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8の扉 デヴァイ 再

靄 消化

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 ネズミの死骸

    硬い石の床   冷たく暗い 空気

 床に 溜まる 靄

  食堂  隅   いつもの場所

  いつもの 暗い靄と 一緒に

  私 は いた

 
 その 場に 住む  靄の存在に

 気付いていたが  それは 普通のことだった

 それが なにかは 分かっていなかったが

 徐々に溜まる なにか  

 そう認識は していたと  思う


 それが 時折  フワリ ユラリと 揺れることも。





沢山の 人が 集まる場所

見えるあの人

   あの 私の  ひかり

きっと このまま通り過ぎたならば

「どうして 来なかったのか」

そう 言われるであろうことは 分かっていた


 しかし

  わだかまる 想い 負い目

  恥    「まだまだ」という思い

   隅へと 隠れる自分


そんな 自分を また更に恥じる  自分


でも だって  しかし 「今」は。

「私の生きている場所」は

ひかりあそこ」じゃ なくて

暗い靄ここ」なんだ


 まだ。   行くことは 「できない」んだ




 見える ひかり

 続く 日常


  理不尽な扱いと 溜まる   抑圧

  どこからか 漏れる ひかり の カケラに

  目敏い周囲の目  蔑み 嫉妬    

 そこからの  「想い」の塊に 襲われ 

        汚れてしまった 自分


積もる  恨み 辛み   

     練り上げられる 黒い 感情

 「なんで」「どうして 」「嫌」

 渦巻く 感情  

  ユラリと  揺れる靄


 練り上げられた それ が

   舞い上がり 走り 何処かへ消える

  その 感覚


 その時 は まだ。

 「想いそれ」を 使う術を 知っていたから。


 簡単だった

 そう するのが  当然 当たり前 だった

 黒い感情に 任せて

  それを ぶつけること

  「想い」を  「かえす」こと


 実際 「どうなった」のかは 分からない

 なにも 起こらなかったかも 知れないし

 なにか 起こったかも 知れない




  いいや?

  私は 知っていた



  「想い」が 力を持ち  「カタチ」となって

  きちんと。


  「それ」に 「報復」することを。



 どういう 「やり方」かは 分からない

  見たことがある 訳じゃないし

  でも。

  何度か 「経験」したことは あるんだ


  そのまんま 黒いものを 返す

   やり方


 きっと 辛かったろう 苦しかったろう

  とんでもなく  恐ろしい目 に あっただろう


  しかし。

  「それ」は。

 ずっとずっと 経験してきたこと だったから。


  「やられたらやり返す」


 その 「やられたこと黒い想い」に 対して

  黒いものを返す

 それは。

 私にとって  とても自然な 成り行きだった


 「当然」の  ことだったのだ。


 「その時」は。










あれ?

「…………ああ、夢なんだ。」

久しぶりに見た「重い夢」、しかし目が覚めた私の「なかみ」は揺らいでいなく、重くも怖くも、ない。

暫し、その夢に思いを巡らせ「なにが どう辛かったのか」を思い出して。

「それ」をきちんと、把握しようとしていた。

だって、「それ」は私が積み上げてきた「想い」で、「今は無い」もので。

しかしきちんと「流し」、「洗い清める」必要があることは知っていたからだ。

きっと何かしらの、必要があって、きちんと出てきてくれて。

「流して」「洗って」「もう 要らないから」

そんな「想い」が折角、出て来てくれたのだ。


いつの記憶なのかは分からないけど。

「そんなこと」は、沢山あったから。

なにしろベッドの上、そのまま寝転んだ形で神域を想像し、サラサラと自分を流し始めた。


光で包もうかとも、思ったけれど。

なんとなく、その方流すがいいと思えたからだ。

きっとピンと来た方が「私の正解」なのだと、分かるから。

とりあえず、そうしてサラサラと「なかみ」のカケラを粒にして、流し始めたのである。


 白 薄灰   縁取りは 薄い青

サラサラと流れる小さな粒子、何処に流れるのかは分からないけど「還る」のは解る。

それを気にせず流したままにし、その「なかみ」について少し考えてみた。


あれは。

「魔女」なのか。

「チカラを使う」ことを、知っている自分 だった。

いや、自然と「そうなっていた」の方が近いかも知れない。

その時既に、積み上げられた靄を持っていた私はある意味当然の成り行きで「それ」を返していたのだろう。

きっと、

相手には、何らかの方法で返ったであろう「それ」。


「うーーーん。」

何とも言えない、気分である。

今更、どうしようもないのも、あるし。

  「その時」は  「そう」だった

その「事実が残るのみ」なのは、もう解った事でも、あるのだ。

それならそれは、流して、洗って、またきっと美しい色に触れ、還ってきて。

私の新しい光で染め、それが癒しになり「塗り替え」にも、なる。

そうして再び私の一部となり、光にもなるのだろう。


その、光は蝶にも、糸にも、チカラエネルギーそのものにも、変化できる。

 「お前さんのまじないは 応用が効くね」

そう言っていた、フリジアの言葉がポンと浮かんだ。

確かに。
自分でも、そう思う。

でも本来、チカラエネルギーとは。

「そういうもの」だと、思うのだけど。



周りで起きる出来事、私の中の夢。

思い出す、思い出さえも。

全てが「新しい私」を創り上げる、工程の一つで、そうして一つ一つを、ゆっくりと徐々に解凍して。

「本当の 私」を織り直して、ゆくのである。


長い道のり、どのくらい掛かるのかも分からないし、「終わり」があるのかも、見えるのかも分からないけれど。

それをやらねば、私は「本当の私」には、なれないし。

「簡単」じゃないことなんて、当然だ。

それに。

より、沢山の「合わなくなった色」を見付け、洗い癒し、合わせたならば。


「そう、より巨大な、大きな私に、なって。世界をも、包める、置いて行かない私になれるのである………フフフ。」

「なにを、言っておる。」

「あっ。おはよう。」

きっと起きていただろう、金色が耐えられなくなったのか私の独り言にツッコミ始めた。

顔を上げ、朝から当然の様に美しいその色をまじまじと眺める。


なにか。

さっき、思い出した様な、気がしたのだけど。

「…………?」

思い出せない。

この、美し過ぎる、金色に気を取られた所為なのではないか。


「うーーむ。」

そうして勝手に「自分の所為」にされている事を、知ってか知らずか。

金色は私の事をじっと確かめると、懐に入れ「まだ、早い」と言って小さく息を吐いた。

もう一度寝ろ、という事か。


 うーーん まあ  それなら   それ で 。


一瞬掴んだ「なにか」、でもやはりそれが思い出せなくて、それなら「今じゃない」のかも知れないと思いを戻す。

そう、今私は、癒されているのだ。

この、心地の良い空間で。

どこよりも安心できる、腕の中、ぬくぬくと包まれている、ところ。



ふと、気になって想像してみる。

 
 スッキリとして 気持ちの良い神域
 
より自分の中に溶け込めて、純化し、「私に戻る」感覚が強いのはやはり「私の神域」だろう。


 「チカラ」の なか

 真ん中  チャージ  養分の なか

熱い「なにか」が漲って、浸っているだけで「満ちて」くる、あの感覚。

あの、「源」に在る感覚と金色にされる「チャージ」はなにかが違う。


「なんだ、ろうな…………。」

色? いや違うな
温度  いやいや

「なかみ」 まあ そうだけど

「質」  ああ。

まあ、「質」が一番、近い  かな………



多分、私は「私ひとり」でも、「完結」していて。

「浄化」も「純化」も、できて「対処」もできて
「補給」もできる。

美しいものを見て 「満ちる」こともできるし

「黒いもの」を見ても 自分で「消化する術」を

 持っているのだ。


  私の 「なか」には 「ひかり」がある


それは勿論、「チカラ」でも「想い」でも「私の観音達」でも、「蝶」でもあって。

全てが私の「源」と繋がる、私が創造した、「ひかり」なのだ。


 私は 私の源で  満ちることが できる


そうでなければいけないし

そう 「在りたい」とも、思う。

でも
決まっていることなんて なんにもなくて。

「そうであらなければならない」ことも、ないんだけど。


 これは。

 私が  「どう 在りたいか」の問題だから。


やっぱり、一人で立ちたいし、立たなければならないのだ。

だって、金色が。

だからだ。



だからあの色に「依存」するのではなくて、なくてはならないけれど、なくてもいい、そんな矛盾の関係なのだ。

私達は。

そう、世界は矛盾で、できていて。

きっと、「矛盾それ」を受け入れられなければ「全部」には、なれないのだろう。

それが、よく、解るから。


「フフッ」

ぐりぐりと懐に潜り込み出した私を不思議な思いで見ているのだろう。

その、瞳の色が想像できて。

また、私に「色」を齎すのだ。


いつだって、この人は。

私と共に在ってくれる、得難いものであり、美しい「なにか」であり、チカラを齎し潤してくれるものでも、ある。


 なんか。  狡い、な。


何故か悔しくもなってきて、ジタジタと足を動かしてみるけれどのガードは硬い。


 ふんだ  いいもんね

  私だって。 できる  もん


そう、私だって。

彼にとって「そういうもの」に、なればいいのである。


「うーん、そうすれば。万事解決、だし、なんか世界もいい方向に?なりそう、じゃない??」

「仕方が無いな。」

ポン、と取り出され髪を梳き始めた金色は寝せるのを諦めたのだろう。

でもきっと、早いとは言えもう朝では、ある。


「フフフ(大丈夫)」

全く安心していなそうな、金色を目に映し。
怪しげに笑いながら大きく息を吸って、慣れた匂いを自分の為に嗅ぐ。

ああ、顔洗わなきゃ
今日の予定?は未定…………うーむ


動くかどうか、一瞬、考えたけど。

しかしこの朝の、貴重な時間を楽しむ事にしたのは言うまでも、ない。

うむ。



  
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