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8の扉 デヴァイ 再
決心
しおりを挟む多分、私の中で。
「長の 元へ行く」というのは
相当なことだったに 違いない。
なんでか、この頃カードを引くと「先延ばし」のカードが出たり。
小さなこと、今やらなくていいことをやってみたり。
外に出て色々、世間を見たりウロウロしたりして。
自分の中での「準備」をしていたのだと思う。
神域から帰ってきて、静かに夕食を食べていた私を訝しむ者は誰もいなかった。
気付いていたとは、思うけれど。
なにしろ「黙って食べる」ことがない、私の事だ。
朝だけは「今日は大人しいのね」、なんて瞳で見ていたけれど。
ウイントフーク、千里は知らぬふりをしていたと思う。
勿論、「長の処」へ行くというのは内緒で行くつもりだ。
「軸は なくてもいい」
そう伝えては、あるから。
「行く」と言えば、「何をしに行く」のかは察するだろうし立ち場的に「反対」も「賛成」も、し辛いのは、わかる。
多分、内緒で行って。
「いつの間にか無くなっていた」それが一番いいのだ。
それに。
「無くなってもさ………ある意味、バレないよね………。」
ウエッジウッドブルーの中、「さて これからどうしようか」という夕食後。
「これから 長の処へ 行く」
その事実をデン、と前に置いて。
私は一人、考えていた。
どうしよう かな いや 行くんだけど。
一人で?
でも。
いや、これ どっちだろうか…………
気持ち的に金色に同行してもらいたい、気はある。
でも。
「ここは一人で超える 山なのか」
それを考えると、悩む。
「うーーーーーん。」
ぐるぐる、ぐるぐると回るウエッジウッドブルーの中、程良い感触の生成りの絨毯。
いつの間にかいつも歩く場所が少し硬くなっているのが判り、確かめながらくるくると回る。
「いや、いかん。」
現実逃避しようとしている頭をくるりとひっくり返すと。
とりあえずはベッドに腰掛けようと振り返った。
「あ。」
いる。
そう、そこには既に「勿論行く」体勢の金色がキラリと輝いている。
うん……………?
なんか 狡く ない ???
抗えぬ輝きを以てして、私を絡め取ろうとするその、色。
確かに。
「あれ」が、あれば。
心強いし、なんなら「何かあっても」絶対大丈夫では、ある。
しかし。
多分 なんにも 危ないことは ない し。
ただ。 きっと 「寂しい」 だけ で。
「寂しい」、そのキーワードが自分の中にポンと浮かんだ途端。
溢れ出した涙、「行きたくない」けど「それは違う」という思い。
立ち上がり私を抱えに来た金色に、大人しく連れられてベッドへ座る。
それから落ち着くまでは。
ただ、慣れた温もりに蹲っていた。
いやいや 私 大人になった 「つもり」だったけど
やっぱり 「つもり」だった わけ で???
いや でも 「これ」は
しょうが ない いや 言い訳
いやいやいやいやいやいやいやいやいや
確かに。
落ち着くのは、早い。
しかし久しぶりに盛大な涙が出て、自分でも少し驚いた。
私の、中で。
こんなに。「長」の存在が
大きかった なんて。
ある意味、意外だ。
だって、会ったことすら、無いし。
どちらかと言えば、印象は良くないと思う。
いや
でも もしか して ?
「あの子の…………?所為 ??」
でも。
それを言うならば。
多分、あの二人はやっと「会える」し、きっと一緒になれる。
そう
一緒に なる
「…………うん?」
具体的に、「どうなる」のかは分からないけど。
多分 あの二人が 一緒に なって
軸が 要らなくなる から
一緒に? 「消える」? よ ね ??
ああ でも。
「消える」なんだ。
きっと「寂しさ」の 原因は。
なんだかんだでずっと一緒のあの子、この世界に来て唯一血縁だと言われていた長のこと。
知らず、知らずのうちに。
きっと私の心の中では大きな支えになっていたに、違いない。
ずっと ひとり
石達は いるけれど みんなも いるけれど
でも。
「繋がり」 「強い」「血の縁」
それは やはり、どうしたってあるのだろう。
思えば始まり、あの白い森「ティレニア」から一緒なのだ。
きっといつの間にか、私の中に住んでいたあの白い女の子。
それが いなく なる 「消える」
キュッと回る腕に、力が入る。
この私の中にある「どうしようもない寂しさ」が、分かるのだろう。
そう そうね
やっぱり。 一緒に。 行こうか。
そう思って、チラリと見上げた金の瞳はただただ優しい色を浮かべていたから。
とりあえず、また。
滝の様に涙が 流れてきたんだ。
「なんか…………大丈夫かな、私。でもな…………今を逃せばまた、怖気付くに違いないよ………。」
目を擦りながら、支度をする私の横で静かに甘く囁いているのは悪い色である。
「感じるままで、良いのだ。」
「うっ。」
やめて いや 私の為なのは わかるけど
それは いやいやいや
行くのを止めて ぬくぬくしたく なる のよ
その、危険な瞳から目を逸らしてクローゼットの中から再びあの金のローブを取り出し羽織る。
こっそり夜、忍び込むのに適していない、この色は。
しかし金色が一緒ならば、あの部屋まで跳べるので問題は無いのである。
なんとなくだけど。
あの部屋には、これ。
そう思ったから、出した。
うん。それでいいんだ。
「では。」
「うん、お願い。」
そうして自分の決心が鈍らぬうちに、腕の中に収まる。
フワリといつもの感覚の中、少しだけ焔が熱い様な気がして。
ああ、やっぱり そうなの かも
「なに」が 「どう」なのかは
全く 解っていない けど。
漠然とした「なにか」を感じながら、キュッと目を閉じたんだ。
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