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8の扉 デヴァイ 再

女神様疑惑

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「ウイントフークさん!私って………  」

派手な音、飛び散る星屑に。
書斎の奥、呆れた瞳の、茶色が刺さる。

「………ごめんなさい…。」

そう、勢いよく走って行き、再びそのまま扉を開け放った、私の星屑のお陰で。

可哀想な扉は、再び吹っ飛ぶ事となっていたのである。


「………だから、変わっていないと言ったろ?」

「まぁな。」

ホロホロと転がる星屑と、扉の残骸。

この前よりは派手じゃない、と自分に言い訳して「いやいや」と一人ツッコミをしている私の隣で。
失礼なやり取りをしている男達がいるが、私にはぐうの音も出ない。

「あっ、ごめん、ありがとう。」

「いいえ。でも、気を付けて下さいね?怪我でもされたら…」
「もう、無敵なんじゃないか?」

「ウイントフークさん、それは失礼ですよ。私に。」

すぐに片付けに来てくれたハクロにお礼を言うと、とりあえずソファーへ座る。
邪魔をしない様に、大人しくしているが吉だ。


そうして片付けの様子を見ていると、何やら合図をして極彩色は出てゆき金色は私の隣へ収まった。

「で?どうしたんだ??何かあったのか?」

本棚を弄りながら、やや迷惑そうな本部長。

きっと二人の報告を聞いて、これからの事を計画しようとしていたに違いない。

数冊抜き出された本が、手近な山にポンと積み上げられた。

 ああやって山が、高くなっていくんですね
 ウイントフークさん………

その様子を眺めつつ、とりあえずの疑問を口に出すことにした。


「あの。私って、「どうなった」んですか??あと、不老不死は?なんも、持って帰って来てない、けど………。」

ウロウロしながらチラリと金色を見たウイントフーク、きっとこの話はもう相談済みなのだろう。
しかし、金色この人は説明係に向いていないと判断したのか。

とりあえず説明しながら、山の上の本を開き始めた。

「そうだ。まず、お前は「帰って来ていない」事にする。そうすれば不老不死が無くとも仕方が無いし、これ以上追及される事は暫く無いだろうからな。」

「ふぅん?………まあ、そうですよね………。」

ん?
でも………?

「何人か、には。言ってもいいですよね?」

私の事をよく知る人になら、会えると金色は言っていた。
しかし、返ってきた返事は芳しくないものだったけど。

「いいや。とりあえずはアリスとブラッドフォード、二人だけだろうな。ああ、あとはフリジアか。」

「えっ。」

「少し様子を見る。大丈夫そうなら、その、なんだ?友人にも会えるだろう。とりあえずは、待て。」

「…………はぁい。」

確かに。
少し様子を見た方がいいのは、解る。

そっと私の手を取る金色の温もりに息を吐きながら、「大丈夫」と頷いておいた。
これまでだって、そう沢山の人に会っていた訳じゃない。

きっと、そんなに変化は無い筈なんだ。

そう自分に言い聞かせながら、フェアバンクスこの空間につらつらと思いを馳せ、魔女部屋と魔法の袋はどうしようかなぁ、なんて。
のんびりと、考えていた。


しかし、私が落ち込んだと思ったのか。
本部長は、いきなり懐かしのアレを持ち出してきた。

そう、あの朝食堂で言っていた、「女神様」である。

「ただ、グロッシュラー向こうでは。お前は「女神様」、やっていいぞ。」

「え???」

「ほら、森でやってただろう。そんな様な、やつだ。多分、今の姿ならば、少し光っておけば完璧じゃないか?」

 えっ 光って? ?  

 おけ ば ???

「えっ、うん?そう、なのか………???」

ペタペタと自分の身体を確認して、隣の金の瞳をチラリと見る。

この人は、頷いているけれど。

「えっ?そんな、このまま光るで。「女神様」になんて、見えます?????」

その私の質問に。

くるりと振り返った眼鏡の奥の、瞳が怖い。


ツカツカと近寄ってきて、ジロジロと私を眺め始めたウイントフーク、金色は諦めたのか私の手をギュッと握っているが、遮りはしない。

「ふん?多分、大丈夫だと思うがな。イストリアに見せて、それからがいいだろう。」

「えっ、それは………いいですね?」

「まあその辺りは「それらしく」見える様、何かアドバイスしてくれるだろう。まあ、このままでも充分だけどな。」

「え、えぇ~???」

ウイントフークが。

、ウイントフークが「このままでも女神に見える」という、基準はどの程度なのだろうか。

私の服装にだって、無頓着、きっと昨日何を着ていたかだって、覚えていないに違いない。


 いや でも? 
 ウイントフークさん だし??

 そんな 「珍しい姿の女性」くらいでも 

  そう 思いそうじゃない???

「それは、あるな…。」

「で?質問はもう終わりか?とりあえず用が済んだなら、出て行け。俺はあれが、ああ、向こうに………」

「はぁい。………ありがとうございます。」

何やら呟きながら、奥の小部屋へ消えて行ったウイントフーク。

とりあえず、今の所の。
疑問は解決した。

後は多分、私の「なかみ」の、話なのだ。


「とりあえず、休もう。」

「うん。」

止まっていた私を覗き込んで、そう言う金の瞳は気遣っているのだろう。

確かに、帰って来たばかりで。
なんだかまだ、落ち着いてはいないし、少し疲れてもいるのだろう。


馴染んだ手が腰に回るのを心地良く感じ、そのまま開けてくれた扉を出る。

直ぐそこの私の部屋の扉を見て「休め」という色を映し、私を目で誘導しながら連れて行く、この人が。

なんだか、近くなったと思うのは気の所為なのだろうか。


しかし、大分馴染んだウェッジウッドブルーを見た私の中はやはり安心したらしく、胸の中に拡がるいつもの色にホッと小さく息を吐く。

そのまま、金の瞳が「どうする?」と訊いたから。

とりあえずは緑の扉を目で示し、クローゼットへ着替えを取りに向かった。







 なん か

   目が 覚めちゃった な?


パチクリと目を開けて、目の前の白を見る。

白い、シャツだ。


  ん?

 ああ そう か   あの 人

  そう 金色 が  今は 一緒 に   ?


そうだ。
そうなんだ。

じゃあまた。 寝よう。うん。




しかし。

なんだか頭は少しずつ働き始め、何を考える訳でもないが、眠れないのは分かる。

 森のお風呂で寛いで、ゆっくり眠れる筈なのに。

少し、寝ようとしてみたり、目を開けてみたり。

色々試してみたけれど、とりあえず寝返りを打とうと身体を動かしていた。


「 眠れないのか?」

「あ、ごめん。起こしちゃった?」

寝てはいないのだろうが、ついそう言ってしまう。

とりあえず金の瞳に心配しない様、目配せしておいて自分でも「何故眠れないのか」、考えていた。

 
 なん か?  落ち着かない?

    ムズムズ?  ソワソワ?
 なんだろう  「不安」は 無いんだけど?

 なにか が?  気になる のかな??


自分の「なか」をぐるぐると探っていると、頭の上から緩りとした声が、降ってくる。
やはり夜中だからか。

中々、聞けないこの声もいい感じである。

「きっとこの空間にまだ同調してしまうのだろう。デヴァイ向こうは、まだ落ち着いていない。感じるのだろうな。」

「………確かに。そう、かも…。」

いつの間にか部屋へ戻っていたから、気にならなかったけど。

きっと、向こうは「ヨルがいなくなった」と騒ぎになっている筈なのだ。

パミールとガリアが心配していないか、二人の瞳が思い浮かんで少し胸がキュッとする。
でも、あの二人なら。

 多分  「信じて」。

 待ってくれる  筈


それ以外にも私に「不老不死」を要求していた長老達、「軸」になる筈の私が、戻らないこと。

きっと、私の想像以上に。

向こうは「揺れて」、いるのだろう。


しかし。

やはり、私も変化したのだ。

二人に会えない事も「今は仕方が無い」と、思えるし、「私の所為で騒ぎになる」事すら。


 「私の 問題」では  無い

それが、はっきりと分かるのだ。

割り切れる、と言うか。


「…………うーーん。」

寂しさなのか、嬉しさ、なのか。

なんとも言い様のない、思いが胸の中にほんのりと居座っている。


「少しずつ、お前の中を整理すれば落ち着いて来ようが。まだ少し、危ういの。」

「…………うん。」

なんだか。

懐かしの話し方を聞いたからか、安心して眠くなってきた気がする。


確かに、私はまだ「色んな意味で」「危うい」のだろう。

なにしろ兎に角。

「自分を 安定させること」、そこから。

着手しなければならない事だけは、解るけど。


 駄目だ  眠くなって  きた


そうして。

久しぶりの安心の温もりの中、「暫く一緒」という、私にとって最高のプレゼントと一緒に。

ぐっすりと、眠りについたのである。






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