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8の扉 デヴァイ 再
禁書室
しおりを挟む「ウェストファリアさん、聞いて下さいよ。私とうとう、「魔法の杖」、手に入れちゃいました。」
そう、ドヤ顔で白い扉をバーンと 開けたのだけど。
ナガは既に シュルリと私に巻き付いているし
白は小さな「小虎」になって、私に抱かれている。
うん なんか
妙に 「可愛らしい 一行」みたく なって ない???
「魔女」さながら、登場するつもりだった私だが
そう上手くはいかないらしい。
「ねえ?」と言ってもナガは シュルシュルしている だけだし
白は小さくなると とてつもなく 可愛い。
うーーーーん なんか
この 可愛さに 勝てる気がしない 。
「まあ、いいか。」
「お前さん、突然来て何を言っとるのじゃね?」
そう普通に言うこの人は、一応イストリアからの連絡はもらっている筈だ。
しかし、確かにノックもせずに扉を開けたのは私である。
だって この人達 ノック意味ないしな………
そんな私の心を知ってか 知らずか。
白い魔法使いは久しぶりに見るその豊かな髭を撫でながら
私に中央にある本の山を、指し示した。
あの、ベイルートがよく上っていた「元 テーブル」の それである。
多分、座れと言うことだろう。
そう勝手に解釈した私が、懐かしのビロードの長椅子に座る様子をじっと見ていた彼。
そうして私がそれに 腰掛けると。
珍しく、待っていた様に 口を開いた。
「お前さん、やはり。あの「予言」は当たっておった様じゃのう。」
「 え」
いきなり 予言??
やっぱり「見た目」についての ツッコミは ナシ なのね
久しぶりの 青緑の瞳を見ながら
くるくると回る 頭
そもそもこの人に、話の脈絡は期待していないけれど
流石に頭は追いついていない。
しかし、ある意味「散らばっている」私の「なかみ」
それに任せて。
とりあえず、この白い魔法使いの「予言の話」を聞く事に、した。
「お前さんは実に、自由に吹く風の様だと、思っとったが。やはり、風は吹き畑は出来て、少しずつ皆「意味」を「希望」を見る事ができる様になっていっておる。それ即ち、「生きる」という事。」
「これまで何故、それが無かったか、お前さんは解るかな?」
「えっ。」
これまで 何故 「希望」が 無かったのか。
他意なく 真っ直ぐに向けられたその青緑に。
一瞬戸惑ったけれど、それはずっとずっとここにいる時思っていた、それだ。
「みんな………縛られていたから?いるから、なのかな…それに「自由」が無いから?」
「そうじゃろうな。まあ、細かな理由は山程あろうが、大体はその理由に集約されるだろうの。」
満足そうに髭を撫でながら、そう頷くウェストファリア。
そうしてこうも、続ける。
「「自由」は。勿論、時のせいもあろう、環境のせいもあろう、しかし急に与えられたからと言って。すぐに馴染むものでも、ない。お前さんは、ようく解っとろうが「時」と言うのはそう簡単でもない。しかし、それは来た、それ即ち「予言」、お前さんが来て風が吹き「時代」が変わったこと。そこから沢山のものが齎されたが、急に自由が与えられても。「不安」や「恐怖」が勝って、それを生きる事が出来ぬのだ。だからある意味ここに、子供がいる事は救いなのじゃろうな。やはり、環境に適応するのは早い。」
うん?
ウェストファリアの要点が、まだ分からなくて
首を傾げながらも 頷く。
そんな私を見ながら、更に彼は話を続けた。
「それは「生きていくこと」から、直接外れてしまったからこそ。感じる、不安や恐怖じゃろうな。今、外が変化したからこそ感じる、この感覚。お前さんが降らせた星は、沢山の影響を与えて、いるぞ?」
「 えっ」 星 ?
そう、言われると なんか。
嬉しい けど ???
しかし頭の中の「?」は 点滅したままである。
「「生きていく」から、直接外れるって。何ですか??」
そう質問した私に、楽しそうに緩む青緑の 瞳。
その変化の方向でこれから始まる話が「そんな話」なのが 知れる。
「この、世界の中には。「光の法則」「水の法則」「火の法則」、等等。沢山の法則があるが、今この灰色の大地から失われておったのが、「風の法則」じゃ。まじないや、「色」とも関係するそれ、やはりそれは全てのバランスが取れていねば上手く成らぬものなのじゃ。だがそれは、お前さんが来る事、祭祀を行う事で成った。そして緑が生まれ、また「始まり」が始まったのじゃ。しかし、また同じ事を繰り返すならば、わしらが変わらなければ。逆戻りに、なるじゃろうて。」
「バランス………。」
「そう、本来ならば。全ては調和し、循環せねばならぬ。それを断ち切っているのがこの扉、そしてこの体制、これまでの歴史と慣習よ。ワシら皆が銘々勝手に走った結果、人間だけが乖離してしまったのだ。合わせるべきは、人の方、ワシらの方なのじゃよ。この世の理、自然の理。そこから外れて、生きてはゆけぬのだ。学ばねば、何れまた無に帰す事に、なろうよ。」
「それは…………なんか。」
あの 森の話 長老の 話に。
似てる な ??
「あの。ラピスでも、えっ?うん?長老っ、元はデヴァイの人なんだっけ…………??」
話の始まりから躓き始めた私の言葉を受け取り、話し始めるウェストファリア。
何故だか彼の話は、やはり私の言いたい事と。
同じ様な、話だった。
やはり、思う所は 同じなのだろう。
「そもそも「始めから終わりまで」を、自分でやらぬ事には、人は一人前にはなれぬ。わしが偉そうに言える事ではないが、自分の生きる事に必要な「食べる」「住む」「着る」等から切り離される事で、人は不安を生むのじゃよ。だから女達はこの頃生き生きしておる。まだ、皆ではないが畑に来られて大分、良かろうな。」
「あっ、それですよね、ホント。食べ物が美味しいと、それだけでいいし。なんか、「外に出れない」って言うのも「自分一人じゃ何もできない」って、思っちゃうからじゃないかと。思うんですよね。」
「然り。」
大きく頷く、白いウェーブの髪
心なしかウェストファリアの、髪も、髭も。
艶々している様に 見えるのは気の所為だろうか。
「 …………なんか。流石に勝手に、出てくる事はできないんだろうけど、女の人達が畑に関わったり、食べ物を作る事で不安とかが少なくなって。やっぱり土を触ると感覚が、変わると思うんですよね。少しずつでいいから、そうして変わって、それがまた、「変化」を生んで。段々、ここの人たちからの「変える」「変わる」が、出ると一番、いいのかなぁ………… 」
「変えたい」「変えなきゃ」と。
逸れぬ ように 違わぬ ように
少しずつ「ことば」を 選んで 話す わたし
ずっと 前に。
ここで熱くなりながら、「話せているか」なんて。
思いながら、この青緑の瞳に向かって熱弁した事が
遠い昔の様に 思い出される。
もしかしたら 私の 思ってることと 同じ かな?
そんな優しい目をしたウェストファリアは、「安心しなさい」とでも、言う様に。
大きく頷いて 私の言葉を引き継いだ。
「そう、それは。もう、こちらの仕事だ。お前さんの癖は、すぐに首を突っ込む所だからの。いいのじゃ、お前さんは「お前さんの道」を、歩んで。だからこそ、「皆の光」に なる。」
「皆の光」 その 言葉に。
ジワリと滲む 瞼
ぐっとくる 胸
もう「泣かない」と決めたけれど これはきっと。
「嬉し涙」だから、いいよね ?
しかし流石に以前の様に、ボロボロと泣く事は、ない。
いつもの様に、滲んだ涙を袖で拭く私を見て。
漸く彼は「違い」に気が付いた 様だったけれど。
「ん?お前さん、またちと「薄く」なったか?」
「はい、まあ。少しですけど。」
曖昧な返事をしつつも差し出された手を、握る。
「ふむ。」
確かに、この人から見て。
「私は何色に変化したのか」、それは気になる所だ。
しかし「ふむふむ」「ほうほう」言いながら私を見たり、手を握り直したりしている この人を見て。
段々 私が不安になってきたのと
金色の光が 部屋に現れるのは。
同時の 事だったので ある。
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