透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

現れ 出たもの

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なんで なんで  どうしよう

  知ってた けど でも やっぱり

  どうしよう どう しよう

 消えちゃった  消えちゃったんだ

 もう  「いない」んだ


  あの 二人は。

 もう 会えなくて。

 でも。

 が 「最善」だって

  から。


 やったんだ 会いに 行ったんだ け ど 


やっぱり 寂しい のかな

やっぱり 少し。


                 寂しい    



真っ白の中 心地良い感覚と 身軽になった身体
なんとなくすっきりしている 私の「なかみ」

白の中にも刺繍の様な 繊細な花が 
無数に散りばめられ 私を囲む
 薄く 密度の低い空間 
しかし呼吸がし易い この 「場」は。

きっと 「私のなか」の どこか なのだろう


 泣いて いるのか
 寝て いるのか

それとも?


ぼんやりとした頭、きっと涙が出過ぎて働かないのは、分かる。
いや、いつもの事なのか。

え?

でも? ?


なにを  いや  あそこ に  

    うん    行って   帰って   ?



ん? あれ?

そう言えば  ? 


私。

 「究極の 私」、どうした?

  流した? 流れた?  え? あれ??


ユラユラ、ふわふわとする空間。

揺れて少し捻れた「場」は、展開が変わり「なか」から「そと」へ変化したのが分かる。

静かに、辺りを探ってみるけれど。
なんとなく、周りの気配からしてここは私の神域だと、思う。

そして。
多分、金色の腕の中だ。

 と、言うことは…………




なんとなく気まずくて、目を閉じたまま自分の「なかみ」を確かめてみる。

だって私は大人になった筈なのに。
そんなこと、全部チャラになるくらいは、泣いていたと思う。
あそこで。

あの、黄金の 水流の なか で …………??


 結局 みんな  どう なった  の ??


自分の「なかみ」が違うことは明らかである。

サッと確認しただけでも、それは解る。

 うん? これ は なかなかの

 なんだ??
 とりあえず、「究極の私」が流れた、解れたのは
 分かるん だけ ど  ???


あの、重く固かった「塊」が無いのは明らかだ。

そして、あの「黒い檻」の、山も。


「えっ?全部??全部、流れちゃったの???」

パッチリと開けた目、辺りの変化と「なかみ」の変化。

「えっ?!??」

とりあえず、どちらを見たらいいのか。

ぐるぐると目を回しながらしかし、私の目はやはり増えた「色」に気を取られていた。


「えっ。なに、コレ。」

目に映るは「変化したであろう ラーダ」「白い兎」「黒いなにか」、「なんか違う金色」。

その他、フワリと揶揄う様に舞う黎と私から出ている糸を巻き取る、少し大きくなった、慶。

更にその周りを、変化したであろう蝶達が煌びやかに舞っているから。

なんだか辺りは。
賑やか、なんだけど……………???????


 ちょっと 情報量が多くて 目が
 気が  脳みそ が??
 追いつかない けど  
 どこから 見ればいい  かな ?


そっと、現実逃避に再び目を瞑ってみたけれど、それで何が解決する訳でもない。

 えっ
 ちょっと待って?
 動物?

 動物 いた よね???

 動物   うさぎ  きつね?  緑の…………

 いやいや  待て待て  違う

 
「えっ?」

スピリット??

もう一度、はっきりと開いた目で確認してみるけれど。

「ん…………?違う………?え、どう、なんだろう………分かんないな…。」

少し離れた場所に鎮座するその動物は、ここから見ただけではスピリットとの違いはハッキリとしない。
しかし「なにか」が、違うのだけは。
解るのだけど。


ノソノソと金色の腕の中から這い出して、とりあえず近い方の白兎に、そっと近づいて行く。

ん?
びっくりすると 逃げる  かな?

  いや でも 神域ここに いると
 いうこと は すなわち  それ  

「え…………「私の」うさぎ…………。」

って こと だよね??

ナニソレ。可愛。


「私の」兎と、言ったからか。

ピョンと跳ねて、目の前に来た兎はくりくりとした目で私を懐柔しにかかっている様だ。
いや、違うかも知れない。
だって、この子は。

「えっ?どこ?誰?「なにが」、兎になったの???」

 意味が 分かんない  けど  ??


そう、「現れ出た それ」は、きっと私の「なにか」が変化して「そうなって」いる筈なのだ。

しかし、ぐるぐるする私の隣にはもう一匹、もっと気になる動物が、いる。
いや、「動物」、なのか。
余りにも気になり過ぎて、ピタリと動きを止めそちらを先に確かめる事にした。


「えっ、うん、あの…………?」

まさかの、それは。
多分、「龍」である。

動物の耳に見えたのは、どうやら角で。
大きさこそ小さいが、きちんと見ると、立派な「龍」である事が分かる。


「え?なんで?龍、だよね?なんで黒いんだろう………でも小さいよ?ミニ龍??いや、強そうだけど??………ん?黒って………   ?」

「 」

ん?

私がアホな事でぐるぐるしている間に。
なんだか、小さく可愛い声が聞こえた様な、気がする。

いや、「男」の声、だけど。

「えっ?誰?…………って言うか、君、だよね………?」

どうやら喋ったのは、この黒龍だろう。
辺りを舞う観音達と黎の様子を確かめながら、その目の前の不思議な龍に視線を戻す。

多分、声は。
私の目の前から、聴こえたのだから。

するとやはり、黒い尾は隣の白い兎を示して「こっちは「ウン」だ」と言っている。

「え?「うん」??うん?」

「いや、名が。「ウン」なのだ。」

えっ?そんなこと ある の??


「なんだか、斬新、だね…………。」

いや、名付けセンスゼロの私に、言われたくないかも知れないけど。
朝あたりに突っ込まれそうである。

「私は「きゅう」。」

「ん?キュウ??」

そう繰り返すと、フワフワとやって来たあの慶の時と同じ様な、イメージ。
あの、漢字がフワリと頭の中に浮かんでくるアレだ。


 「窮」  きわめる きわまる
      本質を 突き詰める

 ぼんやりと 文字と共に浮かんでくる 

               イメージ

 これは。 この文字の 意味なのだろう な?


いやしかし。
ピッタリだ、ね??


名前が「きゅう」だと言うその龍は、黒く艶やかな鱗が銀色に光ったかと思うと、所々に土の様な黄土色の部分もある、変わった色をしている。

   生きている黒  呼吸する大地

何か「石」か「山」を龍に変化させた様な、不思議な色と空気。
そして金に少し、赤が入った瞳。

大型犬程度の大きさだからか、ぐるぐると渦巻く様な鱗の動き、複雑な深みもあまり怖くは、ない。
いや、「私の龍」だからか。

何処かで見た様なその色に懐かしさを覚えながらも、とりあえず二人を見てゆっくりと深呼吸した。


 て いうか  「なに」が

 龍と? 兎に?   なったんだろう か ??


「ウン」は、何故だか私の頭の中にカタカナしか浮かんでこない。
だからきっと、なんだと、思うのだけど。

宝石の様な澄んだ青い瞳に、白の短い毛並み。
キラリと光る首元には、銀糸の組紐で編まれた青い細生地に、音のしない飾り鈴が付いている。

ピコピコと耳が動く、「可愛い」と言うよりは品の良いその姿は、所謂「月の兎」の幻想的なイメージそのままである。
こちらは膝に乗る程度の、普通の大きさの兎。

    柔らかく全てを包む 青

なんとなく「透ける」感覚は、スピリットではなくこの子達が「観音達」と「同じ」類いだからだと、思うのだけど。

 でも?

 それ って なんなんだ ろうか。
 
 「神」  「光」 「観音」「動物」

 と  言え ば ???


「ああ!「神使」か???」

ポン、と手を打ち鳴らしてみたものの、「私から神使」という「大事」にやや心が怖気付きそうでも、ある。

でも。

あの子達観音」も 「神」で「光」で

  私から  出て きて

  「それ」を   「否定」することは


        でき  ない



「うん。そう、大丈夫。の。で。、なのよ。うん。」

「ウン」

えっ  喋った?!

「可愛!!!!!!」

しかしきっと「ウン」しか喋らないであろう、ウンは私にギュッと抱きしめられながらも「ウンウン」小さく呟いていて、とっても可愛い。

「コラ。」

「あっ、ごめん、!」

潰れそうになっているウンを救出したのは金色で、その彼の「違い」にも気が付いていた、私は。

とりあえず「違いそれ」を、見なかったことにしてスルリと白い毛並みを眺め始めた。

そう、まだ見るべきものが、あるからだ。
情報過多の今は、脱線せずに順に見ていく方が、いい。

それに。

 「あの色」は  なんか  「危険」…………


とりあえず「ポイ」と、その「危険な色」を投げた私は、気になる「それ」に意識を切り替えた。

そう、実は。
ウンは何かを持って、いた。

「………楽器?」

いや、持っていたと言うよりは乗っていた、に近いけれど。


「これ、って。何の楽器だろうか………。」

ギターじゃないし、三味線でもない。
私の知る弦楽器で、「こんな形」の、もの。

「うーーーむ。あの、「宝物庫」とかにありそうな………アレ、名前が分からない………。」

資料集に載っていそうな、それは緩やかな無花果形のギターの様な楽器である。
名前が分からないのも、勿論だけど。

何故、今ここで、動物達と一緒に。

この「楽器」が、出てきたのだろうか。


「えっ………全然、弾けないんですけど……??」

でも。
なんか、関係あるって事だよね………?


シンプルな装飾の無い「楽器それ」を、そっと手に取り試しに弦を弾いて、みる。
調整が、必要だろうか。

そうして手に馴染む、その張りから溢れたのは、柔らかな、しかし凛とした音だ。

「ふむ?」

 なんか よく 分かんないけど
 できそう。

正体不明の自信が出てきたところで、ラーダがフワリとやって来てその楽器の名前を教えてくれた。

「リュートよ 」

「…リュート??」


その、「リュート」という楽器も勿論、気になるけれど。

そう優しく囁く、その姿も、また。

少し変化して大人っぽくなった気が、する。


「うん?ラーダってなんか………。」

「初恋」って、イメージだった、よね?


フワリと私の周りを舞う、その姿は慶と同じく少しだけ大きくなっている様だ。
ラーダは元々、小さかった。

多分、ウンと同じくらいか。

慶は「千手」観音という事もあり、元々ラーダより少し大きかった。
それが今は更に成長して、私の上半身程度はありそうである。
なにしろ宙を舞っているから。

正確な大きさは、分かり辛いし、きっとその時々でも違うのだろう。

変幻自在な観音達は、なにしろ少しずつ成長している様である。


「ふーむ?慶は、大きくなったけどラーダは大人っぽく?なった、よね??色が少し違うからかなぁ………?」

よく見ると、慶も変化はしているのだろう。
しかし微細な変化は、とりあえず後で観察したい所である。

まだまだ気になるものは、沢山あるからだ。
その中でもラーダは、「淡い初恋」色だった全体に、「黒」が入って。

なんだか「締まり」が出たし、メリハリも出たし。

「大人」とまでは、いかなくとも。


「うーーーん。なんだ、ろうか。この感じは………えっ??あれっ?????」

そうして腕組みをして悩み始めた、その時。
スッと、自然に吸い寄せられる様に。

ラーダの隣に寄り添った黒い新しい観音が、いたのだ。
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