透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

エローラとの再会

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「ああ、成る程ね。なんか、前に「ただあって、祈るだけ」って言ってたの、解った気がする。、なんだ。」

「 うん?うん。」

何故だか開口一番、私を見て言った エローラの台詞が。
それだったから、私は一人ウケていた。


「エローラと会おう」、それを決めた時から
私に「姿を偽る気」は 無かった。

それは必要ない事だし、ある意味彼女の素直な反応が 見たかったからだ。



本部長の予想通り、私の姿はきっと「見せよう」と思えば見えるらしく、試しに教会の帰り道「チラリ」と姿を現した時は。
一瞬、振り向いた人の姿が見えて瞬時に羽衣を頭から被った。

 やっぱり ?

 勘のいい人には 見えるのか
 でも 「どういう形で見えるのか」は 分からないけど。

今度、長老に森の住人達の間では「どんな姿」に見えるのか
聞いてもらおうと思いつつも「あ、女神なんだった」と、自分の間抜け具合にクスクスと笑う。

しかし、ハーシェルやティラナに普通に見えるという事は、私が気を許している人物には普通に見えると思って 差し支えないだろう。

そう思いながら帰る 森への道中、なにしろ兎に角私の頭の中は「エローラを どう驚かせるか」で一杯になっていた。

 こないだから 大分 変わった し?
  私も 「オトナ」に なった

  いや 「大人」おとな ?いやいや?

  これ 落ち着かないと なんか。 ヤバいかな??
 すぐ 突っ込まれそう  それは いかん。

 エローラも変わったかな? どう かな?


今回、エローラにはハーシェルから伝えて貰う事にしたので、彼が「どう 話したのか」は分からないけど。
なにしろ待ち合わせ場所の森の入り口に、私が迎えに行く事にしていたのだ。




静かな 森
 ウキウキと ドキドキ半分
 でも「楽しみ」が 一番多い 私の「なかみ」。

軽快な足取り 土の感触と時折鳴る葉っぱのリズムが
静かな空間に心地良い音楽を奏でて いる。
時折泉に行くザフラの案内は見るけれど、基本的に森に人気ひとけは 無いのだ。

 エローラは 変わってるかな
  どうかな
 私を見て。

  どんな 反応を するだろうか。


そう、思いながらトウヒの下を通り すぐそこの木々の切れ目から
エローラの灰色髪が、見えてきて。

こちらを見て、「私だヨルだ」と 気付いたのか どうか。

珍しく静かに近づいて来るエローラの様子に、私もなんとなく目を合わせ頷いただけで、森の中を そのまま案内して。
彼女は私の全身を凝視してはいたけれど、思ったよりは落ち着いていて、そのまま森の小屋までやって来たのだ。

そうしてお茶の支度をしていると、突然口から出て来たのが、そのセリフ。

それが「なんだか 納得」という よく分からないものだったのである。



 ふむ てか  エローラ ウケる。

一人でただ、納得して深く頷いている灰色の瞳が面白い。
しかしそれは私を「チェック」する事にも、余念がない。

羽衣がどうなっているのか、気になる様でくるくると周りながら「ふんふん」言って、いる。
どうやらいつもの調子を取り戻した様だ。

「まあ、そっちの感性が開いたんでしょうね。確かに二人は、どうなってるのかしらと思ってたけど。きっとあの頃のヨルは閉じてて、感じない様にしてたんでしょうね。今、開いてるのはじゃないんだろうけど。」

「  ぅ?うん??」


 えっ  今 そっち方面金色の 話 

              だった ??

急に飛んだエローラの話、しかしそれは私達にとってはある意味いつもの事である。

お茶を注ぎながら 自分の思考も くるりと切り替えて。

 「私の変化」「見た目」「なかみ」
 「エローラに バレてるのかな?」

そんな事を考えつつも「そっち方面」へと思考は
滑って ゆく。


 確かに。
「あの頃の私」は 彼をただの湯たんぽだと思っていたし
 きっと「女性性」に対して ガードがあった
 閉じてたんだ。

 それは 今とても わかる。


「ん?「それ以外」??」

しかし エローラが言う「それだけじゃない」は。
一体 何を意味しているのだろうか。

多分 またまるっと顔に、出ていたのだろう。
その、私の視線に気付いた彼女は当然の様に、こう言った。

「え、だって。まあ、見た目も違うけど、それより、なんか。なんて言っていいのか分かんないけど、ヨルがなりたいって言ってた。「ただ、あって祈る」を。形で現してる様な、姿をしてるわよ。」

「えっ  」

 それは なんか。

 素直に嬉しい。

「確かになにか、じゃ、ないんだけど………あ、勿論見た目も変わってるけどね?でも、そうじゃなくて、なんだろうな…。雰囲気?空気?でも。あの、教会にある「あれ」に近いかも。」

「………それって。」

「うん、そう。あの人形神よ。」

「   」

その 時

 私の「なか」で パチパチと嵌る ピース

   「感性」 「エローラ」 「ティラナ」

その周りを回り 包む

  「人形神」   「姫様」 「ディー」

 「キラル」 
         「セフィラ」  
                 「わたし」

その どれもに共通する  「いろ」。


 「私達の いろ」それは 白 遊色

   「限定できない」 「多色」

 「すべての色を 含みたい なにか」。


 「始まり」は きっと単純だった
 ディディエライトの頃 だったのかは
 わからないけど。

 でも 「光」は「いろ」は 「繋がった」んだ。

 だから。


「  うん、そう、なの かも。」

そう、素直に言える自分の変化、成長をまた胸に感じ 思う。


 私の 目指しているもの とは なりたいもの とは
 姿 とは。

「うーん、別に「神」になりたい訳じゃないんだけど、でも。なんて言うか、みんなが「そうだよね、やっぱりそう思うよね」って。「こんな人いるんだ」「いてくれたんだ」って。「私が描いている理想」、信頼できる、信じていい、それ。そんな人に、なにかに。  なりたいのかも知れない。」

「うん。」

しみじみと、一言だけそう返事をしたエローラは
ゆっくりと何かを考えている様だったけど。

ポンと膝を叩くと立ち上がって こう言った。

「そう、私達には。光が必要よ。みんなが、希望として目指せる、様な。道標に、できる様な。結局、なんでしょうね。」

「  うん。」

多分、私達の思っている事は 一緒だろう。

 
 何をも 気にせず みんなが
 自分だけの 色で 輝ける世界

 基準が 愛であること 
 力で ねじ伏せられる事がないこと

基本的な事が、蔑ろにされてきた これまでの世界
それが 変わる 変わっていける こと

まず先に空で光り輝き 道標になるのが「私」だということ。

 そう 本当に 心から思ってくれる友達が
 いることの 有り難さ。


「うーん、言葉に、できない。」

「なに、言ってるのよ。それで?最近、どうなの??あれから結構、経ってるけど?」

「えっ、エローラさん  」

さっきの 続きです か???


「なによ。バレてないと思ってたの?冗談止してよ、それだけ変わっておいて。何も無かったとは、言わせないわ。こないだ帰って来た時は、まあ「好き合ってる」くらい?だった?ああ、キスまでしてたよね???」

「  ぁ  ぅ    ぅん?」

 知ってたけど  わかってた けど。

 エローラの勢いが ヤバい。

「私が一体、何の為に来たと思ってるの?」

「えっ」

  それ は 「私を追求 するため」じゃ

  ないです  よ ね ??????

ん?
でも??

「ん?えっ、ちょっと、待って?私はなんか、そう、「そうなった」んだけど。エローラは?シャルムと ???」

 結局 どう なったの ???


ハーシェルが言うには、前回ラピスへ帰った時から既に一年が過ぎていると言う。
しかしあの時は、時間がそう無かったのもあり結局どうなったのか、詳しく聞いてはいなかったのだ。

シャルムが帰って来たのか、どうなのかという所だった、様な?

ならば、春の祭りはぐるりと回って。


「えっ、結婚??婚約?とか?した??えっ、そうなの??」

「ちょっとヨル、落ち着きなさい。」

 はい。 すみません

いつの間にか立ち上がっていた自分に苦笑し、とりあえず座り直して灰色の瞳を見ながら深呼吸を する。

その 私の様子を見ながら。

楽しそうなエローラは、「なにから話そうか」と
空になっているカップを見てティーポットに手を伸ばした。





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