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8の扉 デヴァイ 再

素敵な くすり

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私の「なか」から 生まれる もの


  あの金色の「蜜」。
  それも いいな?

あれはなんだか、とても栄養がありそうなものだ。


「ぐ~るぐる、ぐ~るぐるり♪」

自分の「なか」での栄養がありそうなもの、「濃いもの」「密度」を考えながら、少し重みのある液体を混ぜていた。


 「創ること」  「できる もの」

    「降り注がせ」 「栄養になる もの」

 「歴史のある それ」 「なにか」

   「古き チカラ ある もの」


あの時、出て来た私の「装備衣装」、それは魂の篭る「もの」でも、あった。
それは身に付けた、自分が一番良く解っていたから。

は、パワーがあるよ…。」

「それに近いもの」、そんな事を思い浮かべつつ
美しく変化してゆく鍋の中身にどんどんカケラを投入していく。

 でも。
 栄養 が ある方がいいし
 なんなら 美容?それはどうなの

 でも。
 女性達に 配るなら それも アリ寄りの あり


思い浮かべた「それ」も鍋の中に投入し、再びぐるぐると混ぜる「美しい混沌」の鍋。

きっと出来上がるものは「抗えない 優しさ」の様な、ものでとても良い香りのする香油の様な、もの。

「フフ………」

きっとみんな、欲しくなる。

それに、着ければ幸せになるし、優しくなれるし癒されるし、満たされてくる。
言わば「自動チャージ香油」、そんな感じの様な、もの。

決して怪しげな「くすり」では、ない。

ただ、きっと「抗えない優しさ」や「慈悲」「強大な思いやり」は。
ある意味「悪い薬」よりも凶悪で、抗えなくて溺れていたくて。

「切らすことのできない」、とても危険で良質な「くすり」なのだ。

そう、どうしたって「真ん中」へ戻ってしまう「危険なくすり」。
それがこの「美しい混沌」から、出来る。

それを確信した私は、更に悪い顔で星屑を投入しながら、ぐるぐると気合を入れて掻き混ぜていた。


「さぁて。よっこいしょ、と。」

しかしいつの間に、魔女部屋へ移動したのだろうか。

青のホールに?
休んでなかったっけ??

それとも、夢?
まあ、それならそれで、別にいいけど。

ふと湧いてきた疑問をポイと投げ、目の前の鍋に視線を戻す。


「本部長………じゃなくてフリジアさんの方がいいな………イストリアさんの店でも、いいしな?」

出来上がりを想像しながら、その「魔法のくすり」「香油」をどう流通させようかと更に悪い顔になって考える。

魔法の袋もいいが、あれは意外と既に流通しているのだ。
新しいものの方が、良いかもしれないと。
この間、フリジアとも相談していたのだがそのアイディアが思い浮かばなかった。

しかし、これなら申し分ない筈である。

「本部長は危険かも知れない………。」

私の石で出来た特製掻き混ぜ棒は更にチカラが加わりなんだか発光し始めている。
その美しさを見て、心配になって来た。

あの人ならば、これを全て奪い取って「俺が調べてからな」なんて、簡単に言いそうだからだ。
やはり、本部長には内緒にしておこう。

ニヤニヤと更に抑え切れないワクワクが、鍋に追加されて光がもっと強くなってきた。

とても、いい感じである。

なんならもっと、星屑だって入っちゃうし??


「フフフ………」

「そろそろアンタ、いい加減にしたら?」

呆れた溜息と共に、聞こえてくる声。

その声に、これが現実でどうやら私は時を跳んだのかもしれないと、思う。
しかし、今はそれどころでは、ない。

いつの間にか、背後で小言を言う朝の事も気にしない事にする。

私は、今。

これまでの最高傑作が出来上がりそうで、興奮しているのだ。
いや、だから多少怪しいのは仕方が無いのだ。
うむ。


「フフフ」

「………だから…………まぁ、いいか………いつもの事だし?」

諦めの声が聞こえてきてからも、ぐるぐると混ぜる「美しい混沌」、段々と金色に近くなってきた不思議なくすり。

これなら「美味しい蜜」として、配っても問題無さそうである。
とてつもなく、いい香りもして来てきっと「香油」としても使えるのだろう。

その「応用が効く」「蜜」に、またニンマリとして。
仕上げに「ポン」と、大きな星屑を投入した。


「ブワリ」と一瞬、大きく発光したそのくすりは、そのままスッと落ち着いた金色に変化して。

「ふむ。」

そうしてその変化が「成った」ことを確認すると、腰に手を当て部屋を見渡す。

「さて?」

そうして、この魅力的な品を分配するべく、丁度良い、手頃な小瓶が無いかと探し始めたのである。

うむ。



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