透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

空気 とは

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「人」じゃなくて

「物事」「物体」「お金」「概念」や「慣習」

そんなものに ピタリとくっ付いている
       付随している
       染み付いている
       染み込んでいる

 「想い」を。

浄めれば  取り外せれば。


「いいんじゃ、ない?……………それならできそう?一人一人は難しくとも、「もの」の印象を変えられればいいって事だよね…でもそれなら?多分、いいよね………どうかな…?」


「空気を変える」その本部長の言葉をいい事に、この頃私は色んな場所を彷徨いて、いた。

いや、ある意味それは元からなのだけど「やる気」の様なものが、違うのだ。
やはり「やって来い」と言われると、なんだか「見るぞ!」という気に、なる。

しかし私が見るのは景色ではなく「空気」である。

目には見えない空気それはしかし、やはり扉間では大きく違う。

「いろ」も「音」も「匂い」も「重さ」も。

それぞれにそれぞれの良い所と重さがあり、その対比を確かめ楽しみながらも彷徨いて、今はまじないの湖に着いたところである。

そうしていつもの様に。
盛大な独り言を、呟いて普通に喋っていた。


「ん?……………は?………え??……………いやいや。」

その、美しい湖面を見つめていると、ふと浮かんだ「疑問」、私がまだ行っていない「場所」。

 いやいやいやいや?
 ちょ

     まだ だよね?  いやいや まだよ


フルフルと首を振り、その「疑惑事実」をひょっこり取り出してみる。

そう、頭の中に あるは

 「10の扉」   それは  なんの 扉?


なんでか早鐘の様に打つ心臓、「きっと行く」と「なかみ」。

しかし「まだ」なのも、解るのだ。
どうしてかは、解らないけど。

 でもさ そう そうなのよ
  もう 石は 「9つ」集まった の

 だから?  多分 それで いい
 姫様も シンラも いい場所に置くし
  みんなを 護って。 くれる はず

 
くるくると回る頭、でも本当は分かっているのだ。

自分が 「知っている」のに 「開けない」という
 選択肢は 無い と。


そう、「知らなかった」なら、開けない、行かないだろうけど。
私はあの白い部屋に、扉が10あった事を知っているのだ。

きっとそこは、何か特別な扉で、私が決めていい筈だ。

     行くか  行かないか は。


「だっては、無いし………?ホント、何の扉、なんだろうか………。」


 いやいやいやいやいやいやいや   そう

   そうよ これは  「保留」系の はなし

 今は 考えなくて いい   うん。



そうしてシュルリとカケラを仕舞い込むと、目の前の美しさに視点を合わせ自分の中を塗り替えていく。

そうして深呼吸も、して。

 身体も なかみ も 全部
    この 美しい いろに 染め上げちゃえば いい んだ


そう 「不安」も 「心配」も
   私達に すぐに絡み付く  想い

 「習慣化した 色」「癖」の様な もの。


時折「確かめる」ことは 必要だろうけれど
「味わう」ことは 必要のない それ


それを丁寧に「混沌の鍋創造の素」へ 入れ
再び 顔を上げ沁み込ませる 美しい いろ

自分をパッカリと 拡げて。

 全部 出して  回して

   光らせ  揺らし   旋回させて。


 自然と 景色いろに 馴染み飛んでゆく

 達を  眺めて いた。
  



 青から ピンクへ

    薄紫と 差し込む紺色

 端の方は 少しの夜を知らせ

  しかし 「まだまだ」と 黄緑色も 対岸に控えている

 湖面に映る 色

 鏡の様に 美しいそれを 映し

   まるで 「すべて」が フワリと包まれている様な

 そんな 感覚


 「絶対的な 安心感」 それが齎すもの は

   「調和」「平和」「安らぎ」と「温かさ」


何処からか 聴こえてくる調べは

 きっと 私の観音が 奏でている 音楽だろう


 うん?

楽器が 多いな?

きっと窮も 人型になって 手伝っているに違いない
 重なり合う 音色

私も自然と 桟橋に座って。
トントンと 指で調子を刻み始めた。


 湖面で奏でる 交響曲

  飛び散り 舞うは

    星  
         波   
              光     

  青白く光る ウンと 蘭が飛ばす 花々

      光の輪を 描く  幾つもの 波紋

それに呼応する様 空が降りて

   紺が浸食し  夕暮れに光が映える 湖


その 波に 色に共鳴し  

     震えるのは 私の心か 魂か

ぐっと満ちる胸に 手を当て
大きく息を吸い込み 浸透させる その美しい いろ。


 ああ でも。


    なんだ


 だよね ?



 すべて は。

 きっと。



言葉も無い

 なにも 

ただ 美しい色  景色

  自然の 光景  


今までここは 「まじないだから」と 思っていたけれど。

それだってきっと「自然」だ。

だってここは「そういう風に できている」んだから。

石屈あの子が 創った 庭なんだ ここも。


「そう だよね…………。」


 本当  「なんも いらない」


 ただ  「そこに 共に あるだけ」で いい。


そんな瞬間は 確かにあって。
でもそれは完全なる「安心」「守られている」という感覚

きっと「母の胎内」に似た そんな様な もの


でもそれはきっと。
人ならみんな    筈の 感覚だ

忘れてしまっているだけ で。

しかしもうそれは きっと原始の胚芽ではなく
段々と大きく拡大し 沢山のものを 「見」「聞き」「知り」「経験して」。

大人になった 成長した 
 進歩して 進化をして 

 「世界は 安全では ない」と知って 尚

それを超え
母なる地球となった 「すべて」に 包まれる
そんな感覚


それは「絶対的な安心」で。

 誰に 侵されることもなく
 誰に 判断されることもない

    「私の 空間」 それの こと





「…………ふむ。」

確かに。

ぐるりと見渡し、一つ頷く。

今、ここは「私の場」になっていて、おかしなものは一切入って来れない場でもある。

「なんもいらない」それを感じるのは、いつもそんな場所なのだ。


 いつかも思った
 「なんも いらない」あれは 確か
シャットの煙突の 上と
グロッシュラーの あそこ 崖 木の根の揺り籠

確かに。
人間ひとは侵入し得ない、場所である。
その、何処も。


「ふむ?」

「安心…………安心、かぁ。」

まあ、わかる。

いつも何かに怯えていた、「本当の自由」を知らないデヴァイの人々。

それは何処でだって同じだし、ある意味全てに共通する感覚でもあるのだ。


 拭い去る   染み付いた こびり付いた 

   恐怖 不安   澱みの いろ

 どう すれば  取り去れるのか

 しつこい それを 拭い去れるのか。

スルスルと忍び寄る、暗い湖面の影に気付き
パッと顔を上げ空を、映す。



 あ これ。

 今考えても わかんない やつかも ?


そう、思いながらも首を傾げ、再び沈みそうになり
顔を上げ湖面の光を、目に映す。

紺の中に走る、達が反射して煌めいた湖面は、花火が散った様に見えとても幻想的だ。

 ああ こんな 景色じゃ。

 勿体無い 今 「悩む」とこじゃ ないし

 とりあえず 「楽しく」あれば

 「美しい」ものを  映していれば。


「うん、大丈夫。きっと。」

そう、私が それを 選んで。
自分で「反映させる」んだ。


そうして場の空気を再び胸一杯に、取り込んで。

   震え 謳い   
          
          光り    溢す

 舞い   頭上を仰ぎ   

            手を 大きく 振って。


振りなんて無い、めちゃくちゃだけど
心のまま 
魂を剥き出しにして  踊る  私の交響曲

 重なり合う   色    音  煌めき

     香り と  風     波

 すべて を   共に 震わせて。


  なんだっていい     ある 「いろ」

  胸の中にある  いろ   音

   楽器    こえ

 ぜんぶ 出して。


    羽衣も  現し   舞い上げ

 くるくると  踊る  桟橋の上

 
いや?  湖面も 滑りたい かも。


「行けるかな?」
「行こうか 」
「いや…自分の足で。回りたいかも。」

窮が龍の姿で訊いてくれたけど、自分の足でジャンプしたくて「ありがとう」と気持ちだけ貰っておく。

でも、今度やって欲しいかも。


疑いは要らぬと手を差し伸べる ディーの手を取り、そのままスッと湖上を滑る 私の足

「アハハ!」

 いける 行けるじゃん

  ちょっと スケート選手みたく 回っちゃう もん ね??


調子に乗ってくるくると回り、飛んで跳ね、「わーい」とつい、夢中になって、いた。

「う  わっ!」

「疲れたかも?」と一息吐いて、ふと我に返った瞬間、水の中に落ちて。
慌てている、ディーが遠くに見える。

やっぱり 落ちた!

「アハハ 」

それすらも、面白くて。

なんだかおかしなテンションになった私は、笑いながら桟橋まで犬かきを、していた。
うん、泳ぎはあんまり得意じゃないからだ。


「…………ふぅ。あーー、面白かった。」

心配してくれているディー、対して他の光達はキラキラと楽しそうに湖を舞い、慶は私の事を笑っているのが分かる。

「なんか、みんな………うん。面白いね。」

神達にも個性があるのだろう。
それもまた面白くて、みんなの様子を眺めていた。

神域やフェアバンクスの区画以外で、こうしてみんなが舞うのは珍しいからだ。


「なーんか。確かに。もう、なんもいらないな…………。」

いつでも思う、この感覚
 無くしたくない 「想い」
    置いてきた 「楔」。


でも、「今の私」は。

いつでも 何処からでも  何処へでも。

「行ける」ことを、知っているから。


「……………だよね。………で?何に、悩んでたんだっけ??えっ、悩んで、た???」

自分に訊いて、胸に手を当ててみたけれど
心当たりはチラリとも見当たらない。

「えっ。………まあ、それなら、それで。うん。」

まあ はい。

いいよ ね???


「確かなんか、「空気を吸う」だか、「解る」だか、そんな話じゃなかった??とりあえず、だから。吸ったから、いいのかな………。」

胸一杯に吸い込んだ「美しい いろ」、それは私の「なか」を充分に満たし「満タン」状態で何も考えられない。

本来ならば。

それ満タン」で、いいのだろう。

そう、私達は「満たされていて」「充分」で
「喜ばしい」存在なのだ。


「………うーん。とりあえず、帰ろっか。」

「喜ばしい」
いつものセリフを思い付くと、あの緑の瞳に会いたくなってきた。

この頃、自分の光とばかりお出かけしている私
フォーレストはお留守の事が多いけれど。

「えっ?もしかして??」

あの子は 確か「雲」なんだ。
 だから。

「ちょ、今度試してみよう。うん。それなら私も「雲に乗れる」かもしれないって、こと??いいじゃん………。」

ニヤニヤとしながら魔女の店へ向かっていると、「チリン」というベル
珍しく白衣と灰色の毛並みが揃ってこちらへ歩いて来るのが、見える。


「いかん。」

迎えに来てくれたのか、仲良く歩いて来る二人、
灰色の毛と水色髪が、紺に映えて。
それもまた、綺麗だ。

そうして「怪しい」と、ツッコまれる前に。

モミモミと頬を揉みほぐしながら、歩いて行ったのである。


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