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8の扉 デヴァイ 再
男達の見解
しおりを挟む「要するに。俺達をそこに留めておきたい何かが、いるって事だろうな。」
「そこ?」
「ああ。「戦い」は、本能的で肉体的だ。この頃「魂」の話をしているから解るが、どうしたって俺達は本能的に「戦い」へ引き摺られやすいんだよ。それで肉体的には、女よりも強い。「力で捩じ伏せられる」という事、それは快感でもありある種の恍惚感を生むからな。まあ、惑わせ易いのだろうよ。」
「あれも、その一環という事か………。」
「まあ、ある意味そうだろう。問題はそれをずっと続けさせる為に何が、どう働いているのか。深く、深く食い込んだそれをどう抜けるのか、どう俺達は進化していくのか。真の闇の目的はなんなのか、踊らされている馬鹿とその本命との見分け方だろうな。」
「お前………まあ、馬鹿ではあるんだろうが。それを言うなら俺達だって馬鹿だ。」
そう、俺が言い返すと呆れた様な顔でこちらを見ているウイントフーク。
なんだ、俺達は例外だとでも言いたいのか?
「…………いや?俺達は馬鹿等とっくに通り越した、ある意味天才だろう?」
「…………まぁな。」
その、「天才」の意味が「変態」である事を、俺は知っている。
きっと本当の「馬鹿ではないもの」は、あの子の様な事を言うのだろう。
あの、純粋さ、清さと真っ直ぐに進む性根。
ここまで来て沢山の事を見、聞き、経験して尚「ああ 在れる」ことの尊さを、俺は知っている。
ある意味、俺達人間は子供から大人になる何処かのタイミングで「踏み絵」を踏まされるのだ。
「教えられたことと違う」
「狡くてもいい」
「保身」
目の前で行われる「嘘」に、どこまで抗えるのか。
あの子はまだ、子供だが子供ではない。
きっと沢山の「想い」が、あの子の中にはあって
だからこそあそこまでの共感性を持ちここまでやって来た、筈なのだ。
折れずに 曲がらずに。
例え道を逸れたとしても、手を借り自分で気付きもして、ここまで辿り着いた、ヨル。
あの石があり得ない変化をするのも、頷ける。
あいつは何処へ行ったのかは知らないが、きっとあの子を見ていても立ってもいられなくなったのだろう。
このまま行けば、あの子は本当に「神」に、なる。
なり得るし、きっと成るだろう。
「あいつ…………いや、人間になったら逆戻りだしな………?」
どうするつもりなのだろうか。
まあ、俺の預かり知る事じゃ、ないけどな。
「あいつらの事はよく、解らんが。まあ、いい様に、なるんだろうよ。」
「まあ、そうだな。心配するだけ無駄か。」
ウイントフークと頷き合い、「はた」と気付いた奴は小部屋へ戻って行った。
また何かに気が付いたのか、俺と頷き合う可笑しさに引っ込んだのか。
どっちでもいいんだがな。
「とりあえず、あの子が元気そうだから、いいか。」
きっと寂しくないわけでは、ないだろう。
しかしやはり成長したヨルは、元気に世界を渡り歩いている。
そうしてまた、「事件」を起こすのだろう。
「ま、とりあえず寝るか。じゃあな。」
聞いちゃいないだろうが、一応挨拶をして隙間から飛び出した。
寝る訳ではないが、日課の見回りに行かないとな。
あの子が変化し始めてから、この区画にスピリットが増え夜中のホールはなかなかの景色だ。
これこそ御伽噺に出てくる、夢の国か、どこか。
現実にはあり得ない、世界なのだがな。
そうして俺もその、光に混ざる様に青のホールに色を差すことにしたのだ。
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