透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

生きている ギフト

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「許せる、許せないじゃ、ないんだ。私達は、みんながみんな。人間ひとで、あるならばこの世界の仕組みに加担しているという事なんだよ。」

フリジアの静かな言葉が、部屋に響いている。

いつの間にか、和やかだったお茶会には何故だか暗雲が立ち込めていた。


「でも…。」
「私達の自由は………」

「それだって、私達がずっとずっと、自分達に強いてきた、歴史さ。「おかしい」「嫌だ」と、思っても。、きただろう?みんな、自分の、娘達にもね。」

「解るよ。解る。「できなかった」「酷い目に遭う」それも、解るんだ。でもね?「やれなかった」と「やらなかった」の結果は、同じで。その小さな積み重ね、の、この結果、現実なんだよ。悲しみの連鎖と転換、感情と事実の絡み合い。それとこれとは、また別の問題だ。………少し、難しいだろうけどね。」

悔しそうな顔、悲しそうな顔、ハッとした顔。
耐える顔や不可解だという、顔も。

様々な女性たちの表情の中、ただそれを優しく見つめるフリジアの緑の瞳は深い色に変化している。

シンとした部屋、私はその上で。

聴いてはいたものの、なんと言っていいのか、分からなかった。

いや、口は出さないけれど。
それは、解っていたのだけれど。

自分の「なか」にもまだある靄、それを目の当たりにしている女性達を見て、改めて自分の胸にも手を当てじっと考えていた。

「今 私がここに居たら言える事はあるのだろうか」
「なにか 助けに 手掛かりに なる言葉はあるだろうか」

そう考えずにはいられないのだ。


「まだ」「歩き始めたばかり」の、デヴァイここの女性達を見て。

じっとしていられないのも、事実だ。
でも。

なにしろ「この話題にまで至っている」こと
複雑だろうが「拒否」ではないこと

「スタートを 切れている」

その「事実」は。

確実に、私の心の中にも新しい光を齎したんだ。


 まだ 「真っ暗闇」だと。

 ほんの少しの、「星」が光る 夜中の空だと

 思っていた この世界デヴァイ
 
      光が 燈る   繋がる

    「星」が  増え始める


それは小さな一歩だけれど、とてつもなく大きな一歩でも、あって。

その事実に 胸がグッときて。
ついフワフワをギュッとして「ゥン」と言う声に、慌てて腕を緩めた。


女性達の声は静かに続いているが、私の頭の中はぐるぐると回り始め「その色」を捉える事はもう出来ない。

集中しないと聴こえないその状況に感謝しながらも、体勢を整えウンを撫で、そのフワフワに癒されながらも景色を眺めていた。


見える色は、暗くは、ない。

ただ、とても「複雑」だけれど。

しかし、それは誰しもが通る道で、抜けなければ見えない景色が、あって。
一つ一つをこなして、脱いで、複雑さを取り払って私達はこの世界を抜けて行くんだ。

「私」は。

見ていることしか、できないけれど。


とりあえず、ほんのりと光を纏った「暖かさ」を送り、きっと冷めているだろうカップを温める。

一瞬、「キラリ」と光ったからフリジアには分かるだろう。
このお茶を飲めば、少し心が落ち着くに違いない。


思ったよりも冷静に凪いでいる私の心、「何かをしたい」という思いと「それぞれの自由」という思い。

でも、それも踏まえて。
その光景を見ながら「なにか他に できること」をぐるぐると考えていた。





「そのままで」  「動く」 「見せる」

  「そこにいる なにか」

 「触媒」  「影響」  「伝わる もの」

  「見えなく とも」 「感じる もの」


くるくると回るカケラと色、景色
 
  みんなの表情  私の ぐるぐる


 回る 蝶達      リュートの響き

 
   舞い降りる 羽衣


     私の  「光」たち



あ でも。

 だ。


 私は    いや、私も。

 「一人でやらなきゃ 」と 思っていたけど


 「助けそれ」も 「自分」で。



 「神」も「観音」も 「ひかり」も

   自分 と 「同じ」「」だから ?



「じゃあ。何の問題も、無く、ない???」

そう、だから。

私が 光を降り注がせたって
   ちょいと ガラスをつついて 悪戯したって
 いいし

 なんなら また 魔法の袋  作っちゃっても

    いい   

ってこと だよね?????



「…………まあ、そう、なるよね、うん。」


自分の中で「私」「光」「みんな」「神」「観音」達を繋げて、いく。

「私の中の」が、私を助けたいと思う、様に。
「呼んで」「手を 伸ばして」と 言う様に。

私が「みんな」に 光を 降らせても
時折悪戯に 星屑を溢してみても 

   それは 「同じ」で「大丈夫」で
     それは 「それでいい」んだ。



だから もし。

 「呼んで」 くれた なら。



 「想って」いいんだ  「願って」いいんだ


 だって 私は いつだって  みんなに

  上を向いて 欲しい と

 光を 降らせたい と。


 思って るから。


みんな「同じ」で
みんなが「ひかり」で

手を 出さない方が いいのも 知ってる。

それしか できない ことも。


  

 


 「助けて」って 言って欲しいんだ

 求めて 欲しいんだ


 言って  いいんだ よ。


だって 私は。

いつだって  ここ狭間から 見ているんだから。

多分 もう。

 「呼んで」くれたなら、その「」は伝わるし
 「わかる」し「聴こえる」

 繋いで くれる

 私の 光達が  あの 音が。

きっと。
どこに いても。



「場」の 「いろ」から。

  もどかしさ  染みてくる想い

 見える 「馴染んだ色」
 
その どれもが。

 「わかる」からこそ  無闇に手出しはできないけれど。

「だから…………願って?祈って。いいんだ。みんな、もっと。」


       『願って 祈って』


でも
は。

これまでに「神なんていない」と。

何度も思った私からしてみても、「無駄」だと思える行為かも、知れない。
信じられないかも、知れないけれど。

でも。

変わってきてる 

 風は やっぱり。

   吹いているんだ

      流れて いるんだ


  世界は。  変わろうとして いるんだ


 それが 解る から。



「やっぱり…………祈りだよね…願い、か。」


じっと、上を見上げて 思う。

ここからでも見える、いつだってそこにある星、それはやはり私の「なか」でも美しく煌めいて、いて。

やっぱり。

どこでだって、いつだって  何度だって。

「見上げれば そこなかにある」それ

自分」の為に、輝く星 だから。




「…………さて?どう、しようかな??」

考えは振り出しに戻ったものの、心は明るい。

これからの事を、前向きに上向きに考えられるから。

「ただ 見ているだけ」

そこから私も、抜け出すんだ。

そうしてまた、場所を一段変えて。

一体、何処へ行くのだろうか。


「うーーーん。分からない。しかし、、面白いのだよ…………。」

ポツポツと、瞬き始めた「なか」の星は、きっと私の「なか」の光を反映しているのだろう。


 自分の「なか」で 瞬く光

   幾千の星   ひかりの カケラ


 「それひかり」は。

 「あかり」で「道標」で 

 時に 私を暖める 「ほのお」でも ある


 それは   白い あの子

 白金の観音  紅梅色の蝶
               黒の龍

    青白兎  漆黒の蝶

  様々な  私


 多様な ひかり でも あるし

 多分「私のなかの あれ金色」も 含まれる



その「ひかりすべて」を 受けて。

私は 「変わる」し「変容」して「成長」「転換」する


「それ」は。
なんなの、だろうか。

  「変わる」もの 「変える」もの
  「変え得る」もの


「なかみ」「光」「真ん中」「自分」「魂」
そのどれもが合っていて、一つでは成し得ない「変容」へのスイッチ、しかし私が今必要としているのはみんなの手掛かりになりそうな、「もの」的なはっきりした「なにか」だ。


「………うーーーーん。でも?やっぱり、「もの物質」では、ないな??」

星屑でもあるし、カケラもいいけれど。

でも多分。
「もの」より「波長」、「感覚」なのか「匂い」か。

そんな「雰囲気」の、様な もの。


「なんかさ、ぐっと、。「感動」する、「心揺さぶる」みたいな、ずっとずっと何年経っても忘れない「なにか」。そんなもの、だよねきっと。人を動かす事ができるものって。変えちゃうような、「なにか」って。」

思わず独り言にも熱が入るけれど。

でもきっと「」も人によって違うのだろうし、私に他人ひとの「」は分からない。

だから。

「うーーーん。そのうち、また分かってくるかなぁ?」



「「風に乗れない者」、か。」

その時。
下からポツリと呟いた、声が聞こえた。

何処かで聞いた、その言葉。
最近、思い出した筈だけど?
どこでだったろうか。


「…………イストリアさん、だよね………?」

「ああ、確かに私達はそんな話をしていたからね。お前さんも聞いていたか。」

「あれ?」

返事が来た事で、お茶会が解散になりフリジアがこちらを見上げている事に気が付いた。

「見えるんですか?フリジアさんには??」

意図して「ポン」と降り立った私に、苦笑しながら座る様、促す手。

笑いながらお茶を淹れてくれ、仕方の無い色を宿した黄緑の瞳は呆れた様にこう言った。

「お前さん、あれだけ大きな声で喋っていたら。嫌でも、聴こえるさね。しかし他の者は、どうかな………。」

ブツブツと言いながらも優しい瞳。
その色に癒されながらも確かに声は大きかったと反省する。
今度からは気を付けなきゃ。

勘の鋭い人やまじないが強い人には、聴こえるのだろう。
それにフリジアは私が「上にいるかも知れない」と、知っているからだろうけど。


「さてさて?で?どうしたんだって?」

「ああ、また魔法の袋を作ろうと思ってですね………。」

「ふぅん?いいんじゃないか。しかしさっきのお茶といい、お前さんは。「生きているギフト」だね。」

「えっ、なんですかその良い話。」

私の勢いに再び緑の瞳は細まって、楽しそうにまた口を開く。

「いいや。まじないの応用が効くって話さ。「もの」ではなく「こと」や「光」、「全体に伝わる何か」。そんな様なものだろう、お前さん自身が。それならもう、それは他の者にとって「生きたギフト」さ。」

「…………え。とっても素敵です、それ。そんな様なもの、何か無いかなあって。今丁度、考えてたんですよ。」

フリジアの言葉で、フワリと暖かくなる胸、溢れた星屑がまた白い床をホロホロと転がってゆく。

二人でその光景を暫く見つめて、いた。

しかしきっと。
思っている事は、同じだろう。

そうして私達は。

クスクスと笑いながら、いつもの様に楽しい作戦会議を始めたのであった。








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