透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再

ただ一つの いろ

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目の前にある、も言われぬ美しい色を、じっと見つめてしまった。


 この 色

  いつも ある  同じ  金色

 え?  とも ?


    お な   じ    ???


なんとも言えない浮遊感、自分が居るのはベッドではなく、宇宙空間の様な、気がする。

フワフワと浮く私、しかし辺りは白い。

その、中に。

 在る は

    いる は   あの

   いつも   見て    いた


     おなじ    いろ    だ け



「えっ?」

全く、わからない。

分からないん、だけど。

でも。

多分、


         なん だ。



全てが腑に落ちる瞬間、金色の渦に巻き込まれた様な気がして、くるくると回る、感覚。

しかし、フワリと気持ちの良いそれは、グッと力の入った彼の腕で着地をする事に、なった。

その、瞳には。
少しの翳りが、差していたからだ。


「大丈夫。……………大丈夫、だよ。」

「なにが」「大丈夫」なのか、本人も全く解っていないけれど。

「良いこと」なのは、解る。

私に、とって。

は。




「ちょっと、待ってね…?」

心配しない様に頷いて、再びきちんと腕の中に収まる。

多分。

私は。

どうして  この  金色 を

     好き  に   なった ? のか


   やっと  「」。


    「 気付いた 」  のだ。



これまでずっと、理由なんて考えた事が無かったけれど。

気付けば「それしかない」のが、物凄くよく、解るのだ。


「えっ、私。人間と、恋愛できない、って。こと、だ………。」

「………」

無言でキュッと締まる腕。

 いやいや 別に

 誰か 他に 好きになりたいとか?

   ま   っっっっっっっっっっ たく


   無               い


 ですけど  ね????????


チラリと見上げた金の瞳、私の意図は察したのだろう。

緩くなった腕を撫でながら、今し方、気付いた「本当」に思考を戻す。


でも。 なんで。

気が付かなかったんだろう?

多分、だから。

ずっと、好きな人もいなかったし
「好きだ」と言われても ピンと来なかったし

私の 望む 「本当相手」なんて。

 この 世に  いないと。

  思って たんだ   なんとなく  だけど。


でも  それは。

 ある意味  「本当」 だった んだ。



「は  ぁ~~。」

その、寄り掛かる背中から感じる温もり、すら。


 「愛しい」


「え?イヤ、キャーーー  」

ジタジタと顔を埋め、モゾモゾしている私に反応が無い金色。

しかし私はそれどころでは、ない。


えっ  ちょ ちょっと 待って??

いや あのさ この「貴重な」とか「希少性」で
言えば。

気付いては、いたのよ。
ただ、「ありのままを見てくれる」、そんな「生きもの」。

いや、石なんだけど。

でも。


「えぇーーー…………」



「石だから」こそ、持ち得る「その部分純粋さ」が、私がで。

やはり人間ひとからは切り離せない、「動物としての本能」的な、「あの色」がという、こと は。



うん?

しかし、くるりと翻る私の中、「事実」と「感情」「心」の、こと。


いや?

でもな??

今さっき、自分がやった「分離」の様な、こと。


 って ?

 「」 だよね???


くるくる、くるくると回る頭、しかし「頭で理解」しようとすると掴むのが難しいそれは。

しかし私の「真ん中」には、「デン」と。

居座ったので、ある。



  「 私  私達  も


   それそのもの  純粋な なにか


     この光金色と 同じ様な ものに。


    「なれる」と  いう  こと  」



 
「えっ。それ、って…………。」


前に朝が。

言ってた「それそのもので あれば」的な。

こと、だよね????????



「依る?」

いきなり動きがピタリと止まった私を、心配した声が降りてくる。

その、声すら。

「今の私」には、危険な代物で。


「え、えぇ~~………。」

「コラ」

顔を上げさせようとする金色、しかし今、その瞳を見たならば。

恐ろしい、事になるのは解って、いる。


 うん  なっちゃう のか は

    わかんない   けど

  うん  なん か   まずい  まだ。



「ちょ、ちょ、ちょっと、待って、ね??」

そうして。

意味不明なことを呟きつつも、とりあえずは自分の「なか」が、落ち着くまで。

「落ち着くけど落ち着かない」、胸の匂いを嗅ぎながら、フワフワと漂っていたのである。

うむ。






  白   白い  柱


   天井の 雲は 靄

 でも  流れる様に   紋様

  あれ    あれ は

    龍か  それとも   飛び魚 か


  うーん   向こうの あれ は

 フォーレスト にも   似てる な???


サラサラと、水を伝う音。

顔を撫でる気持ちの良い冷たさ、誰も知らない山の清水の様な、その清らかな流れは。

勿論、私の神域の川の流れである。
因みに今、私はその中で。

また、自分を流そうと寝そべっている所だけれど。


あの、後。

「ちょ、一旦整理させて??」

そう言って腕の中を抜け出し、ここ私の神域へ、やってきた午後。


「ふう。」

今、私は。

あの味を占めた「私の中身を分離する」、方法で。

自分の「なかみ」をスッキリさせようと、川の中へ寝そべっていた。
いや、流れを少々、堰き止めている、にも近いけれど。


なにしろ「悪いこと」など、一つもないあの「発見」に、何故こうも自分が狼狽えているのか分からなくて流されている。

そう、別に。

「悪いこと」など、なにも無いし。

寧ろ「気付き」があること自体は、「いいこと」の筈である。

しかし、何故 こうも。

 私 は。  動揺  して

    いるの    だろう? か………??



 なんだ ろう

 でも。

 「気付いた」のは  うん 良かった

 良かったんだよ うん  それは間違いない


   なんだろう?

 いや  多分?


 が ?  


   より  強く  から。


   私 が。


 「金色」を  求めちゃう んだ。



「ええええぇぇぇえぇぇ   」


ゾボゾボと、自分の「なにか」が川へ流されてゆき、とりあえずは出ていた震えが治まってきた。

 ちょ 

  待って?

 大丈夫? 私。

 帰ったら  あの人  いる けど???


少し、整理してからじゃないと。
帰れなそうで、ある。


そもそも落ち着く為に、来た神域だけれど。

「はっきりと」「気付いた」ことに、気付いた私は動揺が大きくなっている事にも、気付いて、いた。


いやいやいや 意味が  わかんなく  なってきた  から


「ふう」

何度目かの、溜息を吐いて。

改めて思う、人間ひとの心と感情、想い、それが愛しくもあるけれど怖くもあるところ。


 「もの」「ひと」 「からだ」

 「こころ」「精神」 「魂」

   「見えるもの」 「見えないもの」

  「今」  「過去」  「未来」

 「始まり」   「淡い 想い」

   「愛」


様々な景色が、私の中をサラサラと流れ落ちて、ゆく。


寝転んでいるから。

よく見える、真っ白な上は。
少し水色を含んで、私の「なかみ」を凪ぐ様に見守っているのが、分かる。

そうしてホロホロと、剥がれ落ちてゆく「今の私」に「不要な」、色。

それは、色の上に浮いた「雑味」にも、近い。



 なる ほど ?


ハラハラと流れて行ったのは、軽い色も、重い色も、あるけれど。

「それ」が「感情」であり、「事実」は蝶となって私の周りを舞い始めたのが、分かる。


 「羞恥心」 「天邪鬼」 「抑圧」

 
可愛らしい、色も流れてゆくけれど。

多分、「今の私」には、必要が無いんだ。


それもはっきりと解って、そうして改めて見る、また「更新された 私」。


「? えっ?」

そう、しっかり確かめようと、目を開け自分の「なか」を探ろうとしていたのだけど。


  なに これ ?


「えっ、えっ???」

自分の「なか」へ、集中しようと意図していた、私の目の前に。


 居るは美しい少女の様な、観音の様な。


 天女の様な、「私」 だったのだ。


 
 「ふ ふ 」


えっ  笑って る

   いや   可愛い  けど???


   なん で???



 「 ふぅん  いいものが 出た な 」

「あっ、黎!なに、アレ、なに??私?私だよね???」

何故かフワリと現れた、黒い絹の様な蝶が。
すぐに黎だと分かって訊いてみる。

私は、姿形の似ていない新しい観音それが「私」なのだと、「わかる」のだけど。

何故、解るのか、が。

 解らない、のだ。


 「 それ は   「変換」「変容」

 「転換」  または   「再生」

         だろう よ  」


「転換?そう、なの………?」


確かに?


多分、私の中の。

その愛や恋、所謂「恋愛」に染み着いた「しこり」の様なものが。

「転換」なのか、「変容」か

 この 「洗い清める」作業を 経て

   「再生」して。


   「なった」の だろう。




これまでずっと、積み上げられてきた「死んだ私」の「なか」の「想い」。

何度も何度も。

 淡い色から  どす黒い 色まで

 くるり ゆらりと  変化して。

期待して失望して、諦め、それでもまた希望を抱いてまた失って。


  そうして凝り固まり

  積み重なった    「想い」が


  最後 が  「」こと に

                よって。


  「変化」し 「転換」し 「再生」して。


 「私の中の」に なったんだ。





 
    「想い」が  「純度」を 上げ


     「神」 に   なる





頭の中は、真っ白。

身体はまだ、心地の良い水流の中。

上には変容した蝶達と、新しく生まれた紅梅色の「観音」が舞う、夢の様な空間。

その周りを黎が、揺ら揺らと周っているのが、見えて。



  ああ  きっと  

   もう  半分の   「光」って。


   「私」の   「なか」に  


        あるんだ



ただ、ボーっとしながら。

それだけは。

解って、いたのだ。











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