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8の扉 デヴァイ 再々
せかいを読み取る 能力
しおりを挟む思い返してみれば、確かに「何故知っているのか」そんな出来事は 私に多い。
兄妹で 映画を見ている時
大人達と 話している時
年齢にそぐわない 本を読んでいたりする時。
「どうして今 こうなったの?」
「なんで?」 そう訊かれる事は 多かったんだ。
小さな 頃から。
そっと冷たくなっているカップを置き、できるだけ物音を立てない様 気を付けていたつもりだけど。
流石にカチリと 茶器の音は鳴る。
て いうか
やっぱり ?
目の前の「沈黙攻防戦」を眺めながら、最終的に私が辿り着いたカケラは アリススプリングスの「何故解ったんだ?」という質問だった。
あそこから止まった空気
謎の沈黙
本部長の微妙な顔
イストリアのいつもの余裕の表情プラス
面白がっている 感じからして。
きっと、アリスは質問の答え「彼の婚約者」が何故解ったのか、それが疑問なんだろう。
なんとなくだけど 多分 そうだ。
けれどもそれは、私にとっては何ら 不思議な事など無くて。
アラルはこの人の元婚約者だし
そもそもこの二人が結婚すればいいと思ってたし
彼女も向こうで頑張ってると イストリアから
聞いていたし
頑張るって 私達 約束もしたし
なんなら 青の少女としてもう、定着してるならば
この人の婚約者に戻るのも 納得できるし
て 言うか
さっき この人が「出した色」が。
そう、私の見覚えのある色 だったんだ。
何というか、「アラルの色」そのものではないのだけれど
「私の知っている人だとこの人が思っている 色」
そう 「きっと話すとこいつが喜ぶだろうな」って。
この人が 感じていて
なんなら微妙に 悔しく感じてもいて
でも結局 元鞘に戻って自分も安心していて
それで私が 「アラルだ」って言われて
「ああ 良かった」って。
思うところまで、想像できるんだ。
私の中で。
そう、頭の中で「そこまでの展開」が 繰り広げられているのだ。
あの 一瞬で。
だから私はニヤつきそうだったし、なんなら安心してグダっとしてしまいそうだった。
が しかし、いきなりの疑問色、固くなった雰囲気。
てか。 なんで。
だって それって 普通のことじゃ
ないの ???
くるくると回っていたカケラ達が落ち着き始め、頭の中身がポンと無限へ弾き出された から。
とりあえず、顔を上げみんなの様子を確認してみる事にした。
「 ん?」
あ あれ ??
しかし、「沈黙攻防戦」はどうやら既に終わっていた様である。
イストリアは「終わったかい?」と言って私にクッキーを勧めてくるし
本部長達は何やら二人、隣り合ったソファーで。
ああだ こうだ
なんやかんや、私についての悪口を 言っている様に
見えるのだ。
「えっ、なんか あれ。私の悪口、言ってません?」
まあ それは主に 本部長 ですけども ??
「いやいや、「悪口」じゃあ、ないよ。流石に。」
クスクスと笑いながらそう言う イストリア
しかし聴こえてくる声は「おかしい」「いつも」「大概跳んでる」とか。
凡そ「悪口じゃない」とは思えないものでも、ある。
「まあ。なんか 悪気が無いのは、分かります。」
「そうだね。ハハッ、私達は慣れているが。そもそも、君は見た目と中身の乖離が凄い。それで行動範囲も広く、細かな所に気が付くから。それが彼には謎に見えるのだろうね。」
「なるほど?」
確かに、その話は。
つい最近、私も自分で気が付いた部分
「人は皆 外見だけでは分からない」、ある意味当たり前の事ではあるが私の場合は乖離が酷すぎて。
「ふむ、でも そこまで ??おかしな、事なのか。いやいや?」
「まあ、君の世界ではどうか、分からないけど。こちらでは「おかしなこと」では、あるよ。」
「えっ 」
笑いながらそう言う、薄茶の瞳にも 悪気は無い。
ふむ。
あれ ? それで?
「えっ、でも結局。あの人、何しに来たんですかね?ブラッドの話??私を見に来たのかな?あ、それとも実験の 」
「実験とは、なんだ?」
「ムグッ 」
しまった。
流石の私も銀の当主に「実験材料」だと。
言うのはなんだか 憚られる。
まあ でも。
いいか な ??今更 。
チラリと隣の眼鏡に視線をずらしたが、多分微塵も気にしちゃいない。
なら いっか。
それなら、それで。
本格的に「見てみる」のも いいかも??
そう思って、とりあえず。
じっと 明るくなった灰色の瞳を再び 観察しながら。
どう 言ったものか
考えながらも 実験を続行する事にしたんだ。
薄茶が金色に見える 緩い髪
きっとあれは 金髪ではなくて 茶色
でも この位の灯りで この感じならば
外に出ればさぞかし うむ
アラルは どこが好きなんだろうな
でも「昔は優しかった」とか なんとか
言ってた気がしなくも ない ?
うーん でも
前は 「女がどうこう」、利用するとか
なんか あんまりやっぱりいいイメージは
ないんだけど でも
ふむ?
しかし。 やはり 変わった のか
色的には なんら 「濁り」は
「ない」とは言えないけど随分すっきりしては
いる な ???
仕立ての良い、黒に近い灰色のジャケット
この世界でよく見るスタンドカラーのシャツ。
その、糸の滑らかさと生地の 目立たないが上質な光沢、見るからに良い職人が作っていそうな生地と縫製、よく見ないと分からない、薄い水色。
いかん。
私は「外見」を観察しに来た訳では、ないのだよ
でもついつい「良い仕事」を見付けると
やっぱり ねぇ
ま それはいいとして。
「コホン。」
なんとなく誤魔化して、自分を切り替え咳払いをする。
しかし時間的にはそう経っていない筈だ。
ある意味「得意分野」の脳内妄想、それは幼い頃から基本的に 常に繰り広げられているから。
そう きっと 一分くらいしか
経ってない筈よ うん。
ふむ。
えっと? それで なにを?
ああ エネルギーを見る んだっけ ?
ん? 嫌な色を 「気にしない」 いや
「スルーする」? なんか違う
「 えっ なんだっけ? な? ああ!」
合点が入って、ポンと手を打ち鳴らした。
そう 「それはそれで アリ」
そう 「在ることを 赦す」んだ。
そうだ そうだった。
「む?それで?結局、君が私の頭の中を覗ける訳ではないのは、解ったが。何をそう、見る。」
「あ。」
すっかり自分の世界に入っていた私は、その声で 我に返って。
「すみません。」
いかん。
とりあえず、謝ってはみたものの 結局「なんて言おうか」考えて いた。
え~
どう しよっか な ?
いやしかし、私に回りくどい事は向いていない。
チラリと確認した薄茶の瞳はいつもの様に「君のいい様に」と 言っているし
白衣に至っては既に姿が見えない。
ふむ? ならば ?
とりあえず、自分の疑問も含めて。
言いたい事を 言ってみることに、したのである。
「えっと、あの。私がここへ戻った理由は、薬を創る理由も、あるんですけど。とりあえず、一旦外へ出て自分の立ち位置を 改めて確認できて。そこから見た、これからの行く先が、ここ?ん?自分の外?世界?? まあ、とりあえずそれはいいとして、新しい目で全部を見てみようと思ったんです けど。 」
はい 散らかってますよね うん。
案の定、イストリアとは違って。
私のトンチンカンな話を疑問符の付いた顔のまま聞いている彼は、きっと「自分の理解力問題」なのか、「私の話の内容問題」なのか。
それを確かめようと、きっと今の内容を頭の中で纏める為、頑張ってくれているに 違いない。
しかし。
確かにこうなってみて、自分でも再確認したけれど。
私の話の内容は、確かに散らかってもいるのだが
そもそもの拡げた風呂敷の大きさが、とても大きくて。
しかも縦横自在の変則空間
その中にポンポンと放り込まれるカケラ
勢いよく走り回る それぞれ違う色達
きっとそんな感じなのだろう。
そう考えると やっぱり この二人は凄いな。
チラリと隣の白衣を見て、奥の見えない白衣も、思う。
そうして、目の前の灰色の瞳に 視点を合わせると。
どう 説明したものか
それをじっと考えて いたんだ。
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