透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

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白い 光が 四方から照らす祭壇
その上に置かれた大きな器には 彩りの良い 小さな石たち

キラキラと光る其れらは どれも「私の色」で煌めく
砂糖菓子の様で

 「美しく」「甘く」「美味しい」「涎が出そうな」 もの。


「う~ん。「涎が出そう」は、宜しくないかも?」

キラキラとした「プリズム」で目が覚め
気持ち良く「愛」と「慈悲」を「浸透させる」事について考えたかった私は、朝から久しぶりの礼拝室で照らされていた。

なにしろ四方から「浄められる」この空間は、「浴びている」感覚がとても強い。

「浸透」というキーワード、「拡大」と「敷き詰める」という感覚、無理なく調和しながら在るという存在。

現時点でそれに近い場所を考えていたら、ここに辿り着いた。
とは言っても廊下を出て左に行けば、あるのだけど。


「ふぅむ?」

私がこの場所で唸っているのは、その「満ちる」感覚に同調しながら「浸透」を考える為である。

神域では既に浸透している「私の色」、あそこはこの課題を考えるのには不向きなのである。


 「愛」「慈悲」

いきなりこの境地に辿り着くのは難しいし、これは「言って」解るものでもない。
何をすれば解るのかも、人によって違うだろうし、そこは私の手が出せる領分ではないのだ。

だからきっと、その「前」のステップの様な「こと」だと思うのだけど………?


「シンが言ってた、「あの方法」だよね、多分………。」

それが分かれば。
ヒントになる。

その「方法」とやらが、実際に実行可能なのか有効なのか。
それもあるが、必ず何かのヒントにはなる筈だ。

実際私が「できない」事かも、知れないし。

 いや それは 「できない」んじゃなくて
 多分 「私が手を出してはいけない」領分の はなし か??


「人が みんな持つ それ」
そんな様な事を、言っていた。

「なんだろうか、それって。」

体? 血? いやいや 多分「身体的」なこと じゃない
じゃあ心?  精神的な なにか だよね ???


目を瞑りいつもの屋根裏の様子を想像し、みんなの動きや様子を思い浮かべる。

フワリと黒い闇の床にあるは、無数の透明な窓だ。
その、それぞれにある「生きている 場所」。


決まった動き 仕事 家事
遊びと言うほどの ことは そう多く無く
日々が静かに流れてゆく 落ち着いた 場

時折 鮮やかな色 鈍い色  澱み
   浅い風  静かに薄い 黒が蔓延る 空間

しかし激しく捻れる事も
飛ぶ事も 光る事もなく 淡々と流れる デヴァイ


 その 「根底」に あるもの は なんだ ?





   「同調」 「調整」 「調和」

似ている様で 違う それ

ただ「ある」だけ のもの

「ある」がしかし 働きかける もの

「ある」 そして 滲み出ているもの


その 中にある 私達の 「共通項」


無意識に負っている 「それ」は
 なんだ ろうか。

「期待」「希望」
 「罪悪感」「負の遺産」「人の傷み」「被害者意識」
 「加害者意識」「枷」


少しの光と、沢山の重い色。

しかし 「それ」は もう 負う必要も 無いもので。
あの深海にて 昇華した 手放した
 飛ばして 光にした ものでも ある。

あれ昇華はやはり あの場グレースクアッドだけの事で
こちら側デヴァイへは まだ浸透しないのだろうか。


私の「なか」では濾過された それ

しかし それでもまだ「拡がること」で
収納される世界に散る澱、それはきっと永続的にやっていく事だが「やらなければならない」ことでは、なくて。


 「どうして」「何故」「変えたい」「光を 」


きっと私が手放す必要があるものはこの「使命感」の様な もの

「やらなければ」「持っていかなければ」
「置いていけない」

そんな様な、こと で。

更に手を離し 全てを あの色すらも 置いて

 飛べる様に  

そう 「全て」を 置いて 

 飛ばねば。

届かない境地 が あるのだろう。


  みんなが 手放すものがある様に
  私にも まだまだ手放すものが あるのだ。




 何かに 誘われている 気がするこの頃


 「早く 上がっておいで」 それはきっと。

なのだろう。


   "何処からか 降り注ぐ 白い光"


それに気付いて 顔を上げ
決意して 上がり 昇り 

そう 

何度も 何度も  脱いで 上がって 浄め

  流し  溢し  全てを 「空っぽ」にして。


どんどん 「わたし真ん中」に 近づくんだ。

 そう 
     私 は 

        まだまだ 


               旅 の 途中



ふと、自分が神域へ移行したのが、わかる。

 銀色の枝  繊細な上下に延びる その細い脈
     地中へ潜る その連絡網は きっと
  「全ての ひかり」を 繋ぐ 糸

 星の様な 輝き   
     その 枝振りは力強さと繊細さの共存 

  銀細工のアクセサリーが そのまま 
     木に  成った 様なもの


象牙の大木だったあの木が、銀色に変化している。

天辺にあった白いカラスはルビーの星になり
      静かに燃える  美しい星の炎


 ただ静かにそこにある 大きなそれは 輝きを放ち
 しかし 「煌びやか」ではなく
 ただ 「静かに ある」


 夜明け前の 静寂 
 
 真っ白な雪の中 風も無く 光も無い
 だが そので 照らされる 古木

 静かに 在る 自然チカラ

そんな 存在もの


私の「なか」を表す様に変化した魂の木、それは何を意味しているのだろうか。


 「繊細」「微細」「小さい」「細かい」
 「機微」「振動」「波長」「回転」「跳」
 「深」「果て」「宙」


ただ 「在る」だけで。

こうも私に訴えてくる 「なにか」

 それは なんなのだろうか。


静かに佇むその大木が 深く深くこの神域に
根を張っているのが わかる。

その、根が「拡大」「拡張」しているのも。



きっと 私達 皆が持つ その「基盤」「基本」「素」「元」となるもの

 「本質」へ 還れば。

「皆 同じ」 「共通」「合う」ような もの 
皆が持つ 「骨」の ようなもの


「見える」「見えない」「感じる」「感じない」

それは立ち位置や視点、角度の違いで
きっと本当は誰もが持つ、その「粒子」。

だってそれは私達を構成する、「なにか」で
みんなが持つ「共通項同じ色」だ。


 「深く」「入る」「侵」「探」「解体」「解放」
「分解」「再構築」    「霧散」「集結」


そうして「わかる」、その感覚。


 「自分 の 「すべて」へ どこまでも 入る」


そう、奥の 奥の  奥まで も。


 研ぎ澄まし 拡げ   深く 深く

  まだ 見たことのない  深部まで。


  自分の中心へ 侵って ゆくのだ。





「ふぅむ?」

なにしろ。
これは繰り返し練習もして、どこまでも奥へ入り
  細胞、原子 粒子
   物質だけで なく 
    心 精神  魂 
所謂「なかみ」までも。

探っていかねば分からぬものなのだろう。

そうして「異色」を取り出しどこまでも純度を上げて、「本当のこと」へ辿り着くんだ。

きっと。


顔を上げ正面の白い扉を見、ただそれを静かに目に映し自分の「なか」に定着させる。

私の「なか」、この白い礼拝室、色とりどりの石達、清浄な、光。

大きく、息を吸って。

ゆっくりと 細く、吐いた。


「よし!」

なにしろくるくると更新する私の「なかみ」、きっとそれはあの「かたち多胞体」に収納されるのだろうけれど「糸を結ぶ管理」をしているのは私だ。

「覚える」まではいかなくとも「見る」ことは大切で、自分の中に記録するにはそのやり方が向いているのも解っている。

そう、「美しいもの」好きのこの目で記憶するのは、得意だからだ。


 そうよ 私にも得意分野は ある

そうして謎に自信たっぷりに頷くと、出てきた石達をポケットに詰めようと祭壇へ歩いて行く。

とりあえず本部長に賄賂を渡して、便宜を図ってもらう為である。
一応、無理難題を頼んでいる自覚はあるのだ。
うむ。

 でも 「俺達の事だ」って。
 きっと、言うんだろうけど。
  だから敢えて、言わないけどね。


そうして、ポケットにいっぱい詰め込んだ小石達を見てその色を楽しむ。

「うん、綺麗。」


くるりと振り返り、書斎へ寄ろうかと思ったけれど、その前にお腹が鳴って。

「え、うん、…………まあいいか。」

とりあえずは、食堂へ向かう事にしたので ある。
うむ。







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