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8の扉 デヴァイ 再
世界に参加する 2
しおりを挟む「なにしろ君は、これから。「赦す」事を、赦していくのかも、知れないね。」
「赦すことを、赦す…………?」
再び翳った中二階、しかし暗くはないその部屋は私にその瞳の色をハッキリと見せている。
この上なく、優しく柔らかい、その薄い茶色を見て。
また少し難しそうな話へ、頭の中の準備ができた。
上手く理解できるかは、分からないけど。
「きっとね。これからは、「どうして」「何故」と思う事を「ただ見る」事をしなければならないだろう。君にとって、それは辛い事になるのかも知れないけど。」
「それはね。きっと、「赦す」という、事じゃないかとも、思うんだ。」
「はい。」
とりあえずの、相槌の返事だという事は承知だろう。
案の定、私は全く、飲み込めていない。
とりあえずは「今 解らない系」の話かも、知れないけれど。
この人が、私の為に、私の話をしてくれているのは解るから。
自分の「なかみ」へ、届く様にしっかりとその瞳を見つめ刻み込む様に目を見開いていた。
「何が起こっても、「いい」んだ。君にとってはね。だって君は、君の「そちら側」を吸収してきた筈だし、「やりたいからやる」それも解っている。だからね、出来る事なんてある意味無いんだ。そう、割り切る事、それが「赦し」なのかなぁと思うんだよ。「何が起こる事も赦す」、そうして全てを見、聞き、知り、そこからまた生まれるものがきっと、ある筈だ。それを知るのが、次の仕事だろうよ。」
「いやしかし、君は移動するのかな?………まあ、その辺りは詳しく訊かないが。なんとなく、言わんとしている事は、解ったかい?」
「……………は、い。」
ぐるぐる、くるくると回る「言葉」と「色」、しかしそれはやはり、私の行き先を指す道標の様な、ものの一つで。
きっと、私の道は、一つで。
真っ直ぐ、真ん中に、ドンと拡がっているのだろうけど。
そこに「沿うてくれる色」が、増える。
それが、解る。
みんなが、きっとそれぞれの自由意志で私と共に走ってくれること。
時折道が、別れても。
また、求める場所が同じならば、共に進む時も、あるということ。
みんなが 「自由」に。
それぞれの 必要な 色を集め
離れたり 寄り添ったり して
最終的には きっと
大きな 星に 光に。
やはり なる のだと いうこと。
「 うん。」
「なんか、やっぱり。いいな…………。」
ふと、視線をずらすと。
私しか居なくなっている、中二階の静かな気配。
奥の住居スペースから、暖かい気配が伝って来るのが分かって。
きっと一人にしてくれたのだと、また大きく深呼吸してこの贅沢な時間を味わう。
静かな気配に、浮かぶはあの窓からの景色、青い街。
朝でも、昼でも、夜でも。
誰もいない、あの空間で。
誰にも認識されない、あの不思議な時間が好きだったけど。
「うん。」
今はきっと、色んな場所で、光が繋がって。
きっとあの緑の瞳が時折、私の事を考えてくれているのも、分かるし。
あの街では橙の像を見ると私を思い出す人が、何人かいるに違いない。
向こうの大きな神殿では、どう変化があったろうか。
「…………うん?アラル、は………??」
ふと、思い出してしまった「青の少女」のこと、しかし私は「世界に参加するだけ」の、者。
「えっ、何これ。どうする??」
「どうした?」
一人、ワタワタし始めた私を見ながら楽しそうに戻って来たイストリア。
手には、心躍るハーブティーのセットが見える。
しかし、私の頭の中は。
既に「私がいなくなったと いうことは」と、いう。
新たなる問題に、ぐるぐるしていたのである。
「とりあえずそれは、こちらに任せなさい。なにしろ君は、自分に集中する事。落ち着いたら様子を見に方々訪ねるといい。姿を見せる者はあの子と相談しなければならないだろうが………。」
ブツブツと呟き始めた水色髪を見ながら、胸に手を当て心を落ち着かせる。
呼吸を整え、その言葉を飲み込むと「見守る」という言われたばかりの言葉が思い出されて、心の中で舌を出した。
まーた すぐ忘れるんだから………。
しかし、やはり自分の「なか」が落ち着くのが早いのは解る。
とりあえず神殿の様子とアラルの事、アリススプリングスの動向を注意してくれる様、お願いしてホッと息を吐いた。
「なーんか。みんな、幸せになって。好きな人と一緒になって、身分とかも何にもなくて。そんな世界に、なったらいいですよね………。」
ポツリと呟いた私に、優しい声が降ってくる。
「なるさ。きっと。君が、「そう」思ってくれていればね。」
「だと、いいなぁ………。」
「私が思うに。君が、まあ、少しだけ光って子供達の前に「キラリ」と現れたなら。みんな、「やっぱりそうだったんだ」と、喜ぶと思うよ?きっと何の疑問も無く、女神様だと思うだろうね…フフッ。」
えっ
笑ってます けど………?
でも、嬉しい かも???
しかしそれは、私にも容易に想像できる。
確かに、あの子達は。
きっと喜んで私の事を迎えてくれるだろう。
「えっ、なんかそれはいいな………。あれ?でも今、シェランとリュディアもいるよね………??」
でも。
もしかしなくても。
あの二人も「やっぱりな(ね)」と、言って。
すんなりと受け入れそうな、気がする。
アラルの少し呆れた目も予測できるし、トリルなんかは違う意味でヤバそうだ。
こっちにはまだ内緒にした方がいいかも知れない。
「あ、白い魔法使いもヤバそうだな………。」
「フフッ、確かにそれは少し、私が根回ししておくよ。あの、ブラッドとアリスには会ったのだろう?しかしまあ、そうだね?ラガシュなんかにも会って、実験した方がいいかもしれないな?」
「えっ、やっぱりそう思います?私もちょっと心配なんですよ………。でも、分かっていれば。会えなくもないと、思うんですけど…。」
確かに「誰に会ってもいいのか」「会えるのか」問題は意外と難しい。
でも、子供達のことを考えると気持ちが明るくなってきて。
イストリアが紙を出し、名前を並べ始め私達はその問題に着手する事にした。
そう、そうして面白そうな神殿側から、決めて行く事にしたのである。
うむ。
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