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5の扉 再びのラピス 森へ

新 人形神

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「いや、解るんだけど。」

  「その  」

 「やっぱり、どうかな。」


「でも、ヨルがやりたいなら。」


   「いやいや  しかし。」


案の定 お父さんは迷って いた。


うん、私がツッコミを諦めるくらいは、居間の壁と壁の間を 往復していて。

「お姉ちゃんなら、大丈夫だよ。そのままで。」

「私もそう、思うんだけどね?」

そんな会話をしている私達を尻目に、ハーシェルは頭を抱えている様だった。


 一体  「なにが」 そんなに?

 
「心配」?  「気になって」??

  いやいや  私 もう ハーシェルさんに
 心配してもらう「段階」? 「年齢」?

 いやでもしかし。
 「それ段階」とか そんなのはきっと

 関係ない んだ  ろう けど。


ある意味ハーシェルの心配性は、性格でもある。

初めの頃、それで大人しく中央屋敷の言う事を聞いていた彼を思い出しながら、私達は呑気にお茶を飲んで いた。

「お姉ちゃん、これ私が焼いたの。」

「えっ。美味しい!天才?!」

ティラナが焼いたと言う、新作のクッキーを出されて「渋い顔で悩む」なんて 不可能な話である。

よって、私達は和やかな女子会として既にお茶をお代わりもした所である。


「ねえ、とりあえず教会、行ってみていい?」
「うん、私も行く!」

そうして、未だぐるぐると回っている灰色の長い髪をチラリと眺めて。
諦めた私達は教会へ下調べに行く事にしたのである。



「ねえ、これ何処かにしまうの?」

「あー。それは考えてなかったな?」

確かに人形神はそこそこ、大きい。

「でも。なんかあの小部屋に押し込むのは忍びないから、私の部屋に寝せておくか………。」

「それならいいかもね?お兄ちゃんが運んでくれるかな?」
「成る程、ナイスアイデアよ。」

勝手に金色の仕事を増やし、私達の計画は着々と進んで行く。

「これは  このままで、いいか。」
「あ、それ。最初は違う色だったよね?」

「うん。でも、石も成長するからね…。」

流石ティラナ、気付いていたか と思いつつも。

人形神の隣に置いてある、私の「小さな人形神」をじっと眺める。


 うーん  やっぱり 「創造」は いいよね
 
 「なにかを 創る」「生み出す」って。

 「素敵」「楽しい」

   「ワクワク」  「チャレンジ」

 始めは 上手くなかったと しても。

   それを 「超えて」「覆して」行くのが
  楽しいんだ。


「そうなのよ。なにしろ、みんな。もっと「自由に」。やれば、いいの。」

「ねえ、お姉ちゃんここに立ってみて?この辺り?」

「いいね、ちょっと真似するから見てて。」
「はーい。」

「おや?」

そうして 私達が「人形神ごっこ」を始めると同時に 声が聴こえて。

教会へ入って来たハーシェルが一言、こう言ったんだ。


「えっ、どっちがヨルだ?」 と。




その、言葉を聞いた瞬間
私の中で「なにかのスイッチ」が 入って。

 「カチリ」と固まった 私の「姿」

 きっと「見た目」は「人形」

  「女神の様な」。

 「白く」「清い」「透明感」「ひかり」

   そんな感じの  光景な 筈。


ピタリと自分の動きを止めたまま、「どうなるんだろう」と。
事の成り行きを 見守る椅子の上

私の立っている位置は 人形神から すぐ隣に見えるけれど。

 近づくと すぐ わかる

そもそも台の高さも違うし、なんならヴェールも 違う。
身長は多分 私の方が少し 大きいかも 
でも立ってる椅子が 低いから。


しかし、家に繋がる通路の前で立ち止まったままの彼に 歩き出す様子は見えない。

ティラナもどうやら、楽しそうに成り行きを見守るつもりの様だ。

それなら。

とりあえず私は、ハーシェルの「動向」が 見たくて。

なにしろ動かぬ様に
「人形神」に 成り切ってそこへ 立っていたのである。





「でも、やはり。なのか。」

「だから、なのよ。」

 ん?

暫くそのまま、立ち尽くしていた彼の口から出た言葉
そうしてそれに続く、聞き慣れた声。

「朝だ!」

私が動くよりも早く、ティラナが揺れる尻尾に気付いて走って行く。

ハーシェルの背後
白の隣にちょこんと、鎮座していたのは。

いつの間にか一緒にいた いつもの青い瞳だったのである。


「ね?だから言ったでしょう?」

「ああ、僕もここまでそっくりになるとは。」

いつ降りようか、そう私が考え始めて暫く。
二人は「何故その案で行くのか」について、チラチラとこちらを見ながら話し始めた。

「放っとくしか無いのよ、結局は。それが一番いいのは、あなたも解ってるでしょうに。まあ、それがハーシェルの良い所だけど。」

「そうなんだけどね、解ってるんだ。ヨルは自由が一番、いいって。しかしね、今回は「ただ見守る」と言ってもだろう?近過ぎやしないかって、心配にも、なるよ。」

「まあ、それも解らなくも、ない。何やらかすか、分かんないもんね。」
「全く。」

雲行きが怪しくなって来たのは 気の所為だろうか。

「でもね、も含めて。ここに、変化が必要だからハーシェルだって「女神」なんて言い出したんでしょう?珍しいと思ったもの。流石にここまで出て来るとは、思ってなかったでしょうけど。まあ、この子だから。」

「うん、ヨルだからね。僕が甘かったんだ。」

 あれ?

   あれれれ?

「でもきっと、「悪い様にはならない」。それも、解ってるでしょ?」

「まぁね。っていうのも、あるけれど。ああ、僕の事はいいんだ。そろそろラピスに奇跡が起きてもいい、なんて普段は言っているからね。」

「それなら全然大丈夫じゃない。…………分かんないけど。」

「えっ、朝。そこは「何が起きてもバッチリ」くらい、言ってよ。」

「あら、ホントに固まってる訳じゃ、ないのね?」

 そりゃ そう ですよ  朝さん。

 貴女は 私を  なんだと。

   思って らっしゃる のか  ね


しかし、私の「解除」には目もくれず、二人は「像が」「どこに」「当日」なんて。

あれこれ、結局「やる方向」で話を進めてくれている様だ。

私はその二人の後ろ姿を見ながら。
テクテクとやって来た 白を抱き上げティラナと一緒に。

ベンチに座り、その位置から見える 後光の差す
人形神を見つめながら。

 ただ なんとなく その「空気」を じっと

  味わって いたのだった。







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