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5の扉 再びのラピス 森へ

箱舟 きんいろの ひかり

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遠くに、金色の光が見える。

しかし、あれも。

また気の所為かも知れない。
何度 夢で見たことか
何度、幻で見たことか。


だが、俺にはわかって いた。


   「あれは 本物の 金色の光」


そう
紛れもなく あれは。

俺の求めていた 「金色の あれ」それが わかる。

何故解るのかもわからないし
そこに行って どうなるのかもわからない。

だがしかし。

 「行かぬ」という選択はないし
 また「辿り着かない事はない」のも のだ。



 「あれ」は。

  「そういうもの」だからだ。



ここまで 来て
やっと が わかった俺は
不思議な気持ちでその 「求めていたもの」を
目に 映していた。







次々と乗せてきたものを殺す仲間
ジジイどもの下らない 罵り合い 殺し合い
騙し合いや 唆し
昨日は仲間だっ友の裏切り
人肉を食らい 生きている俺達
「人間とは」「生きるとは」
「考える」事をしてしまえば終わる そんな航海を続け
そうして弱い者から死んでゆく 「現実」。

最後に残った「祈る者」は
それでも信仰を欠かさなかったし
けれども神は実際 奴を助けはしなかった。

「生きる」か「死ぬ」かと いう意味で 言えば。


しかし、奴の神は 確かに奴を助けたのだろう。
だって 骨と皮になり死んだ 奴の顔に浮かんでいたのは
ただただ「穏やか」な 表情だけだったからだ。


その「祈る者」は最後に「生きろ」と言っていた。
「俺の肉を食え」とも。

しかし、奴に凡そ食えそうな場所は
残っていなかったし
俺は ただ奴を。

母なる海に還して、手を合わせた。

それだけだ。


「次は俺だ」
それを静かに受け入れていた俺には
そうすることが「自分の道」だと。

何故だかからだ。












そうして また少し。

 「今」が いつなのか
 「どこ」なのか
 「俺」は 誰なのか
 「生きる」とは
 「死ぬ」とは?

 そもそも「存在とは」「俺は なに なのか」

 「俺は 狂っているのか」「正常なのか」
 「そもそも 狂っている とは なんだ」

そんな事を 考えているのか
いないのか
もう 何もわからなく
   何も 無く

世界には「海」と「自分」
「辛うじて船だった何か」


 「空」 「雨」 「朝」   「夜」

   「空」  「嵐」  「朝」   「夜」


 「空」   「太陽」  「朝」   「夜」



  「空」  「月」   「夜」   「朝」



    「星」


              「波」



  「風」      「木肌」


      「皮膚」    


                「薄汚れた毛」



                      「照りつける 太陽」



      「真っ暗闇ではない 夜」





そうして

 「俺」という この「なにか」

 「体」なのか「意識」なのか

 「それ」が なくなったとしても

 この「世界」は 廻り続け

 「ただ それだけ」なのだと。


  わかりたくないが わかった 時


 しかし 「ただ俺は「死ぬ終わる」わけにはいかない」と

 それだけが 自分の「真ん中にある 焔」だけが。

 煌々と 光って いた時。




 その 「金色の光」が 見えてきたんだ。



嘘だろう
また まやかしだろう
きっと 近づけば消える。


そんなくだらなさで 自分を誤魔化し
しかし目を 逸らそうとしても反らせなかった 俺は。


段々と その「金色の光」に 近づいて いた。



 「そこに 辿り着けば」。

 「それが ゴール」だと。


 「報われる」と 「報い」がなにかは知らないが

 ただ「 ああ 」と。



     わかったんだ。


     やっと。






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