透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

街と森

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サラサラ さらさらと 流れる小川

 私の   いや 私が借りている小川

それが なかなか、心地良くて。

「うーん、癒される。」


朝、起きてまず森の空気が吸いたいと思い
窓を開け 風を通し 全ての扉を開け放ち
そうして外へ出 少し寒いが小川に足を入れる。

しかし、何故だか 水の方が地に暖められているからなのか。

よい「湯加減」ならぬ「川加減」の小川は心地良く私を迎え入れ、冷えた身体を丁度良く温くしてくれる。

 これは もしや 
 小川に気に入られてる??

そう都合の良い解釈をして、緩々と散らし馴染む森の空気

朝靄の中 まだ密度の濃い緑 
水分の多い空気と優しい 光。

もう少ししてみんなが起き出してくると、森の気配は少し、薄くなって。

「森と人」の気配に なる。


だから、この早朝のまだ誰もいない森が好きなのだ。

まだ何者にも侵されていない、新雪を踏む様なその空気
そこに一番に招き入れられ 水に足を入れる、その至福の瞬間。

「 ぁあ~  」

つい、おっさんの様な声が出るのは仕方がないと思う。

 うん 誰も 聴いてない し ??
 いや
  森の 木々達は 知ってるけど な ?


気を遣っているのか、金色は朝早く起き出してくる事はあまりない。

でもきっと 寝てはいないのだろうし
私がこうして小川に浸かっている間 もしかしたら何処かに飛んでいるのかも、知れない。

それは私の預かり知らぬ所なので ある。


 少しずつ明るくなる 朝
 太陽の角度が分かる 木々と 葉の間の影

  まだ「白」が残る朝の空は これから「青」へと
 移行する準備をしながら その「余白」を楽しんでいる 様で。

その様を観察していると「どうして 空は」
「あお」「変化」「橙からの青」「黒と紺」「真っ赤な空」「自然の大胆な色使い」
様々な思いが 私の中を流れて 行って。

 留まることなく さらさらと流れるその 色が
 この子小川の仕事が優秀である事を
 示してくれている。


  やはり 私の見立ては。
 間違い なかった。  うん。

 して?  ここ から 流し 癒され はて

「うむ。  さて はて  しかし。そろそろ?どう、したものか。」

私がぐるぐると考え始めたのは「街の様子を見たい」、というカケラ
長老の話にもあった「両方を見る」、その件だ。


移動したり、家を創ったり 長老に会ったりと色々していたけれど、思ったよりも疲れていない私の体。

ある意味村の様子は、そう変わりが無くて
みんながバランスを取りながら暮らす、変わらぬいい場所である。

「変化」に対して、何か もう少しあるかとも思ったけれど そう変わりない自分の体調
「少し休んで 様子を見てから」と街の探索は、そう思っていたけれど。


「うん、大丈夫、なんだよね。 多分。」

強いて言えば「ソワソワ」は、している。

なんだか 「変化」が 「時の移り変わり」が。

 「実感」として やって来ていて
 ムズムズする、そんな感じなのだ。


「なんだろうな、これは。」

それを確かめたくて、街に行きたいのもあるのかも知れない。

 自分の「なかみ」が ムズムズソワソワ

 しかしそれはこれまでの「なかみ」「精神的な」ものと
 少し違って。

きっと、「からだ」の中身 なのだ。
あの 粒子がサワサワと騒いでいる様な、そんな 感じ。


「ふむ。」

自分の中では、それは「気配」を感じ取っているのだと思っている。

 「物質」「もの」「人」それが発する なにか
 「思い」や「チカラ」「エネルギー」の 様なもの。

本当はどうだか まだ分からないけど
きっと もっと 「進んでくれば」解るのだろう。

なんだかそんな 気がする。


「しかし?さて?ハーシェルさん?ティラナ?  何処へ どう、しようか。」

本部長から、連絡は行っているだろう きっと。
あの人の事だからその辺り抜かりはない筈である。
きっと私が「行きたい」と言うだろう事は、織り込み済みだ。


「えっ、でも。??」

そもそも、私は普通に歩いて行くべきなのだろうか。

「 ??」


少し、差し込む光の量が増えてきて
眩しく感じる目を細め 自然と木々の間の陽を確かめる。


 私 からだ   真っ白  羽衣

   雲間?  いや 多分。

 ここに「雲間うえ」は ない。

感覚で分かる、その事実
きっとここラピスに雲間は 無い。


「これが「次元」の違い??なんなんだろうな………。」

しかしきっと。

に、羽衣で歩いて行ってもそう差し支えない様な気もする。
なんだか、多分。

みんな私に「気が付かない」と思うのだ。
勘だけど。


 「気配」 「薄い」  「幻」 「透ける」

私の周りに浮かぶカケラはどれも、「いるけど 見えない」、そんな色のカケラ達で さながら自分が「幽霊か なにか」になった気分である。


「えっ、私もとうとう幻の魚の仲間入り………」

くだらない事を言っている場合では ない。

しかし、私が「女神」のていでフワリと羽衣を靡かせ歩いて行けば きっとその気配は普通の人には悟られずに辿り着けると思うのだ。

そう、目的地の 教会まで。


「うーん、多分だよね  」

 きっと私が「気を惹かれ」、その方向

 多分エローラとか
 友達 知り合い  話したい人に
 会ったならば。  

 「見える」気はする。


「それならとりあえず?行ってみる、べき?」

しかし金色には訊かねばならぬだろう。

 て いうか
 一人で行かせて くれるかな??

 その辺り どうなんだろう な??

この頃 過保護なのか そうでも無いのか
微妙な感覚のあの人
「えっ、いいの?」という時もあれば「そうなの?」と予想外に守っている時もある。

 とりあえず、訊いてみるか。

そうして いつの間にか上げていた手をパシャリと水面に下ろし小川にお礼を言う。

「ありがとう。いつも。」

何故 「いつも」と言うかと言えば
私としてはここは神域の小川と同等、その兄弟分である。
「いつも いつでも」私を浄めてくれるその存在に感謝しつつ、先ずは支度を整える事にした。





 えっ  て いうか

 今更 だけど  私 ? えっ

 ハーシェルさん は まあ。
 ティラナ??  なんて 言おう??

本部長が「どう」、伝えているのかは分からない。

しかし、この前デヴァイから移動した時の雰囲気からしてハーシェルは普通に迎え入れてくれるだろう。
あの時が「どう伝えられていたのか」、それも分からないけれど。

 ハーシェルさんなら きっと大丈夫

そう 私が こんな 「羽衣スタイル」でも。


「多分、ハーシェルさんのポイントはじゃないもんなぁ………。」

きっと彼の「視点」は私の心配だけ

それが解っている私はなんだか心がフワリと、ポワッとあったかくなって。

「なんか、懐かしいな。」

窓際のハーブ達を「ポワッと」していた事を思い出しながら、教会の屋根目指して 歩いていた。


「こら、こっちだ。」
「あっ、ごめん。」

案の定、一緒に来た金色は「街に行きたい」と言う私の提案に反対はしなかったものの、当然の様に自分も支度をしていた。
いや、支度と言っても特に 何をした訳じゃないけれど。

しかし久しぶりに私の創った服を纏った彼は
「いけない姿」になっていて、デヴァイでの青の家スタイルを見慣れていた私にとっては危険な格好では、ある。

 くっ
  なんだ これは この  フワッとした
 緩めの服  なんか この頃がっしりした気がする
 体格? なんだ ろうか

 筋肉 ??

  なん で?? その「肉体」系の はなし ??


そんな事をぐるぐると考えていたら、教会への曲がり角を通り過ぎたのである。

 いかん。 切り替えねば。

  私は 「お姉さん」よ。

そう ティラナに会うので私の気分としては「女神」より「姉」なのだ。

「久しぶりだからな~。前回から、どのくらい経ってるのか予測もつかないけど。」

きっとティラナも成長して、お姉さんになっているかもしれない。
いつものしっかり者の姿を思い浮かべながらも
私達は教会奥の家の扉の前に、到着した。


 なんか。 
 緊張? するな
 
 しかし 歩いてくるのは 久しぶり
 ある意味 新鮮 だな??

  いや こないだ 狐と歩いた な???


「 いるか?」

「あっ」

扉の前で立ち止まっていた私の背後から、手が伸びて普通に入って行った金色。

「ちょっ、待ってよ。」

どう「感動の再会」を果たそうかと、考える前に
きっとその「長さ」を予想していた彼はとっとと中へ入ってしまった。

「お姉ちゃん!!!」

「!!!!!!」

しかし、飛び込んで来たティラナに そんな事はどうでも良くなってしまったのだけれど。


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