まあ、あまり良い返事じゃ無いわね。まだまだよ、特にうちは。」
「でもが結婚出来れば大きいわよね?」
「利用するみたいで悪いけど、それはある。」
「だよね。」
「て言うかベオグラードも都合が良いもんね?」
「うっ、ま、まぁな。」
「でもコイツ、未だに誘ってないらしいぜ?」
「ウソ。」
「ホントよ。」
「おい、僕の話はいいんだ。」
「まあ、リュディアの話は二人も協力してよね?私達の未来にも、もしかしたら関係あるし。」
「そうだな。」
「ああ。」

「て言うか。、よね。ある意味「やること」って言うか「生き甲斐」?」
「そうね。何もしない方がいい、って。ずっと言われてきたから。これまでは。」

「私は俄然やる気だけど。」
「まあガリアはね…………。」
「そうね。トリルなんかも困らなそう。」
「そうなんだ。これまである意味叱られてた様な奴の方が。これからはやり易いんだろうな。」
「そうなのよね。」
「えっ、リュディアまじない道具やり放題じゃない?」
「う、うん。とりあえず少しずつ始めるつもり。」
「わあ、なら、いいね。」
「うん、ありがとう。」

「でも何処も。行き詰まってる感は否めないな。」
「そうよね…癒し、何かきっかけ?そう、あの…………」


話が途切れて、ふと視線を戻した。

私はみんなの話を聞きながらも、足元で丸くなり上下している灰色の毛並みをじっと眺めていて。

その 規則正しく上下する、動きとリズム 温かみ
それをこの空間からも 感じ始め
それが伝わったのか どうなのか
 共に 同じリズムでくるくると回り始めたカケラ達 
 ピタリと合う 呼吸と動き。

「やはり 同じ リズムに」
「揃うのか」
「振動」「動き」「ペース」が 「揃うとは」。

 そんな事を 考えていたんだ。



「 ん? えっ  なぁに?」

そこに集まっていた、みんなの視線。

「いや、それは駄目よ。」
「だな。」
「もっと酷くなる、いや良い方になんだけど。なんか、依存?」
「そうね。いつまでもこの光にばかり頼ってちゃ、駄目だって事よ。」
「ああ。」
「そうだな。俺達は俺達の力で、それをなんとかする方法を探すんだ。」
「そうだな。」

「て、言うかヨル。」

「 ん?」

珍しく、真面目な顔をして真っ直ぐに私を見つめたベオグラード
その素直な澄んだ 青い瞳は。

 あの時から なにも変わってはいない。

「お前、「本当のこと」は。見つかったか?」


 ああ そうか 。

その、セリフを聞いて。

ジワリとまた 胸に押し寄せる波
それは涙腺君を押しやる程の強さは無いけれど。

 あの時の 言葉を 憶えていてくれた
 この こぼれ落ちてしまう 世界で 。

その事が とても嬉しくて。

ゆっくりと、頷きながらも自分の中から「こたえ」を探す。

 そう 今のみんなへ 

   今の私から ピッタリな

 「最善 最高の こたえ」を  だ。


「どの角度から見るか」「どの言葉が最善か」
「どの色が 最高に美しいか」
「みんなのチカラに なるのか」。

私が用いる視点はそれで、「こたえ」自体はある意味無限に ある。

その 中から私が見つけた「最善」「最高」の「こたえ」

それは。


「うん。「私の本当のこと」は、見つかったよ。まだ、途中だけど。」

それだけだったんだ。



 聡いみんなはその 私の答えで。

 きっと様々な色を感じ、読み取り自分の中に
 落とし込んでくれるだろう。


「成る程、お前らしいな。解った。僕は僕の答えをまだ見つけていない。それを探すんだ、兄上を手伝いながら。」

「そうだな。俺も。」
「そうね。」
「ええ。」
「ヨルらしいわね。」
「うん。」

フワリと纏まった空気
 優しく流れる風
  小花達から聴こえてくる小さな慶びは
   私の胸をキュッと震わす。


そうしていつの間にか、話は男子と女子に分かれ始め
各々ある意味「よくある話題」を話し合っている様だ。

 男達は 仕事の話
  世界の見方
  これから 方向性 舵取り そんな話

 女達は 考え方から始まり 内から外へ
  どう道を見つけていくか
  自分達ができる 生かせる仕事はなにか
  家族のこと 体のこと 心のこと
  生活全般に関わる 深い話だ。

 しかし その奥に蔓延る
 「世界の前提が崩れるということ」
 「行き詰まり」「ハリボテだった 世界」

神殿から帰ってきて聞かされた銀の話は、パミールやガリアにも伝わっている様だ。

 それを 前にして。

その確固たる方向を定めるのは、流石にまだ
難しい様子のみんな
そもそもの「前提」「枠組み」のない、その 中で。

薄く蔓延る灰色の空気
 忍び寄る澱みの 色。

その、空気の変化に気付いてはいたが
私は手を出す為に帰ってきた訳では ない。

しかし その時に。

まだ 何も始まっていなかった女達の方から、逆に逞しい話が聞こえてきたんだ。


「だからある意味、どこも。同じだって事でしょう?」
「そうね。相入れるかどうかは、分からないけど。」
「もう少しなんか、こう、風向きがね。」
「うん。癒しよね。」

「でも、ね。難しいわよね癒しって。」

「ヨルの癒し石、よく効くわよね。」
「あれ、みんな持ってるわ。」
「あれを真似して、癒しの仕事もできないかって。」
「成る程、それは必要よね。」
「レナの店もいいしね。でも、許可が出ない家もあるし。」

「そうよね。」
「そもそも出掛けられない人も、いる。」
「そうね。意外とまだ外はハードルが高いかも。」
「ラピスにはそういうの、無いの?」
「どうなんだろう?」

「何か新しいもの、って言っても。とりあえず出られないと、見れないと難しい部分はあるわよね。」
「うん。」
「でもそれが楽しみでも、あるわ。」
「確かに。」
「癒しかぁ。」
「そうね。先ずは歩き出す所からだもの。」

そうして一旦 静かになったテーブル
くるりと再び私に集まる女子の視線。

それに頷いて、私も口を開く。

「うーん、森があるし。泉が、あるの。癒しの。」

「えー、あれでしょう?ヨルが創った中庭の「本物」。」
「ふふっ、そうだね?」

「えー、いいなぁ。」
「でも、こっちには蜜があるし。」
「確かに。」
「成る程。あれは幸せになる。」
「でもさ、それもあれも。みんな結局、ヨルじゃない。」

「「「確かに。」」」

「癒しって。でも難しいわよね。」
「うん、そう思う。まだみんな、自分でいっぱいいっぱいだし。」
「それもある。余裕がある人にも限界があるしね?」
「うん、それに。他人に言えない事って、ない?」
「「ある。」」

「「あるよね。」」「「うん。」」

くるりと。

再び 戻ってきた三人の視線
それを受けて私は。

 なんと 言っていいものか 。

少しの間 考えあぐねて いたんだ。



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