透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

見えない ヴェール

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 うん ここなら きっと。

 あっち  と   こっち

   こちら側と  向こう側


 この 支流を 「境」にして
 ヴェールを 引き 「見えない」ように する


それはきっと 「可能」。


小さな泉を調べ、その周囲をぐるりと周って見たけれど
特段変わった事は無い様である。

しかし、大きい方には居る魚達は見当たらず
見えるは 水草 藻 水底の葉 大小の枝
その中心にある 水が湧き出ている場所。

その、流れが思ったより強いからか なんなのか。

中心には沸沸と 泥か 砂か 盛り上がるそれが水を吐き出す様がはっきりと見え、その水流の割には水が濁る様子もなく やはり抜群の透明度を保っている泉。


「うーーん?とりあえず、こっち側は「私の場」にさせてもらおう。うん。ごめんね、よろしく、みんな。」

辺りの木々、小さな泉に そう挨拶してサワサワと揺れる返事を聞く。

この森の一部を私が「借りる」、それ即ち森の場所を「占有」すること
「みんなの森」を 少し「独り占め」する事に他ならないからだ。


しかし、私が張る「ヴェール」は ある意味「見えない場」を創る為のもの
もしかしたら普通に通り抜けてしまう様な、場になるのかも知れないけど。

それはまだ、分からないし なにしろ「森の場所を借りる」のは事実だ。
森に「祈り」、挨拶は したのだけど。

場所を決め、「ここ」へ挨拶をしないとスッキリしない。


そうして木々達の爽やかな声を聞き、泉の輝き、空気と風の流れ。

それを 全身で感じて「気持ち良さ」を確認すると、本格的に仕事へ取り掛かる事に した。

先ずは その「ヴェール」を張る所からだ。



 ふむ。 なかなか そうね
 ここには 私の「小川」が ないからね うん。

私が目を付けたのは、小さな泉から大きな泉へ流れ込んでいる、その「小川」
ここはきっと「区切り」に丁度いいし それに。

「フフフ  そう、「必要」なものはしょうがないよね、うん。多分浄められるから大丈夫な 筈。」

そう、その「小川」を。
私の神域と同じ様に自分が寝そべる用に、したいと思ったからだ。

 そう だからここに ヴェールが あれば
 安心して。

 寝そべって 流れるし
 その澱は 星屑 若しくは光に なって 泉へ
 うむ。
 それ即ち 完璧で あるのだよ うむ。


ぶっちゃけ「逆に 汚くなる?」と一瞬、思わなかった訳じゃないけど。

でも、私の「澱」は「ひかり」に変わる。
それならばきっと泉にもいい影響が ある筈なんだ。

「まあ、とりあえずやってみて駄目なら。止めれば、いいし。」

 ? でも ヴェールって どうやって
  張る?  んだろう か

目を瞑って、想像 してみるけれど。


 「藍」が いない 今 私の 「祈り」は

 「思い」は どう 展開するのか。


ゆっくりと目を開け、少し浮き出た「寂しさ」をナガが捕まえるのを見ていた。
いつの間にか私の側へ戻っていたナガは、きっとその空気を察知していたのだろう。
何処かへ飛ばした澱が消えるのを眺め、また私に視点を移して 待っている。

 うん そう

 黎も いる。

 それに。


再び視線を「青」に戻して。

 私の 泉
 最初の水  藍と一緒に 創った。

     初めての 「創造」なんだ。


それを意識すると。

 「そう」 「そうよ」  「大丈夫」

   「見てる」  「いるわ」

    「一人でも できるから 私は残ったのよ」

そう、水面の光が私に伝えてきているのが わかって。


 ああ 「融け込む」って きっと

   こういうこと

  「わかる」 こと 「沁みてくる」こと


 「繋がっている」と。

  「思える」「知っている」 こと なんだ。


それが また改めて解って。

ジワリとくる胸に手を当て、その心地良さを暫し
味わう。


 うん できる。

 だって 「私」は 「変わって」「変容して」

 「みんなの お墨付き」 「一人でも ぜんぶ」だから。



そうして、暫く森の緑を味わい、泉の「あお」を沁み込ませて。

再び、自分を真ん中に戻して ゆっくりと目を 開けた。


さて。 
ヴェール とは。

気を取り直して 想像を始める。



 うーーーーん
 フワって  サラッて  なん か

 「かける」と いう よりは
 なんか   

 「場」が 「浮く」? 「変わる」「上がる」

「そこにある」けれど 「見えない」

 「次元の 違い」  「濃さ」「厚み」「粒子濃度」

  「存在の定義」 「場の 基準が 違う」


「ふむ?」

 これって。 
 
 「ヴェールを張る」と 言うよりは。

「多分、「私が創れば」、って ことかな…………」

 ?????

「まあ、だろうな。今のお前が創ったものは以前とは違うものになるだろうからな。その存在自体が、この場とはズレが生じる筈だ。」

「あっ ?」

突然現れた彼に、驚きと頷きと 納得と「やっぱり?」という 一致感

 やっぱり なんだ


 「  ズレている」という 事実

 それは あの「細かさ」「微細な感覚」
 「違い」「波長」「合う 合わない」

「見えている もの」が 違う事実
それと 同じ様な こと なんだ きっと。


「   ふむ。」

わからないけど 解る、その感覚
しかしそれは「本当」だからこそ、解るものなのだろう。

「落ちて」くるのだ、きちんと 私の中に。


「ふむ。じゃあ、とりあえず創れば。いいって事だよね………。」

チラリと確認した金の瞳は既に他へ向けられていて、私が創ろうとしている範囲外を確かめている様だ。

それなら、そちらは任せる事にして。

さて?

 私 は なにを?

 始めは 創ろうか な ??


なんだか、大きなものを創るのは久しぶりだからか
テンションが上がってきた。

しかし それは いいこと
きっと「出来上がり」も より美しくなるだろうし、快適な住まいが出来るに違いない。

なにしろ足りなけばまた足せば、いいのだ。
とりあえず形を創らねば 始まらない。


 じゃあ 必要  なのは ?

 「キッチン」は 食事ができて コンパクトで 
 いいよね 広くなくて いい
 うーん 明るくて 暖かい 温もりの  うん

 で 「寝室」。
 えっ  まあ  ひとつ  一つでいい よね 
 まあ うん  
 それは マシュマロ?? え どうなんだ それ

  あの人極彩色と ベイルートの寝床は  
  要るのか いらないのか どうなんだ ろう

 玄関  庭はまあ 森だし 

 「お風呂 トイレ」 
 なんか 緑の部屋思い出すな…………

    あんな感じ で  えっ「外」
 えー でも  「外」いいかも 「見えない」なら 
 アリ寄りの  アリ じゃ ない ???


チラリと金髪の行方を探す。

しかし、意外と近くにいた彼は 私の顔を見ながら何かを思案している様で「考えなかみ」に気が付いてはいない様だ。

 ふむ? バレて ない?

 いや でも創れば バレるしな ??

そう思ってモジモジしていると。

「どう、した?」

そう言って首を傾げている いけない人がいる。

 なんだ それは。

 えっ  わかって る んでしょ?
 ねえ  なにそれは  嫌がらせ いや 悪戯?
  なの???   ねぇ


しかし。

私のその「なかみ」の問い掛けに、彼は疑問の色を投げかけたままである。

「えっ。聞いてたよね??わざと??」

「いや。多分、ここだからであろうな。以前神域の様には、解らぬよ。」

「えっ」

 そう  なの  ???

「だから。、伝えて貰わねばな?」

 えっ


そう言って。
含みのある目をした彼は、笑いながらまた近くの木立へ消えて行った。


 えっ  ちょ  えっ


そう 私の「想像」は 「あのこと」
「口に出さなくても伝わっていた 交わり」の
方へ飛んで。


 えっ       え  


     えっ


 ちょ、  まて   落ち着く のよ。

 とりあえず。


 とりあえず 「今」は 「家を創る」の よ


そうして必死に、自分の「いろ」を 戻して。

「肌色」とは 気の所為だったのか
という「ピンク」をパタパタと冷ましながら、泉の周りをぐるぐると 周っていたので ある。


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