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8の扉 デヴァイ 再

行動

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「なにしろするとやっぱり違いますね。ブワッと上がって外に出ると、確かに分かるんですよ。この中が「水中」みたいな「幕の中」みたいな、「重たいなにか」の中で。その中だと全体が、全然分からない事が。なんか、ぼんやりとは「知ってる」んですけど、すぐ忘れるんだよな………。すぐに目の前の事に夢中になっちゃう、みたいな?」

忘れないうちに、とつらつらと夢の中の出来事を漏らしている場所はいつもの書斎である。


夢は留めないと薄れる事が解っていた私は、いつもの様に自分の中で反芻するでなく本部長に報告しに来ていた。

なんとなくだけど、その方がいいと思ったからだ。
それに。

「なんか、全体的なヒントですよね、これ。」

「まあ、そうだな。」

彷徨きながら気の無い返事をするこの人は、私の知らぬ事で頭の中が高速回転しているのだろう。

暫くボーッと、その一定のスピードを目に映しているとピタリと止まってヒントが降ってきた。

「とりあえず、お前はここデヴァイ以外へ散歩にでも行って、「外から見る」事をもっと意識してみろ。違う空気を吸って多分また、変わる。」

「え?…………はい。成る程?」

一瞬「はてな」が出たが、茶の瞳と目が合うとその意図が知れる。

多分、「なにか」が刺激になって私にまた答えを齎すということなんだ。


確かに自分が意識しなくとも、私の目や耳、触れる空気、全体から伝わる「なにか」はヒントを伝えて来ているのだろう。

それがきっと夢に出たり、閃きで降りて来たり、するんだ。


「成る程、じゃあ散歩に励むとしますか…。」

、して行けよ?」
「はぁい。」

とりあえず、朝食前に寄ったのだ。
私のお腹は「とりあえず食堂へ行け」と言っている。

一緒に行こうかと、くるりと振り返ると白衣の姿は既に無く小部屋に灯りが着いている。

「ありゃ。」

朝から何かのスイッチを押してしまった様だ。

「ま、いつもの事でしょ、うん。」

私の所為じゃ、ないし………うん。


とりあえずハクロに何か持って行って貰おう。

そう謎に言い訳をして、白の扉をパタンと閉じた。





「空気に触れる」それは確かに、変化を齎すには有効な手段だ。

他の場所、例えばシャットなんかは。
緩りとした夕暮れの空気、重くは無いが気怠いあの雰囲気が「緩い前進」をこの空間に敷いていて。

「研究」に没頭しようとは、思うのだけど「変えよう」「世界に生かそう」、そこまで思いが至らない「重さ」があるのは、分かる。

「違い」を知ること
「空気」を読むこと
「動き」を見ること

なんとなくでも、「なにか」を感じ「今 いる」所から出ること
行動すること 動く こと

それも 「惹かれた」方へ。


「そうすれば、「自分の流れ」って事だもんね………。」

嫌な方向、やりたくないこと、それは「他の流れ」なのだろう。
時に足を突っ込み「学んで」みたとしても、やはり「自分の流れ」に戻らなければ。

「行き着く所に、行き着かない、ということか…………。」



 「空気」「流れ」「行き先」

 それに 最近齎された ヒント

 「愛」「慈悲」「思いやり」


「なんっか…………。」

ある。 多分。「繋がり」が。


「あれが気になるんだよなぁ………。」

シンが言っていた、「ある方法」、それは何なのか。

     「みんなが持っている」

 基礎 ベース 

   共感力  思いやり 気遣い

  互いに 「繋がっている」という 無意識の感覚 ?



でも。
この頃感じたヒントの様な感覚、それは「場所」の違いだ。

デヴァイでのこと、グロッシュラーの神殿、どこでも簡単に感じることのできる蔓延る「閉塞感」。

何も無いのに、外側からぐっと、押されている様な押し込められている様な、あの感覚。
グロッシュラーは、外なのに何故か感じる「閉塞感あれ」は、何なのだろうか。

それと比べて、どこに、いても私の「なか」「神域」に在れば、感じることのできる「解放感」「拡大している」という意識。

きっと、ここにヒントがある。
なにか、次への道標、行く先、素敵な匂いのする方向だ。

そう、私達は。

 素敵な いい匂いのする  美しい

   綺麗な色の  キラキラした 方向、道へ。

進みたいんだ。


「なんっか、こう、テンション上がる?いや
それだと疲れるかな…いきなりだと逆に違和感??………だから………。」

いつも「静かに暮らさなければ」と「お淑やかに」と。
それに馴染んだ感覚からは、少し乖離し過ぎるかも知れない。

「それなら、「リラックス」かな………?」

 ふんわり フワフワ   ゆったり

    ゆっくり と 

 ああ そうね  あの 「揺り籠」の 様な

  あんな 感じ ??


「癒しの………時間、場所、店?………あっ。」


レナじゃん。


私達に必要なのは、先ずは「なかみ」を解すこと

 「もの」とか「こと」よりも

 それを使って まず 「なかみ」「扉」を

 「開く」んだ



「…………ん?」

最近。
何処かで聞いたな、その言葉。



 あ。 黎 かも ?

確か 変容した時  「開く」そんな様なこと
  言ってた な??


くるくると回転する面の中から「より光る」ものを弾き出し、パッと目の前で展開させる。

 それにより 齎されるは
  あの時の 黎の 「いろ」。


 『この 「思いやり」は 「優しさ」の完成形

 「言い訳」や「誤魔化し」全てを赦し 流し

   しかし その重みに 倒れず 

 それすらを大きく包み込んで

   沁み込み融かす 「チカラ」


 「すべて」を 離し 「己の道」を

   「真ん中」に 置くからこそ できる こと


 そうして  その
  
      何者も抗えぬ 美しい光  

      暖かさ  温もり  

  が      開く

            ひと の「奥」を  


   そうして 雪崩れ込んでゆく


  「美しい 色」「炎」「光」』


ぼんやりと浮かぶ 暖かい炎
  緩りと「すべて」が 包まれる 感覚


それ を許されていない
「安息」「安心」「寛ぎ」すら 覚えることができない
日常 とは。

 いつも いつでもある 「崖っぷち」感
 「張り詰めいなければ」切れてしまう 糸

 「楽しむ」事に対する 罪悪感


でも それって?
  あの子達と 同じ じゃない??

いつかも思った 「思う自由」「夢見る自由」

「思えば」「考えれば」更に突き落とされる谷底

「考えない方が 安全 安心」

その 不健全さ。



「……………やっぱり………「同じ」だよね。」


何処でも 誰でも どんな 状況 環境 だろうとしても。

「私達の「光」は、「同じ」だ。」

 強く「真ん中」にある 思い


だから 私は光を降ろして。

 「この世のものとも思えない 美しい光」を。

 が 同じ様に 目にして

 「すべて」が「全員」が いるからこそ

 「現すことができる」色、美しさ、景色。

 どの存在にも 同等に降り注ぐ 抗えない 光


そして。

「ほら 同じだよね?」「違い はあっても 上下 優劣は 無いよね?」

それを示したかった 筈なんだ。


でも。

きっと「見ただけ」じゃ、変わらない人もいて
何にも感じない人だって、いる。

それは自由だけど。
それも、自由だけれど。


くるくると変わる色、回る「かたち」

「新しい私」が、やること、できること、「進んだ」からこそ、見える景色。


 なんだ ろうか

  「コップを満たす」「星屑が 降る」
 
「光を 降らせる」「美しい蜜を 流通させる」

  
「いやいや、待てよ?違うの、それもいいんだけど「開く」のよね………。」

今思い付いたものは「もの」を媒介として「開く」挑戦、しかし現在解っている事はでも開かない人がいるという事実だ。

だから?

なんだっけ??

 本部長 が  言ってた あの


「あ!!「空気」だ!」

えっ
 待って?  「空気」を ?

   変える の? どう やって?

え でも 「変えない」って

 いやいや ?

しかし 「空気」なら?


 「変えても」「いい」んじゃ ? 
           ないかしら、、、????


「だって空気が美味しくなるなら誰も困らない………」

いやいや待てよ
どう やるの それ

でも。

でもでも ?


 もし。

 そう もし。


 「空気」が。


 「そっち」の方向

 「光」「明るい」「元気」「チカラ」

   「みんな」  「共同」 「繋がり」

   「当たり前」に なれ ば ????



「お爺さん達も、「合わせられる」?「合っちゃう」、かも????」

 なんとなく みたいな。
 あれ? いつの間に ? それなら
 あ、そうか そうしようかな みたいな??


「うん?」

なんか。
そんな 感じ???


曖昧なカケラ達、まだまだ「いろ」を足す必要はあるだろうけど。

盛大なヒントをフワリと繋ぎ合わせ、なんとなくの「かたち」にしていく。

「ああ、でも。か。」


 この頃のキーワード 「調和」

 そう


 「和」を基礎ベースに まるっと 

     包み込む


「すっぽり…………くるんじゃえば?………いいん、じゃない???だよね?」

え なんか。 いいかも??


まだ「解決」なんて、言えないけれど
見つけた新しい「カケラ」、沢山のピース。

私の周りをくるくると周り始めた「それら」は、「そう」「そっちだ」と新しい「かたち」を創り出そうと揺らぎ、回転し始めたのが、わかる。

だから。

  って ことなんだ。



なんだか解ってきた、私の「なかみ」、「直感」の様なもの、これからの「道筋」と「方法」。

きっとこのカケラ達と私の「なかみ」に任せておけば、きちんと「真ん中」がブレなければ。

自動的に「そうなる」に、違いない。

だから 
そうして私は「色」「カケラピース」を集める為に
何処か惹かれる場所に出かけたり
何かを見たり
聞いたり
味わったり 楽しんだり すればいい、だけで。


「えっ、ナニコレ私、有能??」

そう
「自動 私の美しいかたち創造機 」を搭載した気分なのである。


「はあ、はあ、ほう?ならばみんなが「これ」を搭載すれば、いいんじゃない??あ、でもそれをなのか。」

ふむ。

でもきっと、それもまた。
ぐるぐる、フワフワ、ウロウロしていると見つかるのかも、知れない。

「そうよ、何事も深刻になってはいかんのだ。」

「リラックス」が大事だと、自分の「真ん中」「なか」「神域」に在ることが大切だと。

「知った」筈だ。

そうすれば。

「はい、「自ずと」なる、という事で。はい。」


そうして一人、青の廊下で。

盛大な独り言を締め括ったので、ある。
うむ。

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