透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

ある日の事件

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次の日、目が覚めると事件が起きていた。

いや、「目覚めた時」は 分からなかったけど。

そう
私が「想像もしていなかった」それ事件は、朝の食堂にて公になった。



「えっ?!んですか???」

「ああ、まあ心配するな。気が済んだら帰ってくるだろう。」

「…………。」

そう軽く言う極彩色の言葉、私の頭の中はぐるぐると橙が渦巻いている。

「昨日」「焔」「炎」「黎」「変化」
「代わりの炎が いるから?」

でも、多分。
 違うだろうけど。


そう、朝起きると、隣にいつもの温もりが無かった。

でも、いつもの様に。

何処かへ何か、用を足しに行っているか本部長の作戦なのか。
いない事も多い金色を、目が覚めた時には不思議に思っていなかったけれど。


朝の支度の後、鼻歌を歌いながら食堂の扉を開けると、なんだか微妙な違和感が漂っているのに気が付いた。

 うん? なんだろう?

とりあえず、朝の隣に座り「おはよう」と目を合わせてみる。
そうしてその違和感を確かめる為、チラリと向こうのテーブルを、見た。

その時「パチン」と合った、紫の瞳が「微妙な揶揄い」を含んでいたから。
「どうしたの?」と、追求した私に答えた極彩色は、更なる追求を避ける為か無言でくるりと背を向けてしまった。


 え
 なんで??
 これ以上 訊くなって こと?

いや? でも 本部長は普通…………
これは 「用事を頼んだ」系の話じゃ なくて

ホントの本当に  「いない」系の はな し ???


ぐるぐると渦巻く頭の中、しかし思ったよりも動揺していない自分に安堵もする。


あの人金色が いない」

その、「事実」は。

しかし私の変容も含んだ「事実いろ」で私に齎され、自分が「進んだのだ」と理解できる、事柄でもある。

そう、別に「それ自体」は「良くも悪くもない」、ただ「いない」という事なのだ。
そこに「寂しさ」が、くっつくか、つかないかだけで。


「ま、大丈夫だと思ったから「いない」んでしょ。解ってるんだから、とりあえずごはん、食べたら?」

私を心配させない様、いつもの調子でそう言う朝。

「うん。解ってる。………わ、今日も美味しそうだね!」

タイミング良く、スープを運んで来たシリーに微笑むと、やはり心配の色が窺えた。

「大丈夫、無理してないから。多分?」
「なんでそこで「多分」って言うかな…。」

「フフッ、はい、解ってますよ。」

いつものツッコミに笑うシリー、厨房の奥は温かないつもの空気だ。
それを見て、スープの湯気を胸に吸い込むと。

「はあ~、あったまるな~やっぱり。」

「そうよ。とりあえず食べときゃなんとかなるでしょ。」

「えっ、朝、私がお腹空いてなければ大丈夫だと思ってるでしょ?………いや、違うとも言い切れない………。」
「はいはい、とりあえず冷めないうちにどうぞ。」

「はぁい。」

そうしてフーフー言いつつ、今日も美味しい朝食を有り難く頂く。


「どこに行ったのか」
「なんでいないのか」
「いつ帰って来るのか」

気にならないでも、なかったけど。
多分「その時」になれば、帰ってくるんだ。

 それに、なんとなくだけど。
 
多分 私が「変容」したから 彼は「いなくなった」筈だ。

何故だかそれだけは私は。

とりあえずくるりと視点を切り替えて、もう一つの根拠、紫の瞳を見る。


あの、意味深な色………。

そう、あの紫に「迷い」の色は少しも無かったから。

先ずは私も、安心してお腹を満たすことにしたのである。








訊こうか 訊くまいか

 いや 迷っても仕方ないんだ けど。

とりあえず。
古いのと、新しいの、両方聞けばいいよね???

「なんだ。」

珍しく、こちらへ気配を向けていたのか。

チラリと顔を上げた本部長は、食後のお茶を飲みながら面倒臭そうな色を醸し出している。

「いや、違うんですよ。じゃなくて。」

なんとなく「金色関連の質問をされる」と、思っているウイントフークがなんだか面白い。
しかし、残念ながら私の疑問はそこじゃないのだ。


「あ、の…………。」

嫌そうな視線を潜り、私が質問したのはあの事
そう「予言」の話だ。

「ウイントフークさん、最初に。その、古い予言だと「世界が滅びる」?でしたっけ?なんて言ってました??」

「意外」という色の茶の瞳、隣の極彩色はなんだか「面白そう」という色だ。
確かにこの二人が「私が金色を恋しがる」と思っていても不思議じゃない。

しかし、私は成長したのだ、うん。


「カチリ」とカップを置いた本部長は、少し考えて。
向かいの紫に向かって、答えている。
何故だ。

「もうほぼ、新説が有力となっているからな。古い方は効力を失っている可能性が高いが、まあそちらを信じていた期間の方が長いから、何とも言えんが。とりあえずは、こうだ。」

そう言って、ウイントフークがスラスラと暗唱した古い予言。

それは。
「今の私」が聞くと、「とてつもなくいい予言」に、聞こえたんだ。


「土の時代が終わり 風の時代となる時
 9つの石と 青の少女が現れ
 世界は 白となるだろう」


「…………えっ、「白」。」

思わず、目を逸らしてしまったけれど。

ゆっくりと顔を動かした私を、見ているのは深い紫の瞳だ。

「知ってる」んだ、あの色、顔は。


ぐるぐると思い浮かぶは薄暗いガラクタ部屋、あの時聞いたその予言は確かに「滅び」のイメージだった。

でも。
確かに。

、言われただけで
 それも「そうであろう」という 予測 だけで

ただ森が白くなってきたから 信憑性が増しただけだし

なにより 「白くなる」という事は

 「滅び」ではなくて 

     「真っ新の」「再生」


  「一度 死んで 生まれ変わる」
  そう 言っていた のは。

「あ。」

そうだ、あの子揺り籠

 あの心地良い 空間で 響いてきた あの 揺らぎ


「え  」

 ちょ っと?

         待って ???



「え、「世界が白くなる」ならば、別に良くないですか???」

そう、それに。

「黒から白に」、反転すると。
翻して、やると。

思ったんだ、あの海底で。


「まあ、待て。とりあえず落ち着け、座れ。」

「ポン」と人型に戻った千里にそう言われ、素直に座る。

意識してみると、頭は真っ白、心臓はドキドキと元気に鼓動を知らせていて。
確かに私も落ち着く必要があると思う。

そして深呼吸し整えると、すぐに顔を上げ極彩色の髪を映す。
きっと「知っている」だろう、この石がどんな話をするのか気になったからだ。


「お前は、どうしたい?」

「えっ?私???」

意外にも、矛先が自分に向けられやや狼狽える。

しかし、「当然」という顔の紫の瞳は静かで深く、真剣にその質問をしているのが、分かる。

私に深海で 質問した時 みたいに。


、ってそりゃ「白く」なるなら、そうしようよ?明るく、真っ新、みんな笑顔で楽しく、それぞれの「いろ」で。光る世界、じゃないの?」

「まあ、そうだろうな。」

 え じゃあ何故聞いた

あっさりとそう返事をして、くるりと本部長へ向き直った千里。

私のズッコケをスルーして、男二人はこれからの話を始めている。
訊きたい事は沢山あったけど。
とりあえず、情報を整理した方がいい。

そうしてシリーが運んでくれたお茶を飲みながら、二人の話を聞く事にした。



ていうか 腕輪の話って秘密じゃないのかな
そもそも「ナヴァラトナの腕輪」って なに
石の話は バレてるから関係無いの?
てか姫様 どうする
まあ あそこ神域にある間は バレないけど
でも この人なら  知ってるかも
いや 知ってるな?

ていうか新説も 「救い」なら
結局 「青の少女」は「いい」ってこと じゃん
まあ それで 万事解決  うん
え 結局アラルは大丈夫 かな

そもそも「予言」って。
いつ 誰が?   

したの ?????


くるくると回る頭の中、男達の話は半分程度、入って来ている。
逆に言えば「半分程度しか」だけど。

そう、何故かと言うと私の知らない名前やあれこれが出てきて、脳みそがお留守気味になっていたことと。
お腹がいっぱいで………眠くなったのかも、知れない。うむ。


「あんた、中身はあんまり変わってないわね。」

朝に失礼な事を言われながらも、段々と会話が耳に入ってきた。
結局私は外に出ないのだとしても、みんなの動向は気になるからだ。

そう、やっとこ私の知る名がちらりほらりと、出てきて。
頭がシャキリと座り、正座をしてその話を聞き始めたのだった。

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