透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

限界

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 「物質もの」には 限界が あるけれど

 「精神」「意識」「なかみ」「想像」「創造」

 に。

 限界は ない


そう 思ったんだ。

あれから、あの石窟から 帰って来てから。



「ねえ、朝。私、「普通の人間ひと」、辞めようと思うんだけど。」

「  えっ」

「なんか、とりあえず。本腰入れて「創り出す」?「リサイクル」?なんかこう、エネルギー問題を考えないといけないかと思って。」

「うん、まあ、…………いいんじゃ、ない???」

なんだか意義あり気な色を帯びた声は、まだ眠気が残っているのか。
チラリと目を開けたが閉じられた瞼
しかし話を聞いてくれる気はある様だ。

何故だ。
私は真面目に、「これからの世界」を考えようとしてるのに。


昼下がりの魔女部屋は、今日も通常運転で
朝がのんびりとお昼寝をする居心地の良い空間である。

暑くもなく寒くもないこの場所は、差し込む光も相まって。
ポカポカの雰囲気、ハーブの囁き、いつも私も眠くなってしまう、緩りと流れる空気。

考え事には向いていないこの部屋だけれど、案の定私はぐるぐると回りながら唸っていた。


「やっぱり最終的にエネルギー枯渇問題になるとしたらさ、何処もここも、問題はおんなじで。やっぱり、「創造」しないと駄目じゃない?」

「………だから、それを「どうやるのか」って、問題なんじゃないの?」

「まあ、そうなんだけどさ………でもここデヴァイでは「祈り」だから………なんか、ヒントがあると思うんだよな………???」

 なんか こう

  ちゃちゃっと パッと?

 出来るものでも ないんだろう けど ??


「でもさ、「祈り」が力としてチャージされてたんなら、「できる」って事だよね?…………あ。」

「…………ん?なによ。」

眠そうに丸くなっていた灰色の毛並みが、フルフルと震え起き出したのを、見ていた。

しかし朝は私の声色に危険を感じて、起き上がったみたいだけど。

「てかさ。じゃん、本人が!」

「は?だからなによ??」

「いやいやいや、きっとこの為に?ついて来てくれたに違いない!ん?ついて来てくれたんだっけ?私が連れて来ちゃったんだっけ???」

「それはいいから早く言いなさいよ。」

「いやさ、黎だよ、黎!「それそのもの祈りと想い」、なワケじゃん!ねぇ?黎??どうなの???」

目の前にパッと浮かんだヒント、それはあの「いけすかない闇」を私に示していて。

確かにそれは「祈り」だし。
みんなの「想い」や「思い込み」、「念」の様なものだったんだ。

しかし、その問い掛けに対して。
私の「なか」は酷く静かで、黎の気配は無い。


「ん~??どっか行ってるのかな………?そんな事って、ある??」

首を傾げ一人ブツブツと呟く私に寄り添ったのはフワフワの、緑の瞳だ。

「この頃 忙しいのではないか? 変化している 様だし。」

「そうなの?…………そうかも?」

ゆっくりと「そうだ」という瞬きをする大きい子、小さい子は「大丈夫」と私を安心させる様鼻先を擦り付けてくる。

「フフッ、ありがとう。大丈夫だよ………。」

ちょっと、冷たいけれど。
フォーレストは不思議な羊なので、なんだかスッキリとした感覚がある。

もしかしたら、「癒しの鼻水」なのかも知れない。


そんなくだらない事を考えていると、ポツリと呟く声が聞こえてきた。

「まあ、あんた達なら創っちゃうんでしょうけど…。」


 え ? うん  ??

 「あんた達」「創る」 ?


再びくるくると飛び出し回る、カケラ

 さっきと違う 「いろ」と「鮮やかさ」が。

危険なワードと光の点滅を伴い
「それ」が「あの話」だと 知らせている。


「えっ、ちょっ、また?………そっち………??」

その、ワタワタと、狼狽える私を 見て。

なんか。

 「嫌なものを見る目」、してる猫って
 凄くないですか…………。


ジットリとした青い瞳は大きな溜息を吐いて、含みのある声を出す。

「だって。いい加減そろそろ、んじゃないの?まあ、あんた次第なのかも知れないけど。」

「ふぐっ」

「それまでに、なんとかなるといいわね。」

「えっ、なん か  」

「だって私達まわりには、どうしようもないもの。話だけなら、聞いてあげてもいいけど………いや、レナにしなさい。私は猫だし、うん。」

ここぞとばかりに「猫のフリ」をして、さっさと丸くなった朝。
きっと面倒くさくなったに違いない。


まあ 確かに。

ずっと一緒のお姉さん的存在の朝に相談するのは
なんだか恥ずかしいと言えなくも? ない??

いやしかし 確かに。
「猫だし」???


そうして再びぐるぐる沼にハマった私は、「エネルギー」と「その話」の濃ゆい灰汁を。

とりあえず「ボン」と鍋に放り込んで、ぐるぐると掻き混ぜることに、したのであった。





その日の、夜。

つらつらとその時の事を思い出しながら、ブツブツと独り言を言いゆっくりとお湯を、掬う。

今日の雲は、何故だかピンクで。

その「色の原因」に心当たりのある私は、複雑な胸に時折手を当てながらも「生み出す チカラ」について考えて、いた。

ふんわりと漂う、白い湯気の 中で。


「あ、黎。どこ行ってたの?」

そこへ、ヒラヒラ フワリと。

久しぶりに蝶の姿で現れた黎は、返事をすること無くただその美しい羽をひらめかせて、枝の周りを飛んでいる。

しかし、どうやら私の疑問は知っている様で
その「こたえ」が。
鮮やかな深紫の雲と共に、降ってきた。


 「 共に 来た わけは。

  依るの持つ ひかり が 私に似た

  「純粋な おもい」だから 

 似ているものに 「共鳴」し 「惹かれる」

 
  「同じ」「純度」「高さ」 「振動」に。


  「呼応」して  「変化」「変容」する

    「吸い寄せられて」「集まる」

  そういうもの だからだ


 チカラ とは 想い とは エネルギー とは。」


「えっ。」

うん?

 それって  やっぱり ???


 「まあ。


    なのだ ろうな  」


黎が感じている事が、私の「なか」にフワリと漂う。

「私の」に、なったからか

「似ている」「惹かれる」「共鳴して」「馴染む」
「融ける」「光り合って」「新しい もの」
「生まれる」「自然」「流れ」

黎の感じている「いろ」、それがそのまま私の中にイメージで、展開されて。

「何故」「私の」光になったのか

どうして どう なって。

なのか。


 それがまた今、はっきりと 解ったのだ。



「……………だから  結局………。」

やっぱり。

チカラ は   想い は

   エネルギー  は。



「ふむ。」


  「同じ もの 近い もの同士が

    響き合い 時に 混じり 反応 して 」

成る程?
うん。

ふむ?  ふむむむ???


 「「  依る は。

   力 に 「おもい」に 「限界」は


   ある と  思う か  ? 」」


シュルシュルと収縮する私の「ピンクのカケラ」、それはきっと「その話は、後で」という無意識の反応で。
ふと問い掛けられた質問に、優先的に反応し無意識に応えた。

「ううん、多分………無いよね。」


 「おもい」の 「限界」?

突然降って来た本質的な質問、それはきっと私の真ん中にも、あるピースの一つで。
すぐに返事をした自分の「なかみ」を今一度、浚って みるけれど。


私の 「なか」の 

 どこを 「想像」してみても。

 「果て」の ない

 「限界」の ない 世界しか。

 見えない。
 見つから ない。


「だって、「意識」には限界はない………ん?いや?でも「知らない」ことは、無理かも??…………ん?えっ、あれっ?????」


 え あ。    ???



  「「   そうだ   」」


「なにを」、「そうだ」と言ったのか
しかし黎は既に私の「なか」だ。

とっくに姿の見えない蝶を探しつつも、自分の「なか」ももう一度確かめてみる。


 えっ て いうか
 えっ       えっ       でも。

 結局 戻る 行き着く ところは。
 「そこ」なの か 。


暫し頭は沈黙したが、導き出されている「こたえ」は。

一つしか、なくて 既に目の前に転がっている。

「でも。そういうこと、なんだ………「全く知らないこと」。。そう、だもんね………。」


 「知らぬもの こと は 認識 できない」

 「それ即ち 「想像」も「創造」も 「未知それ」については

 「不可能」だと いうこと 」


だから。
、なんだ。

 何故 「受け入れる」のか ということ

 「知らないもの」「反対側」

 「両極」「男女」

 「新しい チカラ」


「生み出される、は………ある意味、「副産物」なんだ………。」

そう、きっと「必要」なのは 
あの色
あの 私が持たぬ 知らぬ  「あの人のあのあじ

 「なかみ」ではなく 「外側肉体」で
 感じる 直接の チカラ エネルギー

 「知らぬものを 取り入れ 知ること」

 「新しい なにか」「創造の 範囲」

 「拡がる」「拡大して ゆく」


 

 必要 なんだ。


 「あの色金色」が。



真っ白な頭の なか
ポンと 浮かぶは

真っ白な場  私の神域  その 「外側」に。

拡がる 宇宙
それはきっと 私の「なか」での。

「未知」の イメージだ。


「    え」


「………あんた、なに、やってんの?のぼせるわよ?」

「…………あ、朝。はい、大丈夫、多、分。」

「え?ちょっと、誰か呼ぼうか?」

「いや、大丈夫大丈夫、うん。」

フラリとバスタブに掴まる私を見て、やや慌てる朝。
しかしシリーは部屋だろうし、スピリット達は夜動物に戻っている筈だ。

その他の人達を呼ぶ訳にはいかない。
うむ。


そうして私は、「新たなる事実」が目の前に迫ってきたことにそっとタオルを掛けて。

とりあえずは、二重に熱くなっている身体を覚ますことにしたので、あった。



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