透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

「夢」で願う

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「この頃、そう言って薬を貰いに来る者が多いんだよ。」

そうフリジアが言うのは、いつもの薄暗い魔女部屋
私は今日もここに、雲間から降りてお茶を飲みに来ていた。

なんだか、この辺りで。

「なにか」がキラリと光った気がして
「呼ばれた」様な 気持ちになったからだ。



 「私の仕事」「道」は、なんだろう と。
 ウェストファリアと話してから、雲間を彷徨く事が
 増えていた。

 きっとここ雲間から 眺めたならば
 目につく「異色」「違和感」「不調和」
 その「いろ」から。

 自分の「得意」が 生かせる 「なにか」が
 見つかると 思ったからだ。


「ふむ?ふむ。それで、何がどうして、どんな薬?をあげてるんですか?」

早速フリジアから不穏な色のする「薬」という言葉を聞いて、頷きながらいつもの椅子に腰掛ける。
魔女部屋での定位置は、私のお気に入りの燭台があって。
不思議な道具棚が、よく見える席だ。

「なんだか、ねえ。良い事だとは、思うのだけどね。この頃、畑へ出る者が少しずつ増えているんだが「夢」を見る、らしいんだ。そう、「外へ出る」夢だ。見る者は出た事のある者に限られるが、やはりその印象が強いのだろうね。「出たい」という思いと「怖い」という思い、きっとまだ願いとしては具体的ではないんだろうけど。それで結局、不眠というか、なんと言うか。」

「  うーん。」

「まだ壁や葛藤が、あるのだろうね。それも必要な事なんだろうけど、結果体に不調が出るのはいただけない。それで薬を出してるんだ。半分気休めにも、似たものだけどね。それでだけど。」

「はい?」

「お前さん、「あれ金の蜜」まだ残っとるかい。」

「はい、多分。それに、創れますから。」

「そうなんだよ、ねえ………。」

そう言って言葉を切り、遠い目をしたフリジア。

その抹茶色の瞳を見ながら「今日の蝋燭は少なめ」なんて、思っていた 私だけど。

しかし、再び口を開いたフリジアが言う事は
やはりどの、世界でも。
みんなが行き詰まっている、それと同じ様な事だった。


「ヨルは、自分の得意なものが「なに」か、知っているだろう?」

「うん?…………はい、そうですね?苦手なものも、多いですけど………ってか、食べ物とかじゃなくて「やること」とか、ですよね?」

「そうさね。まあ、食べ物でもなんでも、いいんだけどね。しかし「何が好きか、嫌いか」「何をするのが楽しいのか 得意なのか」。私には、こうしてまじないがあったがね。だからメルリナイトなんかも、何も困っちゃいないしこれまでよりも浮かれとるよ。ああ、それはいいんだけど。」

「ふふ、はい。………いや、そうですよね。」

クスクスと、笑いながらも。
私はフリジアの言いたい事が解っていたので、あの時見つけた「色の本」が。
まだ、そのテーブルにあるのを見つけ取りに立った。


「そう、それだよ。結局、あの星の祭祀で「色」を願った者はそう、多くなかった。でも、いたんだよ。いないよりは良いさね。しかし、今は「外」が新しい希望だけれどまだ出られない者も多い。他に何か見つかればいいのだけどね?結局、また「出れる者」と「出れない者」の差が、比較を生むんだ。いや、自分が自分を卑下してしまうんだけどね。」

「………成る程、そう、ですよね………。」

これまで何も、殆ど「やってこなかった」「やる事を許されていなかった」人達は。

「どう、見つけるのか、って事か………。」


どの 世界の どんな 人でも。

 それは 「同じ」

 お金を 持っている 持っていない
 男である 女である
 年齢  環境 場所 それは全く 関係なくて。

「見た目」や 「職業」「立場」ではない

  「なかみ」 が どう あるか
  どういう「意図」で 動いて いるか。

それが、問題なんだ。

うえから見てると それが 本当によく、解る。


どんな 人でも 場所でも 。
どんなに「幸せそうに 見える」人でも。

惑う人、迷う人は多くて。
でも「何が足りないのか」も、分からなくて
それはいつも思う「そもそも論」とも同じ
「満たされていない」こと、「道が見つからないこと」「道があるとも知らぬこと」、「知ってもスタートが切れないこと」。
それは 色々、あるだろうけど。

この間も 思った「自分探しの旅」、それはやはりどの、世界でも。
「その時」が 来たならば 行かねばならぬものなのだろう。


でも。

「結局、「発露」って事ですもんね…………。」

そう 
「これと」「これ」「この中から選ぶ」とか。
用意されたもの だと まだ 弱い。

でも。  ゼロからのスタート
     何も無かった所から 始めるならば。
     選択肢さえ 思い浮かばなかったら。

「うーーーん。やっぱり、「なにか」必要、なのかな…………」

「いや。それは、そうなんだけどね。それはこちらの、仕事さ。お前さんはとりあえず、蜜を創っとりゃいいんだよ。また逆戻りだろう、こちらへ首を突っ込んでいたら。」

「    はい。」

 そうなんです  それ 白い魔法使いにも
 言われた ばっかりです…。


ブツブツと何かを呟きながら、薬の計算を始めたフリジア
私はそれを横目で見ながらも。

 「自分の 得意なもの」を考えて いた。


確かに。

フリジアの言う「創ること」それは得意な方だと思う。

この頃 ここに来て思うこと
それは私は「何色をも含みたい」とは 思っているけれど
「酷く 偏っても いる」という事である。


 得意なこと 「想像」「空想」「創造」

   「調整」「浄め」「目がいい」「読むこと」

色々あるけれどやはり 結構偏っている「私の得意」
やはり、これまでの経験ことから。

導き出された 私の持つ「性質」

    「司祭」「みどり」「調整者」

その色合いは濃いけれど。

「苦手」も 同じくらい 多いんだ。

 「汚れ」「澱」「異色」「不調和」

こうして、考えると。
「苦手」は所謂 「もの」とか「こと」ではなく
「状況」「環境」なことが 多い気がする。

きっと他にも、あるだろうけど。
でも今思い付く、苦手はそんな事で 後は「人を騙す」とか。
「やってはいけない」事系だ。

「優しい嘘とかならいいけど、そもそも私に嘘つく才能無いしな………。」

トロリと小瓶に金の蜜を流し入れる、皺の多い手を 見て。
きっと「この人の得意」は私と重なる部分も
多そうだと、思うけれど。


仄暗い空間を見ながら改めて考えて、思う。

よく みんなに訊かれる「私」と「他」の違い
ここに来てまた、新たに気付いた 事だけれど。

それは多分
 「できる」「できない」の基準が 違う

 そう
 「ルール」「枠」から 飛び出そうと
 しているからこそ、よく わかる それ

所謂「勉強のできるできない」とか
「男だからできるけど 女だからできない」とか。

 じゃ ないんだ。

 「行動する」「得意を見つける」
 「進むこと」

 「生きる」ことって。


「夢の話」、それが出てきたから余計そう思うけれど
私達はある意味、みんな「夢の中」なのだろう。

「自分の中で もがいている」、その状況を
「いろ」を 楽しむために。

「遊んでいる 私達人間
  チラリと浮かぶはあの、赤金の瞳

そう 「この世を遊んでいる」私達は。

 ある意味 「夢の中」
 「息はして 生命としての活動をしている」けれど。

 「生きている」のと

 「死んでない」とは やはり違うのだ。


「生きる」とは あのウェストファリが言っていた様な
「全てと共に調和し あること」その上で
「在りたいように ひかる」こと


ただ ただ「枠の中」「ルール」「慣習の中」で
もがく私達は。
「出られない」と、目の前の扉に手を掛けられない 掛けない、私達は。

未だ 「生きて」は いないのだ。

 そう きっと。


 くるくる ぐるぐると廻る

   深い色のカケラ


 「葛藤」 「現実」  
             「夢」

     「乖離」    「どちらが 」


しかし。

きっと これも 小さなステップ 手掛かりのひとつ 
なにかを踏み出す 一歩になるに 違いないんだ。

みんなの「夢への反映」、それは少しずつ変わってきているここデヴァイの空気
きっとそれが影響して。

どんな形であれ、「変わって」きているのだから。


 「そう ありたい」「夢でも」

まずは、そう、思い描けたならば。



そんな私を見て、そっと差し出されるティーカップ
今日は珍しく真っ白な、それは。
きっと私が今、白いからこの色なのだろう。

 フリジアさんも 私と そう変わらないな


「色の連想」からそんな事を思いながら「いただきます」とカップを持つと、なんだかじっと見られて、いる。

しかし私は自分から口を開くことはせず
「どうしたんですか?」そんな目をして。

とりあえず紅茶の香りを嗅ぎながら、フリジアが口を開くのを待っていた。

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