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5の扉 再びのラピス 森へ
私達の 色々
しおりを挟む「うーん、あの時はどうだったんだっけ?」
「えっ、なんか。とりあえずお付き合いしてる、みたいな事言ってなかった??なんか、結局手紙のやり取りからの、帰って来てうんぬん、みたいな。」
その、私の言い方に笑いながらもそのものズバリ、結論を言うエローラ。
「うん、とりあえず今はもう「結婚してる様なもの」ね。こないだ一緒に住み始めたばかりだけど。」
「 え」
それ だいぶ 端折りましたね?
私の顔を見て笑いながらも、話は続いて行く。
「だって、ほらもう私達ってここでは歳上の方だから。煩かったのよ、どっちの親も結婚の話は。だったらまあ、しちゃった方が早いなって事になって。あ、でも結婚式はまだだから、ヨル…………は、来れないか………。うーん。」
そう言って首を傾げ始め、灰色の髪がサラリと肩に掛かる。
えっ なん か
エローラ さん ねぇ
私は。 なんか。
沢山の情報が一挙に流れ込んできて、とりあえず自分の中が思考停止に なってはいたのだけど。
なにしろ とりあえず 二人が「そうなる」のは
「想定内」 そして なんか 「嬉しい」し
「めでたい」し ??
それで? 私 は?
「なにが」 「気になってる」 んだ ??
「あ」
「なに?大丈夫?」
ピタリと止まった私の動きに、お茶を飲みながら少し心配になったらしい瞳が問い掛けてくる。
しかし、お茶請けを摘んでいる所を見ると そうでもない みたいだけど。
「いや、その「結婚」までは全然想定内で、おめでたい話なんだけど。ああ、おめでとうございます。」
「ふふっ、なに、どうしたの?「ありがとうございます」。で、どうしたのよ。」
「えっ、なんか。私、エローラの結婚式、出れないのかと思って愕然としてたの。えっ、でもちょっと待って。真剣に考えるから。」
「なにそれ。可笑しい。」
いやいや
エローラ さん 私は至って「真剣」よ。
楽しそうに私を見つめながら、お茶を飲むエローラを見つめ返しながら。
私は ここに来て「初めて」というくらい 真剣に。
「エローラの結婚式」について考えて いた。
えっ だって 「エローラの結婚式」だよ?
「出ない」いや ないない
「出る」 でも?
どうやって ??
くるくると浮かぶ私の「なか」の景色
「自分」が 結婚式に「参列」している 姿。
えっ なんか 変?
いや イケる ??
てか ここの結婚式って 私の想像と 同じ かな??
「場所」とか 「人数」とか
「どんな雰囲気なのか」 とか。
全然 知らないけど
「いやいや ???」
いや 待って 今「無限」の空間の私に
「不可能」は ない
そう しかも これに 限って
そんな 馬鹿 な。
「 いや しかし。」
「待てよ? ふむ?」
「ちょっと、大丈夫なの?私は、まあ。出て欲しいのは山々だけど、無理なら諦める。ヨルの方が、大事だし。」
「えっ、何言ってんのエローラ。「エローラの結婚式」は、一生に一度だけだよ? ん?いや?「シャルムとエローラの結婚式」かな??もしかしたら 」
「こらこら、その予想はいいから。とりあえず、まだ時間はあるからさ。ゆっくり考えて?ほら、彼にも相談した方がいいよ?」
「じゃないと 多分 飛んで来るし」
そう、灰色の視線が 言っている。
「うん。そうだね。とりあえずじゃあ、保留にしとく。そんな、すぐじゃないよね?まだ大丈夫だよね???」
「うん、季節が変わる前にはやりたいから、多分あともう少しね。」
「 ?」
日程って 決まってるものじゃ ない の?
しかしその私の疑問は「ラピス時間」に照らし合わせると「大体あのくらい」程度でいいらしい。
「だって、噂なんてすぐ回るし、それをきちんと「知らせよう」とすれば。明日にはみんな、知ってるわよ。結婚式より優先される予定なんて、そう無いしね。だからざっくり決まってれば大丈夫なのよ。」
「成る程。いいね、それ。」
ここでは皆、春と冬の祭りである程度「どのカップルが結婚するか」、知っているのだそうだ。
それで日取りが決まれば、親しい人達が参列し、その後パーティーが開かれるらしい。
「流石に全員は入れないから、結局その後の食事会でみんながお祝いに来るって感じ。私達は店をやってるから、多分………広場でやる事になるとは思うけど。」
「おお 。」
なにやら大規模な催しになりそうな、エローラ達の結婚式
彼女はそのまま、顎に手を当てブツブツと。
「食事を出してくれる店」や「どのくらいの人が集まりそうか」、楽しげな独り言を呟き始めた。
きっと家から近い広場ならば南の広場だ。
そこで、盛大に祝うなんて絶対に楽しいに決まっている。
えっ これ ホントに。
どう しよう か。
結婚式 参列 こっそり?
内緒 バレない
ん? あ あれ ??
もしかしなく ても ?????
「じゃあ、ヨル私はそろそろ帰るわ。」
「えっ、もう?ていうか、エローラ。結婚式は。どこで、やるの??」
まさか ?
その、私の視線にニヤリと応えた 灰色の瞳
それは優しく細まった後、仕方の無さそうな笑みになって。
立ち上がっていた腰を落ち着け、小さく息を吐きながらこう言った。
「そうよ。ヨルの家。」
「えっ。 そうなんだ、そう だよね ??」
「だからある意味、隠れる場所とか。ヨルの方が詳しいんじゃない?ハーシェルとも相談するといいかも。」
「そうだね?えっ、なんか うん、ありがとう。それにやっぱり、おめでとう。」
「教会」 「結婚式」「エローラ」「シャルム」
その暖かいカケラ達が私の周りをくるくると、回り始めて。
改めて二人のことを祝福したくなった私は、おかしな言い方をしながらも
ズリズリとテーブルから身を乗り出してエローラの手を握って いた。
「うん、ありがとう。まあ、相変わらずね?なんか、安心したわ。そうなってるから、すっかり落ち着いたのかとも思ったけど。そんな事、無いわね?て言うか、次来た時はじっくり。聞かせてもらいますからね??」
「 えっ うっ」
「まあ、とりあえず結婚式が終わってからの方が良いかもね。私もなんか、やる気になってきたわ。」
「?」
「いやね、もう結婚してる様なものだから式だけやるのもちょっと面倒だったのよ。結婚式自体は私も好きだし、楽しいけど自分が全部準備するとなると、話が違うじゃない?でも、その後ゆっくりヨルと話すとなると頑張らなくちゃね。」
「いや、エローラの結婚式なら。みんな街を上げて歓迎?楽しみに、してると思うけどな??」
以前、帰って来た時も思ったけど。
かなりエローラの店の服を着ている子は増えたし、そもそもエローラはかなりの情報通だ。
友達だって多いだろうし、交流の幅は広いだろう。
でも そのちょっとだけ面倒がっている所も
エローラっぽくて いいけど。
「ま、とりあえず終わったらお泊まり会でもしましょうか?あれ?ここは泊まらない方がいいのかな?」
「いやいやいや」
前後にある、扉を両方チラチラと確認して。
私の顔を見、確かめているエローラが 危険だ。
「じゃあ詳しい事はハーシェルに聞いても分かると思う。また、遊びに来るね?」
「うん。ありがとう、来てくれて。」
そうして私達は。
「結婚式のドレスは勿論自作」だとか
「デザインはどうだ」とか
「シャルムとの合わせ」は とか
「どこの料理が美味しいからヨルにも食べて欲しい」とか
「レナを呼べないのは残念」とか。
色々な事を話しながら森の出口へエローラを送り、その後ろ姿を見えなくなるまで見送って。
「えっ、どう しようか?」
くるりと振り返った背後に、当たり前の様にいた
金の瞳を見つめながら そう問い掛けたので ある。
うむ。
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