透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

名実共に

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「で?君達は、名実共に「恋人同士」に、なってしまったという事で。合ってるのかな?」

「なって?」

「ぇっ 」

  どっ  ひゃーーーーーーーーーー????


金色の ツッコミと 私の「真っ赤」への変化で。

なにかを察したらしいハーシェルの 顔が複雑である。


ティラナと感動の再会を果たした私は、その成長の凄さと早さに驚いても いたけれど。
やはり、先ずは嬉しくて
抱き締めながらもその大きくなった身長を確かめ、柔らかな背を撫で、長くなった赤茶の髪と変わらずくりくりとした茶の瞳、久しぶりのティラナを堪能していた。
そう、暫くの 間は。


「お姉ちゃんも、大人っぽく?なったね?」

そう首を傾げて訊くこの子は、けしからん可愛さである。

正確に年齢を聞くのがなんだか怖い私は、「見た目10歳くらい」のティラナを確認しつつも 自分の色も確認し、薄くなっているピンクを見てホッとしていた。

なんだか、具体的な年齢を聞いてしまうと。
「世間と私の ズレ」がはっきり、くっきりと浮き上がる気がして。

とりあえずはティラナをじっと観察して、その心構えをしていたのだ。

 でもきっと 私が 確かめに来たのは
 「そういうこと」
 「私と せかい」「世間と 私」
 その、「違い」と「差」の筈だ。

いつまでも逃げては、いられないのである。


しかしとりあえずはティラナの可愛さを堪能しようと、少し上半身だけ離して眺め直す。

 ん? さっき なんて 言った?

   「お姉ちゃんも 大人っぽく なった ね」??


 えっ ちょっと待って。

しかし、ティラナの「大人っぽくそれ」に
他意はないのは、流石に解る。

その「名実共に 恋人同士」のセリフを思い出した私は、その後の緑の視線の行き場にビクつきながらも。 
私の姿に驚く様子もなく、いつも通りに振る舞うティラナを見て
「!」と、一人合点が行っていた。


 ああ そういえば  狐も 見たし
 金色が 石?なんか 不思議なのも知ってるし な

 流石 ティラナ。

純粋なこの子にとって、「私達が なんなのか」はそう大きな問題では無いのだろう。
きっと私も、ティラナにとってはこの金色と同じくくりなのかも知れない。

そう思いつつも、ピタピタと頬を冷ましつつ
綺麗に伸びた赤茶の髪色を見て「あの人」を思い出していた。


 レシフェ そう ね
 なんか もうレシフェのが 「茶」だな
  ティラナは可愛い「赤茶」

 いや レナの事も あるけど レシフェも うん
 えっ、ティラナと レシフェは 叔父 姪
 レシフェとレナが 結婚 したら???


「ん?レナと私 が? えっ、なんだ ろう ??」

「どこからどうなって、そうなった。」

「えっ、うん、いいや??」

訳の解らぬ私にツッコミ、混乱する私を嗜める金色
お父さんはいつの間にか私達の正面に 座っている。

 えっ  「面談」いや違う
     「面接」? いや?

 いやまさか

 「お嬢さんを お嫁に ください」?????


更に色んなカケラが舞い、くるくると踊る混乱と 迷走。

 右手に ティラナ
 左手に 金色

  なにこれ  いい。

「ヨル。」

「はいっ。」

そんな私に仕方無さそうな声で呼び掛けた、ハーシェルの話は。

「娘は嫁にやらん」ではなくて
やはり私を心配している 内容だったけれど。


「君たちが。うん、まあ「そうなった」のは、喜ばしい事では、あるよ。うん。僕としては彼の気持ちには気付いていたけれど、ヨルはまだ子供だったし、なにしろ彼は、石だ。でも、君達ならなんとかなるのかな、くらいの軽い気持ちだったけど。いや、あまり考えない様にしていたのかも知れない。でも、今日のヨルを見て。「ああ、そうなんだな」って、解ったよ。」

「 ぇっ」

「いや、、変化するんだね。これまではきっと僕らの方へ近かった君だけれど、今は彼に近いのが、解る。なんだか過程は全く解らないけど「成る程な」、と思えるんだ。」

ただ、私を見てそう頷く 緑の瞳。

その瞳に偽りは無く、そもそもこの人が私に嘘を吐く事は もう無いだろう。


「ふむ。だからか、成る程な。この、タイミングで。ある意味有り難いな………ウイントフークに、感謝か?ん?いや、ヨルはそもそも、どうして今また、森に?」

「はい、あの  。」

大事な部分は説明してないのかと、ツッコミたかったが本人は不在である。

しかしこれは ある意味私の「超個人的な 話」
確かにあの人が 言い辛い?のは わかる。

 ただ その 「いい辛いと 思うかどうか」 だけど。

 そう、ただ単に 忘れていただけ説も 捨てきれない。


とりあえず自分が今「森に」来た理由を、簡単に説明する。

 「大地と 繋がりたいこと」
 「目に見えない存在」「デヴァイにはいた スピリット」
 「私のこれから」「見えないもの達との 共同」のこと。

ざっくりとしか説明していないが、ハーシェルは直ぐに納得した様で深く頷いていた。


「確かに、君に森は。いいだろうね。」

「そう、ですか?」

「ああ。初めから、森の木達とは話せただろう?そもそもの繋がりが深いのかも、知れない。それも含めて調べてみるといい。君の場合は木に訊いた方が、早いのかも知らないけど。」

そう言って楽しそうに笑うハーシェル、しかし森の木々 おじいさん達は。

 話せる人間 は 初めて って??
 言ってた よう な ???


 いやしかし 忘れてるのかも いや? ない??


ぐるぐるに嵌り始めた私を、ある意味いつもの様子で眺めるみんな
その、視線を解ってはいたけれど ここは居心地がいいので、そう気にはならない。


そのまま暫く、ぐるぐるしていると。

ずっと黙っていたハーシェルが こんな事を言い始めた。


「いや、君の現れるタイミングというのは、いつも絶妙だね?今回はどのくらい居られるんだい?」

「どうでしょうね?」

チラリと隣を見ながらも、そう返事をする。

確かに私も、分かっていないのだ。
この滞在が どの位の長さに なるのかを。


「ここも随分、変わったけれど。ある意味、行き着く所まで行き着いて、そこからが難しい様な状態なんだ、今は。」

「?」

ハーシェルに詳しい話を聞くと、確かにそれは。

私にも「覚えがある」状態だ。


 そう 伸び悩み というか
    頭打ち というか  引っかかり というか。


「そう、君の言う通りなんだ。もう、「変わろう」と思う者は歩き出しているし、「変わらない」者は、変わらない。その分かれ目はとっくに過ぎて、今はここも真っ二つまでは行かないけれど。微妙な状態なんだ。」

「え、でも。変わらない人はそのままで、後は変わる人が進めばいいんじゃ、ないんですか?」

「まあ、そうなんだけどね。」

そう言って、残念そうに笑う緑の瞳
サラリとした長い 髪が。
肩に掛かるのを見て、「ハーシェルさんの髪も伸びたな」なんて、呑気な事を考えていた。


 でも。 ハーシェルさんも やっぱり
 「放っておけない」派 だろうから それで
 なにか 困ってるのかな ??

そのまま黙り込んだハーシェルを眺めながらも、私の羽衣に興味津々な可愛い視線にも気付く。

「触っていいよ。」
「え、本当?」

「勿論。」

何故だか「姉」の筈なのに 遠慮しているティラナを見て、なんだか寂しくなった私
しかし、その可愛い手付きとそっと触れた その色
その「尊いものに 触れる」感覚が 伝わってきて。

  ああ 
                と。

 ティラナの 中に 「女神」と「お姉ちゃん」が
 微塵の摩擦なく 「同居」しているのが 見えて。


納得すると共に、嬉しくなり、そしてそれを「感じてくれた」ティラナに、暖かい色がブワリと湧き上がって。

「ありがとう。」

そう言って、自然とふわり 抱き締めていた。


「なんか。お姉ちゃん、あったかいね?」

「  うん?うん、まあ「生きてる」からね。」

「そう、だよね…。なんか、お姉ちゃんなんだけど人形神っぽくて。あの、教会にあるやつに似てるよね、お父さん?」

「ああ、そうだろうね。」

「   」

そう、普通に返事をするハーシェルに 思わず私が固まる。

「いや、まあ今更なのかも知れないけど。君は正真正銘「女神」なんだろうし、これからは名実共に。」

「えっ」

そこで言葉を切った彼の視線の先には 金色

「名実共に そうなった」というワードを
思い出した私は。

なんだか隣が見れなくて、とりあえず暖かな色を浮かべる緑の瞳を 見ていた。



彼等はそれから、暫く視線を交わし合っていたけれど。

なんでか、「意思疎通」は大体できていたらしい。

先に口を開いた金色は、意外にも承諾の返事をした。
何が「要点」なのか、解っていない私は
置いてけぼりに なっていたけれど。


「依るがいいと言うならば、良いのではないか。吾輩、それを止めはせん。」

「良かった。君がそう言ってくれるなら、君達の間柄も心配なさそうだね?いや、そもそも上手くいかないとは、思ってないけれど。」

「ふん。」

 えっ  なにこれ

   どういう  話 ??


 私達の 「間」の はなし??

 「依るが いいと言うのなら」??

 
「えっ、私。勿論、この人じゃなきゃ、駄目なんですけど。」

「えっ、ああ、うん。それは充分、解ってるよ。」

そう言って、何故だかハーシェルは 爆笑を始めて。
金色を見ると、なんだか「暖かい瞳」で 私を見ている。

 え  なに

  やめて ?  駄目だよ??

 ここでは。

では、ない。」

「えっ?!」

 なに が??? なんで???


そうして私は、訳の分からぬまま、ハーシェルが肩を震わせ終わるまで のんびりと。

頬を揉みほぐしたり、ティラナの可愛さを堪能したりして
待っていたので ある。

うむ。

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