透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

友人

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 ん? あれ ?

ポン、と軽やかに踏み出した一歩
 
その時
 フワリ 背後から私を追いかけてきた光

 優しく頭上に掛かった 白いヴェール。


「あ、ごめん朝。ちょっと先に行ってて?」

「えっ、なに?大丈夫?」
「うん、忘れ物しただけだから。」

「あらそう?」

大きな茶の扉に手を掛けた瞬間、私を呼ぶ様に光が何かを知らせて来たのが わかった。


その 白く垂れ下がる様な光がシャラリと
 目の前に 掛かった時に。

 フワリと浮かんだ イメージ

 届けられた カケラは「銀色の封筒」「緑の瞳」。


 そう 言えば?

食堂へ向かう朝へ手を振り、青の通路を戻って魔女部屋へと足早に向かう。
そう長い距離ではない。


 けれども でも  そう いえば
 見ていないんだ あの 優しい色 あの 瞳。

いきなり浮かんできた懐かしい色に、一抹の不安を感じながら扉の前に立つ。

そうして少し、ドキドキしながらもゆっくりと
繊細な蔦に装飾が変化しているそれに気付きながらもノブを掴んで 押した。

 後で ゆっくり見せてもらうからね
 待っててね 。

「 ん 」

一直線にいつもの見慣れた角へ視線を飛ばし、部屋全体もぐるりと確認する。
そして「やっぱりフォーレストがいない」と いう事に。
今更ながら 気が付いたんだ。


 えっ なんで

  大丈夫?  なんで いないの ?

フワリと被さる「心配」「寂しさ」の色
しかし混乱まで行く前に頭の中には「捜索」のカケラがくるくると回り始める。


  でも そうか

  いると すれば。

 あの子が「いたい」と 思うならば。

 「ディーのところ」それ即ち 私のところだけれど
 森へ行ってしまったから。


腕を上げ、キラリと光る 指輪を目に映して。


「それならきっと、姫様の所に いるよね 。」

自分を安心させる様に 呟く。
ディーもセフィラも、私の指輪の中だ。

 どう なっているのかは 分からないけど 。

しかしきっと あの二人は親子だから。
この指輪の中で 仲良く「共存」しているのだろう。

 でも きっとディーは 私の中にも いて
 でも結局セフィラも ??

くるくると廻る、共通した色の光
それは私達の色を示す「多色の白」、「透明な何色をも含む」欲張りな色でも ある。


 前にも思ったけど でもな なんせ
 「血が繋がってる」から まあ そもそも
 カケラは共存 共通しても いて ??

 でも 「物理的な」話じゃ ないんだ
 だからきっと。

そう 「私が そう 思えば」。


「うん、とりあえずはそういう事で。繋がってるのは、間違いないんだし。」

自分の中で区切りをつけ、目を瞑り
ブワリと感覚を拡げ、黒の中へ 光を通す。


 デヴァイ       黒の廊下

    茶の廊下   礼拝堂

  姫様      シンラ

     腕輪       人形神


      「護りの 二人」。


その、色を感覚で探り 遠くではあるが「存在」の粒子が感じられると、その色を思いながらもそっと 目を開ける。

なにしろあの二人のカケラがあるのはもう、デヴァイここでは姫様の側
セフィラの作った服や、腕輪
そもそも人形に込められた 色だけなのだ。


「ごめん 。じゃないけど ごめん。」

そこまで想像が及ぶと共に、ジワリと溢れた涙

でもきっと。

 フォーレストが 寂しがっていないのは
 わかる。

 なんでかは わかんないけど
 多分 は 本当に「雲」だから。


ジワリ 沁み込んでくる 馴染んだ「姫様色」
その側にある、ふわふわとした雲の感覚と 美しく透けた白と青緑の粒子。


今、思えば。

やはりディディエライトも相当特別で、自然というかスピリットに好かれる質だったのだろう。


その時は きっと
 今よりは まだもっと「重い」「せかい」の成分
 それでもいつでも共にあってくれた「せかい」
 きっと話し掛け合っていた「両者」
 でもまだ緩りと流れる「風」は重く
 それが直接 繋がり合うことは なくて。


 だけどもずっと 窓から眺めていた灰色の空
 いつもそこにある 塗り込められた灰色の世界
 
 ずっとずっと 同じ 灰色の雲の中に。

  時折流れる 淡い 青緑の雲
  それはきっと ひとかけらの星屑で
  流れて来ていた「せかい」からの 光で。


  いつも自分に話し掛けてくる 寂しげな少女に。

 きっと 応えてくれた自然

   空   風   空気と 水

  この「せかい」に蔓延る「見えないなにか」。


きっと ディーが 潰れてしまわない様に
私まで 光を繋げられる 様に。

 手を貸してくれたのだろう 優しい「せかい」が。


目に 浮かぶは小さな白い少女
ただ「なにか」を思って見つめる 窓の外

 まだ「大粒」な「世界の粒子」
  「準備の整っていない」「いつかの私ディディエライト

  
  「時代」   「時」   
              「重み」

    「風の無い」

           「世界」

   「まだ」


 「その時」が 来ていない 世界の流れの 中で。


しかし確実に繋がり合っていたそれは 途切れる事なく今 「最終地点」の私に受け継がれて いるんだ。


「えっ なにそれ。 どう しようか。」

 
 私達は 護られていた

  ずっとずっと  「せかい」に

  どの 「」も 。


  見守られて ここまで来たんだ。


そこまで思いが行き着くと、とてつもなくあの緑の瞳に会いたくなってきた。

が、しかし
今日はこれからお茶会の予定である。

「 うん。でも、会うならゆっくり 会いたいしな。」

「なに、どうした。あの羊の事だろう?」


 あっ

「えっ?どこ 行ってたの???」

いきなり背後から声を掛けてきたのは、久しぶりの極彩色である。

この、大分派手な色が 私の中の空白に色を差して
 パッと切り替わった 私の中身
 事態が動き始める 予感。

そう、無意識のうちにその切り替わりを感じながらも遠慮なく 開く口は。
やはり少し、安堵した私の心の内を表している様でもある。


「えっ てか。来てたの?」

「なんだ、来ちゃいけない様な口ぶりだな?」

「いや、そうじゃないけど。ベイルートさんしか、一緒じゃないと思ってたから。えっ てかシリーは大丈夫?向こうは??」

矢継ぎ早に質問する、私を手で制し
フワリと髪を靡かせ首を振る 大きな男。

 てか。 人型 久しぶりに見たかも。

変わらぬ鮮やかな髪を眺めながら、そんな事を思う。


「シリーはそもそもザフラがいるから心配いらない。街も落ち着いてるし、俺もこっちの方が。いいかと、思ってな?羊には先に伝えておいてやる。しかし、お前が来てるなら知ってる筈だろうな。」

「 確かに。それはあるかも。」

なんとなくだけど。

私の中のディーとフォーレストは繋がっているのだ。
それならデヴァイここへ来た時点で、きっと気が付いてはいるのだろう。


「えー、なんか。神域にいるからかな?でも、別に心配はないよね?」

「それはな。害される様なでも、ないだろう。」

 まあ そうだよね うん。


少し、他のスピリットとは違う フォーレスト
しかしこの狐とずっと黒の廊下を歩いていた時も。

特に問題は無かったし なんなら調度品達と仲が良くて、馴染んでもいて。

「ふむ?もしか したら ??」

私の撒いていた星屑の名残が あるのかも知れない。

「あー、それに。光も、繋いで行ったしね?」

「そうだな。それなら人形の側でお前の光の網を感じられる方が、居心地は良いんだろう。」

「なら、いいの。」

千里もそう言うのなら、安心だ。

しかし、この色が現れた事によって 色々な事が早まりそうな予感にフルフルと首を振った。

 いかん、その予感は 要らない予感。

 私は 自分の周りを ゆっくりとまわって
 確かめながら 進みたい のよ そうなの

  うん 。


「なんだ、壁は高い程燃えるんじゃなかったか?」

「ちょ、 止めてよ。ホントに。いいもん、もう行くから。」


 危ない この色は 危険よ。
 それに 私食堂に行く途中だったんだし ?

そう思い出したは良いが、きっともう朝食時間は過ぎて少し中途半端な時間の筈だ。

 それなら ホールか 私の部屋か
 とりあえずここから脱出する べし。


そうしてぐるりと銀色を探し、キラリと私を呼ぶ封筒を見付けると。

パッと、机の上に置いたままだった それを手に取りキュッと胸に抱える。

「じゃあ ね?」

そうして背後にニヤついた視線を感じながらも。
振り向かぬまま、魔女部屋を後にしたので ある。
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