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8の扉 デヴァイ 再
みんなと 私
しおりを挟む「石」や「もの」との 関わり方
それは 全てに 言えるのだけど。
「なんか、会話して、コミュニケーション?だよね??」
「は?いきなり何の話よ。」
「いやさ、ガラスを撒いたじゃない?あれなんだけどさ………。」
この頃の噂で、ある話が回っているらしい。
「面白い話を聞いたぞ?」
そう言ってホクホクと帰って来たベイルートからその話を聞いたのは、昨日の夕食時だった。
「いや、ヨルが撒いたガラスがあるだろう?あれが「効果がある」という話が出回っているらしくてな?だが、「何も無い」という連中もいるらしい。それでまた、どっちがどう、という話になっているらしいんだが。まあ、表立って揉めている訳じゃないけどな。」
「…………まあ、あり得る話ですね。」
なんとも言えなくて、そう濁しておいた私だけど。
その、話の内容には心当たりがあった。
まあ、よくある話だからだ。
私の、世界でも。
「まあさ、「光ればいいな」とは思ったけど。やっぱり、その人次第な所はある訳じゃない?どれだけワクワクするかとかさぁ、まあまじないの強さとかも、あるかもだけど。」
「成る程ね。効果があると言われれば。そりゃ、期待する人がいても不思議じゃないわね。」
「そうなんだよ。…………だけど。揉め事になるのは、本意では、ないのだよ………。」
「でもそれアンタの所為じゃないからねぇ。ま、放っとけば?」
「うん…………まあ、「手は」出さないけど。」
「手は……………??」
しっかりとツッコミが来たところで、ドサリとバーガンディーへ沈み込んだ。
小さな溜息を吐いて、大きく息を吸う。
今日も魔女部屋は気持ちの良い空気に、爽やかなハーブの香り漂う落ち着く空間だ。
窓辺の花達は一度終わって種を付け、再び土の中でお休み中である。
あの姦しい、しかし可愛らしい声を懐かしく思いながら自分の中の空気を入れ替え、一息吐いた。
「なんか。「効果」、じゃないんだよね………。」
青空から視線をスイと長机に滑らせて。
魅力的な魔女グッズを、一つ一つ確かめていく。
「あれも、それも、………これも。いや、まあ、全部だよねぇ………。」
「だから。何が、どうしたのよ?」
くるりと丸くなっていた、朝から再びツッコミが入る。
ヒョイと手近な石を一つ、手に取った私はそれを光に透かしながら「なかみ」をじっと眺めていた。
石は、いつか手に取って想像した
あの、白と黒、灰色が混ざった絶妙な配色のスフィアである。
「いや、なんか、さあ?よくあるじゃない?私達の世界でも、例えばなにか「もの」に効果をうたって、その売ってる「もの」を、買うんだけど。思った様に、効果が出ない、とかさ。まあ、おまじないに近いんだろうけど。あるじゃない?ブレスレットとかさ、アクセサリーとか。」
尻尾で相槌を打つ気らしい、灰色のふわふわが揺れている。
「でもさ、それって。結局、その子の「個性」を無視しちゃってるんじゃないかな、と思って。持ち主との相性もあるんだろうけど、そもそも「そのもの」にも、「個性」とか「性格」がある訳じゃない?だから、そもそもが「合わない」とか。それか一方的に「これお願い!」とか言われても。やりたくないんじゃないかなぁと、思って。」
チラリと開いた、青い瞳は再びそのまま閉じられる。
うん?
まだもうちょっと話して いいのかな…?
「でも多分、あの星屑を「掴んだ」って事は。「合う 合わない」じゃなくて、「一方的」?なのかな、って思ったんだけど………。」
「もの」として扱い、一方的に願いを請うこと。
それは。
私 の 「なか」に
憶えが、あるから。
「なにか」が私の中で 引っかかっているのかもしれないけれど。
小さな溜息を吐いて、顔を上げる。
くるりと回って座り直した、灰色の毛並みは今日も艶々である。
随分前に、シリーに「ブラシはありますか?」と言われた事を思い出してニンマリとしてしまった。
あれからずっと、朝はシリーの部屋にいる事が多いから、きっと仲良くやっているのだろう。
そう思うと、なんだか寂しい様な、嬉しい様な………?
「なに、その顔。………とりあえず。まあ「その考え方」は、珍しいでしょうね。ここの人間は、「物は物」としか、思ってないでしょうから。そもそも前提が、違うのよ。」
「まあ、そう………だよね…………。」
そもそも、 そうだから。
「今」「こうなっている」、という事もある。
「うーーーむ。」
「ま、とりあえず。そのうち、いい案見つかるんじゃない?」
「えぇ?…………うん、まあ、そう、かな???」
ポイ、とその問題を放り投げてソファーを降りた朝はそのまま部屋を出て行った。
きっとこれから私の独り言が煩くなる事を察したに違いない。
まあ、間違いないんだろうけど。
「うーーーーむ?」
そうして。
緩やかな陽光の中、くるくると手の中でスフィアを回しながら。
暫く一人で、唸っていたのである。
「どう 扱うのか」
「もの」か 「存在」「魂」か
「全ての なか の わたしたち」
「関係性」
「お互い」 「相性」 「共鳴」
「反応」
「そのままで ある」
「見えない ヴェール」
「見えないもの」 「見えるもの」
「知らない」
「知っている」 「未確認」
「まだ」 「しろ と くろ」
「右 左」 「ある ない」
「全部が 全部」 「同じ」
「違う 」
「うーーーーーん????」
でも。
結局。やっぱり。
「「なかみ」が、あるかないか、認識できるか、できないか、って事なのかなぁ………?でも、そもそも「石に意思がある」って知らないだろうしな………。」
くるくる、くるくると回った私の「なか」のピース達は、どうやら。
「別れて」いる「もの」や「こと」
「存在」「それそのものであること」
「慣習」「習慣」「社会のルールの中」
「全ては 同じ 繋がっている」
その矛盾や、ちぐはぐから 発生している様に 見える。
やはり それは。
いつもの、「あの問題」と、おんなじで。
「なにか が 足りない」
「そもそも論」
そう、未だ「なにが」足りないのか解っていない私達はすぐに迷路に迷い込むんだ。
ただ、その迷路はとてつもなく複雑で、あり。
迷ってしまうのも、当然だと思う。
視点を変え、気付いてみると、とても簡単なことも分かるのだけど。
「どっち、とか言い始めるからこんがらがるんだよ………。」
でも。
そもそも。
「自分」が 人と して 扱われていなければ。
やはり そうは 思えないのだろう。
それも わかる。
「結局……………やっぱり、「そもそも論」になる訳………?」
なんっか。
腑に 落ちない。
しかし、私は今「新しい私」になって外からこの状況を見ているからこそ、「わかる」のだろう。
自分が渦中にいるならば。
冷静な判断は、難しいだろうし。
他人のことや、周りの状況、自分の置かれている環境など、色んな事が相まって。
絡み合いもつれ、抜け出せないのも、わかる。
それに、「渦中」は。
ある意味、「必要なこと」だし「望んでやっている」ことも、解るのだ。
本人が、それに気が付いていないだけで。
「うーーん。なにしろ「やりたいからやってる」んだから、そもそも私が対処する問題でも無いんだよ…。うん。…………でも。」
その、問題の「発生源」が。
私の ガラスだから。
気になるのである。
「とりあえず魔法の袋でも配って貰えば、ちょっとはマシになるかな………。」
それすらも本当は、しなくていい事なのだろう。
でもなぁ。
まあ、光は撒くけど。
てか、溢れるけど。
うーーーーーーん。
いつの間にか立ち上がって、文机の周りをぐるぐると回って、いた。
こっちの机には、私の創った石、魔法のインクっぽいペンや紙、本類。
執筆でも出来そうなものが沢山、並んでいる机は仕事用だったのだろうか。
てか、ホント誰の部屋なんだろうか………。
「えっ、でも?「おまじない本」とかも、良くない??なんか楽しそうだし!…………いやいや、待てよ。でも「一人一人違う」から、困ってるんだし??」
「やっぱり、「ただ 祈る」とか「降らせる」とかしか………できない、のかなぁ…………。」
解って、るんだけど。
みんなは。 自分で 歩き出せる って。
でも。
少しでも、光があれば。
見えれば 光れば、 塵ほどでも
「希望」が あれば。
「どんな状況の、人にも。届くと、いいんだよね………。」
受け取れる人 受け取れない人
気付いていない人 許されていない人
許してない人 縛られている人
蹲った ままの人
もう 諦めてしまいそうな 人も。
声を上げること
考えること すら。
止めてしまった 人をも。
動かす 「チカラ」
それは やはり「無償の愛」なのだろう
でも。
ぐるぐると回る、あの灰色の島の景色、私はやはり同じ事を。
繰り返して、いるのだろうか。
「上を向いて 欲しいから」そんなのは 詭弁で。
これはきっと「私の為」だ。
だって 私が 「そう」だったから
その 「想い」が 痛い程 わかる から
自分が。 見ているだけなのが 辛いんだろう
でも。
どうしても。
「今の時点」での 解決策がそれしか見当たらないのも、分かる。
このまま目の前で また 「命の光」が 消えて行くのを ただ 見ているのか
「なにか」を 差し伸べるのか
星屑を 降らせるのか
いや、でも?
勝手に溢れる時も あるし?
「いい、よね………?お日様みたいに、月の光、みたいに。こっそり、降り注いでればバレないし?ちょっと「その気配」の色の場所だけ、多めに降らせるくらい、バチは当たるまい………。」
誰がバチを当てるのか。
ふとそんな事を考え出すと、「それはあり得ない」事も、分かる。
だってそれは。
もし、「バチを当てる」事が、あるのなら。
それはきっと自分が自分に、当てているのだろうと「今の私」は思うから。
チラリと青空の窓に目をやり、空の青さを、思う。
いつだってそこにある、きっと繋がっている「青」。
やっぱり そう だよね ?
そうやって誰かが誰かの為に 見返り関係無く
降らせた 「ひかり」が。
きっと「繋がり」の素になり、降り積もって。
それが 「なにか」に なる
それは なんか。
わかるんだ。
「軽くなっている」
いつかの朝の言葉が頭を過ぎる。
きっと「繋がりの素」が、空気に溶け込み世界が軽くなって。
そうなっているなら、いいと思う。
「なら、大丈夫。とりあえず解決、かな??じゃあ散歩の時に少し、探りながら歩いてみよう。うん。」
やっと安心して、再びバーガンディーへ腰を落ち着けた。
軋む小さな音、皮の柔らかな感触。
奥でピクリとフワフワが動いた様な、気もする。
きっとこれからも、こんな問題で沢山ぐるぐるするのだろうけど。
「うん、とりあえずまた良い方法が見つかれば、更新するのみ。」
そう、やってみて駄目なら変えればいいのである。
なんせ降るのは「光」か「星屑」。
悪いことなんて、何にもないのだ。
「よっしゃ、じゃあそうと決まれば。」
「喜ばしいこと」
「あっ、ごめん。」
散々、一人で喋り倒した後、奥からやって来たフォーレスト。
ずっと聴いていたのだろうか。
煩くて、起きちゃったかな??
「では 行きましょうか」
「あ、うん。ありがとう。」
下の子にチョイと押され、そのフワフワの頭を撫でながら部屋を出る。
しかし、丁度時間を知らせた私のお腹は。
行き先を、黒の廊下ではなく食堂へ変更したのであった。
うむ。
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