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5の扉 再びのラピス 森へ
久しぶりの マデイラ洋裁店 女神バージョン
しおりを挟む「こっちの方が、顔が明るく見えると思いますけどね?」
コソコソと、隣で呟く私の言葉を通訳しているのは勿論エローラだ。
「でも、派手過ぎませんか?」
「いやいや、やっぱり自分に似合う色が、一番ですよ。」
うんうん 私も そう思う。
今日は突然「材料が見たい」と、私の謎の「材料好き」が発生して
久しぶりのマデイラ洋裁店へ出向いている。
エローラには、「行く」とは言ってなかったけれど
「あら。いらっしゃいませ?」と普通に迎えてくれた彼女。
しかし、私達のお喋りが始まる前
丁度お茶の支度をしている時に、お客さんがやって来たのだ。
最近は どうなのかな と。
思っていた私は丁度いい実験にもなると、エローラの隣で「似合う色講釈」を 垂れていたのだけど。
どうやら まだ みたいである。
いつもの生成りにするか、オレンジにするか、お客さんとエローラがあれこれ始めた所で 既に。
「見えるかどうか」、おかしな動きをしていた私の興味は 壁の魅惑的な材料達に移行していた。
ふむ? これは
なかなか 新しい生地か
光沢? なんだろう どうやって
材料 なにが 糸??
「キャッキャ」と笑う声が聞こえて、思わず振り返り まだ色を合わせている二人を見る。
うーん 私はやっぱり あっちの 色が
そんな事を考えていると、ふと 思い付いたのだけど。
「えっ、私に? 光が あるから?それ即ちみんなにも、光は「いる」って事だよね???」
思わず二人に話しかけている 私
エローラは目配せしてまだ彼女にシャツを当てて
いるけれど。
うむ? てか でも そういうこと だよね??
私に 慶や黎が いた様に みんなにも。
きっとそれぞれ 光はついてる 筈。
そう思って、じっと目を凝らして見るけれど
一向に「なにか」が見えてくる気配は、ない。
「うーむ??」
どうなんだ ろうか
もしかして デヴァイとかで 試した方が
あそこは スピリットも 見えるし ?
お客さんに話し掛けた私の声も、まだ届かなかった。
もしかしたら「段階」的な 話なのかも知れないけれど。
「うーーむ。いやしかし、みんなが うん? でも結局それぞれの「自分の中」に、いるんだしな??」
まあ、それも。
本来私が悩む事でもないのだ。
そう 「もし いたらどの色が似合うか」
訊いてみたかった だけなのよ うん。
でもな
慶は なんでも似合うって 言いそうだし
黎に限っては 「黒」とか言いそう
「フフフ」
「こら。」
「あ、ごめん。」
どうやら、私が妄想に耽っていた途中で お客さんは帰った様だ。
店には誰の姿も無く、私とエローラが 二人
外から見れば エローラ 一人??
「なに、言ってるのよ。とりあえず私のお勧め、買ってくれたわ。ホッとした、だってどう見ても地味すぎたもの。」
「まあ、そうだよね。うん。」
私の口に出していない独り言に、しっかりとツッコミを入れたエローラは 胸を撫で下ろし用意してあったティーセットへ向かっている。
「とりあえず、あの色ならきっと周りのみんなが褒めてくれるだろうから。そしたらきっとあの子も自信になるし、また違う色にも挑戦しようと思うかも。」
「そうだよね。うんうん」
「で?ヨルは?お茶しに来たの?」
「 えっ うん?まあ、それも あるな?」
「なぁに、それ。」
そう言ってクスクスと笑いながら、お茶を淹れる その手付きをじっと 眺める。
てか 私 ホントは。
なにが 見たかったんだろう か。 ?
「うーん?何か作りたいって言うよりは、この見てるだけでもいい感、なんかさ パーツって いいよね。」
「うん、それ解る。」
「私、手芸以外でも画材屋さんとか何時間でも居れる。」
「ふふ、まあそうね。なんでだろうね、この魅力。」
「ね?だから結構、生地とか集めちゃったりして使ってないものもあるけど、ほら何にでも利用できるじゃない?棚に敷いたりさ、ただパーツ飾ったり。」
「確かにその用途だけじゃなくていいのよ。でも、基本的に「これです」って言われればそう思って、それだけに使う人が多いわよね。私は店側の立場だから、特に思うけどヨルはやっぱり発想が柔軟。なんか、頭の中身が違うもの。」
「 そう?」
テヘヘと笑う私を見て、エローラは首を傾げている。
「そうなのよね…………本来、発想が柔軟なのはいい事だと思うのよ。でも中々………だから同じ物が多いし、なんでも合わせたがるのよね。」
「ん?」
「いや、そもそも。その「人と違う」事を嫌うから考える事をしないのよ。ある意味素直なのかも知れないけど、「これです」って言われたら「そうなんだ」って終わり。ヨルみたいに、「あれもできる」「これにも使える」とか、選択肢が出てこないのよ。まあ、モノは売れるけどね。」
「 成る、程。確かに?」
「限定」、されれば。
確かにその、用途用途で買わなければならないものが、出てくる。
けれども私は基本的に、ルールなんてすっ飛ばして いつでも「これをこれに使えばいいじゃん」、そうやりがちだ。
「まあ、ほら。お小遣い少ないし。」
「うん、それもあるんだろうけど。でも幅がぐんと、拡がるのよね。それができると。ロランなんかはそれが上手くて、だから人気があったんだろうなと思うわ。みんなそこまで意識してないんだろうけど、見れば分かるもんね。なんか、世界が広そうだって。」
「あーー。確かに?」
勿論、この姿で工房には行っていないが あの、星の祭祀の前に。
訪ねた時は彼のテーマカラーも変化していたし、何より「伝統の中での遊び」が上手いんだ 彼は。
「あれも良かったよね 確かにあの発想力は、私には無いな 。」
「あー。それに。あの彼とも話してたけど、ヨルがいれば創作が捗りそう、っていうのは解る。勿論、それだけじゃないんだろうけど。結局やっぱり感性を刺激してくれる?なんか高め合える相手って、なかなかいないものね。自分の才能が、あれば、ある程。」
何故だか最後の方、しんみりとそう言ったエローラ
でも なんとなくだけど。
その 言っていることは わかるんだ。
そして、いつの間にか置かれていた春色のカップを示しながら キラリと光った灰色の瞳は。
真剣な顔をして、こう言った。
「確かにあっちの方が、合えば。ある意味力の強さ?まじないの相性?も、いいんだろうけど。なんかそれは、この前ヨルの話を聞いてから私の中では確定したわ。」
えっ
「だからある意味、人形神が合う合わないって凄い的を得てるなあって。なんか、その、仕事も勿論、そうなんだけど芸術方面?柔らかい方の面って言うのかしら…人としてそこが合わないと 」
え エローラ さん ??
今 そっちの話 だった ???
「いいえ、ヨル。これも充分、大事な話よ。」
まあ そう だけど さ
「フフフフフ 」
相変わらずのエローラに可笑しくなって、一人 笑っていると
いつの間にか微笑ましげに見つめられていることに、気がついた。
「 ん ?」
「いや。なんか。良かったなあって、思って。」
「 うん。」
その、瞳の中の色から それが「私と金色のこと」なのだと理解し ほっこりと胸が暖かく なる。
「ね?だから言ったでしょう?「ヨルの中では、決まってる」って。」
「あ 」
あーーー 確かに。
そんな事 言ってた ね?
「エローラさま 。」
「なぁに、クッキーあるわよ。」
「いや、うん。ありがとう。」
拝んでいる私をチラリと見て、やや仕方の無い目で皿を押す 彼女が本当に愛しいと思う。
「うーん。やはり、かけがえのない友も、「愛しい」の中に入るのであるな?」
「なに、言ってるのよ。もう冷めちゃったかしら?」
「いやいや、とりあえずいただきます。」
薄桃色のカップに、紅が 映える。
そこにまた イオスのレモンクッキーも
いいな ?
そうしてやっと腰を落ち着けた私達は、勿論
次のお客さんが来るまでの間、ずっと。
喋り倒していたのは 言うまでもないのである。
「あー、やっぱりエローラは最高だな。」
その、帰り道。
ウキウキと明るく弾む心 足取りも軽く坂道を下りながら 街の様子を眺めて。
みんなの空気を感じ「少し軽くなったかも」、なんて嬉しくなってどんどん坂を下っていたら 何故だか突然 カケラが降ってきたんだ。
「ん?」
あ そうか。
別に 「何処に いても」「あっても」
私が「100%わたし」で 在れば。
「 別に、何処にいたって、何を してたって。おんなじ、って ことか。」
白い石畳に向かって 確認の様に呟く独り言
くるくると私に「今」、降ってきた それは。
「ぴったり」「満ちた」「わたし」
「ひかり」 「バランス」
「こころ」 「からだ」 「魂」
「えっ うん、? でも そう なんだ。」
どこか なにか
少しだけ 「足りなかった」「ひかり」、
自分の「なか」に あった 「隙間」。
それが無くなり、みっちりと「じぶん」が塗りつぶされたのが、わかるのだ。
スッと 降りてきた ひかり
「自分という かたち」と「ひかり」が
重なった にも 近い。
「えっ なんだろう これ。でも、なんで?まあ タイミングなんだろうけど 。」
いきなり「嵌った」「ぜんぶ」、自分の周りをぐるりと探ってみるけれど、確かに「隙間」は見当たらなく
感覚的に「満ちて」いる。
「時が来た」のか なんなのか。
しかし
「今」 行く訳ではない それは、わかる。
それはきっと 最終的な準備が整ってきた、という事なのだろう。
「ふーーーむ。」
不都合なんて ない。
しかし、すぐにチラリと頭をもたげようとする「不安」を脇に置いて、その「満ちた自分」「100」、隙間の無い感覚を持ってくる。
「あーーーー。なんだろう、これ。 でも、いいな。」
これまでと、何が違うのか
自分では全く 分からない
でも「気持ちいい」「気分がいい」のは わかる
なにが どう して
なにを 補充?した訳でも
でも エローラは 最高だった けど
それに 日々 「満たされては」いたんだけど?
でも それもどれもみんな、「タイミング」なんだろう。
なにしろ「降ってきた」「満タン感」、それを自分のものにすべく、常に中をその想像で満たしながら坂道を下ってゆく。
フワリと 私の周りの 「場」
その 「なか」に 満ちている「わたし」
「いろ」「私の成分」「ぜんぶの わたし」
「塗りつぶされた 隙間」
「100」 「無限 の わたし」。
「えっ」
自分の想像に、つい驚くけれど それはそうなんだ。
「満ちた」のだから 「無限」なのだ。
「 ふーむ?」
橙の空、染まり始めた石畳
テクテク トコトコと リズムを刻み
自分の「なか」に 落とし込んでゆく 「そのこと」。
少しずつ 馴染ませ 深呼吸 して
腕を大きく ゆっくり振って
「満ちた」 「いろ」 「橙」
「黄金」 「お日さま」
「フフッ」
丁度良く、自分の身体が夕日色に染められてるのが面白くて 笑う。
橙からの 黄金 金 それ 即ち あの色でも
あるから。
「何処にでもいて、サポート してくれるね?」
そうして、更に足取りも軽く リズミカルになった
私は。
その「満ちた自分」で 更に自分を満たしながら
白い壁の門を くぐったので ある。
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