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8の扉 デヴァイ 再
色を拾い集める
しおりを挟む「…………っ、ふぅ……。」
黒いぐるぐるが自分の中をくるりと通り、過ぎ去ったことが解って一息吐く。
そうして、一頻り「なかみ」の色を確かめて。
今し方「沁み込んだ色」を確認する。
「うーーーん、成る程………。」
この頃方々、ラギシーを使って渡り歩いていた私は「見てきたもの」が溜まり「こうなって」いる事は解って、いた。
「見ているだけは 辛いだろうが」
そう言っていたイストリアの言葉を胸に、とりあえず方々、各扉の変化を確認する為に歩いていたここ、数日。
「見えなかったものが 見える」、それは勿論「自然の中」にも多かったけど。
「人間」の中にも、多かったから。
「きっと疲れが溜まってるわよ。」
寝る前に、ウトウトしていた私に朝が言った言葉が思い出される。
この頃時々同行してくれていた朝は、ある意味私よりも私を解っているのだろう。
沢山の物事を「とりあえず見る」事を目的としていた私は、そうするとどうなるのか、解ってはいなかった。
なにしろ「新しい目」を試すのは楽しかったし。
単純に、他の扉へ渡るのは楽しい事でも、あるからだ。
しかし、その「新しい目」で見てきたラピス、シャットやグロッシュラーは、やはりこれまでの私には見えなかった、裏の顔があったし。
そう、ショックなものはまだ見ていないのだけど。
きっと「塵も積もれば」的な、事なのだと思う。
そうして沢山の「カケラ」を拾ってきた私は、自分の「なかみ」がそれを整理するのを待っていたに近いのだろう。
「小さな違和感を探し 拾い集め
検分して 解きほぐし
私の色で 組み上げること」
自分が理解し易い様に、そんな事をしていたのだと思う。
ある意味、だから。
意識的には、なんにも、していないのだけど。
「確かに「時が来れば」、解るって………ことか。」
沢山の場所で見た、「小さな我慢」「誰かに決められていること」「おかしなルール」。
声高に叫ばれている、「正しいこと」への啓蒙の様な、こと。
そんな「声の大きな者」に、気圧される「声の小さな者」の、様子もやはり沢山あった。
「正しい事」を言っているのに、「正しさ」から放たれる、一種の圧力の様な、もの。
「正しい事」はきっと、「間違い」ではないのだけれど「想像力」が足りない、「正しさ」で。
「そうできない者」「知らない者」「知っていても上手くできない者」、様々な事情があって「今 そうではない者」、世の中には色々な人がいるけれど。
状況や持っているものは、一人一人が違って。
全てに配慮し、生きることなんてできないのかも知れないけれど。
でも。 「愛があるか ないか」は
わかるんだ。
その 言葉尻一つ取っても。
「沢山の想い」を含んだ言葉は、分かるし、知れるし、きっとその「意味」は分からなくとも相手に齎す「なにか」が、あると思う。
「思いやり」なのか。
なんなのか。
「知る者」として当たり前の様に発言するのか、「世界は広い」と思い、発言するのか。
その「立ち位置」というか「在り方」は、やはり伝わるものだと思う。
小さな、「違和感」として。
でも、私はきっと見た時は、その違和感が「なんなのか」分からなかったに違いない。
しかし小さくとも積み重なった違和感は、私の中に纏められ、整理されて。
きっとこの「気付き」を齎したのだろう。
結局どれが何が「正しい」かなんて、分からないし「正しいか正しくないか」という問題も、何一つ、無い。
そんな問題は、沢山あって。
でも、多分。
私が、「どう 在りたいのか」何を「選ぶ」のか、それは。
この気付きから、見えてきそうな気はするのだ。
「今は」、解らなくとも。
また、それを糧にして私は進んで行ける。
そう
大事なことは、解っているし。
「繰り返さない」「揺れずに」「自分からずれないこと」
チラリと過ぎった紫の瞳を脇に押しやって。
とりあえずは安心の懐に、顔を埋める事にした。
「うーーーむ。」
「どうした?」
「あ、ううん、なんでもないの。」
不満気な金の瞳は私の色を探っているが、ニコリと誤魔化したのが解ったのか。
フワリと、金色のチカラが齎される。
うーーん ホントに
なんでも ない んだけど ??
いや なんでもなくも ない けど
明日 神域で 流せばいい し
解決方法は 知ってる し
でもきっと。
そういう問題でも、無いのだろう。
そう 言えば?
この人は 最近 どう なんだろう な?
流れ込んでくる金色を、じっくりと眺め観察してみる。
ここ最近で、私は随分変わったつもりだけれど。
この、「侵し難い」色に、近づけているだろうか。
そうして「新しい私」で じっくりと 見てみると。
多色だと思っていた彼の変化は、意外と透明度が増して私の一等好きな、あの白金ベースのキラキラである。
その、薄くしかし、神々しく発光する白金に。
散りばめられる、宝石の様な色達は皆、一様に煌めき「一番美しいだろう」と、主張しているのだけど。
「え っ 」
なん か ??
似て? 似て きて ??
ない????
私の色は今、「透明に含まれる多色」の筈である。
理想通りに、行っていれば。
多分、そう。
元々パールの遊色だった私の色は、今棲み分けにより、そんな感じになっている筈である。
元々金色の、色は濃い黄色だった。
いつからなのか、それが金になって。
私が「金色、金色言ってるからよ」と、朝は言うけれど。
本当に、金色に見えるのだから仕方が無い。
その、金色ベースに焔を含む、橙から紅、赤、白金から黄色系統の山吹まで。
焔ベースに、私の色が混ざり多色になっていた、この石。
ああ でも。
そうか。
「えっ」
混じり合って 混 線
いやいやいやいや まって それ は
まず
私の「なかみ」がブワリと動き、その、変化が分かったのだろう。
一度私を離した金色は、瞳の色を確かめると何故か溜息を吐いて。
そのまま、そっと懐に仕舞われた。
ん? なん で???
いやいや しかし。
あそこから更に、注ぎ込まれるとまずい。
それが解ったのだろう、「究極の仕方の無い目」をしていた彼は黙って私の髪を梳き始めた。
うん なんか とりあえず…………。
きっと 進歩は してる はず…………
纏まってきた、「なかみ」の色、少しずつ近づいている「なにか」。
それが何なのかは、未だ知る由もないけれど。
それもまた、「その時」が来ればきっと開示されるのだろう。
私は、ただ。
静かに。
私の「なかみ」を、解いて、癒し洗い清め、染め直して。
また、紡いで。
「…………一体、なにを。創るの、だろうな………。」
きっと、それもまた。
徐々に出来上がるに連れ、解っていくのだろう。
うーーーん
だめ だ
そうして。
まだ、夜中だという事を思い出したが明け方近くにはなっているかも知れない。
でも。
いやしかし。
この、心地良い大きな手の感触には、抗えなかったのである。
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