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8の扉 デヴァイ 再々
お誘い
しおりを挟む以前よりも 明るく見える灰色の瞳は
何を映すだろうか。
この世界
以前話した 男女の差のこと
変化している 世界
他の扉のこと グロッシュラーの存在
畑のこと 外に出るということ。
じっと、その灰色を見つめていると。
確かに以前は無かった色が含まれているのは、分かる。
この人が 何処からどこまで なにを どう
考えるタイプなのか
長老達とはどうか この世界をブラッドと。
率いて行くスタンスは どう あるのか。
色々と気になる所はあるけれど、それは私の関与する所では ない。
他人は 他人 私は 自分のことを
頭の隅でいつも点滅する その光
それを心の中で頷きながら、自分が今 するべき事に頭を戻した。
"こんがらがった 私の言葉"
そう 私にとって、「私のせかい」と「世界」は違って
「内と外」であるが、この人にとってはきっと「世界は世界」である。
何と説明したらいいのか、少し迷ったけれど。
きっとそれは 「説明」しなくていいこと
彼の「その時」が来れば わかること
私は 再び「新しい目」で世界を見る為に
戻ってきた、それでいいんだ。
そう視点を切り替えて、気になっていた質問も繰り出していく。
もし、訊かれたら答えればいいんだ。
上手く答えられるかとか、解ってくれるかどうかは
わからないけど。
「あの?それで、貴方はなにを しに来たんですか ?」
「まさかブラッドの事だけわざわざ伝えに来てくれたんですか?」と。
訊くのはなんだか失礼だろうか、と言葉を切ったが些かこれも 失礼かも知れない。
ま、いっか。
とりあえず「女神」の私に 「身分どうこう」は
必要ないのよ うん。
しれっと自分で自分に、言い訳をして。
とりあえずそのまま、澄まして座っておいた。
けれども彼の口から出てきた理由は、意外にも私の色を 一段明るくするものだったのである。
「いや、今銀にはベオグラードも帰って来ている。君さえ良ければ、だが。茶会でもどうかと、思ってな。」
「えっ!ベオ様が ?」
ピョン、と思わず飛び上がった自分を早々に諦め、そのまま前のめりで話を 聞く。
「ああ。ランペトゥーザと一旦、帰ってきている。それと、リュディアと。後もう一人、連れて行きたいと言っていた奴がいたが、許可を出さなかった。君も友人だろうから、会いたいのではないかと。ブラッドは言っていたけどな。」
ん??
なんだか話がこんがらがってきた。
「えっ、とりあえずベオグラードとランペトゥーザが?帰ってて、リュディア?て、事はシェラン?お兄さんは まあ、ベオ様から聞いてるのか。」
話しながらも自分の頭の中がくるくると纏まり、結局質問せずに解決した所で。
面白いものを見る目の彼は、しかし微妙な色も含んで
私に銀の封筒を差し出したんだ。
「みんな、待っている。」
「えっ、あっ はい。」
それだけ言って、席を立つと。
チラリと奥の小部屋に目をやって、「では。」とイストリアに言い サラリと部屋を出て行った。
「えっ なんか、私。もっと、なんかあるのかと思ったんですけど。あれで、納得してくれたんですかね? てか、別に何かやらかした訳じゃない か。」
「まあ、そうではあるけどそうでもないね?」
再びクスクスと笑いながら、奥から熱いお湯を持ってきてくれたイストリア。
本部長はまだ小部屋にいる様だ。
きっと私がいるうちは、出てこないつもりなんだろう。
なんとなく お母さんといる所
見られたくないとか いや そんなアレ
持ち合わせてないかもな ?
失礼な想像を繰り広げている間に、お代わりが入り いつものリラックスタイムが始まる。
そのまま、勧められた新しい茶葉のハーブティーを 一口飲んで。
「 うーん。美味しい。てか、なんか。結局、実験にはあんまりならなかったんですけど。ある意味新しい収穫は、あったかも?いや、またはっきり見える様になった だけなのかな ??」
「フフ、それはさっきの事だろう。」
そう言って、ニヤリと笑うイストリア。
「君のその視点と言うか、視界の広さはこちらの女性にはそう、無いものだ。君は回収できる伏線の幅が広く、しかも応用が上手いんだろう。思わぬ所を繋げるからね。私ですら時折飛ばして聞く事もあるからなあ。初めてあれに出会ったならば、確かに。君のことはおかしな子だと思うかも知れないね?」
「 ぅっ いや まあ そうですね。」
確かにこれまでも、そうだったかも知れない。
「おかしな子」扱いされた場面を数えれば、それなりに片手じゃ足りない自覚は あるのだ。
いや でもしかし
きっと 私の「せかい」自体も 拡がって。
イストリアの「伏線の範囲が広い」、その言葉の意味が よく分かる。
ここに来て 「繋がる点の 多いこと」
「始めから張り巡らされていた」「私の光」
「生きて 自分の足で歩いていたからこそ
回収されてゆく 点」。
そう これまでは「散らかっていた」だけの話が
展開する
盤が増え
空間が拡がり
光の道が 繋がり
カケラも 色も 形の種類も増えて。
「世界が一つ」の人からすれば、その把握できない「せかい」「盤」の部分はきっと頭に入ってはこないだろう。
無かったことにされるのか
分からないけど 訊かずにとばすか
解るまで 聞くのか
ただ「おかしな子」として 処理されるのか
それはそれで。
それも、相手の選択なのだろう。
「うーむ。そう、考えてみると やはり不思議。」
きっと、こんな風に 世界は色んな角度からヒントを投げて寄越していて
それを受け取るのか、受け取らないのかは やはり個々が選択しているのだ。
今の場合は 私が「投げ手」で アリスは「受け手」で。
たまたま「未知の色」を投げた 私
それを どう処理するのか 立ち止まった彼
無意識か 意識的にか それもその都度
違うのだろうけど
やはり 瞬間瞬間 選択肢は提示されているということ
噛み合うのか 噛み合わないのか
タイミングと 時の運
その人の使う「基盤の性質」「信念」
沢山の要素が絡み合って「反応」が 起こるのか
起こらないのか きっとそれも楽しい「世界」。
「ふーむ。なにしろ、面白くなってきましたね?」
「まあ、君が出掛けたくなったのなら何よりだよ。気を付けて行っておいで?」
「はい。」
そうして勢いよく、返事をして。
山吹色の、新しいお茶が何の葉なのか
鼻をヒクヒクさせながら、一仕事やり遂げた感で いっぱいの私は。
新しく 楽しそうに展開するカケラ達を眺めながら
のんびりティータイムを楽しむことに したのである。
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