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5の扉 再びのラピス 森へ
私が なにものであるのか
しおりを挟むこの、ヴェールは 一体「なにで」出来ているの
だろうか。
フワリと家に掛かる それを確認しながら
「約束の場所 森の家」を 外から眺めて。
家の脇に新しく植えた ハーブ達を愛でながら
呑気な私は「エローラは 辿り着けるかしら」なんて 考えていた。
ヴェール とは 見えない とは
霧か 幕か
はたまた 私達の「思い込み」か。
そう、「自分でヴェールを張る」と想像し始めて 暫く。
「なにで」「どうやって」、それを考え始め そこから
なんとなくの「方法」「手段」、それに至ったのだけれど。
そう もしかして もしか しなくても
それは 「思い込み」の可能性 すら あって。
「そう、見えないと思ってるから、「見えない」。それは、あるんだ。」
同じ言葉を話しても、「受け取るもの」が 違う様に。
「同じものを見て」いても
「見えるもの」が 違ったり
「見えなかったり」
「見えたり」色々なんだ。
「 ふむ?」
しかし、私が張るヴェール
それが「エローラに 見えるのかどうか」その一点に集中すると
それは「見える」、きっとそう私が「思っている」から。
「ふーむ??」
「なに、してるのよ?」
「あ!お待たせ? いや、違うか。」
「いいえ、間違ってはいないかもよ?私、ずっと横にいたけど?まあ、ヨルだからね。」
「エヘヘ」
少し困った呆れ顔のエローラは、どうやら少し前から私の事を観察していたらしい。
「無防備ねぇ。何か、塀でも柵でも、無いの?ここは。」
「いや、今その話を考えてて。多分、エローラだから、辿り着けるんだよ、きっと。」
「?それなら、いいの、かな?」
「うん。」
自信満々でそう返事をする私に、些か心配そうな灰色の瞳。
しかし、視線が私の頭の上を滑り「なにか」を確認して「安心」の色を浮かべた彼女は。
一息吐いて、私の隣に腰掛けた。
「?」
「いや。楽しそうだなって、思って。彼との森生活。」
「 」
やや 久しぶりの私達
しかしそんな事は微塵も感じさせず、いきなりぶっ込んでくるエローラは流石である。
早速真っ赤になった私を見てニヤニヤとしている灰色の 瞳
その視線の行き先に、やっと考えが行き着いて。
背後を振り返ったが、彼の姿はもう 見えない。
「私を確認したら、すぐどこかへ行ったわよ?」
「そ、そうなの??」
「ふぅん。まあ、貴方達二人なら喧嘩もしないでしょうしね。」
「えっ」
エローラは するの??
シャルム と???
全く想像できないその様子に、思わず首を捻る。
「いや、私の事はとりあえず置いといて。結局、姿は隠さない事にしたの?」
「うーん。それも、色々あるんだけど。 」
ヴェールの話は、ややこしくなりそうだから 置いておこう。
そう、この前は私がエローラを「迎えに」行ったから
そのまま家へ 普通に辿り着いたけれど。
今日は「エローラ一人で家に来る」という約束をしていたのだ。
なにしろ自分の予想は当たっていて、きっとハーシェルやティラナも自由に訪ねて来れるに違いない。
「知って」はいたが、「確認」ができて満足した私はエローラを中に案内しながら。
その「姿を見せる件」について説明する事にした。
お茶の支度をし 一頻り 摘んだハーブを片付けた所で
私が話し始めたのは、少し前 ハーシェルの所で話した「女神は実在する作戦」だ。
そう、私の成長の為
街の人達の刺激の為
それに 結婚式の後 ラピスの空気が「変わったのか」
そのバロメータにもなると思う それ。
その両方にとって利になる、その話は。
案外予想外だった様でしかし、驚きながらもエローラが口にしたのは、私の噂の話だった。
「だから、森に住み始めたのは「魔女か女神か」なんて。論争が湧き上がってるのよ。まだ、小さな噂だけど。まあ、ほぼ全員知っては、いるでしょうね。」
「ふぅん。」
どうやら本部長の流している「薬」と、「泉の効果」、そしてどこからか漏れているらしい「金の蜜」の話。
やはり「人の口に戸は立てられない」というのは
どこの世界も本当の 様で。
色んな話が、巡り巡って 「森の女神」「魔女の薬」「金の蜜」「不思議」「結婚式の祝福」「変化の風」「他の扉の 噂」
それを複合すると「不思議な新しい もの」、「森の女神」という事になっているらしいのだ。
「本当の事を知ってる人達は、敢えて黙ってるけどね。「森に住んでる」って言うのもまだ、ただの噂だし。でも「森」って言葉が出るとドキッとするのよ…………なあに、呑気なのね。」
「うん。でも、なんか 」
「なに?」
うん
そう なんて言っていいのか わからないけど。
「…………別に。どっちでも、良くない?」
「えっ。良くないわよ。」
「そう??」
首を傾げた私の姿に、エローラは呆れ顔で溜息をついている。
でも。
本当に。
だって 「魔女」でも いいし
寧ろ 素敵
「女神」の つもりで フリをして 来たけど
まあ うん。 そう ね。
「なん、か。自分が「なに」かは、実際よく解ってないし。でも、なんでもいいけどなんでも、良くはなくて。でもその二つなら、どっちも「アリ」なんだけどな………。」
「相変わらず、呑気ねえ。」
頬杖をつきながら、苦笑する エローラ
その姿を見て「大人っぽくなった」「灰色の髪 艶々で 流れてる」なんて。
その「光景」を 客観的に眺め始めた 私は。
「魔女」 「秘密」
「薬」 「ハーブ」 「泉」
「女神」 「金の蜜」
「効果」 「光」
その、キラキラと回り始めた カケラ達を見て。
でも だって 私が 自分を
「本当は 」「何者なのか」「どんな ものなのか」
知っていれば。
別に 他の人が 知らない人が
何を どう 言おうと それは 別に
関係ないんだ。
全くもって 全然。
そう、しっかりと「わかり始めた」自分の事も
客観的に 眺めていた。
それにこの頃 沢山の場所を 色んな視点で
「見る」様には していて
そうして気付いたことが ある。
それは そう 「私の こと」
「自分」と「他者」の 「違い」
それは
私が ここへ 来た目的の ひとつ で。
それをやって 段々と 見えてきたこと
それは。
実際「外」は
見れば見るほど 私とは「違って」「離れて」いて
私は「自分の 他者との乖離」を改めて酷く 意識していて。
だからこそ
よくわかる「違い」、しかし少しは「こうなりたい」「あれいいな」、そう思う事があるのかと、思っていたけれど。
凡そ 「私も そうしたい」という 「場」が。
まず、無いのである。
私はまだ、子供だ。
年齢で言えば 多分15か16
「普通にいけば」仕事をして 結婚して 子供を産んで。
でも「見本」にしたい、と「ピタリ」と嵌る場はどこにも見つからなくて
想像しても「ある」とも 思えなくて。
多分 強いて言えば。
ヨークの工房か
「イストリアの店」くらいだと 思うのだ。
それに 「今 気付いた」けれど
私が「ない」とか「無理」と 思うこと自体が 珍しいのだ。
そもそも「無限」の地点に
「狭間」に いる いた 私
今は「森」だけれど 「かたち」は 私の中に
内包されているのだ。
そこに「不可能」?
ある の?
そんなの は。
「でも私、自分が実際「商売」できると思ってないし、「教える」のも無理だし………なんか、そもそも一つの同じ事をずっとやるのに向いてない、って 言うか。」
あの 「輪の中」に
入れる気が しない と いうか。
「えっ、でも。ずっとヨルは「ヨル」じゃない。」
「?」
「いや、「ただあって 祈る」って。言ってたけど、それなら。ずっと、できるんでしょう?」
「 」 あ。
エローラが 発したその言葉に。
「ピシャリ」と雷で打たれた様な 衝撃が走る。
「 確かに。」
「ある意味「やってること」がベースじゃなくてヨルは「そっち」がベースなのよ。それでその時々で、やりたくなった事をやれば、いいんじゃない?それで結局、光が降る。なにか、みんなの為になるものを創ったりやったり、するんでしょう?何するのかは分からないけど、それがヨルの面白い所よね。そもそも、「想定外」。」
エローラ さん 。
でも。
そのエローラの言葉は、言い得て妙だと 思う。
「私 は 私」 「想定外」
そう きっと そもそもが。
「枠の外」なんだ 私が。
確かに 思えば。
私の場合、「やろうと思って やってない」部分が多くて。
いつも衝動的に 若しくは「閃いて」「導かれて」
「そうする」から 「そうなる」のだ。
「だって「普通は」。やりたい事って言われたら、仕事とか結婚したいとか、そんな事じゃない。そもそも「ただあって 祈る」なんて言う子、いないわよ。だから、それはそれで、いいのよ。多分、他の事もやればできるから、そうしちゃうのかも知れないけど。でも、「そっち」は。ヨルしか、できないからね?今更だけど、ヨルは「普通じゃない」っていう、自覚が足りないわ。」
「えっ、そうだね? まあ なんか う、うん。」
エローラからの 光を飲み込みながら。
キラキラと 舞い始めた 私の中のカケラ達を
ボーッと目に 映す。
「みんな」
「違う光」
「違う色」 「それぞれ」
「様々」 「多種多様」
「自分の 道 を」。
それは 「知っている」けれど。
その 「なか」でも きっと 「特殊」な
「私の道」
確かに そう なんだ 。
それは ずっとずっと 廻り巡って 見て来た から
わかる。
人に ある 段階 通り道 工程
旅の 「超えてゆく 山」の 高さ。
私が 今 「超えている山」は 「最後の山」
だから 「とんでもなく 普通じゃない」のは。
ある意味 当然 なんだろう。
手元のカップをくるくると回しながら
黄金色の澱を滑らせて遊ぶ なんでもない遊び
静かにお茶を飲むエローラの呼吸
テーブルにある 花達の「聴こえない内緒話」。
そう 今はあまり 聴こえないけど
多分 聞こう と「思えば」聞こえる それ
しかし私の「なか」では 「自分のいろ」達が
キラキラと 「閃き」を回収中だ。
きっと
「なかみ」が 落ち着くまでは。
それは聴こえて来ないに 違い ない。
結局、初めから。
私は 自分の「見えない光」に 導かれて。
結局今、ここにこうして いる ある
そういうこと なんだろう。
思い返してみれば、ティレニアで ディディエライトに 出逢ったところから。
私は「自分の道」を きちんと辿れていたのだろう。
右往左往 しながらも。
だから 結局。
「「魔女」だって「女神」だって、悪いものじゃないでしょう?なら、いいんじゃない?」
「えっ。魔女………?」
今更ながら 「私の評価」など
別に「魔女」でも「女神」でも 「青の少女」でも
もしかしたら 「幽霊」でも。
別に、なんでもいいのだけれど。
しかしどうやら、エローラの認識ではきっと「魔女」は「良くない」のだ。
私的には 「とっても素敵」なのだけれど。
「えっ、それイメージの改善に着手した方が いいかな?」
「いや、それはいいわ。止めて。なんか、私が叱られそう。」
「あ、それはあるかも。」
そう嗜められて、私の「魔女をいい魔女に 作戦」は急激に萎んでしまった。
結構 楽しそうだと 思ったのに な?
「ま、それはいいわ。なにしろ自覚があるなら、ちゃんとやれてるって事だものね。「ヨルが女神」、それって合ってるけど心配でも、あるもの。なんか、トチって変なお願い事聞きそうとか、とんでもない方向へ突っ走って行きそうとか………。」
遠い目をした 灰色の瞳を咎められない所が キツい。
そう「前科あり」の私はきっと、エローラの中ではまだ「心配な妹」の様な存在なのだろう。
それも、またいい。
「フフフ」
「ほら、怪しい。」
そうして笑いが移り始めたエローラと 一頻り笑って。
そんな、私達の会話が再び明後日の方向へ 飛び
収拾がつかなくなったのは
言うまでも ないのである。
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