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8の扉 デヴァイ 再

神の更新

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腕の中にすっぽりと収まる、心地の良い大きさ
その割には軽い 姫様の 体。

陶器の様な薄く透ける肌、しかし硬すぎない感触に
「何で出来ているのか」気にならなくも、ないけれど。

しかし、私の記憶の中では
「古い髪」や「土」 そんな様なもので出来ていた気がする。

 確か 「人が沢山踏んだ 場所」?か なにか
 確かに「念」「想い」が込もった そんなもの

あの、おばあちゃんの部屋で見つけた本にそう書いてあった筈だ。

だから。
なんだかそれを「ほじくる」様な行為は気が引けたし、探る必要も感じない。

 ただ 今は。
  美しく 戻った白い肌と 少し傷みが残る生地
 それが目の前にあるのだから、それでいいのだ。


「綺麗になります様に。」

そっと呟いて、再び髪を撫でる。
きっとシンラにした時の様に、こうしていれば回復は早いだろう。


それにしても。
 なにが どう なって?

再び頭の中で回り始める キラキラとしたカケラピース


  「姫様」  「体」 

              「なかみ」    「半分」

             「浄め」 

    「透明感」     「光る 波」


 「半分」に なって なんだか人形はスッキリ
 してるし 浄化もされてる
 きっと最初に深海に在った あの時とも 違う

 あの 白金の波で。
 浄められたんだ。きっと。

 でも「護りにする」だけなら
 そのままでも? 
     いいんじゃ  ないの?

 「姫様 単体で 在る」 なんか 強そうだし
 
 どうして 分かれて。

 こう なったのだろうか。


      「変化」 「変容」


   「神が変わる」「時代が変わる」

      「世界が 変わる」

確かにそれは。
「自然」な流れなのだろうし、現にそうなってもいるのだろう。


自分の「なか」に、すっぽりと嵌っている私に
フワリと落ち着く声が降ってくる。


「元々これ人形神は、古い「もの」を使って作られたもの。その重い「念」や「想い」はこの変化には、もう合わぬ。置いてゆく方がいいだろう。依るの変化と共に浄化され、古きは浄くなり「器」と成ったのだ。あとは完全に回復すれば、場の護りとしては使えるだろう。つもりなのだろう?」

「それに、嫌が応にも世界は変わる。それぞれが、それぞれに。」

「それぞれが、それぞれに………。」

お見通しのその言葉に、頷いて。
シンの言葉を繰り返し呟きながら、「なか」に浮かぶは
やはり あの言葉だ。


  「風に 乗れない者」「吹き飛ばされる者」

         
その、私の「なか」が解るのだろう。
見上げると、ゆっくりと瞬きした赤金の瞳が、こう応える。

人間ひとの、道とは。一生とは。魂を取り囲む光の道が無数にあり、そのうちの「どの光に惹かれ進むのか」という事。」

「その者の「目指す光」が、どれなのかはその者自身の地点で違う。だがいつでも光は無数に集まり、選択ができるという事。最高の道、ある程度の道、どこにも行き着かない道。を変えなければ見えない、自分の辿ってきた道、楽な方向。昇ればよく、見えようがその「選択」は個々に任されている。」

「その者自信が己の「見る目」を変えなければ、それはその者の、こと。お前の問題では無い。」

「…………まあ、うん。」

ずっとずっと、考えてきたこと、言われてきたことだ。
でもきっと。

やはり私は、考えずには、いられないのだろうけど。


「曇りなき眼によってそれ事実を見る事は可能だろうが、そうしない。それは愚かな事。だがそれは自由でも、ある。自分で選択しないと、意味を成さぬからな。」

人間ひとは誰しもが違う性質を持ち、それはギフトでもある。全方向から「見る事」によりそれは知る事ができるし、「生かす」事もできよう。」

「しかし。「曇り」とは。翳にも近く、何層にも渡り人間ひとが被るヴェールの事。自らが抜けよう、剥がそうと思わなければ決して見えはしないもの。だろう?」

重い響きが齎す「本当」、いつでも私の道標だった「白い彼」の言葉。

それはやはり「黒い彼」になっても、沢山の「新しいカケラ」を齎す、私の道標だ。


「視点が違う」こと
「なかみ」「持つ もの」「魂の歴史」「練度」
「違い」

 「今の自分の最善」を「選択する」こと

でも。
「選ぶ事を許されていなかった」人々は。
「浸食され」「色が混じり」「同じく染まり」
「疑問を持たぬ」人々は。
「選べる」事を、知らない子供達は。

どう「学んで」「知って」「選択して」「進んで」行けるのか。

蔓延っている
「比較」と「区別」「差別」のこと。

もう「変われない」と言われている、長老達のこと。

沢山の「問題」と言われている事はあるけれど、それはどれも「凝り固まって」いる「しこり」の様なものに、見える。

そう、「説得」「言葉だけ」では。
解せない、「しこり」だ。


「ことば」とは。

一方向では、解らないし「解ろうとしていない」と、同じ言語を話していても解らないから。


「なんか。………やっぱり、おんなじ所をぐるぐる回ってる気は、するんだけど。でも、「悩まない私」は、「私じゃない」気も、して。「考えない」のは、なんか違うよね?」

力んで見上げた瞳は金に変化して、少し微笑んだ様に、見えた。
新しいシンは、「神と人と石」の融合の「いろ」で。
畏れ多いが優しくもある、そんな雰囲気がする。

私が最初とは変化している所為も、あるだろうけど。

「「素直さ」と「純粋さ」は、似て非なるものだ。お前が持つ、その二つのバランス、方向性。どう世界に適応させるか。それはただ与えられたものを享受し、何も疑問に思わない者か、それをきちんと「見れる」者なのか。その差は大きい。」

「全てを認めると。と。世界は崩れるからな。しかしすらも己の世界で「世界すべて」には、何の影響も無い。私がいなくとも明日は来て、同じ様に世界が廻る、様に。」


「現にもう、お前は「変容」した。これまでの様にぼんやりとした道ではなく、しっかりとした行先が見える筈だ。あとは、惹かれるままに進むといい。それだけだ。「生きる」と、いう事は。」

「…………うん。わかった。」


降ってきた沢山のピース、新しいカケラとくるくると回り始める私の「かたち」。

しかしそれは、どれもほんのりと私の「なか」に在ったもので、それをシンが「色付け」したのだと、わかる。
曖昧で、見え辛かったカケラの色が決まり、あるべき場所へ嵌ったピースが幾つか見えたからだ。

「ふむ。」

そう、確かに。
新しく私を囲む「私のかたち」、この中に居ると自分の行く先がはっきりと見え始めたのが分かる。

これまであった「迷い」「曖昧さ」「なんとなくの道筋」。

しかし今、私に見えているものははっきりとした「道」で、それはきっとこれから私が行く「次の扉」で、「超えなければならない 山」でもあるのだろう。

これからの 道  どこを通るのか 
なにを するのか

どう するのか

結局 最後の扉 には。
なにが あるのか。

全く分からないけれど、それもまた。

山を、「超えるべきもの」を、超えてゆけば
「その時」にはほぼ迷い無く、自分が決める事ができるのが、分かる。

「知らない」けれど。

「わかる」のだ。



「自分の行き先が決まったならば、人間ひとを癒す事もできる。「在り方を変える」という、事だからな。どこまで手を差し伸べるのか、その境界線が必要だろうが、お前はもう「何を持つか」「どう関わるか」の視点が備わっている。それはこれまでの「魂」の経験からだろう。何かをせずにはいられないだろうが、やる事は同じだ。「癒し」、それは全てにとってのギフトで「お前にとって」はそういうもの。ただの「手当て」ではなく、「変容」を齎す「ヒント」である。」


  「ギフト」「手当ではなく 変容への ヒント」

 いつかの光を 思い出す その言葉

   イストリアの水色髪と 

  「誰もが期待せずにはいられない なにか」

  「愛」「慈悲」  「光」


くるくると翻り回る カケラ
    沢山 降ってくる ヒントを どう「生かす」のか。


「その者が持つ、「特性」「資質」、まだ気付いていない「光」。それに光を当てれば、良かろう。それなら得意だろう?やり方は考えねばならぬがな。」

「…………確かに?」

「誰しもが持つ、「決して失われない宝」。それが何だか、な?」

「……………多分、でも…一人一人だと、時間かかるかもだけど………。」

「フン、時など。超えて終えば、良い。それか、「あの方法」が有効だが…。」

「えっ。」

「あの方法」? なにそれ?

しかし、食い入る様に見つめる私に対して、教えてくれる気は無いらしい。
そこまではしてくれない、という事なのだろう。

確かに「自分で」考え、導き出さなければ。
これからは、より一層、駄目なのだろう。

そう 私は成長 変化 変容 したのだから。


と。知っている、だろう?」

まあ、なんだけど。

少し意地悪な色になった赤金の瞳は、いい顔をして私の事を観察しているのが、分かる。

高くなったハードル、しかし私の「なかみ」はそれは「できる」と知っているし、やらねば先へは進めないのだ。

わかる。
わかるん、だけど。


「…………成る程確かに。……なんか、もう何でもありだな…。」

「だから世界なのだ。」

「まあ、はい。そういうこと、ですね。うん。なんか、うん。」

少し息を吐いて、空気を入れ替えると。
頭を休めるべく、「なか」にある光り輝く面を眺めていた。


緩やかに波打ちながら、回転する不思議なかたち。

揺ら揺らと波打ちながら廻る光の「辺」、回転する「」、内在する一つ一つの「空間」が含むのはきっと時空だ。

その多胞体を囲む立体曼荼羅では、私の達が更に光と色を加え、周囲を楽しそうに回っている。

確かにこの多胞体が異次元なのは、解る。

多分、現実にはまだ存在しないこの図形は今、私の頭の中だけに、在って。
それを具現化するのが、「創造」で。

それを現実として、んだ。

やっていくと、いう事なんだ。


「然らば次へ、進むが良い。そうすれば、また新しく道が開けよう。」

「うん。」

なんか、コワッ。

タイミングよく、降ってきた声。

キロリと回転し、キラリと光ったその瞳が「黄金」に見えて。

何故だか、「ドキリ」と心臓が跳ねたんだ。
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