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8の扉 デヴァイ 再々
お茶会の前に
しおりを挟む結局 中途半端に余った時間は、自分の部屋のクローゼット探検に費やしてきた。
一度 しっかり見ておこうと思ったのと。
今日の出立を どうしようか
それをまだ決めていなかったからだ。
「今日は サラダと。うーん、なんか果物 あるかな?」
「それならこれですね。」
「えっ、これは 。」
「はい。最近流通の種類も少し、増えたのですよ。」
そう言ってマシロが差し出したのは、ラピスでよく見る果物 レモンの様なアレだ。
「 名前、なんだっけ?」
この頃 大分記憶が怪しい。
神域 無限 宇宙空間
ラピスにデヴァイ 自分の「なかみ」。
ポンポンと、自由自在に跳ぶその「想像のなかみ」
時間や場所など凡そ 関係の無い生活をして
ここ暫く。
うーん もしかしたら
名前とかは かなり。
怪しいかも 知れない うん。
お茶会へ来るであろう面々の顔と名前を思い浮かべつつも、ギリギリみんな思い出せそうでホッと胸を撫で下ろす。
試しにぐるりと灰色の神殿を展開し、道行くローブの様子を思い浮かべてみるけれど。
仲の良かったセイアならまだしも、ネイアになると顔は浮かべど名が怪しい。
ま とりあえず。
今回は 大丈夫だし うん。
マシロが盛り付け直してくれたそれを受け取り、イストリアが来たら質問してみようと とりあえずのんびり食べ始める事にした。
そう結局 朝食はスルーしてお茶会前の軽い腹拵えにと やって来た食堂
ここ、フェアバンクスの場では昼食時間はみんな まちまちだ。
イストリアは来るだろうが、本部長なんかはきっと小部屋でパンでも齧っている可能性が 高い。
「フフ 」
この頃の私はチャージもされているからか、以前の様にしっかり食事をとる事は稀だ。
しかし森へ移動してから「生命のフレッシュさ」を感じたい思いが高まって
見るもの
吸う空気
食べるもの
飲むもの
浸かるもの
触れるすべて
感じる 全てを 微細な粒子まで
「しっかり味わい 取り込みたい願望」が 発生していて。
それを実行すべく、ゆっくりと瑞々しい色、香り、味を観察し 確かめながら、食べる。
新しい畑 新しい土
子供達のまじない 大人達の軽くなった色
変わらず瑞々しいけれど パワーアップした
イストリアの畑のハーブ。
その「感じる色」に 思いを馳せながら有り難みと共に、噛み締めて。
「 うん。なんか。 詳細を取り込みたい、のよね。それに「食べるため」に育てている野菜だったら、それはやはり食べるのが最善。」
そう、怪しげに呟きながらもモシャモシャと青い葉をウサギの様に食んでいると 朝とイストリアがやって来た。
「あんた、もうちょっと今日はお淑やかに行きなさいよね?」
「ぇえ?そう? 」 普通 じゃない?
「女神は貪らないのよ。」
私の無言の目線に、そう返事が来る。
「えっ、グフっ。」
「ハハッ、とりあえずお茶だ。」
「仕方無いわねぇ。」
なんだか色々ツッコミたい所はあるが、とりあえずお茶を飲んで 一息吐いた。
「えっ、でも。私 今日女神として、行くわけじゃないよね??」
チラリ チラリと青と薄茶を交互に、確認して。
二人の色を窺うが、安心の答えが返って きた。
「ああ、友人としてで、いいんじゃないか?それに、君の姿を見ても誰も驚かないだろう。ラピスでも仲の良い人達には大丈夫だったのだろう?」
「 確かに。そうですね?」
前以て、アリスに会った時の様に染めてもらっては ある。
そう 「同じ様にして」って 言ったら
なんか
ピッカピカ だったから ちょっと焦ったけど
うん。
起きた時はピッカピカだったのだ。
でも、神域の鏡を出し 「どうしようか」思案していると、段々と色が薄くなって同じ様な薄い青になった。
いや 「薄くなった」と言うよりは
「発光が 収まった」が 近いか。
「ふぅん。とりあえず、今日は私も行くわ。」
「えっ、ありがとう!なんで?嬉しいけど。」
「まあ、なんとなくだけど。それにほら、私もみんなの顔ぐらい見たいしね。」
「あー、それはあるかも。」
確かに朝も みんなとずっと一緒に旅をして来たんだ。
まあ ベオ様とかに会いたいかは 分かんないけど
リュディアとか 女子会したしなぁ
「フフフ」
「怪しいわね。で、今回は?私達だけって訳には、いくのかしら?」
「そうだね。でも彼が帰って来てたから。一緒に行くといいんじゃないかな?」
「ああ、確かに。」
だからか。
フラリと現れた極彩色
それはやはり色々な全てを見越しての行動なのだろう。
それになんか 金色連れて歩くのは
なんか うん。
てか ブラッドも いるのかな?
でもベオ様いるなら いるのか ??な?
新しい婚約者がいるのなら、見てみたい気も する。
そう 思うと「ポン」と出て来て
くるくると無邪気に回る 好奇心のカケラ
悪戯な色をキラリと光らせ
楽しそうに回るそれ自体に 悪気は全く 無い。
しかしわざわざ話を出すのも失礼だし、やめておいた方がいいだろう。
私の立場で 突っ込んでいい話ではないのだ。
くるりと視点を切り替え、「まあ 突然会ったとしてもそんな気まずいとかじゃ ないな?」と気持ちを切り替える。
そう 角度の増えた私は
「状況を外側から見る」ことに慣れてきていて。
ブラッドの状況 デヴァイの柵
それぞれのこれから
それぞれの 道。
それを多角的に見て、きっと偶然出会ったとしてもニッコリと 挨拶できるのだけど。
しかし 相手は気不味いだろう。
「ま、なにしろ会わないなら会わないが、無難。」
「それがいいだろうな。」
「あっ。」
そこに、タイミングよく狐が現れて ポンと人型になった。
「えっ、そっちで行くの?」
「その方がいいだろう。以前もこの姿で行ってるしな。この方が目立たないだろう。」
えっ そんな鮮やかな 髪しといて ??
ホントに ?
自信タップリにそう言う千里
しかしこの狐がそう言うのならば 大丈夫なんだろう。
首を傾げ、極彩色の周りを回り始めた私に向かって、逆にツッコミを入れるのは朝である。
「で?他人の事はいいんだけど。自分の服はどうするの?それで行くの?」
「うーん。イストリアさん、どう思います?」
「そうだねぇ。そのままの方が、逆に浮かないかも知れないね。」
「やっぱり ですよね?」
手を広げ、裾を摘んで見せる いつもの格好
私は今 シンプルなワンピースに羽衣の ある意味「薄着状態」である。
そう ここの「銀の娘」に とっては。
しかしきっと、イストリアが言うのは
今この外見で 以前のドレスを着ても逆に浮くという事だろう。
私もそれは そう 思うんだ
多分あれは もう 。
「今の私」には 馴染まないだろうから。
以前創ったあれを今の私に当て嵌め、想像してみても
どうしてもズレが生じるのだ。
多分 なんか ちぐはぐ感が凄い 筈。
お化粧なんかはしていないけれど、所謂「テイスト違い」、「ジャンル違い」そんな感じになりそうな差異
しかしそれは「密度」や「濃度」、の違いであって
ただ「区分が違う」というよりも。
もっと 致命的な なにか
「クレヨン」から 「水彩画」へ
そんな感じの違い
星屑の 粒子の 細かさ 繊細さの違いなので ある。
「あれはあれで。 素敵なんだけど ね。」
そっとクローゼットに入っている服達に胸の中でお礼を言い、今度シリーに持って行こうかと画策したが 森にあれは不要だろう。
まあ とりあえずあれらにも
適当な行き先が 見つかるだろう
その時に なれば。
そう考えて、軽い昼食を終える。
今日はきっとお茶会でお菓子程度は出る筈だ。
「よし、お菓子分のお腹は空けといたから。」
「てか。」
「女神の言うセリフですかね」
そんなツッコミが顔に書いてあるけれど、とりあえずスルーしておこう。
うん。
「じゃあ支度出来たら、ホールでね。」
「うん、分かった。」
そう言って、一旦身支度を整え直す為
自分の部屋へ戻ったんだ。
「てか、今度森のお風呂も入ってみないとなぁ。」
ふと「浄め」について思い浮かんで「やりたい事リスト」に加えておく 「森のお風呂」
やりたい事リストは意外と多くて
「姫様とシンラのところ」「フォーレスト」
「みんなの色を見てみる」
「デヴァイの探検」「光のチェック」
「今の視点から見ての デヴァイとは」
「森のお風呂はどうなってるか」
「金の蜜を創る」
「フリジアに会いたい」
今の所 そんな感じで ある。
きっともっと 細かく言えばあるのだけれど
あまり詳細に首を突っ込まない方が いい。
それが分かっている私は、くるりと自分の方向性を切り替えて。
キビキビと 青のホールへ向かっていた。
これから行くのは ある意味「外」
私の区画以外 本当の意味での「外」だ。
ここのところずっと、森か 神域 フェアバンクスだったから。
ある意味 ここからが 本番。
大きな木の扉を潜り、頭上の青を目に映して
辺りを舞うスピリット達の鮮やかさに元気を 貰う。
そう
あまり 考えていなかったけど
アリスはここに 来たけれど
本当は。
「外に出る」ということは こういう事なんだ。
そう思い至り、やや身構えた私の色が分かったのか。
振り向いた鮮やかな髪がこう一言 言った。
「あまり、構えるな。お前がやる事は棲み分けで、選択だ。嫌なものも見えるだろうが、それは世界に存在するもの ただそれだけだ。」
「 うん。」
深い紫を映す瞳は私の心の中などお見通しなのだろう。
「じゃあ、行きましょうか。」
「うん。では行ってきます。」
「ああ、楽しんでおいで?」
「はい。」
笑顔のイストリアに見送られる事で、なんだか一瞬沈んだ心がまた 浮き上がる。
私って やっぱり単純
でも まあ それが良いところだって
朝も 言ってたし。
それに。
再び姿を見せない彼は、何処へ行っているのだろうか。
キョロキョロとホールを見渡すが、やはりあの色の気配は無い。
きっとこの色がいる所為もあるのだろうけど、なんだか「誰かと会う時」不在の彼。
「なんだ、俺だけじゃ不服か?」
「えっ いや うん ううん?」
私のおかしな返事に一笑いすると、既に通路へ向かっている朝を追う様に くるりと背を向けた鮮やかな 髪。
無言で手を振る薄茶の瞳をもう一度だけ確認して、私も急いで後を追った。
うん 大丈夫 。
とりあえずは 見てみないと
やってみないと 始まらないんだ。
なにしろ立ち止まって 終えば。
きっと出辛くなるし みんなにも会いたい。
そう とりあえず今日 知らない人はいないし
大丈夫よ
そう、自分に言い聞かせて。
とりあえず久方ぶりの黒の廊下へ、勢いで足を踏み出したんだ。
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