上 下
953 / 1,483
8の扉 デヴァイ 再

移動 再びのラピスへ

しおりを挟む

支度と言っても 「持ち物」は 殆どないし
私は「私の光」と 「羽衣」
 手には指輪
  隣には いつもの金色。


神域へ戻ってから、あれこれ考えを巡らせていたが
どうやらそれしか思い付かない。

チラリと、隣を見てみるけれど。

いつもの様に、暖かい瞳で私を見つめるその色は
とても綺麗なのだけれど スイッチが入ると いけない。

 うん 私は 支度を 考えるのよ

  うん。

しかし。

きちんと、この人に説明した訳でもない「森行き」計画
だが、この色はきっと「知っている」から反対しないのだろう。

 何故 私が「今 また」森へ行きたいのか
 森で なにを どう  したいのか。

 そこに行けば また 「変化」「変容」するだろうし
 きっと はっきりと「知れる」のだろう
 自分の「位置」が。
 


「 ふむ?」

チラリともう一度、その色を確認するけれど きっとだろう。

 なら 改めて相談 は いいか

「伝わっている」そう、思いながらも。
より、流れ込む様ポスリとその肩に凭れ、「私の光」について想像してみる事にした。

あの時「展開」できなかった、私の光達
私が気になる事と言えば、後はそれだけだったからだ。


 うーーーん?

自分の意識を森へ飛ばし、私の思う森を展開した後
達をいつもの様に、舞わせてみる。

 
 「? 」

やはり、「見えない」。

 今、こうして 少し離れた場所で遊び舞っている
 みんなの姿が。

 背景が森になると、展開しないのだ。


フワリと手を広げしなやかに舞う慶、手にある宝珠が光り輝き、その光を受けまた別の手にある鈴が 鳴る。

その周りをラーダが羽衣を靡かせながら舞い、桃色の花びらを撒いて 辺りは桃色の風が吹き始めた。

 遠くを見ると 羽を大きく動かし旋回する キラル
 それに合わせて 流れる様に飛ぶ窮


「えっ?「広さ」?違うよね…???」

確かに、森には木があり障害物と言えば、そうなのかも知れない。
でも。

 光に 神に それ 関係ない よね??
 ジュガ は。
 「森」じゃなく 「扉間」の問題って 言ってた

「それ即ち「次元」的な?問題??」

確かに。

きっとまだ「始めの私」だったならば ここ神域へは来れまいし
達も まだ いない

 それ 即ち 「見えない」って  

 こと??


「  そういうこと、なのかな………?」

「まあ、そうかも知れぬな。」

「えっ。」

いきなり答えが返ってきて、自然と馴染み過ぎていた背凭れに吃驚 した。

 そう いえば  そうだった。

さっきは肩に寄りかかっていたつもりだったのだが、いつの間にか膝の間、彼を背凭れにして座っている私。
しかしそれは ある意味いつもの体勢だ。

気を取り直して質問の続きをしてみる。
この雰囲気だと なんだか応えてくれそうな気がしたからだ。


「ねえ、でも。「今の私」は、見えるのに?向こうラピスに行くと、見えなくなっちゃうの?」

「さて。何と言ったら、いいものか。」

そう言って少し、私を見つめ なにやら考えている金の瞳。
その、くるくると変わる色が 面白く美しくて。
思わずじっと、至近距離で見つめてしまった。


 あ いかん。

しかし私のその行動を 揶揄う為か 試す気なのか
くるりと「いけない色」を現した彼は、しかし。
何事もない様に、そのまま話を始めてしまった。

 え なに
  なんなの 

ややピンク色になった私の身体
しかし話は真面目な話。

半分頭に入っているのか分からぬ、まま。
とりあえず「かたち」に任せる事にして、その色に流されない様 視線を白いシーツにずらして話を聞いていた。


「きっとお前はを、確かめに行くのだろうが。ここのお前と、向こうのお前は同じだが違っても、いる。向こうの方が密度が濃く、重く、より「地」に近いのだろうな。吾輩も「こうなって」からは初めて行く森。ある意味楽しみかも知れぬ。」

「 ぇ  そう だね??」

その、意味が分からなくて。

一瞬 怯んだけれど しかしその中身はよく、解る。


 ん? でも 「濃く」? 「密度」??
 「体」が 出来て?から??

 え でも この人 結局。
 なにが どう  変化?して???

え  それも 「行けば」わかる のかな ???


ポッポとしてくる頬を押さえ、しかし本題は「達」
だが彼の言う「密度が」という 部分
それを考えてみると。

確かに、よく 解るんだ。

 説明 できない けど。
  
それは「濃さ」なのか、「段階」なのか
はたまた「次元」の違い、なのか。


しかしきっとこれまで辿ってきた道、それが無ければ見えなかった光

その道を「戻る」ということ
全くそのまま「移動」とは 少し違うこと
でも そう 必ず。

 「」は いる ある 私の側に
 共に  私の一部の ままである こと。


「 ふむ。」

「まあ、行った方が「早い」。」

「そうかも、ね。」

確かにきっと 彼の言う様に。
私の場合「考える」より「やる」方が早い。


「うん、分かった。ありがとう。じゃあ、それはまた…」

ん?でも 他に。
考えること、なんか あったっけ な??


ぐるぐると頭の中を浚ってみても、特に何も思い付かない。

ならば 本部長の準備を待って。
了承が出次第、出発でいいだろう。

「それまでは、じゃあのんびり しますか。」

そう言って、コロリと横になると。

フワリと影が差して 彼が私を見つめているのが、分かったけれど。

 ふんだ さっき意地悪 したもんね
 見ない もんね


そうしてしっかりと目を閉じた私は、何故だかそのまますっかり入眠 したのであった。









 ん?    ゆめ ? ?


  フワフワ  ふわふわ と 揺れる道中

 私は 光なのか なんなのか
  不思議な明るさの道を 歩いて いて。


左隣には シリー
反対側に 大型犬程度になった 白
ナガは私の背にシュルリと巻き付いて いて

何故か道中を先導しているのは 朝だ。

 その 後ろに金の髪が揺れているのが見え
 少しトーンが落ちた 狐がちょこちょこと走り回るのも 見える。

   
    確かにあれなら 普通?の 狐に
    見えなくも ない ?


時折キラリと空中が光るのはきっと ベイルート
なんとなく「森へ」の行列かと思い
チラリとシリーの表情を確認する。

「大丈夫」と言う様に微笑んだ 飴色の瞳
それを見て安心すると。

 「行こう行こうと思ってるから 夢に見てるのかな」なんて。

呑気に思っていた。
それ程幻想的な道 だったからだ。




白っぽい 灰色の道 
薄く発光している様な 柔らかな光
しかし しっかりとした足元と周りの包み込む様な空気。

 ああ 気持ちいい な
  ここを 抜けて  どこ へ


 ん ?

胸に思い切り空気を吸い、その美しい色を堪能した所で忍び寄る変化に気付く。

微細な、その 空気に含まれる 粒子が。
微量だが、変わったのだ。


 ん あれ?  なんだ ろう

しかし、嫌な雰囲気は 無い。

少し「実感」が伴う様なその粒子
優しく柔らかい「光」だったものが「色付き重さを増す」様な、そんな感覚

微量だったその混入率が 徐々に 上がり始めて。


 あ。

もう少し、進んだ先にあった「見えないヴェール」を潜った時
それはしっかりとした「実感」になって 現れたのだ。


 あ これ 「森」だ
 夜? 暗いけど 見える

  なんで 夜  でも 綺麗だけど。


月明かりの差し込む木々の下、朝はもう姿が見えず
金髪を見失わない様、しっかりとシリーの手を握りながら進む。

 ん?

背中で「重さ」を感じ、ナガが蛇になったのだと
わかる。

いや、元々蛇なのだけど あれはきっと「
しかし、ここに来てしっかりと私に巻き付くこの感触は「実体」を伴う蛇、そのもので。

辺りの「空気」「密度」「湿度と温度」「木々の温もり」「地面の感触」「匂い」「密接する なにか」。

その全てが私に「ここは 森」だという事実を、伝えて来ていて。

 大型犬程度の白
それも「固定」されているのが解る。

いつもの神域の様に、緩りと「変化できない」のが、肌で解るのだ。


いつもより「不自由」な感覚
背後の頭上に達が 「いる」のも解るが、きっと「見えない」のだろう。


 どうしてなんだろう
  でも 「森」だから だよね

なんとなくの納得、解らないが そうだと「知っている」私はくるくると頭の中で回るカケラの範囲が狭くなった事にも気付いていたけれど。

前方に、何か灯りが見えてきた事にも、気付いていた。


 松明?

 いや あ。 ザフラだ。

その直感に「カチリ」と嵌まった私のカタチ

ピクリと動いたシリーの手を、ゆっくりと離して。
その瞳を見て、頷く。

「ありがとうございます。また、後で。」

「うん。  」

 気を付けて? ありがとう?
 これからも また   後でね?

色々な台詞が頭を巡るが、言葉は 出ては来ない。

シリーはそんな私を見てお姉さんらしく微笑むと、ゆっくりと振り向いて灯りの方へ進んで行った。


 え これ 私 行っていい
 いや 感動の 再会  しかし 一応 挨拶?

  え どう なんだ これは。


自分達が、薄らと光っているのは 分かる。

きっとザフラの方から見れば、さながら「女神様一行」だろう。

なにしろ、ザフラはじっとただ、ずっとじっと
シリーを見つめていたし
シリーはその視線をされるがままに受け止めて父親が自分を確かめるのを待っている様だった。

 えっ
 ちょっと待って 。 泣きそう

 駄目よ 今 「女神」だから。


一歩、また一歩とシリーに近づくザフラ
そうしてやっと、「自分の娘」だという確信が持てたのだろう。

ギュッとシリーを抱きしめる、その無言の 姿に。

「今なら 見えないだろう 」と羽衣で涙を拭う私
きっと羽衣は上手く涙を吸収して、これも光にしてくれるに違いない。
なんたって、感動の涙 なのだ。
うむ。


そうして体裁を取り繕っている途中の私に、声が 掛かったのは割とすぐだった。


「本当に。本当に、ありがとうございます。」

 あ 待って?

慌てて「微笑み」を作り、パッと袖を下ろす。
とりあえず私は黙っていても 差し支えあるまい。


「夢に、出てきたのです。今夜、帰ってくると。しかしまさか、いや、疑ってはいなかったのです。ですが…………。」

「いいえ。長い間、待たせてしまいました。しかし、これからはずっと一緒です。」

思ったより 「鈴のような声」が 出た。
あの時ディーが出した様な、そんな声だ。

 でも きっと 「うしろ」にいて くれるからだね

そう、思って暖かくなる胸
そのディーからの返事を感じながらもくるくると回る頭の中。

悪戯なカケラがチラリと浮かび
「シリーが お嫁に行かなければ」と、余計な事まで言いそうになったが流石に口を噤む。


 いやいや 私 今 「女神」だから。
 駄目よ  それに お嫁に行っても 一緒に暮らすかも
 だし ねえ?

そんな二人の未来を想像しつつも、シリーの足元に朝が座るのを見てこの場を締めなければと、気が付いた。
きっと朝は、とりあえずシリーについて行ってくれる筈だ。


「では。また、「祈り」を。それだけです、ありがとう。」

「はっ。」

かしこまり跪くザフラ
それに倣おうとするシリーに手を振り、隣に立つ金の瞳を見上げる。

「では。」

 うん。


そうして。

眩い光に包まれた 私達は。
そのまま暖かい焔にも、包まれてフワリと飛んだので ある。








しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

甘灯の思いつき短編集

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:5

evil tale

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:22

レナルテで逢いましょう

SF / 連載中 24h.ポイント:455pt お気に入り:1

黄色いレシート

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:228pt お気に入り:0

無表情な私と無愛想な君とが繰り返すとある一日の記録

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:0

如月さん、拾いましたっ!

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:540pt お気に入り:1

処理中です...