透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

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「うーーーーむ。」

小川の中で、再び唸る。

サラサラ、サラサラと流れる清水、気持ちの良い冷たさとその清らかな光に、私の「なかみ」も大分スッキリしたのが解る。


私の観音達あの蝶達が出て来てから。

大分細かな色は取れ易くなり、小さな違和感を感じる度に細かく流していた。
小川に居なくとも、その場で忘れないうちにと試みる時は、慶やラーダがフワリと風を送って「流すこと」に協力してくれるのが分かるのだ。

姿は見えたり、見えなかったりするけれど。

フワリと漂う気配、白や桃色、紅梅色の風、極め付けにあの香り。

それが漂うと、「ああ、二人が協力してくれるんだな」と私も解って。

安心して、流せるのだ。
そう、何処でもホロホロと流れ、フェアバンクス私の空間へ染み込むのである。


そうして流してきた「日常の小さな違和感」、小まめに神域へもやって来て、流しているつもりだったけど。

そう

 色々 試しても みたんだ

 沢山のものを 色を 見たり

  謳って みたり  躍って みたり

  跳ねてみたり  寝転んでみたりして。


 もう いっそのこと 「全部流してしまえ」と。

 ゾボゾボと、流した「なかみ」、しかし残るは

 「純粋な私」の蝶達と。

 「究極の 私」。


ある意味「取り去れない本当実存」の様なものを、確認出来て嬉しかったりも、したけれど。


「でも。なぁ…………?」

この 「究極の私本命」だけは。

この方法ではどうも、崩せそうに、ないのである。



「うーーーーーーーむ。」

「ねえ、慶。どう、思う?」

フワリ、フワリと私の周りを舞う慶は今日は観音の姿だ。

緩やかな手つきで、私から舞い出ている蝶と遊び、時折出てくる糸を巻き取っている。

自然と辺りを舞う蝶達は、純化される度に細く美しい糸を下ろしそれを慶が巻き取っているのだ。
何故、そうなのかは分からないけど、多分「あれ」が「私の衣」になるのは、解る。


慶は千手観音で、沢山手がある。

実際「何本あるか」、数えたことはないけれどきっとその時によって違うと思う。

今日はゾロリと羽の様に出た手を器用に使い、

 糸を紡ぐ手、巻き取る手
 糸巻きを持つ手
 機織りの部品の様なものを持つ手

沢山の「役に立つなにか」を持つ、その手はきっとその時々、「必要なもの」が手にあるのだろう。

美しくしなる、その腕の動きを見つめながら再びつらつらと考えて、いた。

なにか、何処かに。
ヒントは無いものかと、考えながら。



うん?  でもな?

 関係ない かな  ??


フワリと私の前に浮かんできたのは、少し暗い場に浮かぶ、薄い黄色の。

「月」である。

この頃の夢に時折出てくる、「月」。

なんでか、私の中では。

「積み上げられた「想い」が 月まで届いて

  私は その 階段を昇り 月へ 行く」

そう、なっている。

「月へ行ってどうなるのか」、それは分からない。

でも、なんとなくだけど。

その「衣」が、所謂「羽衣」で、

  月へ 行くのかも。 知れない。

全くもって、理由は分からないが、しかし。

自分の中での、筋は通っている。

多分、これも「私達が集めたカケラ」から導き出された「こたえ」だから、なのだろうけど。



でも、さあ?

なんか  御伽噺 風に?

 なって きちゃった けど ???

いや  神話風 なのか。


 「月」に関する  話は 沢山ある。


「どっから来てるんだろう………。」



   「 俺の 金の月 」


ポン、と浮かぶ言葉、知らない男の声。

でも。

確か  何処かで?   聞い    た


ぐるぐる、ぐるぐると回る景色、青と緑の起伏、大きな茶色の船。


「…………駄目だ…………。」


頭が 痛い。

とりあえずこの問題は、今は避けておこう。
うん。


落ち着く様に、深呼吸し上の薄い青を目に映す。

雲の様な靄、光を放つ柱の、並び。

ゆっくりと視線をずらして行って。
現実ここへ、意識を戻した。



それで なんの  話を?

 考えてたんだっけ  ?



ああ

何故 「月」なのか だ。

 「受ける」から?

 「女性的な」 なにか??


確かに「積み上がる想い」達は。

「女性性」に関するもの、ばかりだと思う。
それ以外に、少し「声にならない 声」もあるけれど。

どんな時でも「弱き者」「力の無い者」として、「受ける側」だった私達。

でも。
今なら、わかるんだ。

それは別に「男性が悪い」とか、そんな問題では無くて。
  全ての人の器が 満たされていないこと

それが問題なのだ。

でも、だからと言って。
向こうも辛いんだ」、そう納得できる様な扱いでも、なかったんだ。

しかしそれを掘り下げると、「男が 女が」「権力者が」「制度が」「金が」
沢山の「問題」が絡まり始めて、収拾がつかなくなる。

だから、「誰のせい」という事では、なくて。

この、輪から抜け出し別の視点で考えることが必要になる。


「私達」は。

「なにに」囚われて。

そうして一体、「何のために」。

 この 「渦の中」に ぐるぐると回って

              いるのか。

この、「行き場のない想い」は。

どう、すれば。

解消できるのか。
解放、できるのか。


じっと積み上がる「行き場のない想いそれ」を眺めて、いた。


でも、多分。

 「行き場のない想いこれ」も。

 あの「究極の私」と 同じ様な もの で。


きっと。

この圧倒的な、数と重さ、その「エネルギーチカラ」は大きな一つの「なにか」を創り出せそうな。

そんな 大切な  ものでも、あるんだ。


「ああ、でも。なの、かも…………。」


「創造性」それは 人なら皆、持つものだと
 思うけれど。

 女性の それ は。

 「育む」そんな性質と相まって
 なにか とてつもなく 

  「大きな もの」を 創り出せそうな 気がする。


 それはやはり、男性とは 「質が違う」もので。


「何が違うんだろう………。でも。また、じゃ、おんなじ…………駄目、なんだろうけど。」

何が駄目なのか、具体的には分からないし、物質か非物質か、そんな様な事だと思うのだけど。
でもポイントはじゃない。

  片方だけ じゃ 駄目

やはり、何事も「偏り」は良い結果を産まないし。
何より「愛が生まれない」と思う。


「私達は、「それ」を、求めてるんだしね………?」

どうしたって。
どんな場所、もの、人でも。

「片方だけ」だと、何故かいつの間にか「争い」に発展するのだ。
それを嫌と言うほど、見てきた。


「でもさ、「合わせる」じゃ、駄目なのよ………それもまた難しい所よね………。」

イストリアと話した、あの「愛と性の話」が思い出される。

「求めるもの」が「混同」され、みんなが迷子になって。

結局「搾取」になっている、今。

思い出すと、ブルリと震える。


 あの ブラッドの瞳

 綺麗な 青 なんだ けど。

 ある意味「純粋な 思い」でも、あるのだけれど。


「大丈夫………かな、私。これ………。」


「好き」「嫌い」、そんな感情では無いに、しても。

もしかしたら 私は。

他人ひとから 「感情」「思い」」に、反応しているのではないだろうか。

少し、確かめる必要はあるだろう。
でも。

も、「わかる」んだ。


だって、私は。

 いつも いつでも  求められ

   与え  「搾取」され  「枯渇」して。


人間全て」に、絶望 したのだから。


「怖いもの」、そう擦り込まれた私を取り込んだから「そうなっている」のは、解る。


 「向けられたら」「求められたら」

   「与えなければ ならない」


  それは。 自分の中に 自分が課した

   「縛り」か「誓い」か

   「約束」なのかも 知れないけど。




でも。

いや、多分。

きっと。


 それを  その 

  自分で 決めた   「自分への 縛り」

  
 それ を  超えないと。  


  一番  大事な。  


     「自分」を

     信じきれない  のは  わかる。


 だって 私だって  

 その そうしてきた 人達と同じ


 「人間ひと

           なのだから。



「…………ふぅ。」

慶やラーダが私の中にあっても、忍び寄る影、巣食っている不安。

それは、きっとその所為なのだろう。

これまでずっと「できる」「やれる」と、どちらかと言えば積極的だった自分。

でも。
ここに来て。

  最後の、多分「最後の壁」が

              私の前に。 

  立ちはだかって  いるんだ。


沢山の出会い、下って来た時代ときの中では勿論いい出会いだってあった。
優しい人もいたし、親切な、人も。

しかしその数よりも圧倒的に多かった、「搾取」側の人間。

やはり優しい人は声が小さくて。
結局、潰されることも、私から離されることも多くて。
結果として、やはり大きな塊となった「私の想い」、積み上げられた「究極の私黒い檻」。


 うん 解るよ  

     大丈夫   そう  私は

  し   やれる



 だって  


    ここまで  来たんだから。


  「わたし全て」が  「私」の為に 繋いで きた

   「ひかり」を 


   絶やす訳には  いかないの だから。

 



ヒラリ、フワリと私の「なか」にも出て来てくれた桃色達、香るあの懐かしい匂いに瞬時に掬い上げられる。


「ありがとう。」

いつの間にか、閉じていた目を、パッチリと開け。

再び仰ぐ、白い空。


「ん?……………あ れ ???」


その、白の中に浮かぶは薄く灰白の月と、黄色の太陽、だろうか。

きっと私の為に出て来ただろう、その二つが彼方と此方に出ている様を、見て。

  「どうして だろうか」

その疑問だけを、浮かべたまま。

とりあえずボーッと、していたのだ。




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