透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

「ぜんぶ」おいていく

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 私 は

  私 しか 持たない

 私 しか ない


           んだ




 ある朝 目覚めて
 そう思った。



ある日の雲海

 私は 白の上で ナガを連れ
 羽衣を纏い 守りを背後に。

 広い 広い この場を ただ見ている。


白く広がる場 雲海  覗かねば 見えぬ「」。


 そう そこには「私」以外 何者も 無くて。

 「私」は わたし
 「白」は 私の光
 「ナガ」も 私の光のなにか
 「羽衣」も 
 「達」も

 そう ぜんぶが ぜんぶ
 「私から できている」ものしか ない

 「なにも」無い

 多分「雲海」すら 「私の一部」


しかし 「独り」でも ない。

だって「すべて」は 私が集めてきたカケラの中
みんなみんな それが「転換」して。

今は 私を護ってくれているのだから。

 
そう きっとここで「私以外」と 呼べるものは。

この、雲の下 広がるあの色鮮やか過ぎる
 ドラマの世界しか ないのだろう。



 「なにも なくともいい」

    「持たぬ」   「真っ新」


  「重くては 進めない」



 そう 多分     きっと。


 「ここから先」は 少しでも「荷物」を持てば
 辿り着けない場所で
 きっと私が目指しているのは「その先」「うえ


 あの 神殿で。

 「見えぬ私」として 存在していた「私」

 それ以上の「色」を持ち 更に「そうなる」為には。


 もっと もっと 「純度を上げる必要が ある」

 そう 思ったんだ。








「しかし、さりとて、すれば良いのかは具体的には分かっていない…………。」

まあ
「いつも通り」には  するけれど。


朝、目が覚めて。

雲間の夢を見ていた私は、その内容を反芻しながらも一人、唸って いた。
でも「ひとり」じゃ なかった けれど。


「ふむ?」

「お前は「では生きられない」、それを認める事だろうな。」

「えっ?」

 えっ  えっ   ???

突然、側で齎された その情報
狼狽えてはいるが「なかみ」はそれが「事実」だとは んだ。
だから。

「違う、ではない。「外へ行く」事はできるし、お前は自由でも、ある。だが、「そこで生きる」とは、違うという事だ。それなら解ろう?」

 ああ  そうか

   そう だよね   なる ほど。

私の頭の展開をすっかり読んだこの人は、質問を繰り出す前に答えを返してきた。

まあ でも  「当たってる」けど。


「いや  だとは、思ってたけど………。まあ、なんだよ、ね…………。」

「別になにも、変わる事はあるまい。ただ、お前の中の問題なのだろうがな。」

「うん、まあ。  そう だね。」


 うん まあ  実際。

 「私はまだ ひとに 未練がある」そう 思った時に。

「ああ なんだな」、って。

思ったんだ、自分でも。


「…………だから、その「削ぎ落とす」部分が、今度はそれってことなのか…。」

 ん?  えっ 「人間ひと」って


  「削ぎ落とせる」のか な ??????


「 んんんん ?????」

際限なく首を傾げ始めた私の頭を、ぐっと戻す 大きな手。

それはそのまま、私を中へすっぽりと包むと静かな声でこう言った。

「また時が来れば。自ずと、解ろうよ。しかしお主、「休む」と「満ちる」と、言ったのではなかったか?それでなければ来るものも、来れまいよ。」

「 ふむ?確かに。」

何かを知っていそうな その言葉

しかし教えてくれない事は分かっている。

とりあえず、私は。

「休んで、癒されて………満たされ………うん、えっと?なんかいっぱい  」

「あまり「考えるな」。思った事だけ、やれば良い。」
「はい。」

うむ。
なんか、この人か朝にでも隣にいてもらわないと
ついついすぐに「やらなきゃ病」が発動しそうで、困る。

「いやしかし、それもまた修行。」

呆れた金の瞳が、私の方向性を咎めているのは
わかる。
でも、気分的にはそのくらいでいなければ。

また、すぐに走り出してしまいそうだからだ。


「ふむ?のであれば 」
「いやいやいや、とりあえず。休む、休むから!」

キラリと瞳を光らせた、いけない顔から逃げる為にフワリと羽衣も被りマシュマロの上に丸くなる。

そうしているうちに、静かな気配がふと 消えて。

 ん?

チラリと裾を上げて見ると、どうやら彼は出掛けたのだろう。

広く白い、ここに他の人影は見えなく
遠くに舞う光達と黒く長い窮の緩やかな曲線が、私に癒しの揺らぎを齎して いる。


「ふむ?」

ぐるりと、その安心の場を 見渡して。

「なら、あそこ かな………」

この前、「入ろう」と思っただけですっかり忘れていた「雲海への道」を模索する為視線を止める。

いつも、雲海への散歩は朝食後に礼拝室の白い扉から出ていたのだ。
朝起きて、みんなに顔を見せ
その後 雲海コースという この頃のルーチンである。

「よし。」

そうして 「魂の木」に狙いを定めた私は、いそいそと支度をして。
あれに登ってみることに、したのである。




「登る」と言っても、「思えば」私はあの豊かな枝葉の中だった。

いや、流石によじ登るには大きい 魂の木
大きく葉を繁らす太い幹は手をかける場所もなくすべすべとした、滑らかな象牙色
それを手を当て、「どう しようか」と思っていたら。

「うん?」と気付くと雲海を眺めて、いたのだ。
きっとこの木が私を連れて来てくれたのだろう。
そう思って、いつの間にか一緒にいるいつもの二人に安心した。


「じゃあ、ちょっとぐるりと しようか。」

勿論、いつもの二人とは白とナガだ。

ツルツルとした張りのある毛並みを撫で、背後からシュルリと顔を出すナガにも合図をする。
きっと何かを見て澱が出たら、この子がまたすぐに捕まえてくれる筈だ。

そうして私達は。

また、いつもの様に雲間を散歩し始めたんだ。



 ぐるぐると 周る   沢山の場所

   沢山の 人   沢山の  こと。


いつもと変わらぬその、ドラマの様子を見て
「ああ、あるよね そんなこと」
「やってたな 私も」
「そうそう うんうん」
「いや、あれは酷い」
「ああ、楽しそうだな」

「良かった そうだよね そう ありたいよね」

沢山のことを 思うけれど。


でも もう それは 私には「必要のない」ドラマ
もう「卒業」したもの。


「もう、一回。「やろう」、とは思わないもんなぁ………。」


そう呟きながら眼下を見、思うことは そう

今の私に 必要なものが
あると すれば。

 「ありのままの 現状を ただ

   ありのまま見つめ 受け止める 

 それは「視点」「真ん中」「芯」と言ってもいいだろう。


どんな 辛い場面を 見ても
どんなに 酷い ものを見ても。

 「ああ そうだよね そうなんだよ

  それが 人間ひと

  私も その いろが 見たくて やりたくて」

 「やってきたんだ」「そうなんだ」

それを認めて。

ただ あること

 「私でいる」こと

 それ即ち 「祈る」こと 「浄め」ること

 ただ 「変わらず」。

 そこに 「いつでも ある」こと。


多分 それだけなんだ。



下を見ながら、そう改めて思う。

確かに。

この頃 「せかい」と スピリットと 空気と
同調して 思うけれど。

「すべて」は繋がっていて 満ちて いて

しかし それは「見えない」から。


私達は「意識」していなくて。

生活全てを 「ただ なんとなく」とか
 「面倒」とか「雑」に 行っていて。


 ある意味極端に言えば 「息をする」これだって そう

どう「吸うか」「吐くか」そんなこと まで。


 私達は「すべて」の 「なか」

そう、この「せかい」に。

密接に
 守られて いるのだ。 本当 に。


だから  因果は 廻る

  己の所業が 還って くる。


上から見てると それが ようく解るんだ。



「全部」置いて行く と。

なにも 持たぬと 
真っ新になった からこそ解る この感覚

まだまだ澱は きっとある。

でも。


「こう、なったから「わかる」って事だよね…………。」


 これまでに わからなかったことが 解る

 知らなかったことを 知る

 見えなかったものを 見る


それはやはり 嬉しいことだ。

楽しいし 嬉しい。 面白いし?


だからやはり、私は「好奇心」の生き物で
「あらゆる色が見たくて」ここへ 降りてきたんだ。


 「見えなかった ものを見る」それも。

例えば「妖精」が見えるとか
そうでも あるのだろうけど
それだけでは なくて
きっと「視点」が増え 解る事が増えるから
「角度」が増える 「目」が増える
「高い所から」見れること
不思議が見えるのは きっと
そこから成される 副産物の様な もの

 「知らなかったことを 知る」「わかる」のも。


みんな おんなじ

 「応用」「機転」「いかに 既存の枠を無視するか」
 「無限」の感覚を 持てるのか。


そんな様な ことだと 思うんだ。



「ん?どうしたの?」

考え事をしている私の目の前を シュルリと横切るナガ
さっきまではずっと 下を見ていた私から出る澱を
瞬時に捕まえ、黎が燃してくれていた。

 ん?
 する事ないから 暇に なった のかな??

この子に「暇」の概念があるのかは分からないけど。

そんな事を考えていると、その赤い瞳は私の手を示しシュルリと腕に 巻きついてきた。

 そして 視線の行き着く先は

 金の 腕輪

「あ」

  そうか  そう なんだ。


瞬時に湧き出る「寂しさ」、しかしそれもパッと咥えて黎が 燃して。

「あ、うん。ありがとう。」

きっと もっと溢れてくるであろう、「寂しさの波」を解って黎が私を丸ごとその炎で、包む。


 そう 私に 齎された ことは。

これ腕輪」を 姫様に 返す

 これ腕輪は 本来私のものではなくて。


「今」だから解る、その感覚
これを姫様に返して、あの二人は守りとして完成すること
確か シンラの腕には対の 腕輪があった こと。


 そうか。 じゃあ
 戻らなきゃ。


  この子達石達と 離れる
 そんなの 「寂しい」に 決まってる

でも黎の「澱を焼き尽くす炎」、「今の私」、「ぜんぶ」はまるっと
「私の中」。

それも、わかる から。


「いざ、行かん。」

そうして。

「神域に 姫様最近 見てないな」なんて 考えながら。

まずはくるりと 方向転換をしたので ある。



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