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8の扉 デヴァイ 再
「夢」で願う 2
しおりを挟むフワリと 揺れる 蝋燭のあかり
以前よりも濃い ハーブの香りが。
確かにここへも変化が齎されている事を知らせ
私の胸にもジワリと沁みて くる。
この空間の空気を胸に深く、吸いながら
丁寧に作られたドライハーブと道具の匂い
静かに暗い空間に、そっと鎮座する不思議なまじないの数々。
それをゆっくりと味わっていると、何度か 開いて閉じる
フリジアの動く口元に、自然と視点が留まった。
「…………いや。しかし。だが?…………いや??」
「えっ、なんですか???」
フリジアがこう言い淀むのは珍しい。
しかし、その様子を見て「頼み事」だと思った私は。
やや前のめりになりながら、話してくれる様体勢を整えた。
そう 私は頼られる ひとになるのよ
うん 自分から 首を突っ込むんじゃ なくて
しかし、私の「待ち方」が五月蝿かったのかも知れない。
やや苦笑した抹茶色の瞳が、仕方の無さそうに口を開いた。
「いやね?お前さんに頼らないと、言ったばかりだけれど。ちょいと、夢に出てきてくれないかね?」
「 えっ」
なんですか その 楽しそうな 提案。
私の反応に、ケラケラと笑い始めたフリジア
しかし大分減った「金の蜜」の小瓶を振りながらも。
優しい瞳で、その提案を話し始めた。
「ほら、この頃上を歩いているだろう?それでね、少し遅めに。夜、彷徨いてみてくれないかい?それで、女達の部屋で「良さそうな」所があれば置いてきて欲しいんだ。ほら、半分寝てる様な時があるだろう。「夢なのか 現実なのか」って。みんなそれで寝れないのだから、丁度良いよ。」
「確かに!えっ、成る程ですね??…………どう、だろうな………でも多分、いけそう………?」
プライバシーとか なんとか
少し気になるところは ある。
しかしその私の顔を読んでか、フリジアはみんなの現状を伝えてくるのだ。
「きちんと眠れなくて、しんどくて。また疲れが溜まりイライラしてしまう。そしてまた、自己嫌悪だ。どうせ、夜起きてしまうんだ。それならそれで、「そのタイミング」はお前さんに任せるけれど。行ってやって、くれないか?負担ならば、いいんだ。お前さんだってまだ子供だからね。」
「えっ。」
こども では ないかも 知れない………
「ああ、すまなかったね。そうだった。」
チラリと私の全身を確認した、その目つきで。
「なにが」「そう」なのか 悟り瞬時にピンクに変わった私を見て、また笑うフリジア。
えっ ちょっ と 待って
どこまで その あの 話が 行って?
るの?? ねえ
私の プライバシーは どこ へ 。
その、私のぐるぐる変わる色の変化に
こう声が降ってくる。
「そんなの「外」を見りゃ、分かるだろう。それに、なんて言うのか。この、全体の空気がね。違うよ、やはり。」
えっ そう なの ???
「まあ私ゃイストリアに会うからね。なんとなくは、聞いたよ。まだあの子がこちらへ来る前だ、お前さんに何かあるといけないからと。サラリとは、聞いたよ。「森」だか「畑」だか「緑」だか、何かは分からないけどね。まあ、納得するしか、ないさね。」
うっ はい そう なんです 多分。
自分の体の「いろ」で、返事をする私を見て、楽しそうな抹茶の瞳。
しかしそれは、優しく細まって。
また 私に新しい色を 齎すのだ。
「だからお前さんは、自分の事を。なにしろ自分を突き詰めて、おやり?それがいい見本に、なるさ。」
「みほん………」
「そうさね。私達はまじないをやってるけど、勿論それでも、いいし。だがお前さんはもっと、広いだろう。あの、白の礼拝堂へ色を着けた様に様々な形に展開するまじない、応用の効くそれ。「どんな形にもなる」「できる」と、見せておやり。まあ、どうやるのかは知らないけどね。」
「えっ」
まあ そう ですよね………。
「うーーん?」
それは あの 子供達に教えてたのと 同じ様な
こと だよね? だから えっと?? うーーん
「まあ、あまり難しく考えなさんな。私が提案した事だが、気が向けばやったらいいんだ。なんとなくだけど、お前さんは夜が好きだろう?名が、ヨルなんだ。」
「えっ、まあ。そう、ですね?」
「いや、無理しなくともいいが夜はどうしたって気持ちが不安定になりがちだ。ここは星空も無いし、やはり閉じた空間。そこにフワリと「空」から現れるんだ。今のお前さんなら「天使」か「神」か。上出来だよ。本当に。」
確かに。
フワリと 薄地のワンピースを抓んで自分の出立を想像する。
夜 なんとなく 不安な時
落ち込んでいる時 寂しい 時。
寝ているけど、すぐ目が覚めて「寝よう寝よう」と思う程、寝られない時。
「現状から 抜け出せない」「抜け出したい」「夢」
「戸惑い」「自己否定」「欲求」「希望」
沢山の 事がない混ぜになって。
そんな夜 確かに「光」が あれば。
そしてそれが 噂になって
「夢で 願う」 「願って 思って 眠りにつく」
眠る事が寧ろ、楽しみに なったら。
「それで起きたら、枕元に「それ」があれば。物凄く、素敵じゃありません??それにきっと、「願う」癖が、つくかも。」
私の少しの邪、しかし希望が持ち辛いこの暗い世界では。
きっとこのくらいの「ブースター」は あってもいいに 違いない。
干渉しない と 手を出し過ぎない と
決めたけれど。
握ったままのスカートから、抹茶の瞳に視線を移すと。
しっかりと頷いてくれる優しい光が ある。
「じゃあ。こっそり。作戦、決行ですね?」
「ああ、頼むよ。たまにで、いいんだ。その方が有り難みがあっていい。」
ケラケラと笑いながら、そう言うフリジア
確かにそれは、そうだけれど私を心配しての言葉なのだろう。
「任せといて下さい。程々に、やりますから。」
「そりゃね。私ゃまだあの子に睨まれたくはないんだ。」
「えっ?」
あの子 って? 誰 ??
「そりゃお前さんが、毎日夜、いなかったら。私がとばっちりを食うじゃないか。それは勘弁だね。」
「えっ えっ え 」
そっ ち ?? です か????
そうしてまた、いきなり真っ赤に変化した私を見て笑うフリジア
私はただ、とりあえず。
指の隙間から、見ているだけしか できなかったけど。
てか
ホント どこまで。
そうして、私達の秘密の作戦会議は。
なんとなく、幕を閉じたので ある。
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