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8の扉 デヴァイ 再
丁寧に 解す
しおりを挟む「まだまだ、あんたの中できちんと消化?分けられてないのかもね。その、過去の想いと、今の自分と。だって、それとこれとは別だって、解ってるのに混乱するんでしょう?」
「まあ、…………そう、だね?」
灰色の雲の下、私の顔を見たレナは開口一番「吐きなさい」と 言って。
散々ぐるぐるしてきた私の中身をまるっと聞き出して、首を傾げながら腕を組んでいた。
そうしてその、腕組みの姿勢のまま私の目の前を回りつつ自分もぐるぐるしている様で、ある。
「だから………ある意味、一回やってみる事が必要なのかもね。少しでも「抵抗」は無くなるんだと思うけど。そういう「裸体」とか、それに関する事柄の、ね。」
「…………うん。」
「でもさ………「本当のそれ」、それはきっと私達は誰も知らない。「お互いが赦しあって生まれる「なにか」」、それって姉さん達だってきっと知らないだろうし。まあ、何が「本当」かって言うとまたややこしくなるけど、少なくとも快楽目的ではないし、子供を作る事でも、ない。なんだろうね…でも。」
「なぁに?」
「ある意味、「ここ」もそうだったと言えば、そうなのかも。結局目的は違うけれど「強いまじない」を作る?為に力の強い者同士がそうなるって事でしょう?力を掛け合わせて力を作る、って意味では………ああ、うん、本質的に違うのは解るんだけど。でも長老達にとってみれば、「それ」は「同じ」な事なのよ。きっとね。理解できない人には、理解できない。」
「……………まあ、そう、だろうね。寂しいけど。」
コツンと蹴った小石が、寂し気な音を立て灰色の地を転がってゆく。
「うーーん。だから、あんたはやっぱり「立ち位置」をずらしちゃダメなのよ。「こっち側」に来ちゃうと、きっと迷う。その廊下を歩くのも、止めてみたら?それもアリだと思うけど。結局「それに触れていると引っ張られる」のは、分かるよね?それもあると思うし、しっかりと「そっち側」で定まれば、いいんだろうけど。………安定すれば、自分の中で「圧倒的な違い」を感じられたら、もう大丈夫なんじゃない??「全く、それは 違うものなんだ」って。」
「えっ、レナさんそれって…………」
「まあ、そうでしょうね。うん、頑張りなさい。」
ポンと肩に手を置き、頷くレナ。
私はその艶のある青いフワフワを見て、パチクリするしか、ない。
「……………」
「それに。なんとなくだけど、「楽しむ事は いけないこと」だと、思ってない?それはそれで、いいのよ。あんたが大切にしてる、心だか魂だか、それが癒されるべきならば。体だって、癒やされるべきでしょう?」
まだ、パチクリして口も開いている私を前に。
徐々に早口になるレナ、彼女の中での「これまで」のこと、「今」感じている憤り。
フワリと波打つ青が立って、大きな茶の瞳が燃えているのが、見える。
「だって、全否定じゃ、ないのよやっぱり。姉さん達は姉さん達で、「どうしようもない今」を笑顔で生きてる。それも、事実よ。………ああ、うん分かる、馬鹿にしてるんじゃないのも、解ってるのよ。でもさ、多分。あんたの中には、まだ。確かに「それとこれとは別」なんだけど、「一緒にしちゃいけない」という思いが強過ぎて「楽しんではいけない」になっちゃってるんじゃないかなぁと思って。そうだよね?うん、まあだから。いいのよ、楽しんで。リラックスして、気持ち良くなる。「癒されて」「解される」。解ったんでしょう?なんとなくは。それが、「とてもいいもの」だって。それなら、いいのよ。それで。」
「あんただけは。ブレずに、進みなさいよ。…………なんか、ヨルがブレると世界がズレるわ。それはなんか、分かる。」
真っ直ぐな茶の瞳は、私に。
「それが 本当」だと、ズンと胸の奥に、伝えてくるから。
「……………うん。ありがとう。」
胸がいっぱいで、なんにも、それしか、言えなかったけど。
あの時
「あの場所」で、レナが話してくれた時の熱と 同じ。
レナの 光
その、輝きを目の当たりにして「ああそうなんだ」と。
また、一つ自分の「なか」に堕ちてくる「いろ」。
みんな みんな それぞれが
懸命に 伝えよう 届けよう と。
「真ん中」で 輝く 「想い」
それが 輝く 様が。
「本当に 美しいな」と 思うのだ。
"本当を 伝える『魂の輝き』"
本当に そう だと 思う
それしか ない。
それで いい
そう 「それで いい」んだ。
「そのまんま 受け取っていい」
「なにしろ真摯に 向き合えば 輝く」
「輝きは 増す」
それはもう知っていること
それに躊躇し 歯止めを掛けているのは いつも自分 なんだ
「……………ふ ぅ。」
「なぁに、大丈夫?」
「うん。多分。」
「なんの多分よ。」
そう言われて、少し考え口を開く。
「なんかね、やっぱり。そうなの。多分、私の中には「いけないこと」みたいな感覚が、ある。それはこれまでの世界の事かも知れないし、これまでの魂の所為かも知れないけど。………でも、これもまた「超えるべき山」なんだよなぁ、多分。」
そんな私をじっと見つめる、茶の瞳が呆れた様に細まった。
「あんた、さぁ………。」
うん? レナ さん ??
「なんか。難しく、考え過ぎなのよ。「好きだから、してみたい」それで良くない?だってさ、この頃「なんか違う」んでしょう?それって、多分意識までできてないと思うけど。そういうことよ。あんたの、「準備」が、できてきたの。そろそろもっと、「繋がりたい」って思ってるのよ。心が。」
「 ふぐっ」
呆れた視線が、刺さる。
「まあ…………いいけどね、別に。私はいつでも。あいつだって、いつまでも待つんだろうし?ああ、それに初めから「そうなる」事はないだろうから、いいんじゃない?とりあえず、気軽にやれば。」
「レ、レナさん………」
「なによ?だって初めはさ………」
「ちょ、それ以上はなんか、その、移動しようか。」
「………まあ。そうね。」
私達が話しているのは、旧い神殿前のアーチ橋である。
久しぶりに神殿に行きたいと言った私のリクエストで、レナと歩いていたのだが話が始まり腰掛けたのだ。
しかし流石に、誰も来ないとしても。
なんとなく、もっと秘密の空間で話したい内容では、ある。
「そうね………じゃあ店に行く?神殿の方がいい?」
「………うーん。神殿の方が慣れてるから、その方がいいかな………。」
「まあ、そうね。じゃあ行きましょうか。どうせ誰も来ないだろうし、来てもイストリアよ。」
「ううっ、それも気まずい。」
「なによ、今更。」
はい。
左様でございます。
そうして私はレナに腕を引かれ、シナシナしながら灰色の道を進んだのであった。
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