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8の扉 デヴァイ 再

新しい私を見つける

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この頃、どうも踊りたくなる。

そう思って、またいつもの様にくるくると回り、舞っていた。
今日も明るい光が入る、青のホールで。


見上げた青の透明な光が、白い天井の紋様を柔和な陶器の様に見せている。

ウンの透明感にも似た、その質感。

自分に齎された変化、数々の「光」から貰ったギフト、それを繋げていきたいという思い。

そこから導き出される
 フリジアに 言われた言葉

    「生きている ギフト」

 それは 私に対する 「ギフト」でも あって。


 「有り難い」という気持ちと

  「誰だって 誰かの ギフトになれる」という思い


 暖かい 波     渦

     青の中に  齎される桃色

  指先の暖かさと   頬に触れる
               爽やかに冷えた 空気


  その 揺れる 温度 と   
        降り注ぐ光を 巻き込んで。


 その 真ん中に 渦巻く 「感謝」を 思い  

   くるくる  くるくると  回っていた。



そうして靡く 衣の端

目の端に映ったそれと同時に、チラリと過ぎった鳥が
鮮やかな「色」を運んで。


「 えっ?」

  瞬間  
 心臓 胸の 真ん中に  

 ぐっと 入ってきた その感触

 それは「なにか」、「新しいもの」で「いろ」で
 赤紫色の 揺ら揺らした 長い花弁

 そんな様な もの っぽい。


しかし「それ」に意識を合わせると、ぐっと実像にチカラが入り、「それ」が「新しい」なのだと、解って。

ただ その「色」をじっと捉えて、いた。


青のホールの真ん中、立ち尽くす私の目の前にあるは

  新しい いろ

それはこれまでに無い、「赤紫」、新鮮なそれは所謂渋めの色だ。
窮は黒いけれど、それとはまた違った濃さと深み、「大人」を感じさせる色合い。

大人感それ」が自分から出てきた事に驚きつつも、目を離さぬ様その艶やかな姿をじっと見詰めて、いた。

今、きちんと見なければ、留めておけなければ。
なんだか消えてしまいそうだったからだ。


多分、これは。
私が「意識」しないと、映像?実体化?しないのかもしれないな………。
ああ、でもこれが「気付く」ってこと?

フワリと揺れる、その小さなをしっかりと捉えながら、そう思う。

きっと「固定化」されたならば「その姿」で、きちんと出れるのだろうけど。

「うーーん。それなら、やっぱり………。」

まだ、不安定に揺らぐ衣装と靡く長い花弁の羽衣をしっかりと自分のイメージで形創っていく。


 天女の様な  羽衣はしかし
 ゆらりと 波打ち少し 角がある カタチの。
 幾分 変わった 
 流れで、ある。


どうやら羽衣それは、布ではなくて。

長い「花びら」なのだと、何故だか分かるのだけど、どうしてなのかは分からない。

そして、なのか。
その花は「蘭」で、蘭の中にそんな種類があるのかは知らないが、この光の名も「蘭」だという事が、解る。

「観音」と言うよりは「光」か「神」か。

私の中でも曖昧なその基準、しかし慶やラーダよりは「観音色」が弱い、その「花の精」の様な姿。

「………成る程?「花の精」は、近いな………。」


折れた様に曲がる花弁、ふわりと左右に掛かるそれは何本かがその背後に揺れていて、やはり花びらの様に見える。
妖艶なその姿は、やはり「大人」の雰囲気だ。

これまでの観音達は、「光」「柔らか」「明るい」雰囲気の「かたち」だったけど。


「これは………意外だけど、いいな………。」

なにしろ、綺麗だ。

毒をも持ちそうな、美しくも妖しいその姿はこの青のホールの中では異色を放っている。

暫し、その姿に見惚れながら無意識に衣装の細部をぐるぐると考えて、いた。
はっきりと見えないからこそ、私の「想像通り」になる筈だからだ。
今それを想像したならば、きっとその通りに今後現れる事が出来るだろう。


赤紫………。

うーーん  それなら そうね

 深い赤に 明るい赤の帯
 縁は紫の入った深い赤 その中に馴染む同色系
 そして裏側には青紫の 深い海の色
  落ち着いた馴染みのいい同色の刺繍に
 少し光る銀糸 
 やはり赤のビーズか石か  いや
 カットが施された角度で光る 小さな石がいい


 ピタリと身体に沿う すっきりとした張りのある絹地に
 フワリとスカートだけが靡く 形
 花弁の羽衣に  うん?

 なんか ?  持って る な


輪郭ははっきりしているその姿、細部を形創りなぞって行くと、その手に「なにか」があるのが分かる。

それぞれの光達は、ある意味その存在を象徴する「もの」を持っていると思う。

慶は千手だから、私の予想出来ないものも沢山持っているけれど。
無意識の範囲のものが、多いのだろう。


でも?
ラーダは時折ウンのリュートを弾いているし、窮は意外と龍の姿が多い。
なんだか武器みたいな道具、持ってたけど。

ディーはリンドウに笛でしょ??

その時々で取り替えたりしてるのかな………?
まあ、「区別」は無いんだろうけど。


蘭が「なにか」を持っているのは分かるのだけど、小さくて見え難い、それは多分「花」だとは思う。

「ふむ?」

とりあえず衣装を優先させて創ろうと、あれこれ思案して細部をもう少し詰めて行く。
しかし、粗方整った所で。
満足したのか、蘭はフワリと天井へ向かい飛んで行ってしまった。

「ありゃりゃ、………疲れちゃったかな??」

あれこれ独り言を言いながら、頭の中で何度も衣装を組み替えていたからか。

まあ、きっとまた、フワリと現れるんだろうけど。


「でも、この調子で光が増え続けたら私の脳みそがパンクするのも時間の問題だな…………。」

上を見上げながらも、能天気な私は別の問題で悩んでいた。
いや、「光が増える」のだから喜ばしい事では、ある。

「………でも「新しい私」を発見したいんだから、「そうなる」ってことだよね………うーーーむ?」

天井、目の前、足元にも。

美しい光達や蝶、スピリットは思い思いに舞い、楽しんでいる様子が見ているこちらにも伝わってくる。

「ま、悩んでも。仕方無いか…………。」

とりあえず。

この美しい空間で頭を悩ませているのも馬鹿らしくなってきた。


頭上では、彩りの良いスピリット達が列を作り遊びながら舞い始めている。
最後尾のあの赤い鳥はきっと、さっき私の目の前を過ぎった赤だろう。

あの赤が私の「なか」に「反応」して。
きっとあの「花の精」の様な、蘭が出てきたのだ。


「ふむ?」

改めて目を閉じ、これまでの自分の「なかみ」を思う。

大分「整ってきた」とは、思っているけれど。
なんとなく「揃ってきた」とも、思うけれど。


しかし。
この間、イストリアの所に駆け込んだ事も含め、油断は大敵である。

改めてつらつらと私の光達を中に並べ、その「色」と「形」「大きさ」「強さ」「性質」、「繊細さ」などを確認しながら自分の「かたち」を創っていく。

思えば。

きちんと「整理」「形創る」ことをしていなかったから、自分の中身が散らかってきていたのだろう。
思うに任せて振り撒いていた光、それが集まり、練られ「」に成って私の中を自由に舞っていたのだ。

煌びやかではあるけれども、少々纏まりがつかなくなってきたのだ。

改めて確認してみると、それがよく、解る。


「ふぅむ。」

しかし、並べてみるとまだ「なにかが足りない」のも、分かるのだ。


「なにが」足りないのか
それは なんなのか


「うーーーーーん??これ、また今、分かんないやつ、じゃない??」


なにしろきっと、まだ私には「集めるべきピース」があるのだろう。
それは、わかる。

とりあえずはその配置を眺めつつも、「何が嵌れば バランスが良いのか」考えながら。

再び、くるくると回り始めた。



 
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