透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

新しい私での 森生活

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 ああ やっぱり な

目が、覚めて。

「やっぱり 夢じゃ なかったんだ」と思っていた。


朝靄 ヴェールの掛かる 光
 少し冷たく しかし瑞々しい 空気
  柔らかに肌に届く 光と 水分
鼻から入ってくる 「みどり」。


  これ は  なんだ ろう
 「色」? 「水分」「匂い」だよね?

空気中に含まれる、緑の匂いと湿気 季節の香りと懐かしい「思い」。

共に連れてこられたその「思い」に感動し
「ああ 本当に香りと記憶は 繋がってる」と。

しみじみと、頷いていたら寝床が動いた。


「起きたか。」

「うん、ありがとう。」

勿論その「寝床」、私を包んで暖めていてくれたのはあの金色だ。

足元には 丸くなっている白
ナガは 姿が見えない。
初めての森に、何処かへ探索に出ているのだろうか。


「ほら。」
「あ。懐かしいね、これ。」

彼が差し出したのは、あのレシフェのジュースだ。

久しぶりに見るそれは、この頃「食事」が変化していた私に優しい気遣いだろう。

 確かに お腹は 空いてる様な 空いてない 様な ?


「?  うん、美味しい。」

この頃ずっと、神域に いて。

私の身体も、きっと変化しているのだろう。
その「変化」を 確かめに来たんだ。

喉から腹に落ちる、ジュースの軌道を追いながら
そう思う。

きっと「狭間の私」と「森の私」は 「からだ」も少し 違っていて。
どう、違うのかは分からないけど なんだか少し
「重い」? 「厚い」?「濃い」?


「うん ?? どう なんだろうな………?」

立ち上がり、手足を動かして確かめてみるも
そこまでの変化はまだ、感じられない。

「えっ、まさかここの食べ物を食べていると、どんどん身体が重くなるとか、太るとか??…………いや、それは  無いな。」

自分の想像がそれ以上微塵も展開しないのを見て、その方向性に終止符を打ち新たな可能性に「身体の展開」を放り投げておく。
頭の中にはチラリと、昔読んだ「神話的お話」が色を掠めたが、もしかしたらそんな話なのかも知れない。

 その あの 食べ物を食べると
  そっちの世界 に? なる 的な ??

 でもきっと 悪い様には ならない


「 うん。」

その他色々探ってみると、感覚的には少しだけ「色」が着き 心なしか「肌色」がかっている 肌
髪の色は殆ど白いが 薄い青灰と言えなくも ない。
後で家と一緒に鏡も創って、確認してみる必要があるだろう。
しかしなにしろ「女神」として森へ来たのだから、そう困る事はない筈である。

そして、どうやら私の「場」「かたち」自体は私の「なか」にきちんと内包されていて、縮小され纏まっている様に思う。

その、頭の中の神域にカケラをポンと放り込んでくるりと振り返った。
きっと 次の展開を彼が 「持っている」と思ったからだ。


「これだ。」

そう言って彼が差し出したのは、やはり「石」で。

 私の 石 ガラス
  少し ウイントフークコレクション

そのキラキラ光る、石達を確認すると 改めて辺りを見渡す。

いつの間にか、朝靄は消えていて
差し込む光が明るく、爽やかな
いつもの瑞々しい、森の姿である。

「よし、じゃあ行きますか。」
「何処へ。」

「そりゃ、素敵なお家を建てる場所を探しに行くんでしょう。」

私のドヤ顔に、仕方の無い瞳をした金色。

 あ 久しぶりに見たわ これ。


そうして、私達は。
戻って来たナガを連れ、姿の見えない極彩色と玉虫色をなんとなく 探しながら。

森の奥へと 進む事にしたのである。



 しかし でも  私も変化する した
 「戻る」のか なんなのか
 とりあえず 「濃く」なるとして。

 この人は どう なんだろうか 。


キョロキョロと辺りを物色しながら歩く私の、少し後ろをついてくる金色。
その金の髪が朝の木漏れ日に照らされ、キラキラと私を誘って いる。

 いかん
  なんだ  あれは。

実は。
朝、起きた時から感じていた「違和感」、その「違和感」は嫌なものではなく寧ろ「密度」「濃さ」が増した「彼への想い」の様な もので。

 だって あの なんだ
 腕の感触とか 温度 とか  力強さ とか
 なんだ なんだ

 「以前ラピスの時」は 
 感じなかった それ


「なんなんだ ろうな ?」

 なんにも考えずに彼とベッドを共にしていたあの頃、しかしその時はその時で「一番安心できる空間」だったのだ。
それは 間違いない。

 うーーーーーん ?

気付かれない様に、キョロキョロと同時にチラチラと彼の様子も、窺う。
バレてるかも 知れないけど。

なにしろその「違和感」はきっと、私の中では大きいけれど彼の「見た目」は変わっていないし、他の人に分かるものではないだろう。
その 僅かな「変化」を確かめながらも。

「あ」

 ここなら ?

丁度いい場所を見つけた私は、ピタリと立ち止まって細部を確認する事にした。

ここはあの泉の側だ。

「うん、「水」があるならその方がいいしね。」

そうして辺りをぐるりと見渡して。
「ポン」と背から降りたナガ、草の匂いを嗅ぎながら辺りを調べ始めた白を確認して 私も仕事に取り掛かる事にした。




「多めに入れておいたと。言っていた。」

「? うん、ありがとう。」

彼の言う、その意味がいまいち解らなかったがしかし
それは直ぐに判明した。


 どんな「家」に しようかな♪

そう、「想像」して「展開」しようと した時。

「ん?」

これまで私の空間ならば、展開していた筈の想像が、創造まで至れなくて。

「ああ 、流石だな」そう、気が付いて一人、頷いていた。


本部長はきっと、この展開が想像できたのだろう。
いつもより沢山チカラが、必要になる事を知っていたのだ。
それは「予測」なのかも 知れないけど。


「ふむ?これもまた、扉間の違いなのか、なんなのか………。」

そう呟きながらも石にガラスを追加して、目を瞑り想像を展開してゆく。

でも
 以前 ラピスで なにか 創ってた時は。
 どう だったっけ な ?


そんな懐かしい色も含みつつ、「ここで生活するなら」と自分の希望の家を想像しようと、泉の横にあたりをつけた。

 うん?
  でも?  泉って 今 みんなが 癒されに来る?

 そんなこと ソフィアさん 言ってたよね ??


始めに私が創った泉は、みんなが「癒しの泉」として利用している筈だ。

 それなら?
 少し 「見えなく」できるかな ??


「あ、あっちの方がいいかも。」

顔を上げ目を付けたのは、大きな泉の側にある小さな泉だ。

それは、あのレシフェが開けた「黒い穴」の跡に創った
 そう 小さな泉 

大きな泉からの支流の様なそれは しかし、よく見ると実は「始まり」がそこからなのが、判る。

 うん? なんで?
 どうして なんだろう か

 最初に創った方が、大きいし「始め」の筈なのに?

しかし、私の「なか」でカケラ達がくるくると動き始め
その動きを観察していると「ブラックホール」「大きな穴」「無限」という色が、見えてくる。

 ああ 成る程

    そういうこと ね。

理由は説明 できないけど。

きっと始めが「ブラックホール」だった それ
そちらの方が「無限」で、いつの間にか始まりが回収されて。
そちら小さな方が 始まりになったのだろう。

 うーん 吸い込む んじゃなくて
 湧き出す に 転換したのか な???

そんな「変容」、ありなのかと思っても みたけれど。

「いや、「私が」限定、しなければ。きっとそれは可能。そもそも吸い込むしかできなくて、吐き出せないのかは、分かんないんだし。うん。」

 どの 定義を 採用するのか
 あり なし
 不可能を 可能 へ   

      可能性の 段階へ。


チカラなのか、繋がりなのか、まじないの大きさなのか
それは誰にも「本当のこと」は 分からないのだ。
そう 今は まだ。


「ま、とりあえず「事実 そう」なんだから、それでいいのよ。で、だから………。」

小さな泉と大きな泉は細い流れで繋がって、いる。

きっと今はこの小さな泉から湧き出た水が、大きな泉を満たし生き物達が楽しそうに暮らして いるんだ。


時折 光に反射して見える鱗
 透明度が高く、下の揺れる水草が靡く様もよく見える。

 小さな 魚   時折 謎の生き物
 あれは 爬虫類? なんだ ろう

  水草 藻  沈んだ木々の枝 
 揺れる水面が濡らす 石肌が 気持ち良さそうな 大きな石。

大きな泉は見ているだけでも、美しく楽しい。
入れたら、申し分ないのだけれど きっと生態系を崩す事になりそうだ。

 私 だけ なら 大丈夫かも知れないけど。

「てか、今度試してみようかな…。」


イストリアの場所 あの美しい色 桟橋からの景色
 湖の上を光達と舞い踊った 記憶が蘇って。


「うん、誰も見てない時 やってみよ。 」

チラリと振り返ったが、あの色は側には見えない。
何処か近くを調べに行ったのだろうか。

 うん 内緒の独り言は 秘密にしなきゃね


そうしてとりあえず、気を取り直して。

小さな泉をきちんと調べるべく、そちらへ歩いて行った。






 
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