透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

魂の木

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いつの間にか、ゴロリと寝返りをしていた。

なんとなく あったかい床
 今のここは 石なのか 地面なのか 
    それとも 象牙?

 いやいやいや。


滑らかな感触を手のひらで味わい、その延長線上の大きな木を見る。

この、「場」だからなのか、その大きな木に影は無くただ柔和にそこにある、それ。


 「あの木」 は
         「何の木」 ?

             気になる うん


    「新しい光」「新しい神域」


その発光している様にも見える、大きな姿は勿論普通の木では、ないだろう。

「私のなかみ」から出来た、それは。


結局。
 この 「木」は?
  なんだろう か  神の木? 光の木?


「いや、「魂の木」、だな…………。」

フワリと柔らかく艶めき、しっかりとそこに「在る」その木は確かに「私が在りたい様子」に、似て。

 柔らかいけど 芯がある
 透明感があって 深い

やはり幾許かの矛盾を含むそれは、とても美しく静かにそこに在って。
全てを受け入れている、そんな気がするのだ。


「まあ、なんだろうね………「見本」みたいなものなのかも。」

確かに「在りたいさま」が、いつでも目の前に「実物」としてあるのはいい事だと思う。
いつでも己を、振り返る事ができるからだ。


そうしていっぱいに息を吸い、心地良い「いろ」で自分の中を満たすと、ぐるりと気になる物に視線を移して行く。
そう、変化した神域、「私の新しい場」のチェックである。

ぐるり360°、端は無くなり柱は消えたものの、流れる小川と祭壇の様な場は変わっていない。

ふと、その側にある鏡が気になってトコトコと近づいて行く。
私のカケラと色で出来た、大きな鏡だ。

「ふぅん?………そういえば。」

くるりと回って確認する、新しい姿。

「成る程、こんな色なのね………。」

新しい色、衣装、飾り、キラキラと光る新しい私。
あの時確認した色と、凡そ変わってはいないが全身全てをきちんと鏡に映すとかなりの迫力だ。

「なん、か………。」

 なんだろう、目ヂカラ??

まじまじと近づき、眺める瞳はそう変わらない虹色に光っている。
しかし、一段上がって元に戻った肌のトーン、白に映える金と水色の中の虹。

顔を動かすと共に煌めく虹彩を光らせて、少し遊んでしまった。
どんな色が見えるのか、どの角度で何色なのか。

そんな遊びをしながら、気の済むまで「いろ」を楽しんでいた。



「自分の、「いろ」かぁ………。」

パシパシと瞬きをして、その度に変わる「いろ」を見ながら、思う。

変化する私の色、みんなの色、それぞれ違う美しさを持つ、光達。

「己の色」、それをみんながしっかりと見て、その美しさを知る事ができれば。

きっと世界のパズルが完成するのも、早いと思うのだけど。


「うーーーん?自分を見る鏡、みたいなものが必要なのかなぁ…。」

しかし。
私達が見なければならないものは「外側」ではなく「内側」で、鏡では見えないものなのだ。

「ふぅむ。」

こうして改めて、映してみて思うけれど。

「確かに。で、価値が決まるのならば。鏡は、無い方がいいのかもね…。」


姿を見る為に作られた鏡、しかしそれは「外側」ばかりをよく映し出し「肉体物質」への執着を高める一因にもなっているのだろう。

「ここから、「外側」を抜いて「なかみ」を、見る………。」

美しいものを知る為に、見る為に、もっと「見たい」という好奇心が生まれ、様々な美しいものを生み出した私達。
人間は沢山の美しいものを生み出してきたけれど、鏡もその一つではあるのだろう。

そう、鏡とは、古来からずっと伝わる「もの」でもあるからだ。

「大体「宝物」の中には鏡があるもんね…。なんの秘密が…………あるんだろうか。「秘密」じゃ、なかったとしても、なんかポイントっぽいよね………?」

 
 新しく気になる キーワード 「鏡」

それはきっと三種の神器にも含まれる、それだからかも知れない。


 「かがみ」「三つ」「映し出すもの」

   「三角」「3という 数字」

 「 か が み 」


くるくると回り煌めく、ピースが私の周りを舞い始める。

じっと見つめる自分の姿、さながら新しい私は天女の様な出立の幻想的な「いろ」に変化している。

この「場」と、「衣」「飾」「光」
 増えた舞う蝶達と背後に泳ぐ窮の煌めき。

遠くを泳ぐ様に舞っている龍は、この幻想的な神域の場を保つ「張り」の役目をして
私の境界を保っているのが、わかる。


「………天女ね、神、かぁ…………まあ、それもいいよね?本当はみんな光だし、自分のなりたい様に、なればいいし?………それならやっぱり、なるのかな…。」


神か 天女か  観音か 光か。

 しかし思った、解った筈だ。


   私は 私にチカラを与え
     自家発電してまた 更に 高みへ
          昇ってゆくの だと。


「うん、それでいいのよ。の。」



 何度も 何度も 自問自答して 

        確認 して 

 確かめて  浄めて  染み込ませ  

      馴染ませて。


   そうして 「成って」ゆくんだ 。



大きく息を吐き、ゆっくりと身体に白を巡らせ
また明るくなった光に入れ替えて。

窮が新しくしてくれている、風を取り込み
また自分の中を、浄めて いく。


「うん?」

あれ?

気が付かなかったけど。

「あ。」

そう、その木の根元には「人形」がしっかりと座っていて「私の準備」ができたから、今現れたのだと分かる。


多分、あの木の前で目覚めた私は神域で休息していたのだろう。

あそこから、戻ってから。
まだ「向こうデヴァイ」へは帰っていないから。


「え。これ姫様、どう、する???」

ブツブツと呟きぐるぐるしながらも、穏やかに変化している姫様の元へ近づいて行く。
海底で見た時よりも、幾分マシになっている気がするのは気の所為だろうか。


しかし、姫様の事を相談するにしてもパッと思い浮かぶのはあの黒い部屋しかない。
やはりシンに相談すべきだろうか。

て、言うか。

「え?シン…………が、シンラ、だから???あの部屋の人形神は、どうする?なる?これ姫様を、あっちに置けば、いいの???」


見上げる木の根元、抱き上げたその人形はフワリと軽い。
そしてやはり、レースの状態が回復している事に目敏く気が付いた。

「えっ、ウソ、あれ?待って。」

あれこれ衣装の細部を確認する。
肌の様子、髪の絡れもチェックすると、「もう少し補修が必要だ」という結論に達した。

多分、ここ神域に在れば。
自然と回復してくる筈だ。

 あとはちょちょいと?
 みんなが? 舞えば? なんか よく

         なりそう だよね ??

フワリと目の前を過る鮮やかな蝶を見ながら、そう思う。
なんならラーダにリュートを奏でで貰っていれば、回復が早そうだ。


「ふむ?そうと決まれば、その間に「どうするか」相談、すればいいか………。」

結局、誰に?

シンだよね
本部長…………いやいや
千里?それも アリ

まあ、とりあえず。

なんとか、なるでしょ
 まだ「ただいま」って 言ってないし


「あれ?」

そもそも。

私、勝手にコッソリ、出て来たんじゃなかった?????


「アハハッ」

一頻り笑い転げて、寝転がったままうえを眺める。

結局どのくらい、いなかっただろうか。

まさか「一晩」では、ない と  思う ?けど??

「いやいやあり得るな。時間軸が違うもん、だって。」

なにしろ上手くすれば、しれっとベッドに潜り込めるかも知れない。

まあ、あの人は気付くだろうけど。
とりあえず、本部長にバレなければ騒ぎにはならない筈だ。

「よし、そうと決まれば。」

そうしてとりあえず。

そっとまた、木の根元に姫様を置いてフワリと現れたラーダに「よろしくね?」と頼む。

多分さっきの私のぐるぐるを知っているのだろう、何処からか走ってきたウンからリュートを受け取り弾き始めた音色に、思わず眠くなりそうだ。


「いかん。」

そうして、みんなに手を振ると。

意を決して、目を瞑り星空の天蓋を思い浮かべたのである。








 
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