透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

全ての私 新しい私

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  研ぎ澄まし  織り上げて ゆく


  「私」  その 「なかみ」。



   「羽衣」  
        「蝶」
              「黒い檻」

 「黒い龍」

 「階段」      
           「観音」

       「白兎」

 「糸」             「絹」


      「リュート」    「笛」

  「月」  「太陽」  

    「ふたつ」

           「繋がり」

 「沢山の 私」   

     「金」      「銀」

   「虹色」      
         「沢山 の色」


    「えにし」   



まだまだ ある

 その  数え切れない

  「カケラ」と「ピース」を

       「ひかり」で  繋いで いく


  「全ての 私」を  繋げてゆく こと



    「全ての私」を 繋いで。


 そこからまた 「世界の全て」を 繋げてゆくこと

  いつか  何処かで  ずっと ずっと前に。


  やっていた あの 「光を繋ぐ」こと


 「繋げるそれ」が 真ん中に

  フワリと  浮かんで いるのが わかる





心惹かれるもの 楽しいこと

 舞うこと  

  石と 戯れること

   衣を 創ること

    絵を 描くこと

 
 沢山の「いろ」を 思い浮かべていく中で

 浮かび上がる  「その時々の 私」


 舞う 自分

 手指の動き  しなる  肢体

   緩やかに 靡く  絹

   シャナリと 響く  鈴の音に

 冷たく透き通る  水晶の 感触

 手にあるは  長く 美しい 水晶の 剣だ

 あの 雪の祭祀の。

 氷の剣にも  似た   それ


「なか」に 浮かぶは  清浄な 場

  私の 斎場

  その 白き場に  伝う 縄 

  「区切られた」 世界


  その 外界から  離れた 空間で

   ひたすらに  舞う  祈りの舞


 それは きっと。

 「なにに」対して  舞っているのでも

             ないのだけれど。


ただ 舞うのが 気持ち良くて 舞い

 真ん中が 震えるままに 回る

 そうして

 ただ 場が 清浄に なり

 空気が澄み  緩くなっていた 震えが

   繊細さを取り戻して。


  この 場に 再び  張りを 取り戻す


 ただ  なに でもなく 舞うこと

   それ 自体が 「祈り」となり

  「世界存在」全てへの 循環へ

                 還る こと



 清らかな 水晶を 眺めることも

 自然を 草の汁で 描くことも

 流れる清水に 解きほぐした 繊維を晒し
    
        再び  織り直すことも

 ただ 浮かぶ旋律を 口にすることも。


どれもが 「自然」と 調和するもの

それが 「わかっていた」私は。

ただそうする事が 自然であったし

疑問を抱いても いなかったのだ。



しかし。

いつから。

忘れてしまったのだろうか。



「どんな色も 経験したい」

その「私の好奇心」から発した この 魂の旅路

 くるり  くるりと 翻る

   様々な いろ の  中で。


 どうやら迷子に なってしまった 自分



 ようやっと。

 「繋げる」ことに 気が付いたけれど。

 まだきっと 「本当の いろ」は 全て

 集まった訳では  なくて。


きっとまだまだ。

隠れている「いろ」が 「わたし」が。

あるに 違いないのだ。



そう

 「これが正しい」「私は 間違っていない」と

 「正当性」を 感じる為に  

 「普通である」と 装う 為に 

 着けていた  

 全ての 仮面を 剥がす と。


 どんないろが  隠れて いる?

 どんな まだ見ぬいろを 隠している?


その 深い 深い  奥に。


    真実の私  本当の私  には 

            どんな 色がある?


もっともっと ある筈だ。

だって。

あんなに 沢山の 鮮やかな「いろ」を

 経験してきたのだから 。


 その 「いろ」は 今の私が持つ 

   「財産」で

 解きほぐし  洗い流された 今

 徐々に顕になってきた  それ


 それが  きっと。


 この 織り上げている 衣に 関連し

 きっと 進む道筋の 道標になるのも わかるんだ。





なにしろ最近。

「舞う」のが楽しくなってきていた私は。
くるくると青のホールで回ったり、神域で蝶と戯れながら舞ってみたり。

「ちょっと狭いな。」なんて言いながら
白い礼拝室で舞ってみたりと。

あらゆる場所で 自分を 拡げ

 振り撒く  繊細になった星屑粒子

 指先の動きから 感じる  空気の温度 
           色  湿度

 その場の 空気を味わいながら いつの間にか
 流れてくる あの 桃色の香りに

 腕の動き  脚の振り方 それが 優雅に乗るのが わかる

 そうして
 その時 その時   感じるまま に。


フワリと舞う 度に  
   周囲の空気が変化するのが面白かったし
その「変化した色」を観察して
また新しい蝶が 出たり

そうして再び  フワリと排出された 糸を
 巻き取ってゆく 慶を眺めていたり と。


この頃の私は、緩々と気ままに過ごしていた。

 「魂」のこと
 「命」のこと

 「生きる」と いうこと

難しい疑問はまだまだ沢山、あるけれども。

きっと 「今」は 分からないし

「新しい自分」を探しながら
「解き 紡ぎ直す」作業を一緒に、する。

自分の観音達に、手伝って貰いながら。


 そうしていけば。  きっと 自ずと

      わかる  から 。


を知っている私は、ジタバタしても、仕方が無いと。
そんな優雅な生活を、緩々と送っていたのである。




「  ♪   ♫     」

昼下がりの青のホール、大きな窓を鏡代わりにしながら舞うのはこの頃の日課である。

チラリと大きな青に映る、自分の手付きを確かめながらふと浮かんだ疑問が溢れた。


「うーーーん。でも、なんで「観音」なんだろうな………?」

」は、まだ無い、羽衣が窓に映るのを見ながらくるくると頭が働き始める。


また、理由なんて無いのかも知れないけど。

でもきっと「これまでの私」から導き出された「こたえ」が、「観音」なのは分かる。

きっと「性質」なのか、「元々の世界日本」の所為か。
色々なものが集約されて、なのは解るのだけど。


「うーーーむ?」

「どうでしょうね?でも。どうしたってあんたは「祓い清める」的な要素があるんだろうけど。」

「…あれ?うん、やっぱり。そう思う?」

その声に、自然に振り返る。

いつの間にかボーッと突っ立っていた、私の背後のベンチに。
朝が気怠そうに、寝そべっていた。


多分、さっきまでは誰も居なかったと思ったけど………?

さっき迄は、くるくる、くるくると回りながら大きな窓に映る自分の動きを確かめていたのだ。

流石に誰かいたならば、気が付いたと思うのだけど。

しかし、何かに集中している時の自分に自信は無い。
本を読んでいる時、いつもお母さんの声が聞こえず叱られた時の事を思い出して、一人クスクスと笑っていた。


「でもさあ?私達は「自然を神」とする事が多かったから、あんたもそっちの気があると思ったけど。でも、話を聞くに海底墓地あそこの所為じゃないかしら?」

「えっ?墓地だから、ってこと?」

「まあ、無くもないんじゃない?」

「…………まあ、そう、言われてみると………??」


くるくると回る幾つかのピース、

「祭祀」「鎮魂」「全てを 置いていけない私」

 「蓮」 「沢山の 色」「無数の 想い」

確かに、それを見ていると。

「まあ、「観音」、だよね…………。」

「しかも、「千手観音」でしょう?じゃない。」

「えっ、やだ、そうかな????」

なんだか、身内に認められると余計に恥ずかしい気がする。
しかし、そんなモジモジしている私を他所に、気になる事を言い出した朝。

「それに、元々あの家に寄り付いた理由も、今思えばその「空気」かと思うわ。まあ、アレがあったからなんでしょうけど………。」

「うん?………アレ?」

ぐるぐるし始めた私を見て、溜息を吐いた朝はポンとベンチを降りた。

「ま、あんまり張り切らないようにね。」

「えっ、はぁい。」

ぐるぐる、モジモジしながらも、溢れ出てきた星屑。
それを掻き分け、青の通路へ消えて行く尻尾。

きっとこれから魔女部屋で。
ゆっくりお昼寝を決め込むに違いない。


「そう、ゆっくり、馴染ませないと、ね………。」

転がる星屑の、大きさと色の変化。

これまで「金平糖」程度だった私の星屑は、今「粒子」に近いものになり遠目に見ると「光」にも、見える。
更に色も、変化して。

これまでより「虹色成分」が多くなった星屑は、きっとあの「白い観音」の所為だろう。


そっと手を当てる胸には、あの色がきちんと仕舞われているのが、分かる。

ジワリと真ん中に滲む、「それ」。

再び溢れ出した虹色を見ながら、少しだけ目に涙が滲む。
自分の「なか」に沁み込んだ「白」、「赦し」と流れて行った「鮮やかな想い」。

思い出すと、まだ少しジワリときてしまうのだ。
でも。
「嬉しさ」だから、いいと、思う。

 そう 無理しない 
 いいの。 感動、しても。

 だって 私は  「そういうもの震え繋ぐ」 だから。


「うん。」

よし、大丈夫。

ぐっと深く感じる自分の「真ん中」、広くなった胸、「中にある宇宙」「金と銀」。

その、広大な景色を思い浮かべながら。

再び腕を上げ、顔も上げる。


そうして自分の響きを目一杯、伝えるべく。

「ポン」と跳んで
もう一度、くるりと舞い始めたんだ。













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